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【東京国立近代美術館】の案内 (2018年05月)

今回は写真多めです。前々回・前回とご紹介した東京国立近代美術館の展示を観た後、本館所蔵品ギャラリーで常設作品も観てきました。ここの常設は期間が設けられているので、まずは概要についてです。

【展覧名】
 所蔵作品展 MOMAT コレクション

【公式サイト】
 http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20171114/

【会場】
  東京国立近代美術館 本館所蔵品ギャラリー

【最寄】
  東京メトロ東西線 竹橋駅

【会期】2017年11月14日~2018年5月27日
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【感想】
12月に訪れた時と同じ会期内のはずですが、だいぶ内容が変わっていました。今回も4階から下っていくルートで、気に入った作品をいくつかご紹介していこうと思います。

 ※ここの常設はルールさえ守れば写真が撮れますが、撮影禁止の作品もあります。
 ※当サイトからの転載は画像・文章ともに一切禁止させていただいております。

参考記事:
 東京国立近代美術館の案内 (2017年12月前編)
 東京国立近代美術館の案内 (2017年12月後編)
 東京国立近代美術館の案内 (2017年09月)
 東京国立近代美術館の案内 (2014年01月)
 東京国立近代美術館の案内 (2013年09月)
 東京国立近代美術館の案内 (2013年03月)
 東京国立近代美術館の案内 (2012年02月)
 東京国立近代美術館の案内 (2011年12月)
 東京国立近代美術館の案内 (2011年06月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年12月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年09月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年05月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年04月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年02月)
 東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)

船田玉樹 「花の夕」
DSC06298.jpg
非常に華やかな色彩が目を引いた作品。ピンクの円を叩きつけるように描いているのも面白い表現でした。

川合玉堂 「行く春」
DSC06289.jpg
こちらは長瀞の光景を描いた作品です。桜の華やいだ雰囲気と 川を行く船の詩情が好み。奥行きを感じる表現となっているようでした。

菊池芳文 「小雨ふる吉野」
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こちらも桜をテーマにした作品。遥か遠くまで桜が続いている様子が霞んだように表現されていました。小雨という割には結構な雨かも。

中村不折 「廓然無聖」
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「廓然無聖」とは聖と俗の区別がない悟りの境地のことだそうで、達磨が武帝にそのように答えたシーンが描かれています。しかしこれを観た瞬間にキリスト教の作品かと思いました。フランスで学んだ成果が出ているようです。

中川八郎 「杏花の村」
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こちらも花をテーマにした作品。明るい色彩で長閑で清々しい光景となっています。

織田一磨 「東京風景より 上野廣小路」
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こちらは関東大震災の前の上野の風景。情感溢れる描写のおかげかもしれませんが、かつてはこんなお洒落な街だったんですね。

織田一磨の「東京風景」は他にも数点あっていずれも叙情的で好みでした。

伊東深水 「夜の池之端」
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こちらも上野の不忍池の近くの池之端の光景。関東大震災前まではここに花柳界があったそうで、三味線を持っている人影がそれっぽいかな。夕暮れの雰囲気がよく出ています。

この辺には川瀬巴水の作品もありました。関東大震災前の東京は美しい街だったんですね…。その後には関東大震災直後の光景を描いた作品が並んでいました。

長谷川利行 「タンク街道」
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こちらは千住にあったガスタンク。長谷川利行は粗めのタッチでモダンな建物をよく描いているのが魅力です。最近、府中市美術館で個展をやっているので観に行きたいと考えています。
 参考リンク:長谷川利行展 七色の東京

藤牧義夫 「橋」
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若くして消息不明となった版画家による作品。素朴なようで力強い独特の作風が目を引きました。4年くらいしか活動期間がないようですが、個展を観てみたい。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「'ディナモ'スポーツ・クラブ」
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ロシア構成主義の芸術家の作品。画家だけでなく写真家としても活動していて、面白い構図の作品を残しています。この作品でも幾何学模様のような人の流れを撮っていて、写真なのにロトチェンコっぽさを感じました。
 参考記事:ロトチェンコ+ステパーノワーロシア構成主義のまなざし (東京都庭園美術館)

この近くには国吉康雄やパウル・クレーなどもありました。

古賀春江 「月花」
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童話のような温かみを感じる作品ですが、パウル・クレーからの影響も見て取れる作品。シュルレアリスムの印象が強い画家ですが、結構色々と画風を描いていたのが伺えます。

猪熊弦一郎 「○○方面鉄道建設」
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恐らく泰緬鉄道の敷設の様子が描かれた作品。抽象画や伸びやかな作品を多く残した いのくまさん ですが、戦争中は従軍画家として戦地に赴き、こうした写実的な作品も描いていました。
 参考記事:猪熊弦一郎展 猫たち (Bunkamura ザ・ミュージアム)

山下菊二 「植民地工場」
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共産党員でもあった画家で、工場労働者の過酷さをシュルレアリスム風に描いているようです。タイトルも批判的な感じですね。この人の作品は不穏な作風が多い気がします。

海老原喜之助 「殉教者」
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元々、副題に「サン・セバスチャン」とあったらしいので、矢で射られて殉教した聖セバスティアヌスのことだと思われます。荒々しくキュビスム風かつプリミティブな印象を受ける作風でインパクトがありました。戦争の犠牲者への鎮魂も込められているのだとか。

麻生三郎 「仰向けの人」
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どう観ても抽象画で、どこが人やねん!とツッコみたくなりますが… よーーーく観るといますね。シミのような人影が。ちょっと不穏な雰囲気の作品です。

難波田龍起 「昇天」
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いくつもの人の輪郭のようなものが魂の昇天のように揺らめいて見えました。静かな雰囲気だけど所どころの赤や くすんだ色合いが独特の雰囲気です。

今回は池袋モンパルナス関連の画家が結構多かった気がします。
 参考記事:東京⇆沖縄 池袋モンパルナスとニシムイ美術村 (板橋区立美術館)

続いて日本画のコーナー。

小倉遊亀 「O夫人坐像」
DSC06479.jpg
小倉遊亀の肖像は人柄が伝わってくるような表情が素晴らしいと思います。姿勢を正して礼儀正しく賢そうな奥さんですね。日本画なのに洋画のような軽やかさがあるのも好み。

安田靫彦 「大観先生像」
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今回の横山大観展に合わせて大観の肖像がありました。これだとちょっと神経質そうにも観えますが、美術に対しては厳しい人なのでそれが出ているのかな。

平櫛田中 「鶴氅」
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こちらは平櫛田中や横山大観らが敬愛してやまなかった岡倉天心をモデルにした像。遠目からでも岡倉天心と分かるくらい写真とそっくりの風貌で、流石は平櫛田中ですね。

安田靫彦 「居醒泉」
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こちらはヤマトタケルが伊吹山の神に襲われて倒れた後、居醒泉を飲んで蘇生したシーン。一見すると昼寝しているみたいですがよく観ると薄っすらと目を開けています。手に力を感じないものの、その先に居醒泉の水があるようです。せっかく蘇生しても病身となって死んでしまうようですが…

下村観山 「木の間の秋」
DSC06512.jpg
横山大観の盟友でもある下村観山の作品もありました。琳派を意識して描いたようですが、西洋的な写実性も合わせもっているようです。陰影が不思議な感じで独特の表現となっています。

今回、2階の展示は割愛します。残念ながら今回はスケジュールの関係で工芸館にも行けませんでした。


ということで、今回の常設も楽しんできました。今回は横山大観展にちなんだ作品なんかもあって、余韻を感じることもできるんじゃないかな。他にも素晴らしい作品が多く展示されていますので、横山大観展に行かれる方は常設も覗いてみるとよろしいかと思います。


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