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モダンアート再訪ーダリ、ウォーホルから草間彌生まで 福岡市美術館コレクション展 【埼玉県立近代美術館】

今日も浦和周辺についてです。1週間ほど前の日曜日に埼玉県立近代美術館で「モダンアート再訪ーダリ、ウォーホルから草間彌生まで 福岡市美術館コレクション展」を観てきました。

DSC03621.jpg

【展覧名】
 モダンアート再訪ーダリ、ウォーホルから草間彌生まで 福岡市美術館コレクション展 

【公式サイト】
 http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=382

【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅

【会期】2018年4月7日(土)~5月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は1979年に開館した福岡市美術館が工事休館となっているのを機に、そのコレクションを一挙70点紹介する巡回展となっています。福岡市美術館は国内でもいち早くモダンアートの収集をしていたようで、今回の展示ではその充実ぶりを楽しむことが出来ます。また、九州の美術館らしい九州で活躍したグループのコレクションなども紹介していて、目新しい作品もありました。展示は6章に分かれていましたので各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 夢の中のからだ>
まずは近代絵画のコーナーです。ここは7点ですがシュルレアリスムを始め、見応えのある作品が並んでいました。

1 レオナール・フジタ 「仰臥裸婦」
こちらは藤田らしい見事な裸婦像で、横たわった裸婦が手を挙げて地面に髪を垂らす様子が描かれています。足元には猫もいてこちらも可愛いw 細い輪郭線と乳白色の色合いはパリで絶賛された様式そのものといった感じでした。構図も素晴らしい作品でした。

3 ジョアン・ミロ 「ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子」
黒地に記号のようなものが並ぶ抽象的な作品です。たまに*とか顔とか目玉らしきものがありますが、タイトル通りの踊り子なのかはさっぱり分かりませんw しかし原色の色合いと軽やかなモチーフはミロの典型的な画風に思います。こちらも見事なコレクションで、以前観たのを覚えていました。
 参考記事:日本の美術館名品展 感想前編(東京都美術館)

この辺にはダリやシャガールなどもありました。

5 ポール・デルヴォー 「夜の通り(散歩する女たち学者)」
画面が2つに分かれたような構図の作品で、左にアンモナイトを単眼鏡で覗き込む男性、右は上半身裸で夜の街を歩く貴婦人たちが描かれています。女性たちの奥には蒸気機関車などもあり、デルヴォーが好きなモチーフてんこ盛りみたいな感じですw 女性達の目は虚ろで、非常にシュールな印象を強めていました。デルヴォー好きとしてはこんな良い作品を観られて嬉しい限り。
 参考記事:ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅 (埼玉県立近代美術館)


<第2章 不穏な身体>
続いては不穏さを秘めたちょっとグロい人体を描いた作品が並ぶコーナーです。

13 ジャン・デュビュッフェ 「もがく」
こちらは厚塗りされた白地を背景に、色をぐちゃぐちゃに塗ったような人物像です。目鼻があるのと手の部分が分かる程度で、これが人物とは思えないほどですが、色のインパクトがかなり強くてタイトルのように痛みや苦しみが伝わってくるような感じもしたかな。

12 海老原喜之助 「傷身」
上を向いて 後ろ手を縛られた裸の人物が、右の人物に首の紐を引っ張られている様子を描いた作品です。左にはそれを後ろから見張るような人までいて、背景に2つの×印があることなどからも磔刑を思わせます。強い赤や青が人体表現に使われていて、こちらも痛みのようなものが感じられました。拷問のシーンを観ているような恐ろしげな光景です。

15 イヴ・クライン 「人体測定(ANT 157)」
青色の渦みたいなものがあちこちに描かれている作品で、これはモデルが体に絵の具を塗ってキャンバスい押し付けて描いているようです。解説によるとイヴ・クラインが日本滞在中に力士の手形や魚拓を観て着想を得たとも言われているようですが、原爆で焼き付けられた人の影との関係も指摘されるようです。同様の作品をいくつか観たことがありますが、こちらはうねるような感じで躍動的にも見える一方、這いずり周るような痛みもあるように思いました。


<第3章 身体と物質 九州派・具体・アンフォルメル>
続いては福岡で活動していた「九州派」と、阪神間で活動した「具体美術協会」についてのコーナーです。お互いが接することは無かったようですが、東京の権威に反発する点で共通するようで、ここには強烈な表現方法の作品が並んでいました。

19 石橋泰幸 「オヒサマ」
薄黒い赤地に黒い蜘蛛の巣のようなものが渦巻いている作品です。これはアスファルトらしく物質的な存在感があるのですが、近くに三井三池炭鉱のあった九州派の作家たちにとってアスファルトは社会的な意味もあるのだとか。ややグロテスクにも思えますがジャクソン・ポロックみたいな技法のようにも思えました。

この近くには同様にアスファルトを使った九州派の作品が並んでいました。他にも色々材料を使っていて、ざらついたマチエールの作品ばかりでした。

17 山内重太郎 「作品5」
こちらはベニヤ板にアスファルトを流し込んで顔料を垂らした上に、ガソリンをかけて火を放つという荒っぽい技法で描かれた?作品です。まさに焼け跡のようで真ん中には穴まで空いていますw ここまで破壊的な表現は観たことがなかったので衝撃を受けると共に、九州派の強い個性が感じられました。

34 ジャン・フォートリエ 「直方体」
こちらはアンフォルメルの画家フォートリエの作品で、白地に緑がかった長方形が描かれています。抽象的にも思えますが、塗り重ねたマチエールと引っ掻いたような痕跡が独特の雰囲気を出していました。
 参考記事:アンフォルメルとは何か?-20世紀フランス絵画の挑戦 (ブリヂストン美術館)

26 白髪一雄 「丹赤」
こちらは具体美術協会のメンバーだった白髪一雄の作品で、黄色と赤がうねるように描かれた抽象画です。絵の具はかなり盛り上がっていて、流れるような痕跡となっているのですが、これは天井から吊り下げられた綱に掴まって足で板を操作して描いているようです。同様の作品を結構観たことがありますが、こちらも独特の技法によって力の伝わり方がよく分かる作品に思えました。

24 嶋本昭三 「作品」
こちらも具体美術協会の創立メンバーの作品で、緑や赤、オレンジなどの色が炸裂するように飛び散っている抽象画?です。 これはキャンバスの上に石を置いて、それをめがけて絵の具の入った瓶を投げて制作したそうで、たまにガラス片も混入しているそうですw これまた破壊的な技法ですが、まるで火山の噴火のようなエネルギーを感じる表現となっていました。


<第4章 転用されるイメージ ポップアートとその周辺>
続いては1960年代以降のポップアートのコーナーです。この辺からリストと実際の展示順の章分けが異なっているのもありますが、展示で観た順でご紹介していきます。

40 菊畑茂久馬 「ルーレット No,1」
こちらは今回のポスターにもなった作品で、ルーレットのような円と その上に謎の器具がついていてピンボールを想起させます。解説によるとこれはギャンブルに象徴される世俗的イメージや、資本主義社会における物欲といった面を映しているとのことです。私にはそこまでは分かりませんでしたが、単純にゲーム盤のようなポップさがあって絵としても面白さを感じました。

37 赤瀬川原平 「千円札(風倉匠の肖像)」
こちらは千円札を模した3枚の肖像画です。横顔が描かれているのですが、タイトルから察するにこれは仲間の風倉匠の顔なのかな? 解説によると作者はネオダダの反芸術的な思想と方法を学んだそうで、この作品では紙幣の持つ物神性と権力性への挑発が意図されているとのことでした。確かにこれはやってはいけない感がする… お札をコピーしたり落書きするとアウト的なw

近くに風倉匠の作品もありました。


<第5章 イメージの消失 抽象と事物>
続いても現代アートのコーナーです。

36 アンディ・ウォーホル 「エルヴィス」
こちらはエルヴィス・プレスリーが拳銃を構えているシルクスクリーンが2枚並んだ作品です。このモチーフは映画「燃える平原児」の広報用スチル写真を元にしているそうで、2つともほぼ同じに思えますが、左の方はやや かすれて消えかかっているようにも見えます。解説によると、これはテレビや映画で複製された儚いイメージに過ぎず、消費されることが有名である資本主義社会をシニカルに提示しているとのことです。アンディ・ウォーホルはコピーや転用を繰り返すことで元の意味を希薄化させる作品が多いので、この意図は分かったような気がしましたw
 参考記事:アンディ・ウォーホル展:永遠の15分 感想前編(森美術館)

46 草間彌生 「夏(1)」「夏(2)」
赤地に白い水玉模様の細長い棒状のものが無数に組み合わさってイソギンチャクみたいな形になった作品です。一見すると謎のオブジェですが、蠢く触手のようにも見えるかなw ちょっと不気味さもありますが、水玉と男性器を思わせる突起は草間彌生のお得意のモチーフで、ポップな印象も受けました。

この辺にはリキテンスタインや瑛九の作品などもありました。

50 マーク・ロスコ 「無題」
上半分は深い赤、下半分は白、絵のフチは黄土色という色だけの抽象画です。相変わらずロスコの作品の意味は分かりませんが、滲みがあって揺らめくような印象を受けるかな。観ていて落ち着くような瞑想的な作品に思えました。


<第6章 再来するイメージ>
最後は1980年代以降のコーナーです。この頃になるとイメージが作品の中に再び登場したようです。ここには巨大な作品も多々展示されていました。

56 山崎直秀 「Book 1」 「Book 2」 「Book 3」
これは1977年頃の作品ですが、この章にありました。一見すると3冊の岩波書店の文庫本みたいに見えますが、Book1は文章のところが6段階の明度の■になっていて、Book2は文字が意味の通じないデタラメな順序に置き換わっています。さらにBook3は行ごとに上から順に明度の高い文字順に並び替わっていて(下に行くほど画数の多い文字になっていく)、面白い発想でした。どうしてこんな作品を作ったのか知りたかったw

60 ジャン=ミシェル・バスキア 「無題」
こちらは黒を背景に人の顔や犬、手、五重塔、人体など様々なモチーフが描かれた作品です。沢山の文字なども描かれていて、ちょっと落書きみたいにも思えますw 原色でペンキのローラーやチョークも使っているなど技法も独特で、具象と抽象の混ざったような独特の雰囲気となっていまいた。


ということで、充実したコレクションを堪能することができました。巨匠たちは典型的な作品が多くて非常に見事な一方、九州派や具体美術協会のような作品は目新しくて驚きがありました。関東から九州に行くのは大変ですが、この機会に一気に観ることができるのでモダンアートがお好きな方にお勧めの展示です。
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