関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

至上の印象派展 ビュールレ・コレクション (感想後編)【国立新美術館】

前回に引き続き国立新美術館の「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」についてです。前半は5章までご紹介しましたが、今日は残りの6~10章をご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。
 前編はこちら

20180224 162435

【展覧名】
 至上の印象派展 ビュールレ・コレクション 

【公式サイト】
 http://www.buehrle2018.jp/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2018/buehrle2018/

【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅・六本木駅

【会期】2018年2月14日(水)~5月7日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前半は印象派以前~印象派についてでしたが、後半は印象派以降の美術の流れをざっくり知ることのできる内容となっていました。今回も各章ごとに気に入った作品をご紹介していこうと思います。


<第6章 ポール・セザンヌ>
こちらの章は近代絵画の父とも呼ばれるセザンヌの作品だけ6点集めた内容となっていました。

37 ポール・セザンヌ 「聖アントニウスの誘惑」
こちらはセザンヌの初期の作品で、暗めの背景に4人の裸婦と聖アントニウスが描かれています。セザンヌ自身が「クイヤルド様式(睾丸の大きな)」と呼んだ荒々しくタッチで描かれていて、ドワクロワからの影響を受けた題材となっているようです。この主題自体は西洋絵画でよく観ますが、セザンヌの初期の裸体表現を観ることができて面白かったです。
 参考記事:セザンヌ―パリとプロヴァンス 感想前編(国立新美術館)

39 ポール・セザンヌ 「扇子を持つセザンヌ夫人の肖像」
赤いソファに腰掛ける夫人を描いた作品で、顔だけこちらを向いています。重厚で落ち着いた色彩で描かれていて静かな印象を受けます。セザンヌは夫人をモデルにする時にはじっとして動かないように指示していたらしいので、この絵でもそれが現れているのかもと思いながら観ていました。
 参考記事:映画「セザンヌと過ごした時間」 (軽いネタバレあり)

40 ポール・セザンヌ 「赤いチョッキの少年」
こちらは今回のポスターにもなっているセザンヌの代表作の1つです。プロのモデルを使って描いた作品で、題名の通り赤いチョッキを着た少年が描かれています。よく観ると右手のバランスがおかしくて異様に長く見えるのですが、これはわざとこのように描いているそうで、ちょっと不思議な画面となっています。色面を組み合わせた感じや筆致の残った表現などセザンヌらしさを感じる1枚でした。
 参考リンク:公式サイトの「見どころ」

他にも貴重な自画像やセザンヌの最晩年のエクスで描いた庭師の作品などもありました。
 参考記事:セザンヌゆかりの地めぐり (南仏編 エクス)


<第7章 フィンセント・ファン・ゴッホ>
続いてこちらはゴッホだけ5点集めたコーナーとなっています。

43 フィンセント・ファン・ゴッホ 「古い塔」
こちらは重く沈んだ色彩で塔を描いた作品です。割とぺったりした塗り方で、後の作品と比べると静けさが漂い一見してゴッホとは気づかない方も多いかもしれません。1884年の作品なのでニューネンにいた頃のものと思いますが、初期のゴッホの作風がよく分かる作品だと思います。
 参考記事:ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想前編(国立新美術館)

この近くには軽やかな印象派風の作品もありました。

46 フィンセント・ファン・ゴッホ 「日没を背に種まく人」
こちらは最近のゴッホ展でもよく似た絵を観た気がしますが、ミレーの有名作「種まく人」へのオマージュ的な作品です。ミレーの種まく人と同じポーズの人が描かれ、種が飛んでいく様子がよく分かります。また、手前には画面中央を横切るように林檎の木が描かれていて、浮世絵からの影響を感じさせます。背景には巨大な太陽があるなど独特の光景となっていてゴッホの個性やルーツが垣間見える作品でした。
 参考記事:ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 (東京都美術館)
 参考リンク:公式サイトの「作品紹介」

48 フィンセント・ファン・ゴッホ 「花咲くマロニエの枝」
こちらはまるで木版の削り跡のような細長い筆致でマロニエを描いた作品です。青い背景に白い花や緑の葉が映えるのですが、意外と色合いは柔らかめに感じるかな。オーヴェールに住んでいた晩年の作風で、力強さとちょっと不安になる雰囲気がありました。
 参考記事:映画「ゴッホ~最期の手紙~」(ややネタバレあり)
 参考リンク:公式サイトの「作品紹介」


<第8章 20世紀初頭のフランス絵画>
続いては主にポスト印象派のコーナーで、ゴーギャンやボナールなどが並んでいました。

53 ポール・ゴーギャン 「肘掛け椅子の上のひまわり」
こちらはゴッホとの思い出を描いた作品で、椅子の上にヒマワリが置かれていてそれを暗示しています。窓の外には海で遊んでいると思われる人の姿もあってタヒチではないかと思います。重厚な色彩で西洋のヒマワリと南国の地という対比的なモチーフを荒々しく描いているようでした。
 参考記事;映画「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」(ややネタバレあり)

54 ポール・ゴーギャン 「贈りもの」
こちらもタヒチの頃の作品で、褐色の肌の上半身裸の2人の女性が描かれ1人は赤ちゃんにお乳を飲ませているようです。背景の家の屋根の赤や緑が褐色の肌と対比的な色合いとなっていて、色を強く感じます。また、色面と輪郭線を使った画風が力強い生命感を感じさせました。中々見事な作品です。
 参考リンク:公式サイトの「作品紹介」

この辺にはヴュイヤールの作品などもありましたが、あまりヴュイヤールっぽさは感じなかったかなw ボナールは著名な画商ヴォラールを描いた作品などがありました。


<第9章 モダン・アート>
続いてはフォーヴィスムとキュビスムの画家の作品が並ぶコーナーです。

57 モーリス・ド・ヴラマンク 「ル・ペック近くのセーヌ川のはしけ」
こちらは「フォーヴィスム」という名前が生まれた翌年の頃の作品で、船と岸の木を描いています。赤や緑が原色に近いまま使われ、点描みたいなタッチで塗り残しもあるなどかなり荒々しく見えます。まさに野獣のような激しい画風となっていました。

59 ジョルジュ・ブラック 「レスタックの港」
こちらは港を描いた作品ですが、非常に強い色彩で大きな点描を使って描かれていて、キュビスムの創始者の1人であるブラックの作品だとは一見して分かりませんでした。こういう意外な作品が観られるのも今回の展覧会の面白いところじゃないかな。

60 ジョルジュ・ブラック 「ヴァイオリニスト」
これは円錐を逆にしたようなものを無数に並べたような背景に、ヴァイオリンを分解したようなものが描かれた作品です。割とごちゃごちゃしていて、焦げ茶の画面に黒い輪郭を使って表現しています。非常に実験的な雰囲気があり、ブラックのキュビスムの発明の様子が伺えました。

この近くには平面的でぺったりした色面で画面を分割するキュビスムらしいブラックの作品もありました。また、ここにあるピカソもかなり見応えがあります。
 参考リンク:公式サイトの「作品紹介」


<第10章 新たなる絵画の地平>
最後の章は1点のみで、モネの睡蓮が展示されていました。ここだけ撮影可能となっています。

64 クロード・モネ 「睡蓮の池、緑の反映」
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スマフォで撮ったのでちょっと発色が悪くてすみませんw 本物はもっと綺麗な色で、かなり大型の作品となっています。モネがジヴェルニーの自宅で何枚も何枚も描いた睡蓮のうちの1枚で、まさにモネの集大成とも言える作品だと思います。燃え立つ色合いに包まれるような体験ができますので、これは是非近くで観ていただきたい作品です。

 参考記事:
  番外編 フランス旅行 オランジュリー美術館とマルモッタン美術館
  番外編 フランス旅行 ジヴェルニー モネの家

ということで、後半も素晴らしい作品が多く並んでいました。(満足度5点じゃないのは単に個展でなく作風が多岐に渡っている為です。) これだけ一気にビュールレ・コレクションを日本で観る機会は今後は無いようなので、非常に貴重な内容だと思います。近代絵画史を俯瞰するような構成も分かりやすいので、多くの人が楽しめる展覧会だと思います。

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