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ヘレンド展―皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯― (感想前編)【パナソニック 汐留ミュージアム】

3週間ほど前に新橋のパナソニック 汐留ミュージアムで「ヘレンド展―皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯―」を観てきました。点数も多く情報量も多かったので前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 ヘレンド展―皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯―

【公式サイト】
 https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/18/180113/

【会場】パナソニック 汐留ミュージアム
【最寄】新橋駅/汐留駅

【会期】2018年1月13日(土)~3月21日(水・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会場が狭めなこともあって結構混雑感はありましたが、概ね自分のペースで観ることが出来ました。

さて、この展示はハンガリーの「ヘレンド」という磁器製作所についてで、黎明期から現在に至るまで各時代の代表的な作品が並ぶ内容となっています。貴族や富裕層が愛好した磁器が150点(展示替えあり)も並び、非常に華やかな雰囲気です。 時代ごとに章分けされて7章構成となっていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 ヘレンド磁器製作所の黎明期-ヴィンツェ・シュティングルの製作所->
まずは黎明期のコーナーです。ヘレンドは1826年から制作を開始し、クリームウェアという1750年頃にイギリスで生まれた陶器を作っていたそうで、1842年頃から磁器窯として本格的に活動するようになりました。当初はマイセンを手本としたり日本や中国の磁器を踏襲していたようですが、1851年にはロンドン万博でヴィクトリア女王の目にとまりティーセットの注文を受けて名声を獲得したそうで、その後は19世紀の万博で華々しく活躍して、エリザベート皇后などにも愛好されていたようです。

1 「色絵朝顔文皿」
この章はこの作品のみ展示されていました。白地に朝顔が2つ描かれた皿です。やや黄ばみがかった感じですがクリームウェアとしては硬めの磁器だそうです。1841年の初期の作品ですが既に東洋風な感じも受けました。


<第2-1章 モール・フィシェル時代-全盛期>
最初はクリームウェア工場だったヘレンドですが、その後 モール・フィシェルという人物の卓越した芸術的才能とビジネスセンスによって、貴族や裕福な庶民が所有した古い磁器のディナーセットの補修や逸品の複製に乗り出しました。マイセン、ウィーン、ベルリン、セーヴルなどの窯を手本に様々な様式と装飾を吸収し、やがて皇室・帝室御用達の認定を受けて1802年のハンガリー産業博覧会や1851年のロンドン万国博覧会に出品するようになり、注目を集めました。
 参考記事:フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年 (サントリー美術館)

3 「リトファン ナポレオン2世肖像画」
こちらは産業博覧会へ出品した陶器の肖像画です。リトファンは光を通す磁器を使った作品で、肖像はモノクロの濃淡で表現されています。ちょっと変わった品ですが、この頃既に繊細な陶器を作れる技術力が伺えました。

14 「色絵金彩花束文ティーセット」
こちらは滑らかな白地に深いブルーの縁取りのティーセットです。草花が描かれ、蓋の把手が花の形になっていたりして華麗な印象を受けます。金彩も軽やかな草の文様となっていて、ロココ調の優美さも感じられました。

この辺には色のセンスが素晴らしい色絵が並んでいました。割とロココ趣味のピンク多めな皿やティーセットが多いかな。地の白さも綺麗です。

26 「藍地色絵金彩人物図透彫皿」
こちらは貴族風の男女が描かれた絵を中心にフチが草花文になっている皿です。そのフチの花の文様が無い部分が透かし彫りになっていて、かなり精密な透かし模様となっています。これは中々驚きの細工ですが、この後にも同様のフチが透かしになっている作品がいくつか出てきます。この透かしがオリジナルな要素かも。


<第2-2章 モール・フィシェル時代-全盛期東アジアから得た着想>
続いては2-1章と同時期の中国や日本の磁器を模した作品のコーナーです。

33 「黄地色絵花樹文人物飾り壺」
こちらはレモンイエローの壺に唐子が両手を上げているのが浮き彫りになっている作品です。間違った中国観みたいにも思えますが、黄色の釉薬は中国の磁器そのものといった感じで、モチーフだけでなく釉薬の研究も進んでいたのが伺えました。

36 「色絵金彩皇帝文コーヒーセット」
こちらはピンク色が多用されたコーヒーセットで、お盆には側面に透かしが入っています。金や色絵でかなり緻密に草花が描かれていて、たまに唐子みたいなのいました。可愛らしくて見栄えのするセットです。
 参考リンク:展覧会の見どころ

46 「色絵蓮池水禽図皿」
こちらはやや青みがかった皿に水辺の蓮が描かれていて、周りには鳥たちが飛んだり休んだりしています。薄っすらとした青が上品で、周りには緻密な草文様があったりして日本の絵のようにも見えました。確かにこれは日本からの影響を感じます。

この辺には伊万里や柿右衛門様式のようにも見えるけれど、オリジナルな要素もある作品が並んでいました。いくつかの様式を合わせた変わった作品もあります。

73 「色絵金彩伊万里様式楼閣図皿」
こちらは2枚1対の楼閣が描かれた皿です。金彩や色絵でぎっしりと画面を埋め尽くすネオ・バロック様式にならったものとのことですが、伊万里の金襴手様式を思わせます。ちょっとやりすぎな感じもしますが、日本から輸出された磁器からの影響を感じました。

この辺はフチを透かし彫りにした作品が多かったかな。燭台などもありました。

85 「色絵金彩エステルハージ文瓶」
こちらは赤銅色を地に白で草花を描いた瓶で、首の側面に耳がついているのですが、それが金魚のような形になっています。優美な曲線を持ったフォルムなどからは東洋らしさも感じられるかな。これがハンガリーで作られたとは思えないデザインでした。


<第3-1章 モール・フィシェルの息子たちの経営になるヘレンド磁器製作所>
1873年のウィーン万博はヘレンド史上最大の成功を収めたそうで、最大級の賛辞を受けました。しかし同じ年に株価の暴落が市場で起こると、1週間で数百社の会社が破綻し、ヘレンドもその時に破産したようです。経営者のモール・フィシェルは息子たちに会社を任せて引退したそうで、新しく作られたのはセーヴル風のロココ趣味の作品だったようです。また、エナメル絵付けも開発されるなど技術の発展もあったようですが、経営は苦しい状況が続き1884年には株式会社となりました。その後短期間で経営者が次々と変わり工場が壊れたり生産を停止した時期もあったそうで、ここにはそうした苦境の時期の作品が並んでいました。

87 「トロンプ・ルイユ花卉果実飾り皿」
こちらはさくらんぼや花が皿に乗っているように見える作品ですが、タイトルにトロンプルイユとあるように騙し絵となっています。特にいちごやさくらんぼにツヤがあるのが本物っぽく見えるところかな。中々面白い発想の絵付けとなっていました。

95 「猫」
こちらはタイトルそのものズバリで猫の形をした置物です。やや黄色がかった身体をしていて、目はギロッとした感じです。ちょっと警戒しているような緊張感があるように思いました。陶器だけど柔らかさを感じます。

この辺にはロココ調の乙女チックな作品が多いかな。ロココはそれほど好みではないですが優美な印象を受けるものが中心でした。

98 「藍地金彩唐草文コーヒーセット」
こちらは深いコバルトブルー(ほぼ紫)を地に金で草花文の輪を描いた作品です。青に金が映え、かなりエレガントな雰囲気が漂います。この色使いと艶やかさは見事で、かなり好みでした。
 参考リンク:展覧会の見どころ


<第3-2章 モール・フィシェルの息子たちの経営になるヘレンド磁器製作所-東アジアから得た着想->
続いても3-1章と同じ時期の作品が並ぶコーナーです。この時代でも中国と日本を手本にしていたようで、東洋趣味の作品が並んでいます。

102 「金彩ウエールズ文龍飾りビアマグ」
金の側面に無数の穴を開けて幾何学的な文様としているビアマグで、蓋には鳥?のような生き物の姿があります。(タイトルから察するに龍なのかも) 透かしで卍を表していたり東洋的な雰囲気もありますが、とにかく穴の多さに驚きました。これを作るのはめちゃくちゃ大変そうなのが一目で分かります。趣味が良いかは別問題ですがw
 参考リンク:展覧会の見どころ

この辺にはエリザベート皇后の為に作ったティーセットなどもありました。中国のものにしか観えないような出来栄えです。また、染付や柿右衛門っぽい作品もあって、日本のものと見紛うものもあります。特に金襴手様式に似た作品はそのものといった感じでした。


ということで、長くなってきたので今日はここまでにしておきます。かなり見応えのある内容で、観るまでヘレンドについてほとんど知らなかったのですがこの展覧会で詳しくなれた気がします。最初はマイセンや東洋の真似かと思っていましたが、実際に観るとオリジナリティも感じられました。この後には旧共産圏の時代なども紹介されていましたので、次回は現代までの章をご紹介しようと思います。
 → 後編はこちら

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