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野性展:飼いならされない感覚と思考 【21_21 DESIGN SIGHT】

今日も写真多めです。前回ご紹介した東京ミッドタウンの展示を観た後、すぐ近くの21_21 DESIGN SIGHTで「野性展:飼いならされない感覚と思考」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

DSC08040.jpg

【展覧名】
 野性展:飼いならされない感覚と思考

【公式サイト】
 http://www.2121designsight.jp/program/wild/

【会場】21_21 DESIGN SIGHT
【最寄】六本木駅・乃木坂駅

【会期】2017年10月20日 (金) ~ 2018年2月4日 (日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は「野性展」という一風変わったタイトルとなっています。今回の展示のディレクターは、現代は理性や合意性ばかりが唱えられているものの、その一方で野性の感覚というのは私たちの中にも潜んでいて「まだ飼いならされない心の領域」が今まさに大切になっていると考えてこの展示を企画したようです。展示品は多岐に渡り、様々な表現を通じて野性の発見方法を紐解くという趣旨となっていましたので、詳しくは気に入った作品の写真を使ってご紹介していこうと思います。

こちらは丸石神と呼ばれる石。
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これは山梨の笛吹川の川沿いの至る所にあるそうで、自然で丸くなった石を神聖なものが宿っていると考えて神として祀ったものだそうです。まさに自然崇拝的で原始的な印象を受ける石でした。

このあたりにはこうした丸石神の写真や、ほとんどただの木にしか観えない熊の像などが並んでいました。

「Finding Perceptions aircode」
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こちらは南方熊楠のいう「縁起」を視覚化したもので、お客さんの動きによって映像が変わるという作品です。解説に脳神経細胞に電気信号が伝わるような映像と書かれていましたが、まさいそういった感じかな。南方マンダラや華厳経のインドラの網にも見えるとも書いてありましたが、ノイズが走って反応する様子は人の頭の中を覗いているような感じが強かったです。
 参考記事:南方熊楠-100年早かった智の人- (国立科学博物館 日本館1階)

「あなたに続く森」「南方熊楠の道具」
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この辺には南方熊楠に関する作品がありました。ガラスでできた菌類らしき作品や南方熊楠の道具などが並びます。南方熊楠は植物採集で有名な人物ですが、心に野性を取り戻すことで新しい発見や発明をなすことができると考えていたようです。

こちらも南方熊楠関連の品々。
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科博の南方熊楠展を観てからこの展示を観たので一層面白く感じました。

こちらは南方熊楠の写真。
DSC08103.jpg
フィールドワークをしていた森かな? 野性そのものといった風貌ですw

こちらも南方熊楠。
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ただのオッサンにしか観えませんが、非常に賢い人です。禅画でこういう人がよく出てくるけど、この人もどこか達観していたのかも。

鈴木康広「水の切り株」
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こちらは天井から結露が滴って切り株型の容器の水面に波紋が起こる作品。まるで年輪のように見えるのが面白いですが、これのどこが野性なんだろう?と思っていたら窓の外に似た作品がありました。

鈴木康広「始まりの庭 水の切り株、土の切り株」
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こちらは10年前には先程の「水の切り株」だった作品で、屋外に保管されて居たために草が生い茂る切り株となったようです。作者の手を離れて10年越しに野生化した姿が観られるというのは面白い発想でした。

黒田征太郎「無題」
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イラストレーターでグラフィックデザイナーの黒田征太郎氏はひたすら絵を描いているようで、ここには沢山のメモ帳をまとめて本のようにした作品が並んでいました。

中はこんな感じでひたすらに絵が描かれています。これとかホテルのメモ帳だしw
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黒田征太郎 氏はこうして南方熊楠の腹稿のように見聞や思考を書き出すことで制作されるそうです。ゆるい雰囲気ですが、知の巨人とやってることは同じなのかも。

こちらは黒田征太郎 氏が描かずにはいられない心境を語ったもの。
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小学生の時に1+1が2になるのは分かるけど、何で足さないといけないのか?と質問して殴られたエピソードが書かれていますw エジソンの子供時代もそんな話があったような…w

続いては「かわいい」の考古学ということで、日本的な概念である可愛いをテーマにした作品が並んでいます。可愛いは魅力的な野性の表現と言えるのだとか。

日本の古代からの可愛いと言えば土器、土偶、はにわといった所でしょうか。
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特に土偶は可愛さと力強い野性が感じられます。毎度この造形を数千年前に作っていたというのに驚かされます。

こちらはコルゲンコーワのケロちゃんとコロちゃん。右は二代目で、私はこちらのほうが好きです。
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蛙は縄文時代には神話にも出てくる生き物、近代では鳥獣戯画など様々な作品のモデルとなりましたが、ここでは可愛い造形です。脈々と現代まで愛されてるんですね。

茂木多喜治「這い熊」
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この辺は木彫りの熊がたくさんありました。元々は北海道八雲町で尾張徳川家第19代当主 徳川義親が運営していた農場で農作業が出来ない冬季の副業として作られるよういなったそうです。この素朴さと熊の姿は野性そのものですね。手作り感が凄いw

田島征三「獣の遠吠え」
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ツクシのようにみえるのはモクレンの未成熟な実だそうで、かなりの数が集まって渦を巻くように見えます。1本1本の力強さと共に渦巻き模様が圧倒的な雰囲気でした。

エルンスト・ガンペール「139/08//200」
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似た名前の作品が3点あったので別物のタイトルかもしれませんが、いずれもこうした木を薄くなるまでくり抜いた作品でした。年輪が浮かんでいる様子や木の本来の形も残っているようにも見えて加工品ながらも野性味を感じられました。

こちらはオセアニアやアフリカの仮面。
DSC08234.jpg
前回の記事では日本の仮面を被った儀礼の写真をご紹介しましたが、やはり仮面には民俗が色濃く反映されてプリミティブな要素が高密度で詰まっています。猫や妊婦の身体を象った仮面や、胴体よりも長い仮面などどれも個性的です。


ということで、中身も変わった展示でしたが野性というだけあって力強く心を動かす作品が結構あったと思います。この展示は既に会期末となっていますので、気になる方はお早めにどうぞ。
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