ルドン―秘密の花園 (感想前編)【三菱一号館美術館】
2週間ほど前の金曜日の会社帰りに、三菱一号館美術館で「ルドン―秘密の花園」を観てきました。充実した内容で見どころも多かったので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

【展覧名】
ルドン―秘密の花園
【公式サイト】
http://mimt.jp/redon/
【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅など
【会期】2018年2月8日(木)~5月20日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時00間分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
まだ開催して間もない時の金曜の夜ということもあって、空いていて快適に鑑賞することができました。しかしこれだけの内容なら今後人気が出ると思うので、土日は混むようになるのではないかと思います。
さて、今回の展示は幻想的な絵画で知られるオディロン・ルドンの大規模な展示で、国内外の作品が90点程度集まる豪華な内容となっています。この美術館にはルドンのグラン・ブーケという大作が所蔵されているため以前にもルドン展が行われましたが、今回はグラン・ブーケと共にドムシー男爵家の食堂を飾っていた壁画(オルセー美術館所蔵)が1980年以来の来日という貴重な機会となっています。その他にも今までとは異なる切り口もありましたので、展覧会の構成に沿ってご紹介していこうと思います。
参考記事:
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)
<1 コローの教え、ブレスダンの指導>
まずはルドンの画業の始まりなどについてです。ルドンの生い立ちについては以前にも詳しく書いたことがあるので、そちらを参照して頂ければと思いますが、簡単に紹介するとオディロン・ルドンは1840年のボルドー生まれで、モネやロダンと同い年となります。
参考記事:
オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想前編(損保ジャパン東郷青児美術館)
オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想後編(損保ジャパン東郷青児美術館)
19世紀フランス版画の闇と光 ― メリヨン、ブレダン、ブラックモン、ルドン (国立西洋美術館)
ルドンのデビューは遅かったようで、39歳の時に版画集『夢のなかで』を刊行しました。ルドンには大きく分けて黒の時代と色彩の時代があるのですが、黒の時代でも油彩を描かなかったわけではなく、彩色された作品も残っているようです。それらは作者の為の習作と呼んで大切に保管されていたようですが、今回の展示ではそれを見ることもできます。
また、ルドンは長い修業の中でカミーユ・コロー助言や、ブレスダンからエッチングの指導を受ける機会があったようで、その成果をリトグラフ、パステル、油彩、デトランプといった多彩な技法を使って表現しています。ここにもそうした作品が並んでいました。
オディロン・ルドン 「木々の習作」
まずは大きな木を描いた木炭の絵が目を引きました。ただの木を写実的に描いた作品なのですが、既にルドンらしい幻想性があって夢の中ような独特の雰囲気が漂っています。 また、今回の展示でユニークなのはルドンの樹木を描いた作品に着目している点で、樹木のモティーフはルドンのどの時代でも共通していて初期から晩年まで描かれているようです。この後もこうした樹木をモティーフにした作品がいくつか出て来るので、この展示で頭に入れておきたいポイントです。
この辺にはブレスダンに習っていた頃の版画などもありました。
オディロン・ルドン 「ペイルルバードの小道」
こちらは油彩の作品。木が茂る小道を描いたもので、1人の女性らしき姿もあります。空が青々して静まり返った雰囲気はルドンらしさを感じる一方、ぼんやりとした空気感はコローからの影響を感じさせます。(近くにあった「メドックの秋」という結構後の時代の作品も同様にコローからの影響が伺えます) ルドンはコローから毎年同じ木を描くように教えられたそうで、こうした木々を描いていたようです。また、「不確かなものの隣に確かなものを置くと良い」とも教わったらしく、それを実践している様子も伺えます。この作品の制作年は分かりませんが、既に色彩に神秘さが出ているように思いました。
<2 人間と樹木>
続いては人と樹木が共に描かれた作品などが並ぶコーナーです。
オディロン・ルドン 『夢のなかで』
こちらは版画集で、その中から扉絵と「5.賭博師」が展示されていました。ルドンはアンリ・ファンタン=ラトゥールからもリトグラフを習っていたそうで、この作品に活かしています。この作品にもやはり木々が多く出て来るのですが、まさに夢の中のようなシュールで怖い絵が入った版画集です。「賭博師」では巨大なサイコロを担ぐ人物が描かれていて、何かの刑罰を受けているかのような不気味さがあります。これは何度も観たことがありますが、いつ観ても不安を覚えると共に妙に惹かれてしまう不思議な作品です。
この辺には『夜』や『ゴヤ頌』などの版画集の一部の作品もありました。こうした作品は見る機会も多いかな。
オディロン・ルドン 「キャリバン」
こちらは木の上にいる 目がギョロっとし子鬼みたいな妖怪チックなものを描いた作品。これはシェイクスピアの「テンペスト」に出てくる奇形の奴隷だそうで、闇の中でこっちを観ている様子が怖いw これも奇妙ですが不思議とそのキャラクターに愛嬌も感じるような…w 隣にも「キャリバンの眠り」という同様のモティーフの作品がありました。そっちはちょっと猿っぽくて可愛いかもw
参考リンク:本展の見どころ
オディロン・ルドン 「エジプトへの逃避」
これは聖書の同名のシーンを描いた作品です。暗闇の中、木の下に座るマリアとヨセフと幼子イエスの姿があり、イエスが光を放って辺りを照らしています。このテーマはブレスダンも描いていたようで、その影響かな? (割とよくあるテーマですが) 明暗の使い方が独特で、これも幻想的な光景となっていました。
このコーナーではルドンの家庭環境についても紹介されていたのですが、ルドンは生後間もなくペイルルバードの親戚に育てられたそうです。一方、父から土地を受け継いだ兄は音楽の神童だったそうで、ルドンも兄からの影響を受けて音楽に関心があったようです。音楽家のエルネスト・ショーソンとピアノとヴァイオリンで共演したこともあるらしいので、結構な腕前だったのかも? ちなみに1897年にペイルルバードの家は売却されるのですが、ルドンはこれを不満に思っていたそうです。
<3 植物学者アルマン・クラヴォー>
続いてはルドンが大きく影響を受けた植物学者のアルマン・クラヴォーについてのコーナーです。2人はルドンが10代の頃に出会い、クラヴォーはルドンにインドの詩や文学、異教への関心などの影響を与えました。幻想的でちょっと陰鬱なルドンの作風はこのクラヴォーの教えによるところが大きいように思われます。しかしクラヴォーは1890年に自殺してしまったそうで、ルドンはそれを偲び版画集『夢想』では「我が友クラヴォーの思い出に」と言葉を添えていたようです。
オディロン・ルドン 「『 夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出に)』 Ⅰ. ……それは一枚の帳、ひとつの刻印であった……
」
こちらはクラヴォーの顔を聖ヴェロニカの聖顔布の奇跡(ゴルゴタの丘に向かうキリストの汗を拭いたらヴェールにキリストの顔が浮かび上がった)を題材に、その顔をクラヴォーの肖像にした作品。そのテーマ選びからしてクラヴォーへの敬愛の様子が伺えます。自殺するような感じの人には観えない気もしますが、やや虚ろな感じかな。博学そうな雰囲気も感じられます。なお、ルドンはクラヴォーから進化論や植物の知識なども教えて貰ったようで、そうした題材の作品も多数残しています。
ここには夢想の」版画が並んでいました。一見よく分からない浮遊物を描いていたりしますが、それは微生物を模したものだったりするので、クラヴォーから得た科学的知識を反映しているのも分かります。
参考リンク:ルドンの「黒」
オディロン・ルドン 「若き日の仏陀」
こちらはルドンの異教趣味が現れている作品。目を閉じてうつむく仏陀の横顔が描かれ、背景には曖昧ですが花のようなものが描かれています。細く赤い輪郭があるものの独特のマチエールで表現していて、静かで象徴的な印象を受けました。これもクラヴォーの思想の賜物と言えそうです。
<4 ドムシー男爵の食堂装飾>
続いては今回最も見どころとなっている大部屋の展示です。ドムシー男爵は1893年(ルドンが60歳の頃)にルドンと知己を得て作品を購入していき、やがて小品だけ描いていたルドンに父の城館の食堂装飾を依頼するようになりました。この三菱一号館美術館が所蔵するグラン・ブーケもこのドムシー男爵の食堂装飾の一部として15点の壁画と共に描かれたそうで、この美術館にとっても念願の展示なのかもしれません。壁画は油彩を広げた上ににかわを使うデトランプという技法が使われているそうで、この部屋にはそうした壁画が三方向を囲うように展示されていました。(グラン・ブーケは他の部屋で展示)
今回の展示では写真を撮ることはできないのですが、休憩室にやや小さめのコピーがあってそれは撮影可能でした。代用ですがそれをちょっとご紹介。

装飾的でナビ派からの影響が感じられます。
花が舞っているような壁画です。

この配置も絶妙で、実際に見ると花が流れていくような構成となっていました。
こんな感じで、細長い壁画もあります。

実際には窓なんかもあるので、そうした部分以外を埋めている感じかな。
こちらは人物っぽい姿もあります。上にあるのは太陽ではなく恐らくミモザ。

ルドンは壁画制作にあたって南仏のルノワールを訪ねたそうで、そこで観たミモザに感動してミモザを壁画に描いたそうです。
参考記事:ルノワール美術館 【南仏編 カーニュ・シュル・メール】
これはレプリカなので小さめですが、実際の作品はかなり大きいので驚くと思います。他にも男爵のルドンコレクションや夫人の肖像、ドムシー家に関する資料なんかもありました。
ということで、長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。食堂装飾の再現は正に圧巻で、これだけでも今回の展示の意義があるのではないかと思えました。装飾は1部屋に収まりきらず、後半にも一部が展示されていましたので、次回はそれも含めてご紹介しようと思います。
→ 後編はこちら

【展覧名】
ルドン―秘密の花園
【公式サイト】
http://mimt.jp/redon/
【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅など
【会期】2018年2月8日(木)~5月20日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時00間分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
まだ開催して間もない時の金曜の夜ということもあって、空いていて快適に鑑賞することができました。しかしこれだけの内容なら今後人気が出ると思うので、土日は混むようになるのではないかと思います。
さて、今回の展示は幻想的な絵画で知られるオディロン・ルドンの大規模な展示で、国内外の作品が90点程度集まる豪華な内容となっています。この美術館にはルドンのグラン・ブーケという大作が所蔵されているため以前にもルドン展が行われましたが、今回はグラン・ブーケと共にドムシー男爵家の食堂を飾っていた壁画(オルセー美術館所蔵)が1980年以来の来日という貴重な機会となっています。その他にも今までとは異なる切り口もありましたので、展覧会の構成に沿ってご紹介していこうと思います。
参考記事:
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)
<1 コローの教え、ブレスダンの指導>
まずはルドンの画業の始まりなどについてです。ルドンの生い立ちについては以前にも詳しく書いたことがあるので、そちらを参照して頂ければと思いますが、簡単に紹介するとオディロン・ルドンは1840年のボルドー生まれで、モネやロダンと同い年となります。
参考記事:
オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想前編(損保ジャパン東郷青児美術館)
オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想後編(損保ジャパン東郷青児美術館)
19世紀フランス版画の闇と光 ― メリヨン、ブレダン、ブラックモン、ルドン (国立西洋美術館)
ルドンのデビューは遅かったようで、39歳の時に版画集『夢のなかで』を刊行しました。ルドンには大きく分けて黒の時代と色彩の時代があるのですが、黒の時代でも油彩を描かなかったわけではなく、彩色された作品も残っているようです。それらは作者の為の習作と呼んで大切に保管されていたようですが、今回の展示ではそれを見ることもできます。
また、ルドンは長い修業の中でカミーユ・コロー助言や、ブレスダンからエッチングの指導を受ける機会があったようで、その成果をリトグラフ、パステル、油彩、デトランプといった多彩な技法を使って表現しています。ここにもそうした作品が並んでいました。
オディロン・ルドン 「木々の習作」
まずは大きな木を描いた木炭の絵が目を引きました。ただの木を写実的に描いた作品なのですが、既にルドンらしい幻想性があって夢の中ような独特の雰囲気が漂っています。 また、今回の展示でユニークなのはルドンの樹木を描いた作品に着目している点で、樹木のモティーフはルドンのどの時代でも共通していて初期から晩年まで描かれているようです。この後もこうした樹木をモティーフにした作品がいくつか出て来るので、この展示で頭に入れておきたいポイントです。
この辺にはブレスダンに習っていた頃の版画などもありました。
オディロン・ルドン 「ペイルルバードの小道」
こちらは油彩の作品。木が茂る小道を描いたもので、1人の女性らしき姿もあります。空が青々して静まり返った雰囲気はルドンらしさを感じる一方、ぼんやりとした空気感はコローからの影響を感じさせます。(近くにあった「メドックの秋」という結構後の時代の作品も同様にコローからの影響が伺えます) ルドンはコローから毎年同じ木を描くように教えられたそうで、こうした木々を描いていたようです。また、「不確かなものの隣に確かなものを置くと良い」とも教わったらしく、それを実践している様子も伺えます。この作品の制作年は分かりませんが、既に色彩に神秘さが出ているように思いました。
<2 人間と樹木>
続いては人と樹木が共に描かれた作品などが並ぶコーナーです。
オディロン・ルドン 『夢のなかで』
こちらは版画集で、その中から扉絵と「5.賭博師」が展示されていました。ルドンはアンリ・ファンタン=ラトゥールからもリトグラフを習っていたそうで、この作品に活かしています。この作品にもやはり木々が多く出て来るのですが、まさに夢の中のようなシュールで怖い絵が入った版画集です。「賭博師」では巨大なサイコロを担ぐ人物が描かれていて、何かの刑罰を受けているかのような不気味さがあります。これは何度も観たことがありますが、いつ観ても不安を覚えると共に妙に惹かれてしまう不思議な作品です。
この辺には『夜』や『ゴヤ頌』などの版画集の一部の作品もありました。こうした作品は見る機会も多いかな。
オディロン・ルドン 「キャリバン」
こちらは木の上にいる 目がギョロっとし子鬼みたいな妖怪チックなものを描いた作品。これはシェイクスピアの「テンペスト」に出てくる奇形の奴隷だそうで、闇の中でこっちを観ている様子が怖いw これも奇妙ですが不思議とそのキャラクターに愛嬌も感じるような…w 隣にも「キャリバンの眠り」という同様のモティーフの作品がありました。そっちはちょっと猿っぽくて可愛いかもw
参考リンク:本展の見どころ
オディロン・ルドン 「エジプトへの逃避」
これは聖書の同名のシーンを描いた作品です。暗闇の中、木の下に座るマリアとヨセフと幼子イエスの姿があり、イエスが光を放って辺りを照らしています。このテーマはブレスダンも描いていたようで、その影響かな? (割とよくあるテーマですが) 明暗の使い方が独特で、これも幻想的な光景となっていました。
このコーナーではルドンの家庭環境についても紹介されていたのですが、ルドンは生後間もなくペイルルバードの親戚に育てられたそうです。一方、父から土地を受け継いだ兄は音楽の神童だったそうで、ルドンも兄からの影響を受けて音楽に関心があったようです。音楽家のエルネスト・ショーソンとピアノとヴァイオリンで共演したこともあるらしいので、結構な腕前だったのかも? ちなみに1897年にペイルルバードの家は売却されるのですが、ルドンはこれを不満に思っていたそうです。
<3 植物学者アルマン・クラヴォー>
続いてはルドンが大きく影響を受けた植物学者のアルマン・クラヴォーについてのコーナーです。2人はルドンが10代の頃に出会い、クラヴォーはルドンにインドの詩や文学、異教への関心などの影響を与えました。幻想的でちょっと陰鬱なルドンの作風はこのクラヴォーの教えによるところが大きいように思われます。しかしクラヴォーは1890年に自殺してしまったそうで、ルドンはそれを偲び版画集『夢想』では「我が友クラヴォーの思い出に」と言葉を添えていたようです。
オディロン・ルドン 「『 夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出に)』 Ⅰ. ……それは一枚の帳、ひとつの刻印であった……
」
こちらはクラヴォーの顔を聖ヴェロニカの聖顔布の奇跡(ゴルゴタの丘に向かうキリストの汗を拭いたらヴェールにキリストの顔が浮かび上がった)を題材に、その顔をクラヴォーの肖像にした作品。そのテーマ選びからしてクラヴォーへの敬愛の様子が伺えます。自殺するような感じの人には観えない気もしますが、やや虚ろな感じかな。博学そうな雰囲気も感じられます。なお、ルドンはクラヴォーから進化論や植物の知識なども教えて貰ったようで、そうした題材の作品も多数残しています。
ここには夢想の」版画が並んでいました。一見よく分からない浮遊物を描いていたりしますが、それは微生物を模したものだったりするので、クラヴォーから得た科学的知識を反映しているのも分かります。
参考リンク:ルドンの「黒」
オディロン・ルドン 「若き日の仏陀」
こちらはルドンの異教趣味が現れている作品。目を閉じてうつむく仏陀の横顔が描かれ、背景には曖昧ですが花のようなものが描かれています。細く赤い輪郭があるものの独特のマチエールで表現していて、静かで象徴的な印象を受けました。これもクラヴォーの思想の賜物と言えそうです。
<4 ドムシー男爵の食堂装飾>
続いては今回最も見どころとなっている大部屋の展示です。ドムシー男爵は1893年(ルドンが60歳の頃)にルドンと知己を得て作品を購入していき、やがて小品だけ描いていたルドンに父の城館の食堂装飾を依頼するようになりました。この三菱一号館美術館が所蔵するグラン・ブーケもこのドムシー男爵の食堂装飾の一部として15点の壁画と共に描かれたそうで、この美術館にとっても念願の展示なのかもしれません。壁画は油彩を広げた上ににかわを使うデトランプという技法が使われているそうで、この部屋にはそうした壁画が三方向を囲うように展示されていました。(グラン・ブーケは他の部屋で展示)
今回の展示では写真を撮ることはできないのですが、休憩室にやや小さめのコピーがあってそれは撮影可能でした。代用ですがそれをちょっとご紹介。

装飾的でナビ派からの影響が感じられます。
花が舞っているような壁画です。

この配置も絶妙で、実際に見ると花が流れていくような構成となっていました。
こんな感じで、細長い壁画もあります。

実際には窓なんかもあるので、そうした部分以外を埋めている感じかな。
こちらは人物っぽい姿もあります。上にあるのは太陽ではなく恐らくミモザ。

ルドンは壁画制作にあたって南仏のルノワールを訪ねたそうで、そこで観たミモザに感動してミモザを壁画に描いたそうです。
参考記事:ルノワール美術館 【南仏編 カーニュ・シュル・メール】
これはレプリカなので小さめですが、実際の作品はかなり大きいので驚くと思います。他にも男爵のルドンコレクションや夫人の肖像、ドムシー家に関する資料なんかもありました。
ということで、長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。食堂装飾の再現は正に圧巻で、これだけでも今回の展示の意義があるのではないかと思えました。装飾は1部屋に収まりきらず、後半にも一部が展示されていましたので、次回はそれも含めてご紹介しようと思います。
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