関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

ターナー 風景の詩 【東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館】

ゴールデンウィークの3日目くらいに新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「ターナー 風景の詩」を観てきました。

DSC04800.jpg

【展覧名】
 ターナー 風景の詩

【公式サイト】
 https://turner2018.com/
 http://www.sjnk-museum.org/program/current/5319.html

【会場】東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
【最寄】新宿駅

【会期】2018年4月24日(火)~7月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんが多くて場所によっては人だかりもありましたが、概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示はイギリスの誇る巨匠ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの風景画を取り上げた内容となっています。ターナーについては以前にもいくつか展覧会をご紹介したことがあるので来歴などは下記の記事を参照頂ければと思いますが、19世紀を代表する画家の1人として、印象派を始め多くの画家たちに大きな影響を与えました。今までのターナー展は大概はターナー以外の作品が多数組み込まれていたのですが、何と今回は1点(ターナーの肖像)以外は全てターナーの作品という贅沢なラインナップとなっていました。画題ごとに4つの章に分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品をご紹介していこうと思います。

 参考記事:
  ターナー展 感想前編(東京都美術館)
  ターナー展 感想後編(東京都美術館)
  巨匠たちの英国水彩画展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  巨匠たちの英国水彩画展 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  

<第1章 地誌的風景画>
まずは地誌的風景画ということで、どこで描いたか特定できるような風景画が並ぶコーナーです。18世紀イギリスで高度化した測量や地図製作の伝統からこうした地誌的風景画は描かれるようになったそうで、ターナーはイギリス中を旅して描いていたようです。通常は夏に旅行していたようなので、夏っぽい絵もあるかな。たまに外で水彩を制作することもあったそうですが、大半はスケッチや記憶を元にアトリエで制作していたようです。ここにはそうした画題の作品が並んでいました。

1 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「マームズベリー修道院」
こちらは17歳の頃に描いた作品で、廃墟のような修道院が描かれています。中には男と犬が描かれていて、平和そうな光景に見えます。明暗の強く、若くして既に緻密な描写だけでなく叙情的な表現力もあったようです。廃墟の不思議な魅力がよく表れた作品でした。

10 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ソマーヒル、トンブリッジ」 ★こちらで観られます
こちらは手前に池、その奥に丘の上に建つカントリーハウス(貴族の家)が描かれた作品です。池には水鳥や小舟がある穏やかな光景で、丘には羊などがのんびりしています。奥へ奥へと視線を誘うような構図が面白く、自然とカントリーハウスに目が行きました。やや夕焼けのような空と相まって、どこか懐かしいような風景画です。

この部屋には大型の油彩は2~3点くらいで水彩やエッチングが多めとなっていました。神話の中のような美しい風景画が並んでいます。通路にはターナーによる詩句なんかもありました。

21 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ストーンヘンジ、ウィルトシャー」 ★こちらで観られます
こちらは有名なイギリスの巨石遺跡「ストーン・ヘンジ」とその周りの羊たちを描いた作品です。空には稲光があり、どうやら雷に打たれたらしく羊飼いと羊は倒れていたりします。しかし雷雲は去っていったようで、右上からは斜線で日差しが入り込む様子も描かれていました。1枚で色々な情景が組み込まれたドラマチックな作品で、自然と遺跡の雄大さを感じさせました。
この隣にはこれを版画にした作品もありました。白黒になって稲光の様子が鮮明になっています。

前述の通りこの展覧会では版画が多いのですが、これはターナーが版画を重視していたのとも関係しています。ターナーは800点の作品を80人以上の彫版師と共に版画家したそうで、その理由として下記の3つが挙げられるそうです。
 1.版画で自分の作品を普及させようとした
 2.旅行ガイドの役割を担っていた
 3.版画の芸術的価値をターナー自身が認識していた
こうした理由によってターナーは版画に情熱を注ぎ、彫師の仕事を監視して厳しく指示していたそうです。そのため、ターナーの版画は出来が良いそうで、今回の展示でもそれを楽しむことができると思います。


<第2章 海景―海洋国家に生きて>
続いては海の風景を描いた作品のコーナーです。1790~1815年くらいにターナーが画家としての研鑽を積んでいた時期は、イギリスとフランスが戦争状態となっていた時期でもあり、主な戦場は海だったようです。また、海の風景画には様々な船が描かれ、帆船だけでなく当時新しかった蒸気船まで描かれることもあったそうです。ここにはそうした時代背景に基いて描かれた作品が並んでいました。

24 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様」 ★こちらで観られます
暗い空の下、荒波の中を小舟の漁師たちが必死に舟を操っている様子が描かれた作品です。空の一部は雲間となっていて、そこからの光がドラマチックに海面を照らしています。波しぶきは荒々しく、神々しい空と共に 自然の力を感じさせる光景となっていました。ちなみにこの作品は晩年に自身で買い戻そうとしていたらしいのでお気に入りの作品だったのかも。

28 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「セント・オールバンズ・ヘッド沖」
こちらは水彩で、帆船が激しい波の上で傾いている様子を描いた作品です。奥には大砲が並んでいるイギリスの軍艦の姿もあり、手前はオランダの旗をつけているので、それを威嚇しているようです。右の方にも小さな「カッター」という帆船の漁船なんかもあって、当時の舟の様子なども伝わってきます。この作品でも動きのある構図が面白く、斜めになった舟からは緊迫感と迫力が感じられました。

34 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ル・アーヴル」
こちらはフランスのセーヌ川河口の港町を描いたもので、ターナーは1821年から1832年にかけて何度もセーヌ川を旅していたようです。夕日?に向かって港町から出ていく船が描かれていて、クロード・ロランが得意とした画題に範をとっている様子がよく分かります。解説によると、建物の形は正確さよりも夕日を浴びた雰囲気が重視されているようで、神秘的な光景となっていました。

この近くには版画の本なども並んでいました。


<第3章 イタリア―古代への憧れ>
続いてはイタリア旅行や古代への憧れに関するコーナーです。ターナーは1819年8月から1890年2月にかけて初めてローマを訪問したそうで、ローマの建物を楽しみつつ圧倒され、想像力を刺激されたようです。そしてそれらを元に水彩やスケッチを描き、帰国すると水彩画を制作していきました。この時代のパトロンたちはローマやナポリを訪れる「グランド・ツアー」を行っていたこともあり、彼らも古代風景を享受し学んでいたようです。ここにはそうした古代への憧れを投影した風景画が並んでいました。

55 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「キリスト教の黎明(エジプトへの逃避)」
こちらはエジプトのナイル川とその右岸に座る聖母子を描いたもので、隣には棕櫚の木も描かれています。これは聖書のエジプトへの逃避のシーンを題材にしていて、棕櫚は殉教の証であるので キリストの代わりにヘロデ王に殺された子供たちを意味しているようです。下の方には蛇の姿があるのも意味深かな。全体的にぼんやりした感じでマリアの顔もよく分からない点や、空の雲とかは絵の具を厚塗りしている点など、印象派の先鞭のような描写が面白い作品でした。

56 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「風景―タンバリンをもつ女」
こちらは川岸でタンバリンを持って踊る女性と、手を取り合って踊る人物を描いた作品です。全体的にモヤっとしていて、黄色~オレンジがかっているので神話の世界のようにも見えるかな。解説によると、これはイタリア風の理想化さえた光景のようです。また、クロード・ロランのような情景とアントワーヌ・ヴァトーのような人物の配置になっていて、過去の版画作品を踏襲しているとのことでした。これも中々当時の作品としては斬新に思えます。

この辺にはニコラ・プッサンの要素を取り込んだ「ノアの大洪水」などありました。割とこのコーナーにはイタリアの光景は少ないかもw 他には詩集の挿絵なんかもありました。


<第4章 山岳―あらたな景観美をさがして>
最後は山の風景を描いたコーナーです。この時代まで山はあまり絵画の主題として描かれなかったのですが、ターナーは同時代の画家と同じように山を注意深く観察した作品を残しています。想像でヒマラヤ山脈まで描いたものもあるそうで、ここにはそうした山々の風景が並んでいました。

60 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「キルカーン城、クラチャン・ベン山―真昼」
こちらはスコットランド旅行の際に描かれた作品で、手前に地面に寝そべる人物、奥に湖、右側に大きな山、湖の上には虹が描かれています。また、山の色は様々で、遠くは青みがかった空気遠近法のような感じです。雄大さと共にのんびりした雰囲気もある面白い光景となっていました。

63 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「サン・ゴタール山の峠、悪魔の橋の中央からの眺め、スイス」
こちらは生贄を条件に悪魔が架けたという山間の橋を描いたものです。物語には続きがあり、悪魔を騙して山羊を生贄にしようとしたら悪魔が怒って岩を投げようとしたそうですが、老婆がそこに十字架を描いて防いだという伝説のようです。絵の左の方には硬い質感の岩や石の橋が描かれ、その先では崖にへばりつくようにロバ?か山羊?が歩く姿もあります。そしてその先には十字架が描かれていて、先述の伝説が反映されてます。まさに断崖絶壁でといった感じで、谷の底が見えないくらいの恐ろしさが表現されていました。近くに現地の写真もあったのですが、写真以上に情感があるのが流石です。

73 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ルツェルン湖越しに見えるピラトゥス山」
こちらは手前に湖、奥に山がある光景を描いた作品です。やや丸みのある形で穏やかな印象に見えるかな。湖には蒸気船が煙を吐く様子もあって、のんびりした雰囲気がありつつ、同時代の新しい技術を絵画に取り込んでいることに驚きました。

65 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ローレライ、ドイツ」
こちらはライン川の巨石を描いた作品です。流れの早い難所で、手間には4艘の船の姿もあります。奥の岸壁には光があたり情感溢れる光景となっていました。


ということで、ターナーの風景画を楽しんできました。ほぼターナーだけというのが贅沢な展示ですが、油彩はそれほど多くなくて水彩と版画が多かった印象もあります。しかしそれもターナーの魅力なので、ターナーのことをよく知ることができる機会ではないかと思います。洋画において重要な存在なので、絵画ファンは是非抑えておきたい展示と言えそうです。


おまけ:
今回の撮影スポットは2箇所ありました。

こちらは1階のスポット
DSC04803_20180518234625745.jpg
顔出しパネルでターナーに描かれてくださいw

こちらはタピストリーのようになっていました。
DSC04805.jpg
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