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生誕150年 横山大観展 (感想後編)【東京国立近代美術館】

前回に引き続き東京国立近代美術館の「生誕150年 横山大観展」 についてです。前半は第1会場の1~2章についてご紹介しましたが、今日は残りの3章についてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。

 前編はこちら

DSC06283.jpg

【展覧名】
 生誕150年 横山大観展

【公式サイト】
 http://taikan2018.exhn.jp/
 http://www.momat.go.jp/am/exhibition/yokoyama-taikan/

【会場】東京国立近代美術館
【最寄】竹橋駅

【会期】2018年4月13日(金)~2018年5月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
前半も混んでいましたが、後半の第二会場の「生々流転」は特に混んでいました。多分ここで列に並ぶと結構な時間がかかりそうです。


<第3章 「昭和」の大観>
こちらは昭和時代のコーナーで、59歳から最晩年までの作品が並んでいました。大観は大正15年に宮内省から下命されて「朝陽霊峯」を描いて以降、富士の絵を量産していくことになります。戦前、富士は国のシンボルとして考えられていたそうです。 そして絵筆を以て国に報いる「彩管報国」を唱えて、「海に因む十題」「山に因む十題」の売上を陸海軍に献納するなど、国に奉仕する姿勢を見せていたようです。また、昭和5年のローマでのローマ日本美術展では作家総代を務め、「夜桜」を展示し国の花である桜に大和心を世界に向けて発信しました。
 参考記事:大倉コレクションの精華II-近代日本画名品選- (大倉集古館)

戦後になって富士の持つ意味が変わっても大観は富士を描いたそうで、それ以外の題材と共に情趣あふれる作品を残したようです。ここにはそうした作品が並んでいました。

70 横山大観 「紅葉」 ★公式サイトで観られます
こちらは6曲1双の屏風で、真っ赤に色づいた楓の大木が描かれています。背景には川が流れ、青地に赤が映える非常に華やかな雰囲気です。たらしこみ等が使われ葉っぱや波は様式化されているなど 大和絵や琳派の伝統を感じる一方で、川面にプラチナの箔が使われているなど斬新さも感じられます。右隻には川の上を飛び立つ鶺鴒の姿もあり、動きも感じられました。色彩の強さが絢爛で、伝統と革新が融合した面白い作品です。

この近くには「夜桜」もありました。大倉集古館の展示でよく観る作品ですが、現在建て替えで休館中なの久々に観られました。

73 横山大観 「野の花」 ★公式サイトで観られます
こちらは2曲1双の屏風で、岩の元で正座を崩したような姿勢で休んでいる若い女性が描かれています。黒目の大きな美人で、頭には頬かむりのようなものを被っていて農婦なのかな? 周りには百合や桔梗などが咲き、軽やかな色彩で情感ある野原となっています。草は勢いよく伸びやかで、ちょっと琳派的な雰囲気もあるように思いました。遠くを観るような女性の目がミステリアスで、目線の先に何があるのか気になりました。

78 横山大観 「海に因む十題のうち 海潮四題・秋」
浜辺に押し寄せる波を描いた作品で、遠くには太陽が輝いています。浜辺には鳥が3羽いて、雄大さだけでなく叙情的な光景です。こうした海の景色は日本中で観られるように思いますが、日本の精神性を重ねたのも頷けるような作品でした。

この辺にはこの作品の他にも「海に因む十題」「山に因む十題」からの作品が並んでいました。先述の通りこれらを売って陸海軍に売上を献納したのですが、それは4機の「大観号」という軍用機となりました。当時はこうした行動が世間に好意的に受け止められたようです。富士や海といった日本を象徴するモチーフもこの頃の世相にマッチしていたんでしょうね。

ここで第1会場は終わりで、一旦外に出て次の会場に進みます。


<第2会場>
続いての第2会場は「生々流転」と「生々流転 小下絵画帳」だけが展示されていました。

60 横山大観 「生々流転」 ★公式サイトで観られます
こちらは40mにも及ぶ水墨の巻物で、水が山に降り注ぎ、川を下って海に流れ、また海で雲になっていく「流転」の様子が描かれています。川沿いの野山や家々など延々と水が辿っていく様子は情趣溢れる光景となっていて、描写が細かいのに40mもあることに驚かされます。「片ぼかし」を多用している様子も確認できて恐ろしく手がかかっているんじゃないかな。たまに朦朧体のような表現もあるような…?? 後半の海に至ると4mに及ぶ波だけ描かれた部分があって、嵐の前の静けさといった感じです。そしてクライマックスは水蒸気が上がっていって大きな竜巻のような渦(冒頭のポスターの渦)となり、波と混ざるような表現がダイナミックでした。そしてまた雨となって山へと降り注ぐのが輪廻転生のようで、水の一生を感慨深い気持ちで観ることができました。解説によると、この作品を展覧会に出した初日に関東大震災が起きたそうで、この作品も被災したようですが奇跡的に無事だったみたいです。エピソードまで劇的ですね。以前の展覧会で下絵は観たことがあったので、この機に観られて良かった。
 参考記事:横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い 感想後編(横浜美術館)


<第3会場>
今回は2Fのギャラリー4まで会場が続いていました。最後の第3会場は5点のみで、今回の展覧会のミュージアムショップもこちらにあります。

90 横山大観 「霊峰飛鶴」
青い富士の山頂付近を背に無数の鶴が右から左へと舞い飛ぶ様子が描かれた作品です。背景は黄土色の雲?が富士山のオーラのような感じで描かれていて、富士山の存在感を強めています。非常に日本的なモチーフの取り合わせでドラマチックな印象を受けると共に、富士山の超然とした雰囲気が感じられました。

91 横山大観 「風蕭々兮易水寒」
こちらは再興院展に大観が最後に出品した同名の作品のバリエーションです。(会期によってはそちらも展示されていたようです) 枯れ木の元で川(海?)を観ている犬(馬みたいなw)が描かれたもので、寒々しく寂しい光景となっています。解説によると、これは後に始皇帝となる秦王の政を暗殺しに行った荊軻が詠んだ詩句を題材にしているそうで、その詩には再び帰ることがないという覚悟を詠まれていたようです。寂しい光景なのはそのせいかな。院展に最後に出品されたというのと関連付けて考えると大観自身の心情でもあったのではないかと考えながら観ていました。

89 横山大観 「或る日の太平洋」
DSC_0278.jpg
※写真はかなり前に常設展示されていた時に撮影したものです。(今回の展示は撮影不可です)
この章にはこの作品もありました。波濤がダイナミックで力強く、富士山はそれを越える巨大な存在として描かれているように思います。


ということで、後半は見栄えのする大作が中心となっていました。割と観たことがある作品が多かったものの 総じて大観の代表作がずらりと並ぶ素晴らしい展示だと思います。まさに大観の決定版でこれだけ見事な内容は中々無いので図録も購入しました。(大観の交友関係とか苦労時代のエピソード等はざっくりしてたので、大観をあまりご存知ない方にはその辺が伝わらない気はしますが…)
もう会期末で非常に混んでいますので、これから行かれる方は十分に時間を取って行くことをお勧めします。

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