関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

酒器の美に酔う 【静嘉堂文庫美術館】

ゴールデンウィークの祝日に、世田谷の静嘉堂文庫美術館で「酒器の美に酔う」を観てきました。この展示は前期・後期に会期が分かれていて、私が観たのは前期の内容となっていました。

DSC05102.jpg

【展覧名】
 酒器の美に酔う 

【公式サイト】
 http://www.seikado.or.jp/exhibition/index.html

【会場】静嘉堂文庫美術館
【最寄】用賀駅・二子玉川駅

【会期】
   前期:2018年4月24日(火)~5月20日(日)
   後期:2018年5月22日(火)~6月17日(日)
    ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
割と多くのお客さんがいて場所によっては人だかりが出来ていましたが、概ね自分のペースで鑑賞することができました。

さて、この展覧会は静嘉堂文庫が誇る古今のコレクションの中から「酒器」をテーマにした展示で、古い中国の品から幕末・明治くらいまでの名品が並んでいます。「酒器だいしゅき!」とかネットスラングみたいなダジャレを言ってるポスターが脱力感あって面白いですが、展示内容はかなり本格的なもので、焼き物を中心に盃や水注、徳利など宴の席を彩る美しい酒器の数々が4つの章に分かれて並び、酒器ではありませんが国宝「曜変天目(稲葉天目)」も特別展示されていました。簡単なメモを取ってきたので、それを元に振り返ってみようと思います。


<特別出品>
まずは今回のお目当てである曜変天目から観ていきました。

「曜変天目(稲葉天目)」 ★公式サイトで観られます
天目茶碗の中でも最上級とされる3点の1つ(いずれも国宝)で、黒地に青っぽく光る斑模様が特徴の茶碗となっています。輝く様子は星雲のようにも沸き立つ泡のようにも見えて、非常に美しい器です。今はこの器の製法も分からなくなっているので、まさにロストテクノロジーの神秘と言ったところでしょうか。大きな展示だと大混雑の中でちょこっとしか観られないのですが、この美術館ではじっくり観ることができます。この1点だけでもこの展示を観た甲斐があると言えるかも。なお、こちらは稲葉家に伝わったので稲葉天目と呼ぶのですが、稲葉家は徳川家光の乳母である春日局の子孫です。春日局を母以上に慕っていた家光が、病に臥せった春日局にこの茶碗を送ったという逸話が残されています。
 参考記事:
  三菱が夢見た美術館 - 岩崎家と三菱ゆかりのコレクション (三菱一号館美術館)
  国宝 (京都国立博物館)京都編
  

<1.酒を盛る>
曜変天目を十分観た後、今回の展示を観ていきました。まずは酒を盛る為の酒器のコーナーで、壺や瓶などが多かったかな。ここには古くは紀元前14~13世紀の殷時代の青銅の器から並んでいるのですが、酒器とは思えないほどの大きさです。(祖先に酒を供えるための器のようです) また、他には白磁や青磁など歴代の中国の磁器が並んでいてクオリティの高いコレクションとなっていました。


<2.酒を注ぐ>
続いては水注など酒を注ぐ酒器のコーナーです。ここは結構好みの作品があったので、個別にいくつかご紹介しようと思います。

「色絵牡丹文水注」 ★公式サイトで観られます
これは鍋島焼の水注で、把手や注ぎ口に金彩で草花文が施されています。また、側面にも赤や緑、青などで草花文が表されていて優美な雰囲気です。鍋島で金彩というのは珍しいように思いますが、これは八代将軍吉宗が私的に注文したものなのだとか。質素倹約で有名な将軍が、見た目も贅沢な金彩の品を使うとはちょっと意外でしたw

「青磁角瓢水注」
こちらは明時代の中国の青磁で、深い緑色をしてます。正方形の代の上に瓢箪のような丸々した胴がある変わった形(瓢箪の下半分が正方形になった感じ)で、把手や注ぎ口もついています。色合いの美しさよりも その形が面白くて気に入ったのですが、1522~66年の景徳鎮の官窯ではこれに似た形の作品があるのだとか。昔のデザインもユニークで面白いものがありますね。

「色絵蝶鉄仙文猪牙」
こちらは平佐(薩摩焼)で、急須のような形の酒器です。丸々として白地に青い花や赤い花、葉っぱなどが描かれ流麗な印象となっています。やや小さめの注ぎ口も可憐な印象に思えました。酒器なのにこんなに可愛いものがあるなんてw

この近くには朝鮮の素朴な酒器などもありました。

「粉青印花花卉文俵壺」
これは朝鮮の焼き物です。俵の形の変わった壺で、横に俵が積まれた状態で上面に注ぎ口がついています。側面には細かい点々で模様がついていて、素朴な雰囲気があるかな。これにお酒を入れるのは中々大変そうですが、一風変わったデザインが面白い品でした。

「色絵桐鳳凰文徳利」 ★公式サイトで観られます
これは大きな柿右衛門様式の有田焼で、白地の長い尾を持つ鳳凰が舞う様子が描かれています。その周りには鳳凰が食べるという桐の花が描かれ、吉祥文様と言える色絵となっています。柿右衛門ではあるのですが、わずかに青みがかっていたり筆法が金襴手様式に似た所もあるなど特別な作品のようで、色使いも他の柿右衛門とはちょっと違って見えました。中々見事な一品です。

この近くにあった北宋時代の青白磁の水注なども素晴らしい品でした。

「色絵秋草文八角徳利 一対」
こちらは2つセットの柿右衛門様式の有田焼で、口が細い八角形の徳利となっています。側面には秋草の女郎花が描かれ、ほんのちょっと金彩が使われています。それが何とも風流で、洗練された美しさを湛えていました。


<3.酒を酌み交わす>
続いては主に杯や盃、受け皿の托などが並ぶコーナーです。この辺から4章の内容とごっちゃになった感じですが、気に入った作品を作品番号に従ってご紹介していこうと思います。

「紋胎杯・托」
これは北宋時代のお茶碗にような形の杯と、コースターのような托がセットになった品です。ウズラの羽毛に例えた「鶉手」という縞模様が施されているのが美しく、ちょっと縞々がズレているところもあって手作り感が緩い雰囲気で面白いです。これは実際に売ってたら買ってしまいそうな愛らしさがありましたw

この辺の部屋の中央には唐三彩の酒器が多く並んでいました。把手が付いていたりしてティーカップみたいな形をしています。

「和漢人物蒔絵三つ組盃」 ★公式サイトで観られます
こちらは赤漆に金彩で和漢の人物が描かれた3枚重ねの盃です。それぞれ、三国志の桃園の誓い、虎渓三笑の故事、笑い上戸・泣き上戸・怒り上戸 という異なるテーマで3人ずつの人物が描かれていて、コミカルな雰囲気もあります。3つのうち2つは酒っぽい題材で、虎渓三笑は本来はお酒と関係ないですが、図中の従者に瓢箪をもたせることで酒を酌み交わしたと思わせているようでした。中々ユーモア溢れる品です。

「山水菊蒔絵堤重」 ★公式サイトで観られます
こちらは金蒔絵の堤重セットで、梨地の皿や菊が打ち出されたお重など豪華絢爛な印象を受けます。徳利もすっぽりと箱の中に2つ収まっていて、側面には立体的に菊が表されていました。これは前期のみの展示ですが、今回の主要な見どころの1つと言えそうでした。

「五彩十二ヶ月花卉文杯 12口」
こちらは12口セットのお猪口で、白地に12ヶ月の花と五言絶句または七言絶句が裏面に書かれているものです。景徳鎮で作られたものですが、柿右衛門にも似た風流な雰囲気があるかな。日本の作品かと思いました。


<4.酒呑む人びと>
最後は酒を楽しむ人々を描いた絵などの作品や宴会に使いそうな品が並んでいました。

伝 土佐光元 「酒飯論絵巻」
これは物語絵巻で、私が観た時は2の段が展示されていました。屋敷の中でどんちゃん騒ぎしている様子で、上半身裸で踊っていたり、軒先でゲロを吐いていたりと、えらいことになってますw そのゲロを犬が舐めてる様子なんかもあって中々に滑稽です。 2人に抱きかかえながらフラついて歩く男の姿などは現代の酔っぱらい達とあまり大差が無いかも。解説によると、こうした宴会について桃山時代のイエズス会の日本教会史にも書かれているそうで、当時の日本の宴会では度が過ぎる程に酒を呑むように仕組まれていたそうで、酒宴の主人に謝意を表す為に酩酊したり、したふりをしていたようです。現代から観ると品が無いように思えますが、当時はこうした酔っぱらった姿が感謝の印だったのですね。

この辺のケースには印籠や根付なんかも展示されていました。また、展示室の出入口には川端玉章による6曲1双の見事な屏風などもありました。


ということで、酒器にテーマを絞ってもこれだけ見事な品々が揃っているのに驚かされる内容でした。洒落たものから滑稽なものまで、バラエティに富んでいたのも良かったと思います。今年は稲葉天目を観られるのはこの展示だけのようですので、それを目的に行くのも良いのではないかと思います。特に焼き物好きの方にオススメの展示です。
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