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めでたい北斎~まるっとまるごと福づくし~ 【すみだ北斎美術館】

昨年の中頃に、両国の すみだ北斎美術館で「めでたい北斎~まるっとまるごと福づくし~」を観てきました。なお、この展示は前期・後期に分かれていて私が観たのは前期の内容でした(この記事を書いた時点で既に後期の内容となっています。)

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【展覧名】
 開館一周年記念 めでたい北斎~まるっとまるごと福づくし~

【公式サイト】
 http://hokusai-museum.jp/modules/Exhibition/exhibitions/view/339

【会場】すみだ北斎美術館
【最寄】両国駅

【会期】2017年11月21日(火)~2018年1月21日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
結構お客さんがいましたが、自分のペースで観ることが出来ました。

さて、この展示は すみだ北斎美術館の開館1周年を記念したもので、北斎とその一門によるおめでたい画題の作品を集めたものとなっています。その画題は多岐に渡り、4章構成でジャンルごとに紹介されていましたので、それに沿って簡単にご紹介しようと思います。なお、まだこの美術館自体については当ブログでご紹介したことがないので、次回の記事で常設と合わせて書こうと思います。


<1章 めでたい神様>
まずは七福神などおめでたい神様を描いた作品が並ぶコーナーです。

[七福神オールスターズ]
この小コーナーには七福神を描いた作品が並び、宝船に乗った七福神といった如何にもという作品などもあります。この章でまず面白かったのは魚屋北渓による「見立七福神」で、この絵には直接に七福神は描かれておらず、各神様のアトリビュート(持ち物)が並んでいます。何がどの神様を表しているのか当てながら観るのも楽しかったです(この作品は前期のみの展示)
また、ここには今回のポスターにもなっている葛飾北斎の肉筆「布袋図」もありました。(これも前期のみ) その布袋の姿も面白いですが、漢画風の岩や背景の山に遠近感があるなど、技術的な面でも興味深かったです。

しばらく先には定規とコンパスで達磨や寿老人を描く方法を描いた「略式早指南」などもありました。これってキュビスムにも通じるかも?? 北斎の発想の凄さに驚かされます。

他には仏教の仏様や様々な姿の七福神などがあり、気になったのは葛飾北雲と魚屋北渓がほぼ同じ図柄を描いた「北雲漫画」と「北渓漫画」でした。同じ一門だけあってそっくりに布袋が描いてありましたが、北雲のほうがやや丸みを帯びているなど若干の違いも見比べることができました。

[神様オンパレード]
こちらも神様仏様を描いた作品の並ぶコーナーです。こちらは点数が少なくて、一門の作品が中心かな。北斎の作品はやはり先程と同様の「略式早指南」等がありました。


<2章 めでたいシンボル>
続いてはおめでたい生き物や話など幅広いモチーフのコーナーです。会場内には亀、兎、海老、鯉、イノシシ、コウモリ、牡丹、ハマグリなどの凧が飾られていました。

[めでたい生き物]
ここには鶴や亀といった長寿で有名な生き物の他に、蛇、龍、鶏(中国語のヂィという発音が吉の音に似ている)、虎、兎(子孫繁栄)、海老(長寿)、アワビ(長寿)などが描かれた作品がありました。結構、鶏のように中国語の語感でめでたいとされる風習って色々あるかもと思いながら観ていました。かわほり(コウモリの古い呼び名)なんかも中国語で「蝙蝠」と「偏福(福が寄ってくる)」の発音が似てるので縁起物とされています。また、猿と蜂を一緒に描いた作品があり、これを中国語で発音すると出世を意味する「封」に似た響きになるそうです。 日本人の感覚だけだとこの辺の由来はちょっと分かりづらいですねw

他には大黒様のお使いである白鼠や獅子、麒麟、鳳凰などもありました。その中で気になったのが北斎の描いた鰻で、かなり大胆に描かれ千客万来と書いてありました。鰻はうなぎのぼりってことで縁起物ですw

[めでたい草木]
ここは点数少なめですが、富貴を意味する牡丹や成長の早い竹、「吉」が含まれている桔梗などを描いた作品があります。見た目、生態、言葉遊びみたいな感じで由来も様々ですね。

[めでたいお話]
ここはハガキより一回り大きいくらいの小さめの作品があり、舌切雀や能の「高砂」を主題にした作品がありました。舌切雀は悪い爺さんのほうは無茶苦茶な目にあってたはずですがw

[めでたいバラエティー]
ここは相撲、綱引き、貝合せなどのイベントを主題にした作品がありました。相撲は神事だし、貝合せは結婚を想起させるかな。


<3章 めでたい新年>
続いては新年に行うめでたい行事や芸能についての章です。

[新年のならわし]
ここにはまず北斎の「井戸端の美人」という作品があったのですが、これがちょっと最初意味が分かりませんでした。というのも、朝日を観ながら水を汲む女性が描かれているのですが、それのどこが縁起が良いのかサッパリわかりませんでした。しかし実はこれは当時の習わしから来るもののようで、元旦は井戸で水を汲むまで人に会わないようにして、会っても話さないという風習だったようです。この最初の水は若水といって邪鬼を払う効果があるのだとか。若水は聞いたことがあったけど、そんな風習があったとは勉強になりましたw

他には門松など今でも行われている習わしを描いた作品や、小松引きという小さい松を引き抜く宮廷行事を描いた作品もありました。宮廷風の女性たちも描かれていて中々華やかですが、この風習も今では観ることが滅多にないかも。(小松引きの絵は複数ありました)

[新年の芸能]
こちらは点数少なめですが、猿回しを描いた作品などがありました。


<4章 めでたい場所>
最後は今で言うパワースポットを描いた作品のコーナーです。

ここには北斎の「目黒不動尊詣」がありました。滝の周りで遊んでいる子供と見守る母親が微笑ましい一枚で、この水を浴びると病気が治るとされていたそうです。また、他で面白かったのが昇亭北寿の「東叡山 不忍池 弁財天図」で、これは上野の不忍池を描いたものですが背景が現在と全く違ってすぐ近くに山と海が描かれていました。東京が如何に昔と違う姿をしているのかが分かる一枚でした。


ということで、色々と美術知識や昔の風習なども知ることができる展示でした。私は旧年中に観てしまいましたがお正月に相応しい内容ではないかと思います。北斎や一門の作品が常に観られるので、北斎好きの方は一度はこの美術館に足を運ばれてみるのもよろしいかと思います。

おまけ:
この展示のラストでおみくじを引くことができます。前にいた3人組のおばちゃんたちは全員大吉だったようで、大吉しかでないと連呼してましたが、私は小吉、連れも中吉でしたw
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