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歌川国貞展~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~ 【静嘉堂文庫美術館】

10日ほど前の土曜日に世田谷の静嘉堂文庫美術館で「歌川国貞展~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~」を観てきました。この展示は前期・後期に会期が分かれていて、私が観たのは前期の内容でした。

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【展覧名】
 歌川国貞展~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~ 

【公式サイト】
 http://www.seikado.or.jp/exhibition/index.html 

【会場】静嘉堂文庫美術館
【最寄】用賀駅

【会期】
 <前期>2018年1月20日(土)~2月25日(日)
 <後期>2018年2月27日(火)~3月25日(日)
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
予想以上にお客さんが多くてやや混んでいる感じもしましたが、だいたい自分のペースで鑑賞することができました。

さて、この展示は江戸時代の浮世絵師 歌川国貞についての展示となっています。歌川国貞は59歳の時に師の名前を継いで三代歌川豊国を名乗ったので、三代歌川豊国の名前で紹介している美術館も多い気がしますが、いずれの時代も美人画を得意として数多くの作品を残しています。今回の展示でも美人画を中心にそれ以外の題材の作品もありましたので、簡単にいくつか気に入った作品をご紹介しようと思います。(作品リストに年数が書いていないので当記事の中では歌川国貞の名前でで統一しておきますが、豊国時代の作品もあります)

歌川国貞 「今様見立士農工商 職人」「今様見立士農工商 商人」
まず冒頭で目を引いたのがそれぞれ3枚続のこの2つの作品です。錦絵作りを行う様子と販売する様子が描かれているのですが、全て女性となっています。鮮やかな画中画や美人達の生き生きとした姿が華やかで、3枚続きならではの大画面の見栄えもありました。

その後には化粧をしたり子供を風呂に入れる女性など、様々な女性像が並んでいます。こうした日常風景も実は何かの見立てだったりしますが、当時の風俗が伝わってくると共に親密さが感じられます。こうした画題は後に西洋の印象派の画家たちも描くようになったのを考えると、浮世絵からの影響は表現だけでなく画題にも及んでいたのではないかと思います。

歌川国貞 「今様化粧鏡」(シリーズ作品)
こちらは「合わせ鏡」、「眉かくし」、「牡丹刷毛」、「眉毛抜き」、「房楊枝」、「鉄漿つけ」のシリーズ6点が並んでいました。いずれも手鏡の中に反射して映る女性像といった感じの構図となっているのが面白くて、お歯黒や眉毛抜きといったお化粧している姿が描かれています。特に「合わせ鏡」は鏡を合わせて女性の背中側まで描かれているという変わった構図で、ウィットに富んだ作品となっていました。
 参考リンク:今風化粧鏡(牡丹刷毛)

この近くにはポーラ美術館所蔵の日本髪の雛形や髪飾りなどが展示されていました。昔は髪型や化粧で身分が分かったりしたみたいなので、この辺が詳しくなると浮世絵の人物を見る時に面白くなると思います。

歌川国貞 「娼家内証花見図」
こちらも3枚続きの大画面で、2階建ての屋内の様子が描かれています。恐らく花魁たちだと思うのですが、女性たちの多く描かれ喧騒が聞こえてきそうなくらいに動きのあるポーズをしています。そしてこの作品で面白いのが非常に強い遠近法を使っている点で、消失点が分かるような感じです。その効果で広々した家だという印象を受け、いち早くそうした西洋絵画の手法を取り入れているように思えました。

歌川国貞 「訛織当世島(くわえ楊枝)」「訛織当世島(金花糖)」
こちらは2枚セットで展示されていました。くわえ楊枝のほうはタイトル通り楊枝を加えた粋な女性、金花糖は子供と金魚を観ている女性が描かれているのですが、この両作品で面白いのは背景です。縦に波線のようなものが描かれていて、その縞模様がモダンでアールデコの建物の壁紙などを予見しているのような雰囲気です。どうしてこうした背景にしたかは分かりませんが、かなり洒落た印象になっていて好みでした。

歌川国貞・歌川広重 「風流源氏夜の庭」
こちらは既に三代豊国の時代だったと思います。遠近法や明暗の表現が使われた山と川の夜の風景を背景に、行灯を持つ女性と見送るような人物が描かれています。やや人物が大きすぎる感じもしますが、こうした表現も西洋画的なものを感じます。この作品は『偐紫田舎源氏』に題材したもので、歌川国貞はこの本の挿絵を手掛けたことで有名です。

この近くには源氏絵のコーナーがありました。

歌川国貞・歌川広重 「双筆五十三次」(シリーズ作品)
双筆というのは2人の合作という意味で、このシリーズでは人物を歌川国貞(三代豊国)、背景を歌川広重が担当しています。シリーズのうち10点ほど展示されていたのですが、人物と風景はいずれも独立した画面となっているものの、絵の中の土地に合わせた人物を描いているようでした。完全な合作ではないですが2人の巨匠のコラボぶりが面白いです。人物と風景の何が関連しているかは解説を読まないと分かりませんがw
 参考リンク:双筆五十三次

歌川国貞 「仁木弾正左衛門直則 五代目松本幸四郎 秋野亭錦升 後 錦紅」
こちらは今回のポスターにもなっている目玉作品です。鼻の高い役者が横向きで描かれ、肩から上しかない大首絵となっています。引き締まって凛々しい表情には緊張感があり、ちょっと悪そうな顔をしていましたw この横向きの顔というのもルネサンス(とその影響を受けた)肖像以外で見る機会は少ないので面白い構図でした

歌川国貞 「豊国漫画図絵 袴垂保輔」「豊国漫画図絵 将軍太郎良門」
こちらは2点セットで並んでいました。いずれも悪党を役者の見立てで描いたシリーズで、口をへの字に曲げて見栄を切るような憎たらしい表情をしていますw 個性的な雰囲気がある為か、こうした悪党を描いたシリーズは当時人気があったようです。

歌川国貞 「芝居町 新吉原 風俗絵鑑」
こちらは版画ではなく肉筆画。吉原の芝居小屋を描いたもので、大パノラマで芝居小屋の中のお客さんまでも描かれています。お客さんは何かを食べたり喧嘩したりしていて、お前ら芝居観てないだろ?wとツッコミを入れながら観てきましたw 配達している人なんかもいて、現代で言えば劇場よりは野球観戦のほうが雰囲気が近いかも。とにかく多くの人が描かれていて、圧巻の作品です。


ということで、それほど広くない会場に多くの作品が並んでいました。しかも発色の良い摺りが多かったので、満足度の高い内容でした。艶やかな美人が沢山観られる展示ですので、美術初心者でも楽しめる内容だと思います。


おまけ:
静嘉堂文庫美術館に行く前に、以前ご紹介した西庵カフェでお蕎麦を食べてきました。静嘉堂文庫の近くにあるしアートの図録なんかもおいてあるお店なので、この美術館に行く方にお勧めのお店です。
 参考記事:西庵カフェ 【用賀界隈のお店】

西庵カフェの外観
DSC00976.jpg
洒落た雰囲気で時期によってはお花も咲いています。

内装はこんな感じ。
DSC00985.jpg
静かな空間で美術展の図録なんかを観ながらくつろげました。

こちらはかき揚げ蕎麦の大盛り
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蕎麦もツユもかき揚げも美味しいですw この後デザートも頼んでそれも美味しいので何を食べても美味しいお店だろうと思いますw
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