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フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年 【サントリー美術館】

前回ご紹介した展示を観る前に、同じ六本木ミッドタウンの中にあるサントリー美術館で「六本木開館10周年記念展 フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年」を観てきました。

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【展覧名】
 六本木開館10周年記念展
 フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年

【公式サイト】
 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2017_6/index.html

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅

【会期】2017年11月22日(水)~2018年1月28日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
割と混んでいて所によっては人だかりができるような感じでした。少し待てば自分のペースで観られたので、それほど気にならない程度ではあります。

さて、この展示はフランスのパリ近郊にある「セーヴル陶磁都市」に関するもので、300年に渡る歴史を俯瞰できるような内容となっています。国立セーヴル陶磁美術館のコレクション展が日本で開催されるのは20年ぶりのことのことで、貴重で素晴らしい作品が多く並んでいました。4章構成となっていましたので、各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。


<第1章 18世紀のセーヴル>
まず最初はセーヴルの始まりの世紀についてのコーナーです。16~17世紀はヨーロッパに中国磁器がもたらされましたが、高価過ぎた為ヨーロッパ各国は自国内で作り出そうと試み始めました。そしてフランスでは1740年にパリ東端のヴァンセンヌに軟質磁器製作所が作られ、最初はザクセン公国のマイセンを手本としていたようです。しかし徐々にマイセン風を脱し、一流の宮廷芸術家が新しいフォルムや意匠を提案し独自の発展を遂げていきました。そして1756年になるとルイ15世の庇護を受け、パリ西端のセーヴルへと移転し王立磁器製作所へと成長しました。また、1773年になると耐久性が高く硬い硬質磁器の商業化に成功したそうで、そうした作品も展示されています。

ここにはまずヴァンセンヌ時代の作品が並んでいました。絵画的な絵付けがされている品や、鱗文様の中国趣味(シノワズリ)のカップなどもあります。また、有田焼のような品もあり、リスと垣根が描かれているのが日本風で面白かったです。
その先には王のブルーと言われたブルーセレスト(ターコイズブルー)の皿が並び、色の強さが目を引きました。この辺にはエカテリーナ二世の皿などもあり、フランス以外でも愛好されていた様子が伺えます。また、形も面白いものがあり、「煮込み肉用の容器と受け皿 小壺と花綱とデュバリー夫人のイニシャルのセルヴィス」では蓋が野菜の形になっていました。他にもジョウロや籠のような形の作品もあって驚きです。

その先には大理石のような質感の彫像もありました。これはパーツをくっつけて作ったもので、ビスキュイ(無釉白磁)と呼ばれる技法のようです。流石にパーツを繋げるだけでは細部は表現できないので手作業で仕上げるらしく、非常に手間がかかりそうですがその分生き生きとした姿になっている作品ばかりでした。

この章には模様に関しても色々あって、ロカイユやエトルリア風、アラベスク風など歴史的な雰囲気の品があります。この頃ちょうどポンペイが見つかったらしく古代ローマへの関心が高まっていたのも背景にあるようです。中には硬い石のような質感のだまし絵的な模様?の作品までありました。


<第2章 19世紀のセーヴル>
続いては19世紀のコーナーです。フランス革命後も国有の製作所であり続けたセーヴルですが、1800~1847年に所長を務めたアレクサンドル・ブロンニャールはセーヴルを更なる黄金期へと導いたようです。ブロンニャールは植物学、鳥類学、地形測量学などを取り込んだ新しいフォルムや装飾を生みだしただけでなく、画期的な製造技術を導入しステンドグラスや七宝など磁器以外にも挑戦しました。ブロンニャールから館長が変わった後もそうした新技術開発は続けられ、過去に考案されたフォルムや装飾を繰り返し組み合わせた装飾過剰なほどのスタイルに達したそうです。

ここには植物画で名を馳せたルドゥーテのグアッシュから着想を得た作品があり、リアルな植物の描写となっていました。
 参考記事:
  花の画家 ルドゥーテ『美花選』展 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  ルドゥーテの「バラ図譜」展 (上野の森美術館)

少し先には七宝の作品や、ナポレオンのエジプト遠征の際に作ったエジプト壁画の模様の皿(中央にその戦争の様子が描かれている)などもあります。また花や鳥といったモチーフ以外にも農園で働く人々や漁をする人など、割と同時代の出来事も題材として取り入れていたようです。いずれも緻密で博物学的な正確な描写になっているようでした。

その先には中世ゴシックを再発見したデザインや、違う様式を組み合わせた過剰なデザインもありました。中国風のモチーフに西洋のものを組み合わせるような感じです。まあ、ちょっと今の時代からみればごちゃまぜ感はあるかなw 確かに過剰でも気品はあるように思います。


<第3章 20世紀のセーヴル>
続いての20世紀のコーナーは撮影可能となっていました。20世紀に入り万国博覧会が行われ日本・中国・欧州の陶器が一同に会すると、お互いに刺激を受けてフランスではジャポニスムなどが盛り上がりました。1897年に芸術部長だったアレクサンドル・サンディエはアール・ヌーヴォー様式を取り入れパリ万博で成功を収め、その後 1904年には日本の彫刻家 沼田一雅を協力芸術家として初めて外国人に門戸を開くなど積極的に新しい取り組みを行っていたようです。さらに1920年に所長になったジョルジュ・ルシュヴァリエ=シュヴィニャールは著名な芸術家、建築家、室内装飾家に協力を求めアール・デコ様式の製品を発表し、大きな成功を収めたそうで、その後日本の朝香宮邸(現在の東京都庭園美術館)の仕事などを受注していきました。

ここにはそうしたアール・ヌーヴォーやアール・デコなどの様式の作品が並んでいました。

こちらは展示風景。
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階段を降りた辺りから撮影可能となっています。

アガトン・レオナール「ダンサー」
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15対のうちの2体で、これがビスキュイ(無釉白磁)の彫像です。1900年頃につくられたもので、非常に動きがあります。これは当時流行っていたロイ・フラーの踊りから着想を得て、ギリシア彫刻風に作っているようです。

この部屋の奥でロイ・フラーの踊りのフィルムも流しています。
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この踊りはロートレックの作品などにも描かれているので、この映像を観ておくと後々参考になると思います。

壺「ル・ブルジェB」
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アール・ヌーヴォーの作品。模様だけでなく形もかなり和風のように見えます。

壺「秋」
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紫陽花って秋なんだろうか?と思いますが、かなり日本からの影響が感じられる作品。

沼田一雅「七面鳥」「お菊さん」
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こちらが初の外国人作家となった沼田一雅の作品。大理石のようにすら見えます。ちなみに「お菊さん」は当時フランスでヒットしたちょっと誇張された日本観を書いた小説のタイトルでもあります。先日のゴッホ展ではゴッホがこの本から影響を受けたとも紹介されていました。
 参考記事:ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 (東京都美術館)

「ラパンの壺No.12」
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朝香宮邸に携わったアンリ・ラパンが器の形を手がけた作品。シンプルながらも優美な雰囲気が漂います。

「煙草入れ」
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これは1925年のアール・デコ博のモニュメントを縮小して煙草入れにしたもの。アール・デコらしい美しさがあります。

「ダンサーNo.1」
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オートクチュールが流行った頃の作品。服もアール・デコ風で非常に華美な印象を受ける逸品。

「ラパンのブランケット灯 No.6」
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このシンプルでありながら豪華な印象を受けるのが最高に素晴らしい!

他にも素晴らしい作品ばかりで、この章はかなりの満足度でした。

<第4章 現代のセーヴル 1960-2016>
最後はつい昨年までに作られた品々のコーナーで、ここは1点だけ撮影可能でした。やはり現代でも有名作家に協力を求めるスタイルが続いているようで、様々なアーティストによる作品が並んでいました。

草間彌生「ゴールデン・スピリット」
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ビスキュイに鍍金した作品。キュクロプスを思わせる一つ目ですが、どこか可愛さがあるようなw 目が日の丸のようにも観えましたw

この章にはピエール・スラージュによる「スラージュの壺」という非常に美しい作品もありました。モダンなシンプルさがあり、好みです。また、エットレ・ソットサスの円筒と球を組み合わせた白と金の色合いの作品も先進的で建築のような造形が面白かったです。他にはダダの創始者の1人であるアルプが考案した「アルプの壺」も優美で見どころと言えそうです。
 参考記事:倉俣史朗とエットレ・ソットサス (21_21 DESIGN SIGHT)


ということで、まだまだ進化し続けているセーヴルを詳しく知ることができました。一番美味しいところを撮影できたのも満足です。磁器や陶器に興味がある方にお勧めの展示です。

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