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織物以前 タパとフェルト 【LIXILギャラリー】

10日ほど前の土曜日に、京橋のLIXILギャラリーで「織物以前 タパとフェルト」を観てきました。この展示は撮影することができたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

DSC05270.jpg

【展覧名】
 織物以前 タパとフェルト
 Early Cloth Tapa and Felt 

【公式サイト】
 http://www1.lixil.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_003846.html

【会場】LIXILギャラリー
【最寄】京橋駅(東京)

【会期】2017年12月27日(木)~2018年02月24日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は織物の技術が生まれる以前から伝わる原初の布である「タパ(樹皮布)」と「フェルト」についての展示です。タパについては南太平洋などに伝わっているそうで、それについて30年以上通い続けて調べている福本繁樹 氏が集めた品が並び、フェルトについては主に東南アジアで長野五郎 氏らが集めた品が並んでいました。小さい会場ですが合わせて60点程度の品がありましたので、展覧会の構成に従って写真を使ってご紹介しようと思います。


<南太平洋のタパ>
まずは南太平洋に伝わるタパについてのコーナー。タパはハワイやタヒチなども含めて南太平洋に広く伝わった樹皮製の布のことで、カジノキなど桑科の植物の皮が使われるようです。タパは毛布のように厚くしたり、絹のように薄くしたり、硬さも自由に作れることからその用途は幅広いらしく、衣料を始め壁紙や敷物、寝具、テーブルクロスなどなど生活のあらゆる場面で使われているようです。また、多彩な染料によって装飾も可能な為、結婚式や葬儀、お祭りといった神聖な儀式での用途もあるらしく、まさにタパとと共に生活している感じです。なお、元々「タパ」はポリネシアの一地域での呼び名だったようですが、現在では樹皮布の総称として使われているようです。

こちらがタパ。パプア・ニューギニアの品です。
DSC05138.jpg
十字模様がつけられています。意外と和紙のような質感に思えます。

こちらもパプア・ニューギニアのタパ。
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かなり大型で模様も複雑です。最初に黒で彩色した後に赤で彩色しているようです。抽象画みたいですが、神話や伝説をモチーフとしているそうで、氏神の由緒や誇りを身にまとうことになるため模様に関する伝説などは秘伝となっているようです。

こちらはインドネシアのタパ。
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墓場の旗として用いられるそうです。抽象化されてるけど船に乗った人かな??

こちらはラウ群島モゼ島の肩掛け
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幾何学的な模様がモダンな印象。軽くて紙のような仕上げになっているそうです。

この近くにはサモアのタパなどもありました。サモアはフィジーやトンガから伝わってきたそうです。

こちらはインドネシアのボルネオ島カリマンタンに住むダヤク族の貫頭衣
DSC05173.jpg
これは不思議な文様で何を表しているのか分かりませんがドラゴンみたいに見えました。

こちらはトンガでガトゥと呼ばれるタパ
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これは寝具らしく毛布よりも暖かいのだとか。、

こちらもトンガのガトゥ(タパ)
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拓本技法で摺りだした模様を手描きでなぞって描いているそうです。月と太陽があるので1日の天体の動きでしょうか。


<タパ作りの道具と原料>
続いてはタパ作りの道具と原料についてのコーナー。

こちらが原料となるカジノキの木と皮。
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貝殻で外皮を掻き削って取った内皮がトゥトゥという原料(写真で渦状になっているやつ)となるようです。

こちらはフィジーやサモアの叩き棒
DSC05182.jpg
これを使ってなめすのかな。

こちらは色を染める時に使う型紙と刷り見本
DSC05189.jpg
単純化されている文様ですが、櫛やシャコ貝、コマドリの骨など様々なモチーフがあるようです。

こちらは型板の「クペシ」と刷り見本
DSC05197.jpg
結構複雑な文様もこうした型板でつけているようです。

こちらは色染めに使う染料。
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マングローブの樹皮やウコン、煤、赤土などが使われているようです。赤っぽいのと黒っぽいのが多い理由が分かった気がします。

これはバヌアツ共和国の編布「チップ」
DSC05248.jpg
衣料にしか見えませんが、貨幣としても使われることがあるそうです。

この他にも模様が素晴らしいタパがいくつもありました。


<東西アジアのフェルト>
続いてはフェルトのコーナー。フェルトは獣毛を重ねて、水分・熱・振動・圧を加えたり酸やアルカリを使って圧縮してシート状にしたものだそうで、自然発生的に縮じょうした獣毛からヒントを得て発達されていったと考えられるようです。そうした圧縮フェルトが起源となったようですが、他にも織フェルトや編フェルトなどの技術も発展したそうで今でもフェルトは広く使われています。

こちらはトルコのフェルトである「ケチェ」の敷物「ハル」
DSC05228_201801011728282d9.jpg
かなり色鮮やかで青や黄色なども使われ多彩な技術が見て取れます。天然染料を使いアウトラインを置いて区切られた枠の中にそれぞれの色をはめ込むように染めているそうです。

フェルトは少なくて、数点程度でした。

<フェルト作りの道具>
最後はフェルト作りの道具のコーナー。ここはそれほど点数はありませんでした。

こちらは綿打ち弓と木槌
DSC05229.jpg
綿打ち弓は羊毛をほぐす作業に使うらしく、縮れのある羊毛を綿状にするためには木綿を扱う時よりも強い大きな反発力が必要となるようです。


ということで、全く知らなかったタパという繊維とフェルトについて詳しく知ることができました。ちょっとプリミティブな雰囲気がありつつ独自の文化の発展が面白い展示でした。この施設は無料で観覧することができますので、京橋・銀座に行く機会がある方は気軽に寄ってみるのもよろしいかと思います。

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