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仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ― (感想前編)【東京国立博物館 平成館】

前回ご紹介した東京国立博物館の法隆寺宝物館を観る前に、平成館で「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ―」を観てきました。かなり見どころの多い展示でしたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

DSC08550.jpg

【展覧名】
 特別展「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ―」 

【公式サイト】
 http://ninnaji2018.com/
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1868 

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅

【会期】2018年1月16日(火) ~3月11日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
混んでいて場所によっては人だかりが出来るような感じでした。とは言え、充実の内容なのでまだまだ人気が出ると思います。特に2/14以降に千手観音が展示されるとさらに混むのは必至だと思います。

さて、今回の展示は京都にある仁和寺の歴史とそこに伝わる名宝を紹介するものとなっています。仁和寺は光孝天皇が仁和2年(886年)に発願し、宇多天皇が仁和4年に完成させた真言密教のお寺です。その後、宇多天皇は出家して仁和寺に入り御室(僧房)を構えたことから皇族ゆかりの寺となり江戸時代末期まで皇族が門跡(住職)を務めました。その為、一際格式の高い寺として様々な名宝や歴史的な遺物が残っているようです。展覧会は5章構成となっていましたので、それに沿ってご紹介していこうと思います。
 参考記事:番外編 京都旅行 金閣寺エリアその3


<第1章 御室仁和寺の歴史>
まずは仁和寺の歴史のコーナーで仁和寺に関する品や古文書などが並んでいます。最初の辺りに宇多天皇が法王になった頃の肖像画がありました。宇多天皇は和歌の才能もあったようですが31歳の若さで出家したようです。この絵ではそれほど若い姿ではないようですが、不動明王が持つような剣を手にして落ち着きと威厳のある姿で描かれいました。
その先には守覚法親王(1150~1202年)に関する品がありました。守覚法親王は後白河法皇の第二皇子で、仁和寺の第六世門跡となった人物で真言宗の広沢派と小野流を統合して仁和御流という流派を確立したことで仁和寺は興隆したようです。また、守覚法親王は弟の高倉天皇(平清盛の娘 徳子と結婚した天皇)の為にしばしば重要な法要をしていたようで、高倉天皇が守覚法親王に子供(後の安徳天皇)が生まれたことへの喜びを書いた「高倉天皇宸翰消息」とその返事の「守覚法親王消息」(いずれも国宝)などが展示されています。この辺は後の源平合戦で犠牲となった安徳天皇のことを考えると複雑な気分になりますが、貴重な歴史の証人と言えそうです。その他に糞掃衣(わざと黄ばんだ色合いにしている法衣)などもありました。

その先には空海が書写して持ち帰った「宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱」がずらりと並んでいて前半の見どころとなっています。この書写は大部分が行書で書かれていますが、かなり細かい字です。空海以外にも写経生が書いているようで空海が書いた部分が分かるように展示されているのですが、空海の割合はそれほど多くないかな。勿論、空海の達筆ぶりはよく知られているところですが他の写経生の部分も達筆なので素人目には書体の違いは分かっても見分けはつきませんでしたw たまに間違って修正しているところもあるのも面白かったです。


<第2章 修法の世界>
続いては密教の力で世界に様々な影響を与える「修法」という儀式に関するコーナーです。国家的な行事として皇室とゆかりが深い仁和寺で修法が行われたことから それに関する名宝が多く伝わるようで、「孔雀経 巻中、巻下」(孔雀経)は特に大秘法として功徳と利益が極まりないとされてきたようです。とりあえずご利益を願ってみたいところですが、安易に秘法を請うのを批判した文書なんかも近くにあって、おいそれとやるような儀式ではないようでしたw
ここには孔雀明王に関する品が多々あり、国宝の「孔雀明王像」は孔雀に乗った姿の明王像となっています。3つの顔、手は6本、光背の後ろにも孔雀の羽根があるなど見栄えのする明王です。あまり馴染みのない姿ですが、修法では重要な存在なのかな。皇室ゆかりのお寺に伝わるだけあって完成度の高い気品のある作品でした。

その先には仏画の手本となる白描図のコーナーがあり、ここにも孔雀経を描いたものもが並びます。この白描図は様々な修法のやり方や仏の配置なども描かれているようで、これに従って作られた「尊勝曼荼羅」なども展示されていました。それでも同じ普賢菩薩でも図像がいくつかあったりして、必ずしも1つだけという訳でもなさそうで、仏画を観る上でも参考になりそうな手本となっていました。

その後には五鈷杵や宝珠、曼荼羅・仏画などが並んでいました。中国から伝わった品も含まれているみたいです。ここで面白かったのが3幅対の「不動明王像」「四大明王像」で、火焔を背景に憤怒の形相の明王達が並び、躍動感あるポーズをとっていました。迫力があり密教らしい雰囲気なので前半の見どころの1つと言えそうです。また、「十二天像 毘沙門天、伊舎那天、梵天、地天」は会期によって展示される仏様が違うようですが(私が観たのは梵天・地天)、これも国宝の貴重な品なのでよく観てきました。この作品の以前に使っていた仏画は12世紀の法要中に燃えてしまって作り直したそうですが、それでも900年近く経っているのだから仁和寺の歴史の深さがよく分かります。

この章の最後には巨大な「両界曼荼羅(子島曼荼羅)」(国宝)が展示されていました。これも会期で胎蔵界曼荼羅と金剛界曼荼羅が入れ替わりで展示されるようで、私が観たのは胎蔵界曼荼羅です。大日如来を中心に金色で多くの仏が描かれ、大日如来の智慧が太陽のように世界を照らす様子となっているようです。かなり大きい作品ですが細部まで描き込まれていて吸い込まれそうなくらいの密度でした。どうやら見どころだらけの展覧会だというのがこの辺でビンビン伝わってきますw


<第3章 御室の宝蔵>
続いては仁和寺に伝わる宝物に関するコーナーです。宇多法王が亡くなると、膨大な御物が仁和寺の管理下に移されたそうで、その中には日本最古の医学書である「医心方」や鴨長明の有名な「方丈記」などの本も含まれていたようです。ここにはそうした品々と共に鳥獣戯画の写しなどもあり、ちょうどその時代の文物が凝縮されて展示されているような感じです。宝物リストなんかもあって、相当な数の宝物がありそう。
ここで目を引いたのが江戸時代の狩野種泰による「彦火々出見尊絵」で、これは日本神話の海幸彦・山幸彦の話を元にした絵巻です。私が観た時は、竜宮で海幸彦の釣り針を飲んだ魚(人間の姿をしている)を探して医師が引き抜くシーンと、竜王の娘と山幸彦が結婚する前のシーンなどが展示されていました。これには元々オリジナルの絵巻があったようですが既に現存せず、江戸時代に模写されたのがこの絵巻のようです。お寺で日本神話というのも妙な感じもしますが、この先の章でも神仏習合や本地垂迹説を感じさせる品はありましたので割と習合してたのかな??

この辺で前半部分は終了です。

ということで、前半部の第1室の内容はこんな感じでした。前半は資料多めな感じもしますが、空海の書写を始め目を引く作品が多々有りました。そして後半はお待ちかねの仏像ラッシュで、撮影可能エリアもありましたので次回はそれをご紹介しようと思います。
 → 後編はこちら
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