関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

ニッポン貝人列伝 -時代をつくった貝コレクション- 【LIXILギャラリー】

今日は写真多めです。前回ご紹介したポーラミュージアムアネックスに行った後、すぐ近くのLIXILギャラリーで「ニッポン貝人列伝 -時代をつくった貝コレクション-」という展示を観てきました。この展示では撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 ニッポン貝人列伝 -時代をつくった貝コレクション-

【公式サイト】
 http://www.livingculture.lixil/topics/gallery/post-20/

【会場】LIXILギャラリー
【最寄】京橋駅(東京)

【会期】2018年03月08日~05月26日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は日本の近代貝類学・貝コレクターに関する展示で、貝そのものよりもコレクター達の功績に着目したユニークな内容となっています。貝は昔からコレクションの対象となり、王侯貴族がクンストカンマーのような部屋に集めたものから、現代の庶民がお土産で買ってきたようなものまで様々なものがあると思いますが、みんな一様に集めた貝は何という貝なのか?と知りたくなるのは同じだと思います。コレクターは特に珍しいコレクションを貝学者に訊くわけですが、中には研究対象として貴重なものもあり、コレクターと学者が相互連携で知識を深めてきた歴史があるようです。この展示ではコレクター達の功績と共に美しい貝・珍しい貝が並んでいましたので、それぞれの写真を使ってご紹介していこうと思います。

なお、貝は主に炭酸カルシウムで自ら殻を作っているようで、小さな貝だと1年程度の寿命ですが記録では220年程度生きた貝もいるそうです。雌雄同体のような種もいたり、高山から深海まで生息していたりと生命力も強く10万種近くいると考えられるのだとか(そのうち巻貝が85%程度を占める)


<平瀬與一郎 (1859-1925)>
まずは日本の貝コレクターの端緒を開いた平瀬與一郎のコーナーです。平瀬與一郎は8000種類以上を集め、私財を投じて「平瀬貝類博物館」を作ると共に、後に著名な貝学者となる黒田徳米を育てるなど、日本の貝研究界の礎を築いた人物のようです。

こちらは「平瀬貝類博物館」のチラシ。展示開始早々にマニアック過ぎる品が出てきてちょっと可笑しかったw
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大人は5銭、子供は3銭という入場料だったようですが、この文字ばかりのチラシで貝の魅力が伝わるんだろうかw

こちらが平瀬貝類博物館。1913年(大正13年)にオープンなのでまだ100年くらい前の話のようです。しかしそんな時代に貝の博物館が流行ったのだろうかと一抹の不安が…。
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実はこの博物館、1年で資金難となり1919年に閉館してしまったのだとか。ちょっと時代を先取りしすぎた感がしますね。

こちらは博物館の作った絵葉書
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かなり精密かつ正確な描写となっています。このセンスをチラシに活かせていれば…w

ちゃんと貝のコレクションも展示されていました。
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絵の具で塗ったんじゃないかと疑いたくなるくらい可憐で鮮やかな色をしています。これを実際に観ると貝の魅力も分かります。


平瀬信太郎 (1884-1939)
続いては平瀬與一郎の息子で貝学者の平瀬信太郎のコーナーです。元々は貝に興味がなくて文学部で心理学を修めたようですが、博物館の開館の翌年に東京帝国大学の理学部動物学科に入って軟体生物の研究の道に進んだようです。教員としても優秀だったようですが、日本初のカラー貝類図鑑を刊行するという業績を残しました。

こちらが『天然色写真日本貝類図譜』の初版本
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父が夢見ていた図鑑らしく、親の夢を見事に果たした本のようです。改訂版を執筆中に机の上で亡くなったというのだから、学者然とした人だったのかも。


<黒田徳米 (1886-1987)>
続いては平瀬與一郎が同郷から連れてきて育成し、貝界のレジェンドとなった黒田徳米のコーナーです。平瀬與一郎の助手みたいな感じで、標本の管理や雑誌の編集、博物館の案内から研究員まで様々なことを経験したのですが、博物館の閉鎖で失職してしまいました。それを湯川秀樹の父でもある小川琢治に抜擢されて貝類の研究の仕事に就き、やがて昭和天皇にご進講するまでの学者になったようです。100の新属、650の新種を発見し、100歳の誕生日直前まで研究を続けるなど、その功績はまさにレジェンド。貝研究の大巨人のようです。

こちらは観たことない細長い巻き貝が何匹かセットで展示されていました。
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ちゃんと採集した場所や日付も書かれているようでした。このラベルで黒田に同定(種類を見極める)されるのをコレクターたちは何よりも大事にしたそうです。

他にも沢山のカタツムリの標本や昭和天皇の相模湾コレクションをまとめた本などもありました。


<菊池典男 (1915-2013)>
続いては西宮回生病院の院長でもあった菊池典男のコーナーです。子供の頃から貝が好きで1965年には菊池貝類研究所を作り、黒田徳米のために研究室や資料室も作ったそうです。さらに1984年には兄弟で集めた8000種の貝殻を収蔵した菊池貝類館を建設、黒田の死後は西宮市に黒田の膨大な標本と資料を寄贈して博物館の建設を提案し、1999年に西宮市貝類館が出来たそうです。2013年に菊池が亡くなると菊池貝類館の品は西宮市貝類館に寄贈されて師匠の遺品と再開を果たしたのだとか。

こちらは素人目にも綺麗な貝が並んでいました。
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見慣れない貝ばかりで、いずれも美しい色形をしています。

こちらはホネガイ
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トゲトゲが南方系の貝のイメージですが、和歌山県で採集したようです。 2枚貝を食べる肉食なのだとか。

こちらはタガヤサンミナシという貝。
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この貝は毒性の強い矢を放つようです。形がイモガイなので毒があるのも納得。イモガイは見た目は可愛いけど超危険生物なので、こういう形の貝を見たら絶対に触らないようにして下さい(神経毒で人間も簡単に死にます)


<鳥羽源藏 (1872-1946)>
続いては「岩手博物界の太陽」「西の熊楠、東の源藏」とまで評され、昆虫学・植物学・貝類額・地質学・考古学などで功績を残した鳥羽源藏のコーナーです。平瀬與一郎や黒田徳米とも交流があったそうで、赴任先の台湾で貝類採集をしていたようです。帰国後も採集を続け、20000点にも及ぶ標本を作ったのだとか。ちなみに地元岩手の作家 宮沢賢治の『猫の事務所』に出てくる猫たちの名前は鳥羽源藏にあやかっているようです。
 参考記事:南方熊楠-100年早かった智の人- (国立科学博物館 日本館1階)

こちらは現在は陸前高田市博物館に収められている貝が並んでいました。
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2011年の東日本大震災で「海と貝のミュージアム」も被災して水没したようで、現在でも修復作業が続いているそうです。

<吉良哲明 (1888-1965)>
続いては小学校教員で住職という異色のアマチュアコレクター吉良哲明のコーナー。やはり黒田徳米に指導を受けたようで、『原色日本貝類図鑑』や貝類研究誌『夢蛤』を発刊するなど精力的に活動し、貝類学者と愛好家を繋ぐ役割を果たした功績があるようです。

こちらも全く知らない貝がズラリと並んでいました。
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これは『原色日本貝類図鑑』に載せてある貝を実際に再現したもののようです。

かなり沢山あって、種類ごとに分けて並んでいました。
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この形の貝はイモガイですね…。お子さんがいる方は子供に絶対拾わないようによく教えておいてください。


<山村八重子 (1899-1996)>
続いては父が椰子園を開いたフィリピン南部に住み、現地で様々な動物の標本を作った山村八重子のコーナーです。美人で女性初のコレクターだったので「麗人博物学者」というあだ名もあったようです。

いずれもフィリピン南部のバシラン島で採集したもの
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ハート形の貝なんかもいて、女性のコレクションらしい可愛さもあります。

こちらはコノハザクラという名前の貝。
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こちらも可憐な印象を受ける貝でした。


<波部忠重(1916-2001)>
続いては日本産貝類約6500種のうち、5分の1近く(1300以上)の新種新属を発見した波部忠重のコーナー。黒田徳米に学び、助手として日本の貝類の目録を作ったそうです。さらに吉良哲明の『原色日本貝類図鑑』に続く『続・原色日本貝類図鑑』を発刊し、その2冊で日本の半分の貝種を網羅するほど載っているのだとか。

こんな感じで貝が並んでいるのですが、めちゃくちゃ小さいのが多いw
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波部忠重のコレクションはこうした小さい種や比較的どこにでもいる貝に注目した点らしく、それが『続・原色日本貝類図鑑』にも活かされているようです。これによって貝のコレクターの裾のが広がることになったのだとか。

一方で大きい貝もありました
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波部忠重が新種記載した貝類のも含まれているようでした。

<櫻井欽一 (1912-1993)>
続いては鳥すき焼きの店主であり鉱物学界の重鎮でもあった櫻井欽一のコーナーです。鉱物の専門教育は受けていないものの独学で研究して国立科学博物館の嘱託になったほどで、鉱物好きから化石、貝類と研究領域が広がったようです。貝類も1万種5万点の標本をあったようで、今では貴重な種も多々含まれるコレクションとなっているようです。

日本各地から集められた変わった貝が並んでいました。
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同じ種でも可能な限り複数の産地から集めて変異と観られる型も丹念に集めたのだとか。几帳面に記載しているノートなんかも展示されていました。


<河村良介(1898-1993)>
最後は1万種10万点以上、世界の主要な貝類をほとんど網羅する日本一のコレクションを築いた河村良介のコーナーです。元銀行員で実業家でありながら日本貝類学会の創立メンバーの1人として黒田徳米や吉良哲明などとも交流があったようです。

流石は日本一のコレクターだけあって世界各国の貝のコレクションが並んでいます。
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左下のハートが幾重にも重なるようなピンクの貝が特に目を引きました。名前から察するに沖縄の貝なのかな?

河村良介が名前をつけた「ワタナベボラ」なんて名前の貝もありました。
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自ら発見した新種もあるようです。



ということで、最初はなんちゅうマニアックな展示だ??と驚きましたが、綺麗な貝を観られるだけでなく日本の貝研究の系譜まで分かる面白い内容となっていました。何の分野でもマニアが全力で集めたコレクションというのは情熱を感じさせるものがあります。無料で観られる展示ですが、国立の博物館並に濃い内容となっていましたので、貝好きのみならず多くの人が楽しめる内容だと思います。


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