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集え!英雄豪傑たち 浮世絵、近代日本画にみるヒーローたち 【横須賀美術館】

ゴールデンウィークの初日に観音崎の横須賀美術館で「集え!英雄豪傑たち 浮世絵、近代日本画にみるヒーローたち」を観てきました。なお、この展示は前期・後期に分かれているようで、私が観たのは2018/5/24までの前期の内容でした。

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【展覧名】
 集え!英雄豪傑たち 浮世絵、近代日本画にみるヒーローたち 

【公式サイト】
 http://www.yokosuka-moa.jp/exhibit/kikaku/1801.html

【会場】横須賀美術館
【最寄】馬堀海岸駅/浦賀駅

【会期】
 前期:2018年4月28日(土)~5月24日(木)
 後期:2018年5月25日(金)~6月17日(日)
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は神話や戦国時代の英雄など日本画に描かれた様々な豪傑たちが集う内容で、浮世絵から現代に至るまで様々な作家の作品が並んでいます。こうした豪傑をテーマにした作品は江戸時代には武者絵が庶民にも人気を呼び、明治時代に入ると日本としての民族的な意識を高揚するために「歴史画」というジャンルが確立し、多くの作品が作られました。大正期はブームが去っていたようですが、昭和になり泥沼の戦争に突入する時代になると戦意高揚を目的として再び多く描かれるようになりました。その後、戦後以降は歴史を描く意味を問いながら模索して行く時代となり現代でも様々な作品が作られています。
そうした歴史的な背景を元に展示はテーマや時代によって6つの章に分かれていました。今回は細かいメモは取っていなかったので、簡単に各章の雰囲気を振り返ってみようと思います。


<江戸のヒーローたち>
まずは浮世絵が並ぶコーナーです。ここには歌川国芳を始め、三代目歌川豊国、月岡芳年、歌川貞秀といった武者絵を得意とした絵師たちの作品があり、大判3枚続きの大画面の迫力ある作品も展示されていました。
国芳の武者絵は出世作となった水滸伝があって、筋肉隆々の勇ましくダイナミックな武者達が観られます。その後は3枚続きの作品がずらりと並ぶ様子は壮観で、源平の合戦の様子や川中島の合戦を主題とした作品が中心となっていました。川中島では大将の武田信玄と上杉謙信が一騎打ちしたという眉唾な話がありますが、それを大胆に描いたものが多かったかな。ちなみに天正期には大名や武将を題材にした作品は禁止されたそうで、その直前の盛りの時期の作品が集まっているようでした。


<神々のすがた>
続いては古事記や日本書紀をテーマにした作品が並ぶコーナーで、ここからは肉筆画が中心となってます。

神武天皇、ヤマトタケル、スサノオノミコトによるヤマタノオロチ退治など勇ましい姿で書かれた作品が多いかな。ここで目を引いたのは鈴木松年の「神武天皇・素盞嗚尊図屏風」で、緻密な描写で右隻に神武天皇たちとカラス、左隻にヤマタノオロチが描かれていました。まるで曾我蕭白の作品のようなダイナミックさのある作品なので、戦闘の様子が伝わってきそうです。また、同様に川村清雄の「素盞嗚尊図屏風」はヤマタノオロチと戦うシーンで、神話では酒で眠らせたはずですがここでは真っ向勝負となっていて、ヤマタノオロチはまさにドラゴンのような感じでした。これは以前観た記憶があります。
 参考記事:
  維新の洋画家 川村清雄 感想前編(江戸東京博物館)
  維新の洋画家 川村清雄 感想後編(江戸東京博物館)

他にも、この美術館にほど近い走水神社にまつわる題材として海神の怒りを鎮めるために身を投げるヤマトタケルの妻「弟橘媛」を描いた伊東深水の作品なんかもありました。


<歴史画の興隆>
続いては明治時代の日本画のコーナーです。この時代は民族意識の確立が課題とされた政策に沿う感じで懐古性が重視され、時代考証にも力が入れられたようです。とは言え、画家たちの理想も反映されていたようで、ここには明治期の歴史観が表れた作品が並んでいました。

ここで目を引いたのは川端龍子の「源義経(ジンギスカン)」で、これはかなり大きくて壁画のような大作です。源義経が逃げ延びてチンギス・ハーンになったという伝説を元にしているようで、ラクダに乗る和風の鎧を着た源義経という変わった取り合わせとなっています。どこが歴史考証やねん!とツッコみたくなりますが、ラクダも兵士たちも皆 左側を向いている構図も面白く、緊迫感のある作品でした。

このコーナーは戦っていない時の武者を描いた作品や、ロマンチックな空と武者の群れを対比的に描いた作品なんかもありました。テーマとしては元寇や源平合戦を描いたものが多かったと思います。


<甲冑・変り兜>
こちらには実際の兜や甲冑が並んでいました。6点と数は少ないですが、額に大きな金の円がある上杉景勝所用の具足や、鹿の角と毛虫の前立ての変わり兜(毛虫は前にしか進まないので不退の意味がある)、大きな水牛の角の兜など個性的な品々が並んでいて、素人目にも奇異で面白かったです。


<子どもたちのヒーロー>
こちらは子供向けの戦前の玩具や教科書、児童文学のコーナーです。

武者絵の双六や尋常小学校の教科書などが並び、桃太郎とかが挿絵に描かれています。明治時代の小学生は太平記やら源平やら太閤記なんかを学んでいたようで、絵そのものよりも教育の内容のほうが興味が湧いたかなw 


<野口哲哉>
最後は現代のアーティスト 野口哲哉 氏の武者像が並んでいました。急に現代の作品があって驚きますが、野口哲哉 氏はよく観る人気アーティストなので一目で分かりました。鎧兜を着た人物の絵やフィギュアのような作品が並んでいるのですが、いずれも勇ましさはゼロで割とその辺にいそうなオッサンが鎧兜を着たような奇妙なリアルさがあります。 昔の自転車に乗っていたり、飛んでいく風船を観ていたりとか、実際にはありえない光景を作品にしているのですが、そのシュールさがちょっとアホの子みたいで可愛いw ユーモアを感じる作品ばかりです。
 参考記事:アートフェア東京2010 (東京国際フォーラム)

また、野口哲哉 氏は今回の展示のイメージキャラクターも手がけたようで、そのイラスト原画もありました。これはそのキャラクター。
DSC04755.jpg
※写真は撮影スポットで撮ったものです。
あちこちでこの子供が先生に質問する形式の解説があるのですが、やけに軍事に詳しい子でシュールなやりとりも面白かったです。


ということで、単純に絵の面白さだけでなく、豪傑の絵が時代と共に役割を変えて来たことや日本の歴史や神話のエピソードも合わせて知ることが出来る内容でした。特に歴史好きの方は楽しめるのではないかと思います。

おまけ:
横須賀まで行くのは毎回大変なのですが、ここは美術館そのものが魅力的なので、それもちょっとご紹介。
この日は快晴で最高に気持の良い天気でした。横須賀美術館は目の前に海が広がっていて、海岸を散歩することもできます。
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灯台も見える美しい景色です。灯台の辺りにはバーベキュー場なんかもあります。

美術館には展望台もあって、海をゆっくり眺めることができます。
DSC04769.jpg
目の前に沢山の船が行き交う様子は観ていて飽きません。

そしてこの日は併設のレストラン「アクアマーレ」にお昼とお茶で2回訪れましたw
DSC04765.jpg
実はここが目当てだったりするw この時期、ここで海を眺めながらの食事は最高です。

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