神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展 【Bunkamura ザ・ミュージアム】
10日ほど前の金曜日の会社帰りに、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで「神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展」を観てきました。

【展覧名】
神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展
【公式サイト】
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_rudolf/
【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅
【会期】2018/1/6(土)~3/11(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
混んでいるというほどではありませんでしたが、思ったより多くの人で賑わっていました。
さて、今回の展示は16世紀の神聖ローマ帝国の皇帝であり絵画を始め様々な文化・芸術を庇護したルドルフ2世についての内容となっています。ルドルフ2世はちょっと変わり者で政治にはあまり興味を示さなかったのですが、文化面では大きな足跡を残していて やや大袈裟に言えば現代のテクノロジーの数々もこの皇帝がいなかったら土壌が生まれていなかったかも?と思われるほど歴史上で重要な人物です。展示はその生い立ちからコレクションや歴史的背景などを紹介していましたので、章立てに沿って簡単に振り返ってみようと思います。
<プロローグ ルドルフ2世とプラハ>
まずはルドルフ2世と遷都したプラハについてのコーナーで、最初に12分ほどの映像コーナーがあります。ルドルフ2世はハプスブルク家に生まれ、11歳から19歳まで母の兄であるスペイン王フェリペ2世の宮廷で過ごしました。フェリペ2世も様々な美術品のコレクターで、そこにはヒエロニムス・ボスやティツィアーノの作品などもあり、幼き頃のルドルフ2世もその影響を受けたようです。やがてルドルフ2世が皇帝になると自身も美術品だけでなく世界中の珍奇なものを集めていくことになります。また、ルドルフ2世は都をウィーンからプラハに遷都した人物でもあり、その背景には宗教改革でカトリックとプロテスタントが争う時代だったことや、自身がボヘミア王だったことなどが挙げられるようです。プラハに移ってからは錬金術師や画家などを都に住ませ、文化的に発展を遂げていきました。
最初の方にルドルフ2世の肖像が展示されていました。(これは東急のショーウィンドウの写真です)

ハプスブルク家は顎が出ているのが特徴で、ルドルフ2世もその特徴が出ているように思います。これは30歳頃の姿なのだとか。
他にも父のマクシミリアン2世やフェルディナント1世~3世、中にはローマ皇帝のオクタヴィアヌス・アウグストゥスの肖像などもありました。ハプスブルク家はローマ皇帝から繋がっているという自負があったようです。
このコーナーの入口には戦国時代の「泰西王侯騎馬図屏風」の複製もありました。この屏風の左端でトルコ王と戦っているのがルドルフ2世と考えられるのだとか。そう言えば以前本物を観た時にそう言ってたなと思い出しながら観ていました。国内だけでなくイスラーム勢力とも戦うとは大変な時代ですね。
参考記事:南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎 (サントリー美術館)
<第1章 拡大される世界>
続いては世界情勢を感じる作品や天文学の品々が並ぶコーナーです。
まずはバベルの塔を描いた作品が2点ほど並びます。バベルの塔は神の怒りによって言語が分けられる話を題材にしていますが、この時代の宗教紛争を暗に示しているようです。ここにあったのはそれほど大きい塔には見えないかなw ブリューゲルのバベルの塔を去年観たばかりのせいかもしれませんがw ちなみにブリューゲルの絵も元々はルドルフ2世のコレクションだったようです。
この辺にはフランドル絵画がいくつか並んでいました。イタリアではルネサンス後のマニエリスムくらいの時代で、イタリアっぽいフランドル絵画なんかもあったりします。
そして少し先には天文学に関するコーナーがあります。前述のようにルドルフ2世は錬金術にのめり込んでいましたが、この頃の科学とオカルトは線引がなく、ついでに宗教ともくっついているような時代です。星座や天動説の本、ガリレオの本、ガリレオの望遠鏡(複製)、ヨハネス・ケプラーの本(複製)やケプラーの世界地図(複製)など、天文学の世界ではレジェンド級の学者の品も並びます。天動説と地動説の折衷みたいな説もあったそうで、それも面白いです(地球以外は地動説みたいな) ケプラーはブラーエに招かれてルドルフ2世に仕えていたようで、世界地図の緻密さには驚かされます。こうした学者を庇護していたから天文学や物理学は発展していったと思うとルドルフ2世の功績は大きいのでは。
<第2章 収集される世界>
続いては世界中から珍奇な動植物を集めた「驚異の部屋(クンストカンマー)」等に関するコーナーです。クンストカンマーはプラハの居城にあったのですが、ルドルフ2世の後の時代の遷都や戦乱で失われてしまいました。ここにはかつての様子を伺わせる品々が並んでいます。
まずはルーラント・サーフェリーによる動物画や植物画、昆虫画などが並びます。非常に細密かつ写実的に描かれていて図鑑のような趣きの作品(前向き、後ろ向き、横向きの姿を描いた感じ)もありますが、廃墟を背景に神話のオルフェウスと共に動物を描いている幻想的な作品などもあり、しっかりした芸術作品となっています。また、ここには花のブリューゲルことヤン・ブリューゲル(父)の作品もあり、様々な季節の46種類もの花が描かれていました。こうした博物的かつ超現実的な作風はこの時代独特のものかもしれません。ルドルフ2世は大航海時代で世界中から集まってくる珍しい動植物を動物園や植物園にしていたようで、そこで芸術家が目にして描いていたようです。ルドルフ2世のコレクション熱の生んだ芸術かな。こういう研究も科学の礎と言えそう。
確かこの作品も2章か3章にありました。(これは東急のショーウィンドウの写真です)

かなり多くのモチーフが並んでいて1つ1つは写実的だけど全体的には超現実的な印象を受けます。
<第3章 変容する世界>
続いてはルドルフ2世の集めた品々から生まれた芸術などについてのコーナーです。ここは2章と内容的に似ていた気がします。
ここには今回のポスターにもなっているアルチンボルドによるルドルフ2世の肖像画がありました。詳しくは過去のアルチンボルド関連の記事をご参照頂ければと思いますが、果実などの植物を寄せ集めて人の顔にしたもので、ハッキリ言うとルドルフ2世には似てませんw しかし季節を超えた植物の集合体は皇帝の権力を示していて、ルドルフ2世もこうした絵を好んでいたようです。アルチンボルドの追随者の作品もいくつかありました。
参考記事:アルチンボルド展 (国立西洋美術館)
他にもこうしたトリックアート的なものがあり、一見すると山を描いた風景画だけど横向きにすると聖フランチェスコの顔に見える作品などもあります。また、ボスやデューラーの作風に似せたものなどもあり、奇想から写実まで様々な絵画をコレクションしていたことが伺えます。大型の作品の中では農民たちのワイン造りの絵なんかが当時の様子がよくわかって面白いかな。これは1ヶ月1枚の12ヶ月セットのうち9月らしく、こうしたモチーフにも皇帝の収集癖が出ているようにも思いました。
その先にはルドルフ2世の旧蔵品が並んでいました。ハンス・フォン・アーヘンという画家の作品の何枚かがこの章に展示されているのですが、特にルクレツィアや少女を題材にした作品は目を引きます。そしてハンス・フォン・アーヘンはルドルフ2世の美術収集のアドバイザーだったようで、イタリアの滞在経験をもとに様々な画家を宮廷に推薦して宮廷に招いたようです。これによってプラハが文化的中心地になったので、ハンス・フォン・アーヘンは自身の作品以外の功績も大きいようでした。
もう1つここで見どころと言えそうなのがディルク・ド・クワード・ファン・ラーフェステインの「ルドルフ2世の治世の寓意」で、これは戦争の神マルスの姿をした皇帝が部屋の外から入ってくるトルコ風の男をブロックしている様子が描かれ、ルドルフ2世がトルコと戦っていたことを暗示します。また、その手前には正義・豊穣・平和の女神が描かれ、学問の神がその3人にマルス(皇帝)が近づけないようにしています。さらに学問の神と正義の神は鷲を中心に金の鎖で繋がれているなど、様々な寓意が込められていました。学問が戦争を遠ざけているようにも思えますが、実際のルドルフ2世は学問の庇護もしているので、ちょっとその辺の解釈がよく分かりませんでしたが当時のルドルフ2世の権勢と方針が伺えるようでした。
<プロローグ 驚異の部屋>
最後はクンストカンマーの絵画や資料以外の品のコーナーです。ここには工芸品が数多く並び、ガラス、金銀、珊瑚、貝などを使って杯や箱、ボウルなどに加工しています。貝の元の形を上手く活かして杯にしていたりするので、その創意も楽しめます。また、この頃にはカラクリ時計も作られていたようで、象の形の時計は目が動いて乗っている人も周るという仕掛けがあったようです。これは実際に観てみたいけど、静止状態での展示です。他にも持ち運び式のオルガンにバックギャモンのゲーム盤をくっつけたようなものがあったりと、工芸品も一風変わった品が多いように思いました。
最後の辺りには宝石の原石、ダチョウの卵、一角の角(当時はユニコーンの角とされた)、望遠鏡、天球儀、錬金術の本などなど、本当に珍しい品ならオールジャンルで集めていた様子が伺えます。これらをまとめた目録も展示されていて、管理するのも大変そうでしたw
そんなルドルフ2世ですが、晩年は弟のマティアスに権力を奪われて失意の日々を送ったようです。マティアスの時代には再びウィーンに都を移され、クンストカンマーの品々も大半はそちらに移されました。その後、プラハは戦乱に見舞われてプラハに残ったクンストカンマーは失われたそうで、ルドルフ2世も浮かばれないような残念な歴史となっています。
出口付近に現代の作家フィリップ・ハースによるアルチンボルドの作品を立体化した彫像が並んでいました。ここだけ撮影可能です。

四季の寄せ絵が勢揃い! 去年アルチンボルド展を観た人は特に楽しめるのでは?
こちらはコロッサス

正面から観ると顔っぽいけど斜めの角度だとちゃんと風景っぽいのが面白いです。3Dだと観る角度の違いを楽しめます。
ということで、多岐にわたるコレクションとルドルフ2世の偉業を知ることのできる展示でした。去年はアルチンボルド展があったし今年はブリューゲル展があるので、ルドルフ2世について知っておくとその界隈の画家たちの制作背景も知ることが出来るのもこの展示の魅力だと思います。美術ファンなら抑えておきたい展示でした。
おまけ:東急のショーウィンドウ



【展覧名】
神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展
【公式サイト】
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_rudolf/
【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅
【会期】2018/1/6(土)~3/11(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
混んでいるというほどではありませんでしたが、思ったより多くの人で賑わっていました。
さて、今回の展示は16世紀の神聖ローマ帝国の皇帝であり絵画を始め様々な文化・芸術を庇護したルドルフ2世についての内容となっています。ルドルフ2世はちょっと変わり者で政治にはあまり興味を示さなかったのですが、文化面では大きな足跡を残していて やや大袈裟に言えば現代のテクノロジーの数々もこの皇帝がいなかったら土壌が生まれていなかったかも?と思われるほど歴史上で重要な人物です。展示はその生い立ちからコレクションや歴史的背景などを紹介していましたので、章立てに沿って簡単に振り返ってみようと思います。
<プロローグ ルドルフ2世とプラハ>
まずはルドルフ2世と遷都したプラハについてのコーナーで、最初に12分ほどの映像コーナーがあります。ルドルフ2世はハプスブルク家に生まれ、11歳から19歳まで母の兄であるスペイン王フェリペ2世の宮廷で過ごしました。フェリペ2世も様々な美術品のコレクターで、そこにはヒエロニムス・ボスやティツィアーノの作品などもあり、幼き頃のルドルフ2世もその影響を受けたようです。やがてルドルフ2世が皇帝になると自身も美術品だけでなく世界中の珍奇なものを集めていくことになります。また、ルドルフ2世は都をウィーンからプラハに遷都した人物でもあり、その背景には宗教改革でカトリックとプロテスタントが争う時代だったことや、自身がボヘミア王だったことなどが挙げられるようです。プラハに移ってからは錬金術師や画家などを都に住ませ、文化的に発展を遂げていきました。
最初の方にルドルフ2世の肖像が展示されていました。(これは東急のショーウィンドウの写真です)

ハプスブルク家は顎が出ているのが特徴で、ルドルフ2世もその特徴が出ているように思います。これは30歳頃の姿なのだとか。
他にも父のマクシミリアン2世やフェルディナント1世~3世、中にはローマ皇帝のオクタヴィアヌス・アウグストゥスの肖像などもありました。ハプスブルク家はローマ皇帝から繋がっているという自負があったようです。
このコーナーの入口には戦国時代の「泰西王侯騎馬図屏風」の複製もありました。この屏風の左端でトルコ王と戦っているのがルドルフ2世と考えられるのだとか。そう言えば以前本物を観た時にそう言ってたなと思い出しながら観ていました。国内だけでなくイスラーム勢力とも戦うとは大変な時代ですね。
参考記事:南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎 (サントリー美術館)
<第1章 拡大される世界>
続いては世界情勢を感じる作品や天文学の品々が並ぶコーナーです。
まずはバベルの塔を描いた作品が2点ほど並びます。バベルの塔は神の怒りによって言語が分けられる話を題材にしていますが、この時代の宗教紛争を暗に示しているようです。ここにあったのはそれほど大きい塔には見えないかなw ブリューゲルのバベルの塔を去年観たばかりのせいかもしれませんがw ちなみにブリューゲルの絵も元々はルドルフ2世のコレクションだったようです。
この辺にはフランドル絵画がいくつか並んでいました。イタリアではルネサンス後のマニエリスムくらいの時代で、イタリアっぽいフランドル絵画なんかもあったりします。
そして少し先には天文学に関するコーナーがあります。前述のようにルドルフ2世は錬金術にのめり込んでいましたが、この頃の科学とオカルトは線引がなく、ついでに宗教ともくっついているような時代です。星座や天動説の本、ガリレオの本、ガリレオの望遠鏡(複製)、ヨハネス・ケプラーの本(複製)やケプラーの世界地図(複製)など、天文学の世界ではレジェンド級の学者の品も並びます。天動説と地動説の折衷みたいな説もあったそうで、それも面白いです(地球以外は地動説みたいな) ケプラーはブラーエに招かれてルドルフ2世に仕えていたようで、世界地図の緻密さには驚かされます。こうした学者を庇護していたから天文学や物理学は発展していったと思うとルドルフ2世の功績は大きいのでは。
<第2章 収集される世界>
続いては世界中から珍奇な動植物を集めた「驚異の部屋(クンストカンマー)」等に関するコーナーです。クンストカンマーはプラハの居城にあったのですが、ルドルフ2世の後の時代の遷都や戦乱で失われてしまいました。ここにはかつての様子を伺わせる品々が並んでいます。
まずはルーラント・サーフェリーによる動物画や植物画、昆虫画などが並びます。非常に細密かつ写実的に描かれていて図鑑のような趣きの作品(前向き、後ろ向き、横向きの姿を描いた感じ)もありますが、廃墟を背景に神話のオルフェウスと共に動物を描いている幻想的な作品などもあり、しっかりした芸術作品となっています。また、ここには花のブリューゲルことヤン・ブリューゲル(父)の作品もあり、様々な季節の46種類もの花が描かれていました。こうした博物的かつ超現実的な作風はこの時代独特のものかもしれません。ルドルフ2世は大航海時代で世界中から集まってくる珍しい動植物を動物園や植物園にしていたようで、そこで芸術家が目にして描いていたようです。ルドルフ2世のコレクション熱の生んだ芸術かな。こういう研究も科学の礎と言えそう。
確かこの作品も2章か3章にありました。(これは東急のショーウィンドウの写真です)

かなり多くのモチーフが並んでいて1つ1つは写実的だけど全体的には超現実的な印象を受けます。
<第3章 変容する世界>
続いてはルドルフ2世の集めた品々から生まれた芸術などについてのコーナーです。ここは2章と内容的に似ていた気がします。
ここには今回のポスターにもなっているアルチンボルドによるルドルフ2世の肖像画がありました。詳しくは過去のアルチンボルド関連の記事をご参照頂ければと思いますが、果実などの植物を寄せ集めて人の顔にしたもので、ハッキリ言うとルドルフ2世には似てませんw しかし季節を超えた植物の集合体は皇帝の権力を示していて、ルドルフ2世もこうした絵を好んでいたようです。アルチンボルドの追随者の作品もいくつかありました。
参考記事:アルチンボルド展 (国立西洋美術館)
他にもこうしたトリックアート的なものがあり、一見すると山を描いた風景画だけど横向きにすると聖フランチェスコの顔に見える作品などもあります。また、ボスやデューラーの作風に似せたものなどもあり、奇想から写実まで様々な絵画をコレクションしていたことが伺えます。大型の作品の中では農民たちのワイン造りの絵なんかが当時の様子がよくわかって面白いかな。これは1ヶ月1枚の12ヶ月セットのうち9月らしく、こうしたモチーフにも皇帝の収集癖が出ているようにも思いました。
その先にはルドルフ2世の旧蔵品が並んでいました。ハンス・フォン・アーヘンという画家の作品の何枚かがこの章に展示されているのですが、特にルクレツィアや少女を題材にした作品は目を引きます。そしてハンス・フォン・アーヘンはルドルフ2世の美術収集のアドバイザーだったようで、イタリアの滞在経験をもとに様々な画家を宮廷に推薦して宮廷に招いたようです。これによってプラハが文化的中心地になったので、ハンス・フォン・アーヘンは自身の作品以外の功績も大きいようでした。
もう1つここで見どころと言えそうなのがディルク・ド・クワード・ファン・ラーフェステインの「ルドルフ2世の治世の寓意」で、これは戦争の神マルスの姿をした皇帝が部屋の外から入ってくるトルコ風の男をブロックしている様子が描かれ、ルドルフ2世がトルコと戦っていたことを暗示します。また、その手前には正義・豊穣・平和の女神が描かれ、学問の神がその3人にマルス(皇帝)が近づけないようにしています。さらに学問の神と正義の神は鷲を中心に金の鎖で繋がれているなど、様々な寓意が込められていました。学問が戦争を遠ざけているようにも思えますが、実際のルドルフ2世は学問の庇護もしているので、ちょっとその辺の解釈がよく分かりませんでしたが当時のルドルフ2世の権勢と方針が伺えるようでした。
<プロローグ 驚異の部屋>
最後はクンストカンマーの絵画や資料以外の品のコーナーです。ここには工芸品が数多く並び、ガラス、金銀、珊瑚、貝などを使って杯や箱、ボウルなどに加工しています。貝の元の形を上手く活かして杯にしていたりするので、その創意も楽しめます。また、この頃にはカラクリ時計も作られていたようで、象の形の時計は目が動いて乗っている人も周るという仕掛けがあったようです。これは実際に観てみたいけど、静止状態での展示です。他にも持ち運び式のオルガンにバックギャモンのゲーム盤をくっつけたようなものがあったりと、工芸品も一風変わった品が多いように思いました。
最後の辺りには宝石の原石、ダチョウの卵、一角の角(当時はユニコーンの角とされた)、望遠鏡、天球儀、錬金術の本などなど、本当に珍しい品ならオールジャンルで集めていた様子が伺えます。これらをまとめた目録も展示されていて、管理するのも大変そうでしたw
そんなルドルフ2世ですが、晩年は弟のマティアスに権力を奪われて失意の日々を送ったようです。マティアスの時代には再びウィーンに都を移され、クンストカンマーの品々も大半はそちらに移されました。その後、プラハは戦乱に見舞われてプラハに残ったクンストカンマーは失われたそうで、ルドルフ2世も浮かばれないような残念な歴史となっています。
出口付近に現代の作家フィリップ・ハースによるアルチンボルドの作品を立体化した彫像が並んでいました。ここだけ撮影可能です。

四季の寄せ絵が勢揃い! 去年アルチンボルド展を観た人は特に楽しめるのでは?
こちらはコロッサス


正面から観ると顔っぽいけど斜めの角度だとちゃんと風景っぽいのが面白いです。3Dだと観る角度の違いを楽しめます。
ということで、多岐にわたるコレクションとルドルフ2世の偉業を知ることのできる展示でした。去年はアルチンボルド展があったし今年はブリューゲル展があるので、ルドルフ2世について知っておくとその界隈の画家たちの制作背景も知ることが出来るのもこの展示の魅力だと思います。美術ファンなら抑えておきたい展示でした。
おまけ:東急のショーウィンドウ

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