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浦上コレクション 北斎漫画:驚異の眼、驚異の筆 【うらわ美術館】

ゴールデンウィークの最終日に浦和の うらわ美術館で「浦上コレクション 北斎漫画:驚異の眼、驚異の筆」を観てきました。

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【展覧名】
 浦上コレクション 北斎漫画:驚異の眼、驚異の筆

【公式サイト】
 http://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/exhibition/whatson/exhibition/p057666.html

【会場】うらわ美術館
【最寄】浦和駅

【会期】2018年4月21日(土)~ 6月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は葛飾北斎の代表作でもある「北斎漫画」が初編から15編まで全巻揃って並ぶ内容となっています。北斎漫画は1814年に弟子たちの絵手本として出版されたのですが、人気が出た為に版を重ね、死後の1878年(明治11年)まで15編が刊行されました。主に30代~50代頃に多く手がけたようで、主題は本当に多岐に渡るのですが各編ごとにやや傾向もあるようです。北斎漫画はやがて海外に渡り、ジャポニスムの原動力の1つとして大きな役割を果たしたので、近代美術を知る上でも重要な作品と言えます。今回は世界一の質と量を誇る、浦上満 氏の摺りの良いコレクションが200点近くも並んでいましたので、各編ごとに簡単にその傾向などをご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  北斎とジャポニスム―HOKUSAIが西洋に与えた衝撃 (国立西洋美術館)
  北斎と暁斎 奇想の漫画 感想前編(太田記念美術館)
  北斎と暁斎 奇想の漫画 感想後編(太田記念美術館)
  すみだ北斎美術館の案内 (常設 2017年12月)

<『北斎漫画』初編> 1814年
初編は人物像が多いですが、鳥や動物、虫などの生物の他に草花、山、川など早速なんでも描いてある感じです。蹴鞠、大道芸、大きな荷物を持った人、源頼光の四天王と土蜘蛛、ぶんぶく茶釜などが目を引いたかな。可笑しくて面白い姿が並んでいました。


<『北斎漫画』二編> 1815年
こちらはお正月、お面など人々の風俗を描いたものや、岩、花、風景、波、魚といった博物的なモチーフが多く描かれていました。1つのテーマに色々なバリエーションを描いていくのが北斎漫画の特徴じゃないかな。一種の図鑑のような面白さもあります。


<『北斎漫画』三編> 1815年
こちらは動きを感じる人物像が多いかな。相撲、村の仕事、緻密に描かれた風神雷神などがあります。他にも遠近法を使った西洋絵画の模写のようなもの(三ツ割の法)や、略画といった普通の描き方とは異なる指南書的な側面もありました。紋様尽くしという作品もデザイン的で驚かされます。


<『北斎漫画』四編> 1816年
こちらは鬼、妖怪、鳥、十二支、橋、船、水泳の様子などが描かれた頁がありました。水泳を描いたものは浮き輪を持って泳ぐ人や水の中を潜る人はまだ分かるのですが、水中で裃を着た人などもいてシュールですw こうした滑稽な洒落もちょいちょい出てきて、のびのびと絵を描いていたように感じられました。


<『北斎漫画』五編> 1816年
こちらは鳥居や鐘楼などの寺社建築、百人一首、日本神話などの頁が展示されていました。割とこの辺は浮世絵でも出てくるモチーフなので、研究していた様子が伺えます。


<『北斎漫画』六編> 1817年
こちらは武術に関する品や技をモチーフにしたのが多いかな。勇ましい武神、馬術、剣や鉄砲などの武器、逮捕術や関節技なんてものまであります。また、忍者を描いた作品もあり これは現代の我々が想像するようなベタな忍者の黒衣の姿となっていましたw 

<『北斎漫画』七編> 1817年
こちらは全国の名称、気象現象などが多めとなっています。滝や風景を描いたものもあり、後の富嶽三十六景や諸国瀧廻りに繋がっていくのを感じさせました。赤富士みたいな雰囲気の絵なんかもあります。


<『北斎漫画』八編> 1817年または1818年
こちらは裸の男達がアクロバティックなポーズを取る様子が展示されていました。ふんどしで鉄棒しているみたいなものや、ゴロゴロしたおでぶちゃん達、ひょろ長い痩せっぽちなどが特徴的な体つきの人なども描かれています。痩せ同士の相撲の様子なんかもあるのですが、貧弱そうでちょっと滑稽な感じでしたw


<『北斎漫画』九編> 1819年
こちらは戦いがテーマのモチーフが多めで、八艘飛びなどの故事、兵士、砲術などが描かれています。ここには馬の手綱を踏んで動きをとめる怪力の遊女を描いた作品もあり、これはドガがメアリー・カサットを描く時に転用したそうです。 他にも狼煙の種類を説明するようなマニアックな題材や、大爆発の様子などもあって、変わった面白味のある編となっていました。


<『北斎漫画』十編> 1819年
こちらは不思議がテーマで奇怪な物語や その登場人物などが描かれていました。九尾の狐や孫悟空、怨霊や鬼の買い物なんてのもあります。また、奇術の類もあって座敷芸や宴会芸なんかも描いています。無芸大食といって単に蕎麦を食うだけの奴もいましたがw 


<『北斎漫画』十一編> 1824年~1833年
こちらは笑える小ネタが多めになっていました。諺の色々、尻相撲、足相撲、羅漢舞(変な顔やポーズをして隣の人を真似ていくお座敷遊び)なんかがあります。他に目を引いたのが「西洋砲で海魔を撃つ」と「海魔・狩人と大鳥」という頁で、西洋の大砲が次の頁の海魔に激突している感じで描かれていました。まさに漫画的な表現で、ちょっとメタ的な遊びですね。


<『北斎漫画』十二編> 1834年
こちらはパロディやコミカルな動き、お下品ネタが多めかな。「風のいたずら」という絵なんかは軽いパンチラみたいな感じですw 他には忠臣蔵のパロディや平安時代の武将のパロディといった歴史物や、釣り人が人の顔に釣り針を引っ掛けている様子、尻を突き出して(尻子玉を餌に)河童を釣る様子、便所にいる主人の近くで鼻をつまんで待っているお供たち、混浴の風呂屋 など卑俗で笑える様子が多かったように思います。


<『北斎漫画』十三編> 1849年
こちらは亡くなった年の編で、神仏や人物略画などが描かれていました。人物略画では小道具に留意して描かれ、三味線を弾いていたり、掛け軸を観ていたり、傘張りしたりと 当時の世相を感じるような生き生きとした雰囲気がありました。また、この編の 大魚に乗る観音の姿を描いた「魚籃観世音」は、後にエミール・ガレが魚のデザインを転用したことでも知られています。


<『北斎漫画』十四編> 刊行年不明
こちらは水辺の人物や風景、動物などが描かれていました。特に動物の頁が多いかな。猫はネズミを咥えて鋭い表情をしていたり、唐犬という絵ではグレイハウンドのような身体の犬が、首をかしげる姿が可愛かったです。


<『北斎漫画』十五編> 1878年
最後は死後29年後に出された編です。こちらは狂画と呼ばれるパロディ的なモチーフや動物、子供の遊びなどが描かれていました。死後30年くらい経っても人気が衰えなかったのは流石ですね。最後まで可笑しくも鋭い観察眼が光る絵ばかりでした。

この他に、漫画「のらくろ」の作者が旧蔵した北斎漫画なども展示されていました。


ということで非常に多くのモチーフの北斎漫画を観ることができました。北斎漫画は色々な展示で観る機会がありますが、これは決定版と言える内容じゃないかな。浮世絵とはまた違った北斎の魅力が詰まっているので、北斎が好きな方にオススメの展示です。

おまけ:
北斎はお金に困ると画号を弟子に売ったり、掃除が面倒で引っ越しをしたというエピソードが残されています。その為、30回以上改名して93回も引っ越しをしたのだとか。江戸時代とは言え、何だか豪快なエピソードです。
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