関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険 【泉屋博古館分館】

先週の土曜日に六本木一丁目の泉屋博古館分館で「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」を観てきました。この展示は前期・後期があり、私が観たのは前期の内容でした(3/20から後期で一部入れ替えがあったようです)

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【展覧名】
 生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険

【公式サイト】
 https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html

【会場】泉屋博古館分館
【最寄】六本木一丁目駅/神谷町駅

【会期】2018年2月24日(土)~ 4月8日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
ギャラリートークの前後の時間に行ったところ非常に混んでいて、何と20分程度の入場待ちとなっていました。中も大混雑で、ここがこんなに混んでいるのは初めて見ましたw NHKの日曜美術館でも取り上げられていたので、注目されている展示なのかもしれません。柵まで用意されていたところを観ると一時的な混雑ではなさそうですので、これから行かれる方は時間に余裕を持ってスケジュールすることをお勧めします。

さて、この展示は明治から昭和にかけて京都画壇で活躍した日本画家 木島櫻谷(このしま おうこく)の個展となっています。展示はPartIとIIに分かれていて、今期のPartIは木島櫻谷の作品の中で最も高く評価された動物を描いた作品が並んでいます。木島櫻谷はかつては非常に活躍して名を馳せたようですが、現在はそれほど知られていません。2013年に京都の泉屋博古館で回顧展が開催されたことで再び注目を集め、今回の展示でブレイクしている感じです。簡単に来歴をまとめると、木島櫻谷は京都画壇の伝統を継承した四条派の今尾景年に師事し、20代で早くも頭角を現し明治後半から大正期にかけて文展の花形として活躍して行きました。その後の昭和期には帝展の審査員を歴任するなど画壇の重鎮だったようです。非常に精緻で叙情性のある作風で、今回の展示も見事な作品が多く並んでいます。簡単にメモを取ってきたので、各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<I 青年のころ>
まずは青年時代のコーナーです。20代の頃は写生にふける日々だったようで、円山四条派の付立や刷毛描きなどの表現の熟達ぶりが作品から伺えるそうです。そして次第に西洋の写実表現や筆致に転化されていくそうで、油彩や陰影の表現などにも挑戦しているようです。また、この頃は風を感じさせる作風も特徴らしく、そうした作品も含め若い時代の動物画が並んでいました。

木島櫻谷 「野猪図」
24歳の頃の作品で、円山四条派風の写実性をもって猪を描いています。下り坂を歩くような姿勢で、毛並みの表現や肉感的な体躯が見事です。若くして才能を発揮していた様子が分かり、技術的には既に高いレベルにあったように思えました。

木島櫻谷 「猿猴」
木につかまっているニホンザルを描いた作品で、前かがみで やや憂鬱そうな表情を浮かべています。ふわふわした毛並みは付立という技法(輪郭を使わない墨の濃淡で描く没骨)を使っていて円山四条派の作風を思わせるかな。周りの草木はやや琳派的な洒脱な雰囲気もあって、好みの作風でした。

この辺にあった奔馬図という作品も躍動感があって良かったです。

木島櫻谷 「初夏・晩秋」
六曲一双の屏風で、右が初夏、左が晩秋の鹿達が描かれています。初夏の鹿は夏毛で角が短く、のんびりした雰囲気があります。一方の晩秋の鹿は冬毛で角も伸びた感じです。こちらはどこか寂しい雰囲気で、鹿以外に特に季節を感じさせるモチーフは無いものの、晩秋を感じさせました。


<II 壮年のころ>
続いては壮年の頃の作品のコーナーです。木島櫻谷が30歳の頃に文展が設立されると、文展で連続して上位入選し名を馳せるなど画業の転機を迎えたようです。また、この頃描かれた「寒月」を頂点に、動物画の緻密さも増して行ったようで、以降の40代半ばまで伝統絵画の構成美、装飾性と写実主義の融合が試みられたそうです。ここにはそうした円熟を迎えた時期の作品が並んでいました。

木島櫻谷 「寒月」
こちらは今回のポスターにもなっている作品で、六曲一双の大画面の屏風です。月の下、静けさ漂う雪の竹林の中に1匹の狐が描かれていて、やや振り返りながら歩いています。夜の銀世界に点々と足跡が残っている様子が叙情的で、しんみりした雰囲気が漂います。しかし狐はやや警戒しているのか鋭い目をしているのも印象的かな。竹林にも奥行きがあるなど、従来の日本画とは違った側面も感じられました。

木島櫻谷 「獅子虎図屏風」
六曲一双の屏風で、右にライオン、左に虎が描かれています。画面に大きく描かれたライオンは歩き出すような堂々とした姿をしていて、一方の虎は伏せて上目気味で水を飲んでいるようです。お互い向き合って対角になる構図で、目を合わせているようにも見えるかな。輪郭は使わず色面で肉体を描いているようで、表現も面白かったです。

木島櫻谷 「猛鷲波濤図屏風」
六曲一双の金地の屏風で、右にかなり大きめな鷲、左に波濤と断崖が描かれています。鷲は墨でダイナミックに描かれていて勢いと威厳を感じさせます。一方の波濤図も硬そうな岩の質感や波濤の勢いが見事で、波の色は薄めだけど濃淡によって表現されています。また、空間表現も素晴らしく、鷲との間の空白が空のように見えました。これも中々インパクトのある作品でした。

木島櫻谷 「熊鷲図屏風」
こちらは二曲一双の屏風で、右に熊、左に鷲が描かれていて、雪原で向き合っている感じに見えます。鷲は松にとまっていて緊張感のある風貌で、羽の表現が一見荒々しく見えますが、離れてみるとフサフサした感じがしました。 一方の熊は大阪博物館で写生してきたものらしく、身体は優しい感じを受けますがゴワゴワした硬い毛並みがリアルです。何故か熊が右寄りに描かれているのですが、これによって画面に空間が生まれて面白い効果がありました。

木島櫻谷 「幽谷秋色」
こちらは掛け軸で、霧に烟る滝と川が描かれています。周りには紅葉した木々もあり叙情的な雰囲気で、岩の上には猿たちの姿もあります。解説によると、木島櫻谷は橋本雅邦に私淑(敬意を払って自主学習すること)していたそうで、橋本雅邦の光の表現に影響を受けているようです。しかし叙情性は京都画壇の山水画の伝統を継承しているようで、この作品ではその両面を観ることができました。どこか懐かしいような光景でした。

木島櫻谷 「かりくら」
こちらは最近修復された作品です。2幅対の掛け軸で、薄野の中で馬に乗った狩衣の武士たちが描かれています。右から左へと3頭の馬が駆け抜けるような勇壮さがあり、馬の躍動感もあります。しかし一方では秋の風情も漂っていて、ススキの間には桔梗かリンドウのような青い花が咲いていて可憐です。動と静が両立するような画面となっているのが面白い作品でした。


<III 暮年のころ>
最後は晩年のコーナーです。40代を迎えた木島櫻谷は京都絵画専門学校の教職を退き、画壇からも離れて自宅で詩書画に費やすようになりました。一方で帝展や絵画展には機会を絞って出品はしていたようです。また、この頃は文人画風の観念的表現が色濃くなっていたようで、表現にもやや変化が観られます。

木島櫻谷 「角とぐ鹿」
木に角をこすりつけて角を研いでいる鹿を描いた掛け軸です。木の葉が舞い散り 枯れたような幹が寂しい雰囲気で、確かに文人画風に思える表現も観られます。こちらを観る鹿の目には光がなく、元気無さそうでボーッとしているように見えます。毛並みは相変わらず見事で、流石と言った所でした。

この隣にはこの作品の下絵もありました。紙を重ねて直しを入れている様子も伺えます。

木島櫻谷 「月下遊狸」
朧月の下で歩いている狸を横向きに描いた作品です。冬毛でずんぐりした姿が可愛く、自然の何気ない風景が叙情的に描かれています。木島櫻谷は「狸の櫻谷」との異名があったそうで、洒脱な筆致の毛並みが好評だったようです。この作品でもその通り名の由来が分かるような面白さがありました。

この作品の隣もタヌキが描かれた作品がありました。いずれも可愛らしい姿です。

最後に白黒の映像で木島櫻谷の自宅の様子を流していました。孫たちに囲まれて和やかで楽しげな雰囲気の映像となっていました。


ということで、見応えのある展示となっていました。それほど点数は多くないのですが、精緻な筆致となっているのでしっかり観ていくと時間を忘れるような作品ばかりでした。かなり混雑しているのが難点ですが、確かにこれは人気が出る内容だと思います。次回はPartIIとして四季や花鳥を題材にした内容となるようですので、そちらも観に行こうと考えております。日本画好きにオススメの展示です。

 →Part2の記事はこちら
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