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戦後日本画の山脈 第一回 【成川美術館】(箱根編)

今回は写真多めです。引き続き箱根編で、今日は元箱根港のすぐ側にある成川美術館についてご紹介しようと思います。この美術館では撮影可能となっていましたので、写真を使っていこうと思います。

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【展覧名】
 開館30周年記念展 戦後日本画の山脈 第一回 

【公式サイト】
 http://www.narukawamuseum.co.jp/

【会場】成川美術館
【最寄】なし

【会期】2017年9月15日(金)~2018年3月15日(木)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この美術館は以前にもご紹介しましたが、元箱根港から徒歩1分くらいのところに入口がある美術館です。日本の近代作家のコレクションが充実していて、大型作品も結構あります。今回はたまたま開館30周年記念展をやっていて、見ごたえのある作品が数多く並んでいました。冒頭にも書いたように撮影可能となっていました(以前は撮影できなかったと思います)ので、写真を使って気に入った作品をご紹介していこうと思います。

 参考記事:
  【成川美術館】の案内
  季節風 【成川美術館内のお店】


<第1室 現役作家の代表作>
まずは現役作家の代表作のコーナー。最初から見どころと言える作品が並んでいました。

竹内浩一 「艶」
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猫の表情はたまに哲学者みたいに凛々しいですが、これはそんな瞬間に見えました。佇まいに気品があります。

平松礼二 「日本の新しい朝の光」
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こちらは東日本大震災の後に描かれたそうで、富士山に献花する意味が込められているようです。日本らしいモチーフと琳派や浮世絵へのオマージュが感じられ、非常に見応えがありました。

米谷清和 「雪の日」
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これを観たのが2018年1月だったこともあり、つい1週間前に降った大雪の光景を思い出しました。都会に雪という取り合わせや橋脚の大胆な構図も面白い。

平岩洋彦 「白景」「秋の渓」
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実に見事な2点の大型作品。どちらも季節感のある渓流の光景で、自然への敬意や美しさが感じられます。細かいところでも秋草が優美に描かれていたりしてしばらくじっくり観てきました。


<第2室 女性画家を含む現役作家の名作>
続いても現役作家のコーナー。こちらには女性画家の作品もありました。

森田りえ子 「秋蒼穹」
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4曲1双の屏風で非常に目を引きました。華やかな花々がリズミカルに配置されて色の取り合わせも綺麗です。近くで観ると細やかなので写真だとちょっと伝わらないかな。

吉澤照子 「刻」
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すすき野に風が吹き渡るような光景が儚くも懐かしいような印象をうけました。伸びやかなすすきが1本1本描かれているのも驚きです。


<第3室 物故作家の輝き>
3室からは2階です。こちらは既に他界された画家のコーナー。巨匠の作品もズラリと並んでいました。

加山又造 「猫」
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私の大好きな加山又造の作品もありました。猫はシャム猫で、花は牡丹です。猫の毛並みや花びらの質感などが見事です。柔らかい表現が多い絵ですが、青い猫の目のおかげで全体的に引き締まって見えました。

加山又造 「中央公論 表紙絵原画」
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こちらは色紙大の表紙絵が何枚か並んでいたうちの一枚。どれもデフォルメぶりが優美で、色も雅な作品ばかりです。この辺は琳派の研究の成果じゃないかな。やっぱり加山又造の作品は好みですw

平山郁夫 「敦煌三危」
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こちらもかなりの大型作品で大パノラマが眼前に広がるような迫力です。敦煌のオアシスとしての側面や岸壁の遺跡なども垣間見える光景となっていました。

関口雄揮 「白い華」
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紅葉の中に白く輝くように立つ華が可憐で神秘的な作品。儚く幻想的で色彩の美しさが目を引きました。


<第4室 文化勲章受章作家を中心に>
4室は文化勲章受章者を中心とした作品が並ぶコーナーでした。

前田青邨 「豊公」
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豊臣秀吉を描いた作品で、背景に描かれているのは朝鮮半島の地図のようです。シャープな輪郭線でスッキリした印象に見えるかな。杓を持って座る姿はよく知られている秀吉像そのものといった感じでした。

杉山寧 「和」
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色の取り合わせが見事な鯉の作品。すい~っと泳いでいる感じも出ています。背景の水のマチエールが独特なのも杉山寧らしくて好みの作品でした。

松尾敏男 「秋行」
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猫の安らかな眠りと紅葉が秋のしんみりした雰囲気を出していました。淡い色彩が幻想的ですらあります。

山本丘人 「地上風韻」
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こちらは大型の作品。藤棚の下で静かに座る女性の後ろ姿が夢の中の光景のように思えました。写実的なのに儚さがあるのが面白いです。

麻田辨自 「花菖蒲」
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日本画だけど洋画のような趣のある作品。滲みを使った独特の表現と色彩が好みでした。


<研究室>
こちらは2階の奥にあった小部屋。こちらは会期が分かりませんが東山魁夷の「京洛小景」の12ヶ月セットの作品が展示されていました。

東山魁夷 「京洛小景より<一力>(1月)」
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祇園の壁を描いた作品。その色も良いけど、日本の生活の中にある幾何学性がこの1枚によく表されているように思いました。かなり気に入ったので、このシリーズの絵葉書も買いました。

東山魁夷 「京洛小景より<桂離宮書院>(8月)」
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このシリーズには建物以外にも色々あるのですが、とにかく建物が気に入りましたw こちらも桂離宮の魅力が詰まった1枚だと思います。

東山魁夷 「京洛小景より<落柿舎>(10月)」
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木の影が手前の柿の木の存在を教えてくれます。箕笠の円が直線の多い画面にアクセントになっていて非常に面白い。


<常設展示>
再び1階に戻って、常設も観てきました。常設は中国の秘宝や万華鏡などのコレクションが並びます。

常設のコーナーやカフェからは芦ノ湖を望めます。
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この日は残念ながら軽く雪がちらつく天気でした。晴れてると富士山も見えます。

この展望を望む足元にはこんな建材が使われています。
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よーく観ると化石が沢山含まれています1億5000万年前頃の軟体動物だそうです。模様かと思ったので驚きましたw

こちらが常設の中国の秘宝のコーナー。
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数は少なめです。

こちらは牙彫の「華夏文明」 近くで観るとヤバイw
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ぎっしりと楼閣や人々などが表されています。こんな大きな作品が1つの象牙なのかも分かりませんが恐るべし細かさで驚きです。

こちらは万華鏡のコーナー。花の万華鏡というのがあったので覗いてみました。
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花の本来の美しさとダイヤモンド状になっているのが綺麗でした。この発想も面白い。


ということで、今回も非常に見応えのある内容となっていました。今回は晴れていなかったので観られませんでしたが富士山と芦ノ湖を一望できる景色も見事ですので、箱根に行く際はこの美術館もルートに入れてみると色々楽しめるのではないかと思います。


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