関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

地衣類―藻類と共生した菌類たち― 【国立科学博物館 日本館地下】

今日も写真多めです。前々回、前回と国立科学博物館の特別展をご紹介してきましたが、同じ国立科学博物館の日本館の地下で「地衣類―藻類と共生した菌類たち―」という展示も観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

DSC06583.jpg

【展覧名】
 地衣類―藻類と共生した菌類たち―

【公式サイト】
 https://www.kahaku.go.jp/event/2017/12lichen/

【会場】国立科学博物館 日本館 地下1階 多目的室
【最寄】上野駅

【会期】2017年12月19日(火)~2018年3月4日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
こちらの展示は空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は「地衣類」という菌類&藻類を紹介する科学館らしい展示となっています。正直、地衣類の知識はゼロで学生の時に聞いたような気がする程度でアンデス文明展のオマケとして観に行った感じでしたが、意外にも奥深い世界で好奇心が刺激される内容となっていました。冒頭に書いたように撮影可能となっていましたので、詳しくはコーナーごとに写真と共にご紹介していこうと思います。


<1.地衣類とは>
まずはそもそも地衣類って何だ?というところから説明されているコーナー。ここはボード中心です。
地衣類は○○コケという名前が多いのですが、実は苔ではありません。日本語ではコケを「小毛」または「木毛」とも書くので、それが由来になって紛らわしい感じです。 では地衣類は何かというと、藻類と菌類が共生して「地衣体」と呼ばれる構造になっているもので、要するに菌類の一種です。菌類は10万種ある中で地衣類は2万種程度を占め、日本では1800種程度の地衣類が存在するようです。藻類が光合成して作った糖を菌類が利用し、菌類は乾燥や紫外線から藻を守る共生となります。地衣化すると自給自足のように独立した栄養系を確立し、単独の菌類では作らないような化学物質を作ったりします。その為、単独では生きていけないような所でも生存できるようになり、極限状態のような場所にまで地衣類は存在しています。むしろ適合する藻が見つからないと枯死するみたいなので、単独では生きられない生態系のようです。 この後、そうした変わった地衣類の生態が分かる展示となっています。

<2.地衣類の色々>
ここは様々な地衣類の標本が並ぶコーナーです。実際に観るとどんなものかよく分かります。

[針葉樹林帯の地衣類]
まずはモミの木やカラマツといった針葉樹林で観られる地衣類のコーナー。

こちらはナメラカブトゴケという地衣類。
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見た目は木の葉みたいであまり菌類といった印象を受けません。

こちらはナガサルオガセ
DSC06601.jpg
先程とまったく異なる形態で、およそ同じ種類の生物とは思えません。何かモコモコしてるしw

こんな感じで、全く色も形も違う生態となっているようです。
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木の皮かと思うようなものもあるので、意外と目にしても気づいていないだけなのかも。

[高山の地衣類]
続いて高山の地衣類。高山では日本も世界と共通した地衣類が多く観られるそうで、地球が氷期だった頃に各地で分布を広げた種が暖かくなった後に高山に残ったと考えられるそうです。もしくは遠く離れた高山や極域圏の間で現在も地衣類が移動している可能性も示唆されているのだとか。

こちらはアオウロコゴケ
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確かに青い鱗のように見えます。きのこを作る担子菌の地衣類らしいので、苔よりきのこと似た生態なのかも。

こちらはアカウラヤイトゴケ
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これもよく見るとちょっと菌類っぽさが分かるような気がします。こういうのって葉っぱが腐ったのかと思ってましたが地衣類なんですね。

[熱帯~亜熱帯の地衣類]
続いては熱帯の地衣類。熱帯は湿度が高いので多様な地衣類が生育しているそうで、いまだに毎年多くの新種が見つかるなど研究も発展途上のようです。

こちらは葉っぱの上に多様な地衣類が混在しているもの。
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「生葉上地衣類」と呼ばれるようで、熱帯地域ではこうした混在は珍しくないのだとか。こういう葉っぱの染みみたいなのは地衣類だったんですね。

[街なかの地衣類]
続いては我々の生活にも溶け込んでいる地衣類のコーナー。街路樹や石垣などにも地衣類は存在するそうです。
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こんな白っぽいのが多いんじゃ、普通に生活してて気づかないのは当然と言えそうw

これは瓦屋根に張り付いたヤマキクバゴケ
DSC06648_20180115011712fa1.jpg
瓦は安定しているので格好の生育場所なのだとか。地衣類は光合成さえできれば土なんか無くても生きていけるんですね。

こちらは逆にエナガという鳥が地衣類を巣に使っている様子。
DSC06649.jpg
カモフラージュのためにこうした地衣類を巣に使うようです。自然の共存関係って奥深いですね。


<3.スタジオ地衣類>
こちらは体験コーナーで、擬態マントという蛾の模様から作った布地を使い、この壁の模様の中に溶け込むという擬態体験をします。

DSC06624.jpg
マントは6種類でモニターで自分の姿を確認したり、撮影している人も多かったです。

ちなみにこの中に8匹の蛾が隠れています。
DSC06625.jpg
ウォーリーを探せ並に難しいですが、私は全部見つけることができました。

一部分のアップ。
DSC06629.jpg
蛾が隠れていいるのが分かりますか? 上の方にいます。

<4.特殊環境の地衣類>
続いては極域や砂漠、重金属汚染地域など他の生物には生育が困難な場所で育つ地衣類のコーナーです。

こちらはテマリチイという地衣類
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オーストラリアやタスマニア、ニュージランドの乾燥地帯に分布するそうで、風に吹かれて転がっていくようです。観た感じかなり乾燥しているけど、水が少なくても生育できるのか気になります。

こちらはクジラの化石についた地衣類
DSC06662.jpg
そういえばクジラには苔みたいなのがついてたりしますが、地衣類もくっついてるんですね。 地衣類は陸地だけではなかった… しかも南極w

こちらはイオウゴケ
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なんと硫黄の多い温泉地などでも生育する地衣類があるようです。たくましいにも程があるw
他にもきのこの上とか地衣類の上に生える地衣類とかもあり、恐るべし生命力を感じます。

<5.地衣類に含まれる化学物質>
続いては地衣類の中に含まれている化学物質についてのコーナー。
わかっているだけでも700種類以上におよぶ化学物質を作っているようで、そのうち650種類は地衣類に特有なもののようです。中には人間の役に立つものまでありました。

こちらはリトマス試験紙に使われるリトマスゴケ
DSC06672.jpg
日本にはリトマスゴケは無いようですが、代わりにウメノキゴケで同様のものが簡単に作れるようです。ウメノキゴケをアンモニアを薄めた水と僅かなオキシドールを入れて1ヶ月ほど浸しているとリトマス原液になるのだとか。意外過ぎる用途で驚きました。

こちらはウメノキゴケとマツゲゴケで染めたウール
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地衣類は最も有用で最も知られていない染料と言われているそうで、多くの地衣類は良質な染料となるそうです。この見本でも分かるように、元の色からは想像もつかないような鮮やかな色を作れるようで、これも驚きでした。

こちらは紫外線によって光る地衣類と光らない地衣類を組み合わせて作った一種のアート。小さな覗き窓から中を覗いて光を照らします。
DSC06679.jpg
光を照らす前は全部同じに見えますw

こちらが光を照らした後。
DSC06680.jpg
青白く光るのがタイワンサンゴゴケ、白っぽいのがトキワムシゴケ、黄色いのがゴンゲンゴケという地衣類だそうです。見事にニコニコマークとひまわりが浮かんできました。これもまた不思議な生態ですね。


<6.地衣類と人の暮らし>
最後は地衣類と人の暮らしについてのコーナーです。


こちらはカラタチゴケの一種を食用としたもの。
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え、食べられるの!?と思いましたが、きのこと同じ菌類だしモノによるのかなw 中国で炒め物に使う他、結婚式の時も食べたりするそうです。

こちらはマンナチイという地衣類
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出エジプト記のモーセの物語で、天からマンナが降ってきてそれを食べて飢えを凌いだとされるそうです。神話にまで出てくる地衣類! 何だか地衣類を知らなかったのが申し訳ないくらいですw

こちらは地衣類を使った香水
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染料や食用を観た後なので、これくらいではもう驚きませんが本当に様々な所で使われているようです。


ということで、地衣類の魅力を知ることができました。身近なのに全然知らない世界があったことに驚くと共に地衣類の凄さに感服です。全然知らなかった私でも楽しめましたので、国立科学博物館でこれからアンデス文明展を観ようとしている方はこちらもセットで観るのもよろしいかと思います(常設展の一部なので、特別展のチケットで観られます)


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