関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光 (感想後編)【国立西洋美術館】

前回に引き続き国立西洋美術館の「日本スペイン外交関係樹立150周年記念 プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」についてです。前半は3章までご紹介しましたが、今日は残りの4~7章をご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。
 前編はこちら

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【展覧名】
 日本スペイン外交関係樹立150周年記念
 プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光

【公式サイト】
 https://artexhibition.jp/prado2018/
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018prado.html

【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅

【会期】2018年2月24日(土)~2018年5月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前半は上階の内容についてでしたが、後半は下階と上階に戻ってくる部屋についてです。後半も気に入った作品と共に簡単にご紹介していこうと思います。


<IV 宮廷|THE COURT>
この章は宮廷の人物を描いた作品が並んでいました。宮廷における美術は王や国の権力を示す意味もあり、フェリペ4世は40年で3000点以上の絵画を収集したコレクターでもありました。ここではそうした時代に描かれた作品が並んでいました。

ディエゴ・ベラスケス 「狩猟服姿のフェリペ 4世」
こちらは猟銃を持って猟犬を従えるフェリペ4世の立ち姿を描いた作品です。ちょび髭をはやしていて、顎が長いのはハプスブルク家の人々の特徴かな。 割と質素な服を着ているのですが、これは当時 財政難だったこともあって質素倹約を求められていたのが背景にあるようです。また、こうした狩猟の絵は軍事的資質を示す目的もあるようで、ただの肖像にも様々な意味が込められているようです。私には威厳があるというよりは洒落た人物に見えましたw

ディエゴ・ベラスケス 「バリェーカスの少年」
こちらは3等身くらいの小さな大人の男性を描いた作品です。ちょっと見下ろすような目線でこちらを観ていて粗末な身なりに見えます。これは宮廷内にいた矮人という発達障害の人で、知的障害もあったようです。当時の宮廷ではこうした人たちを貴族の引き立て役として道化師などと共に従えていたようです。あまり良い趣味とは思えない風習ですが、ベラスケスはつぶさにそれを描写していて、やや狂気を感じさせる表情で描いていました。

この隣には同様の矮人と共に貴婦人を対比的に描いた作品もありました。これは分かりやすく引き立て役になっています。また、この先には同時代の画家による大画面の作品も並んでいて見ごたえがありました。

この章の最初のあたりで、解説機で面白い話がありました。ベラスケスは画家だけでなく官僚としても活躍した人物だったのですが、相当な野心家だったそうです。平民出身だったもののどんどん出世して、サンディエゴ騎士団の団長(平民出身ではなれないはずの地位)にもなったそうです。


<V 風景|THE LANDSCAPE>
続いては風景に関するコーナーです。この時代、風景を描いた作品は稀でしたが、愛好家には人気があったようです。フランシスコ・コリャンテスなどは独立した風景画をイタリアとフランドルの折衷した様式で描いていたようで、ここにはそうした時代の風景が描き込まれた作品が並んでいました。

ディエゴ・ベラスケス 「王太子バルタサール・カルロス騎馬像」
こちらは今回の展示のポスターにもなっている、小さな王子が馬に乗った姿を描いた作品です。パッと見たら人物像だろ?という感じですが、割と背景も描き込まれていて、空気遠近法で霞む山なども観られます。前回ご紹介した「マルス」でも使われていた粗いタッチの描写も観られ、離れてみると情感があるという印象派の先鞭とも言える部分もあります。それにしても可愛くて凛々しい王子様で、今回の展示でも特に見栄えのする作品なのは間違いないと思いますが、これは6歳の頃に両親の希望で描かれたそうです しかし、その後17歳の頃に若くして亡くなったそうで、ちょっと意外な運命ですね…。

クロード・ロラン  「聖セラピアの埋葬のある風景」
この辺にはクロード・ロランもありました。古代遺跡のような風景の中、埋葬される人物が小さく描かれています。柔らかい明暗の表現で、一種の理想郷のようにも見えるかな。これは確かに人物よりも風景に目が行く作品でした。
 参考リンク:公式サイトの「展覧会構成」

フランシスコ・コリャンテス 「羊飼いの礼拝のある冬景色」
こちらはキリスト誕生時の羊飼いの礼拝を主題にした作品ですが、右半分は冬景色が描かれています。遠近感のある表現で、確かにフランドル風の作風と主題になっているように思えました。割とこの時代は主題は宗教でも実質は風景が主役という作品もあったのかもしれません。
 参考記事:ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜 感想前編(東京都美術館)

デニス・ファン・アルスロート  「ブリュッセルのオメガング もしくは鸚鵡(オウム)の祝祭:職業組合の行列」
こちらは横5mくらいの大作で、画面中に物凄い数の人々が幾重にも連なる行列になって描かれています。これは祝祭の行列のようで、背景の建物では見物人が観ているのですが、こちらも数え切れないほどの人数です。しかし、その表情は1人1人違っていて、いずれも生き生きとしていて驚きました。たまに長い竿みたいなのを掲げている人がいるのですが、これは職業組合のシンボルを掲げているとのことでした。盛大な祭りの賑わいがよく伝わる作品です。


<VI 静物|THE STILL LIFE>
続いては静物画です。静物画も風景画同様に絵画の題材としては格下と考えられていたのですが、この時代頃から徐々に盛り上がっていったジャンルです。この時代のスペインでは「ボデゴン」という現代では静物画を意味するスペイン独特の風俗画が描かれたようです。こうした静物をベラスケスが描いたかは分かりませんが初期には静物も描かれた風俗画も手がけていたそうです。(この章にはベラスケスの作品はありません)  ここにはそうした時代の静物画が並んでいました。

フェリペ・ラミーレス 「食用アザミ、シャコ、ブドウ、アヤメのある静物」
こちらは暗闇を背景に、窓枠みたいなところに置かれているタイトル通りのものが並んだ静物画です。質感表現やくっきりした明暗によってかなりリアルな描写となっていて、壁に飾ってあったら本物と見間違えるのではないか?というちょっとトリックアート的な要素もありました。この辺もフランドルの静物なんかを思い起こすものがあったように思います。

ヤン・ブリューゲル(父) 「花卉」
花瓶に溢れんばかりの花々が入っている様子が描かれた静物画です。白、赤、青、黄色、ピンクと色とりどりで華やかな一方、ちょっと萎れていたり周りに落ちた花もあって、老いや死を感じさせる部分もあります。花のブリューゲルと呼ばれたヤン・ブリューゲル(父・1世)の作品だけあって精緻で可憐な雰囲気の作品でした。
 参考記事:ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜 感想後編(東京都美術館)


<VII 宗教|THE RELIGION>
最後は宗教画のコーナーです。この時代の絵画の花形と言えばやはり宗教画で、宗教改革の頃に対抗宗教改革の一環として分かりやすく信仰心を掻き立てるような宗教画が求められました。テネブリズムという明暗のコントラストを強調した様式が流行したようで、ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

ディエゴ・ベラスケス 「東方三博士の礼拝」
こちらはイエス・キリスト誕生時の東方三博士の礼拝をテーマにした作品です。ベラスケスが20歳の頃に描いた作品だそうで、明暗が非常に強くてベラスケスの他の作品と比べると作風がちょっと違うように見えます。(これがテネブリズムだと思います) 画中の跪いている博士はベラスケス自身の自画像と考えられているようで、キリストは自分の娘、マリアは妻をモデルにしているようです。キリストは光っていて気品もあるけど、割と普通の子のようにも見えるのはそのせいかも知れません。ベラスケスっぽくはないけど面白い作品でした。

ペーテル・パウル・ルーベンス 「聖アンナのいる聖家族 」
こちらは幼子イエスを抱いたマリアと、背後に聖アンナと養父ヨセフを描いた作品で、イエスから出る明るい光を感じます。瑞々しい肌の表現などはルーベンスならではの持ち味がよく出ていて、それだけでも見栄えがします。一方で親しげな表情をしているのは普通の人間っぽい感じもするかな。この絵では等身大で観るものに直接訴えかけるという意図もあるようで、対抗宗教改革の影響も見て取れるようでした。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ 「小鳥のいる聖家族」
ムリーリョもありました。この章の充実ぶりは中々凄い。こちらは幼子イエス(と小鳥)、マリア、ヨセフ、白い犬が描かれた作品なのですが、これが聖家族なの?というくらい庶民的な雰囲気で描かれています。服の色も赤と青で描かれるのが一般的ですが、ここでは普通の当時の服と思われるものを着ています。宗教っぽさがほどんどなく、仲の良い家族と言った感じに見えましたが、やはりムリーリョだけあって気品も感じられました。


ということで、ベラスケスだけでなく同時代の画家や宮廷文化、当時の世相なども知ることのできる展示でした。割とベラスケス以外も有名画家や良い作品が多いので、見応えがありました。会期が長めになっていますので、西洋絵画が好きな方は是非足を運んでみてはと思います。
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