関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

仁清と乾山 ―京のやきものと絵画―  【岡田美術館】(箱根編)

10日ほど前の土日に箱根に小旅行をして美術館めぐりをしてきました。今日から断続的に箱根編をご紹介していこうと思います。まず最初に訪れたのは小涌谷の岡田美術館で、「特別展 仁清と乾山 ―京のやきものと絵画―」を観てきました。

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【展覧名】
 特別展 仁清と乾山 ―京のやきものと絵画― 

【公式サイト】
 http://www.okada-museum.com/exhibition/

【会場】岡田美術館
【最寄】小涌谷駅

【会期】2017年11月3日(金・祝)~2018年4月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。この美術館は先に常設を観てから特別展に進むルートとなっているのですが、この特別展からご紹介していこうと思います。

さて、この展示は京焼の祖と呼ばれる野々村仁清と、京焼を発展させた尾形乾山の名を連ねたものとなっています。いずれも京都の風土に相応しい優美さのある陶器を残していますが、その個性はそれぞれ違います。今回は岡田美術館のコレクションの中からそうした両名の作品と、その周辺(主に琳派)の作品も含めて6章構成で展示されていましたので、各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。


<1 公家の文化と仁清>
まずは野々村仁清や当時の公家文化に関するコーナーです。野々村仁清は瀬戸で修行し陶器の技術を身に着けた後、京都の仁和寺の近くに御室窯を開きました。仁清という名前も仁和寺の「仁」と元々の名前である清右衛門の「清」を合わせたもので、当初はあまり有名ではなかったようです。しかし茶人の金森宗和の指導の元で作陶するようになると、金森宗和の茶会で仁清の作品が使われるようになり、名が広まっていったようです。この時代の京都は後水尾天皇が古典や茶の湯などの文化交流のサロンを開くなど文化的な後押しをしていたのもその背景にあるようで、ここには仁清の作品2点と当時の京都の文化を思わせる品が並びます。
 参考記事:
  仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ― 感想前編(東京国立博物館 平成館)
  番外編 京都旅行 金閣寺エリアその3

まずは洛外図屏風など江戸時代の京都を描いた作品や、後水尾天皇の宸翰若書などが並びます。修学院図屏風という作品では後水尾天皇が好みの焼き物を焼かせた窯が描かれていて、後水尾天皇の文化推進の様子が伺えます。
そして仁清は2点で、どちらも割と地味ですw 「錆絵星文茶碗」という茶碗は五芒星☆が2つ側面に描かれた器で、さらっと描いたような緩さがありました。仁清は色絵だけでなく銹絵も味わい深い作風ですが、この緩さにはちょっと驚きましたw

ここにはもう1つ見どころがあって、狩野探幽による2幅対の「風神雷神図」がありました。勢いよく風を出す風神と雷を落とす雷神がコミカルな感じで描かれていて、俵屋宗達から琳派へと伝わっていった題材を狩野派が描いていたというのも面白かったです。


<2 二条城行幸図屏風>
こちらは後水尾天皇が二条城へと行幸した時の様子を描いた屏風と絵巻が2点展示されていました。特に絵巻は壮麗な行列が描かれていて、着飾った人々が延々と連なる様子となっていました。この行幸は2年かけて準備されたそうで、二条城では狩野探幽が総指揮をとって行幸に備えたことで知られています。
 参考記事:【番外編】 京都旅行 二条城


<3 野々村仁清>
続いては仁清のコーナーです。と言ってもここでの仁清は4点となっています。
まず「銹絵雁香合」という雁の形をした香合が目を引きます。これもちょっとゆるキャラみたいな造形ですが、非常に可愛らしい雰囲気です。最近、三井記念美術館で観た仁清の鶏の香合を思い出しました。こうした鳥型の香合をいくつか作っていたのかも。
 参考記事:国宝 雪松図と花鳥 -美術館でバードウォッチング-(三井記念美術館)

打って変わって素朴な信楽焼の「信楽四耳壺」という作品もありました。あまり仁清っぽい華やかさを感じませんが、その分力強さを感じます。これは仁清だと言われても俄には信じられないほど意外でしたw 近くには同じく信楽で焼かれた他の作家(無銘)の作品もありました。

その後には仁清の「色絵輪宝羯磨文香炉」という側面に密教の法輪や三鈷杵が描かれた壺がありました。これは仁和寺に寄贈した壺らしく、モチーフが仁和寺に相応しいものとなっています。これは色絵ですが、意外とあっさりした印象を受けたかな。地に対してモチーフが控え目で色も明るすぎず調和した感じがありました。

もう1点の仁清は「色絵七宝文細水指」という作品で、これは側面上部に朝顔みたいな形の赤と緑のマークが交互に並んでいます。モダンな雰囲気で東南アジアの「安南」という陶器の影響を受けているようです。この展示の仁清の中ではこれが一番好みで、意外なところから影響を受けているのが面白かったです。


<4 尾形乾山>
続いてはもう1人の巨匠、尾形乾山のコーナーです。尾形乾山は琳派の中心人物である尾形光琳の弟で、仁清に学び京焼を発展させました。乾山の作品は仁清に比べてかなり多めにコレクションしているようで、ここは充実の内容となっていました。

ここは結構点数があったのですが、特に目を引いたのは乾山の「色絵立葵図香合」です。立葵の花を思わせる形となっていて、白、赤、緑といった色を使い目に鮮やかです。洒脱という言葉が真っ先に浮かんでくるような素晴らしい作品でした。

少し先には「秋草図扇面」という扇に描いた秋草の絵もありました。乾山は単に陶器を作るだけでなく絵も描いていたのですが、やはりどことなく兄の光琳と似た所があります。しかし乾山のほうがのんびりしているというか、情感ある素朴な味わいがあって親しみが持てる画風です。絵の才能もあって乾山の凄さが分かります。

そしてこの章の最後あたりにこの展示で最も目玉となる「色絵竜田川文透彫反鉢」がありました。これは多分何度か観ている作品だと思いますが、紅葉する木々を鉢の内側・外側 両方に描き、いくつか側面に穴が空いています。この穴が透かしてあることで陶器と絵が一体になった感じを受けます。また、この作品は特に色彩感覚に優れていて赤・黄・緑・白地といった色が響き合うように見えました。これだけでもかなり満足ですw
 参考記事:琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第1部 煌めく金の世界 (出光美術館)


<5 乾山とその周辺>
こちらも引き続き乾山のコーナーで、兄の光琳や 光琳が私淑した俵屋宗達・本阿弥光悦といった作品もあってかなり豪華です。

ここでまず見どころは尾形乾山の2幅対の掛け軸「夕顔・楓図」で、右幅に夕顔、左幅に楓が描かれています。デフォルメされた表現となっていますが、光琳にも似た画風で、琳派が得意とした滲みを使った「たらし込み」の技巧なんかも使われています。しかしやはり乾山は温和な雰囲気が漂っていて、色も形も柔らかめに感じました。

そしてここには予想外の素晴らしい品がありました。それは俵屋宗達と本阿弥光悦の共作「花卉に蝶摺絵新古今和歌集」で、絵を俵屋宗達 書を本阿弥光悦が担当しています。薄っすらと金と銀で竹や藤?、蝶などが描かれ、そこに流れるような本阿弥光悦の達筆が舞っているかのように書かれています。この2人の共作はいくつか観ていますが、これは掛け値なしの名品です。これが観られただけでも箱根に行った甲斐があったくらいw

その先には尾形光琳の六曲一双の屏風「菊図屏風」もありました。こちらは題名通り金地に菊が描かれているのですが、花の部分が立体的に盛り上がっています。菊の配置もリズミカルで、流石は尾形光琳と思わせるこれまた非常に素晴らしい作品でした。

また、この章には尾形光琳・乾山の兄弟の共作もあります。「銹絵白梅図角皿」という四角い皿で、絵を光琳が担当し明時代の詩を引用して林和靖の生き方への憧れが書かれています。この白梅図がかなり大胆で、抽象画に思えるほどのデフォルメぶりでモダンな雰囲気がありました。兄弟共作もよく観ますがこれも見どころだと思います。

そしてこの章の最後には俵屋宗達の「白鷺図」もありました。全体的に灰色がかった背景に、白鷺が描かれその白さが目に鮮やかです。輪郭を使わない没骨の技法が使われていることもあって柔らかい印象を受けます。また、白鷺が身をかがめるポーズも雅で、気品に溢れる作品でした。


<6 京の焼き物>
こちらは古清水焼きなどが並ぶコーナーです。17~19世紀の品が並んでいたのですが、割と仁清や乾山に似た雰囲気の作品が多いかな。2人の京焼への影響力の強さが感じられます。


<逸品室>
展示室の最後の方には逸品室という小展示スペースが2箇所あります。まず1つめは酒井抱一の「対に秋草図屏風」です。琳派を継承した抱一なので、今回のテーマとはちょっとズレているけどここにあってもそんなに違和感はありませんw この作品は襖絵だったようで、空に半月が浮かぶすすき野とが描かれています。月は現在は黒くなっていますが、元は銀色だったようです。すすきは細い線で伸びやかに描かれていて、月と合わせて幻想的な雰囲気がありました。かなり好みの作品です。

もう1点は伊藤若冲の「月に叭々鳥図」です。もはや江戸時代の京都でしか繋がって無い気がしますが、確かにこれは逸品です。モノクロの水墨で描かれた叭々鳥が、逆三角形となって急降下している様子が非常にスピードを感じさせます。目は真ん丸で口を開けていて、一見すると単純化・簡略化されていますが、羽根には筋目描きを使った様子なども見受けられます。また、月に見える部分は実は余白で、それ以外のところを薄っすらと色を塗って白を際立たせるという手法を用いていました。実は凄腕が随所にある名品です。


ということで、仁清は少なめで琳派が充実といった感じの展示でした。私は日本美術では琳派が最も好きなのでこれは嬉しい誤算ですw とは言え、仁清の作品をもっと観たかったかな。全体的には素晴らしい内容でしたので不満ではないけど、タイトルとはちょっと違った気がしますw
この美術館は更に驚きの常設もありますので、次回はそれについてご紹介の予定です。


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