関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス 【パナソニック 汐留ミュージアム】

10日ほど前の土曜日に新橋のパナソニック 汐留ミュージアムで「ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス」を観てきました。

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【展覧名】
 ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス 

【公式サイト】
 https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/18/180428/

【会場】パナソニック 汐留ミュージアム
【最寄】新橋駅/汐留駅

【会期】2018年4月28日(土)~6月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんが結構いて 会場が狭めなので 若干の混雑感がありましたが、概ね自分のペースで鑑賞することができました。

さて、この展示はピカソと共にキュビスムを創始したジョルジュ・ブラックの個展となっています。その為、きっとキュビスム絵画が沢山並ぶ展示だろうと予想していたのですが、そうではなく最晩年に取り組んだ「メタモルフォーシス」という立体作品を紹介する 一風変わった内容となっていました。日本でこれらの作品が紹介されることはほとんど無かったようなので、貴重な機会と言えそうです。展覧会は6つの章て構成されていましたので、各章ごとの様子を振り返ってみようと思います。


<序章>
この章は3点のみで、ブラックの画業について超ダイジェストで紹介しています。ジョルジュ・ブラックはル・アーブル生まれで、建築装飾の父を持ち子供の頃から絵を描くことに関心があったようです。18歳でパリに出て装飾画家の為の修行をすると共に、夜間講座や画塾で素描と油彩を学んでいきました。その後、本格的に画家を志すようになるとフォービスム(野獣派)にも参加したのですが、セザンヌからの影響とピカソとの出会いによってキュビスム絵画を作っていくようになりました。やがて絵の具には砂が混じり 絵画の物質としての側面を一層強く表現する静物なんかも残しています。ここにはその時代の作品も展示されていました。

1 ジョルジュ・ブラック 「モンソー公園」
こちらは最も初期の小さなグワッシュ作品です。公園の木々を描いていて、細部はよく分からないですが人影らしきものが描かれ木の鬱蒼とした感じがあるかな。ラフで印象派的な手法のようにも見える作品でした。

2 ジョルジュ・ブラック 「静物」
こちらはフランスの公的なコレクションで第一号となったキュビスム作品で、茶色や焦げ茶の色彩と曲線や直線を使ってグラスのようなものが描かれています。とは言え、かなりゴチャゴチャして抽象画みたいな感じで、静物というタイトルが無ければ具象と気づけないかもw 早い時期のキュビスムの実験的な雰囲気がよく出てるように思います。

3 ジョルジュ・ブラック 「楽譜のある静物」
こちらはマンドリン、レモン、水差し、楽譜などが置かれた静物画です。割とデフォルメは簡潔で、色彩も落ち着いていて軽やかな印象を受けます。キュビスムの手法自体が先程の作品よりもだいぶ洗練された感じです。表面にはざらついた部分があって、ここには砂が混じっているそうで 物の存在感そのものを表現しようという試みが見て取れました。


<第1章:メタモルフォーシス 平面>
この章から今回のメインテーマです。ここには1961年~63年に取り組んだ「メタモルフォーシス」の制作活動の根幹とも言える平面作品が並び、グワッシュや版画などが展示されていました。

5 ジョルジュ・ブラック 「青い鳥、ピカソへのオマージュ」 ★公式サイトで観られます
こちらは絶筆とされる作品で、金色の謎のモチーフを背景に、単純化されたコバルトブルーの2羽の鳥が描かれていま。キュビスムの要素もありつつ、マティスのジャズに通じるような雰囲気があるかな。色彩の取り合わせも面白く、絵としても十分楽しめます。さらに、この作品を含めこのコーナーの平面作品をよく観ておくと、後半の立体作品がより一層楽しめるようになると思います。(私は後で見返しにこのコーナーに戻ったりしましたw)

この辺には黒い紙に金色でジュエリーの下絵のような作品が並んでいました。

10 ジョルジュ・ブラック 「トリプトレモス」
こちらは今回のポスターになっている作品のグワッシュの下絵で、黒地の紙に赤い木の実のようなものを背にして蝶が2羽舞っている様子が描かれています。これをジュエリーにした作品も後で出てきますが、見比べるとかなり似た感じなのが面白いです。これも単純化具合がちょうど良い感じでした。

この近くには先程の「青い鳥」に図柄がほぼ同じで色違いの「ペリアスとネレウス」や、「トリプトレモス」を拡大したような同名のリトグラフ作品などもありました。同じモチーフを転用したり媒体を変えて何度も使っているようで、この後も同じ図柄がよく出てきます。

26 ジョルジュ・ブラック 「アタランテ」
こちらは女性の横顔を金箔で表した作品で、単純化されてエジプトの絵みたいな雰囲気となっています。表面には割と凹凸があってざらついた感じに見えるかな。タイトルはギリシャ神話で命を賭けて競走する美女の名前だと思いますが、こちらも立体作品でも後で出てくるモチーフです。
 参考記事:ナポリ・宮廷と美―カポディモンテ美術館展 ルネサンスからバロックまで (国立西洋美術館)

この辺は同様の金の板のような作品が並んでいました。


<第2章:メタモルフォーシス 陶磁器>
続いては陶器のコーナーです。こちらはブラックの原案を元にニースの陶器工房やロレーヌ地方のロンウィー窯で制作された作品が並んでいて、金を効果的に使った作品などもありました。

36 ジョルジュ・ブラック 「ヘカテ」
こちらはギリシャ神話の女神で、先程のアタランテとよく似ていますが おでこの辺りが尖っている女性の顔を表しています。白い輪郭と青く塗られた平面的な顔が ざらついた金属の皿に貼り付けてあるように見えるかな。この女神は富と戦いの勝利、漁業、畜産、育児などの幸福の女神だそうで(死の女神でもある)、このモチーフは今回の展示で一際多かったように思います。色が深くて気品のある雰囲気の作品です。

この近くには「キルケ」という作品があり、「ヘカテ」とモチーフは同じで金属板にしたような感じでした。

42 ジョルジュ・ブラック 「ペリアスとネレウス」
こちらは2羽の鳥を側面に貼り付けた壺で、壺自体は水色で丸っこい形をしています。こちらのモチーフは青い鳥と同じで、背景の色と共に爽やかな印象を受けます。こちらはロンウィーで作られたそうで、壺自体の滑らかな造形も見事な作品した。

この隣には丸皿に同じモチーフを表した作品もありました。

45 ジョルジュ・ブラック 「アケロオス」
こちらは四角い青の陶器の板に金の魚が2匹泳いでいる様子を表した作品です。背景には白と水色のオブジェがあって色の取り合わせが美しく感じます。割と深いマリンブルーと金の組み合わせが多いように思いますが、この作品はその中でも特に見栄えのする作品でした。


<第3章:メタモルフォーシス ジュエリー>
続いてはジュエリークリエイターのエゲル・ド・ルレンフェルドと共に制作した作品が並ぶコーナーです。この2人の協働は1961年にブラックが依頼して始まり、1963年にはパリ装飾美術館でブラック・ジュエリー展が開かれるなど当時から高く評価されていたようです。金、ダイヤ、エマイユ(七宝)、ルビーなど多彩な素材を使っていて、華やかな雰囲気のコーナーとなっています。

63 ジョルジュ・ブラック 「エウドラ」
こちらは太陽を擬人化して顔のようにした作品で、目の部分に赤いルビーが使われています。地の金色の金属は細かいざらついた質感をしていて、これはここまで観てきたブラックの立体作品と同様の特徴と言えるんじゃないかな。豪華だけどちょっと可愛らしい作品です。

この辺にはここまで観てきたモチーフを宝飾品にした作品も多く並んでいました。

47 ジョルジュ・ブラック 「三つの恩恵(三美神)」
こちらは3羽の鳥が重なり合うようなデザインのブローチで、目が無ければ箒星のように見える流線型となっています。3羽はそれぞれ異なる材質となっていて、首の部分で角度を変えて繋がっているような感じです。可愛らしさと洗練された雰囲気があり特に面白いデザインとなっていました。

48 ジョルジュ・ブラック 「トリプトレモス」 ★公式サイトで観られます
こちらは今回のポスターの宝飾作品で、2羽の蝶が赤い木の実の周りを飛んでいるような感じです。赤い部分はルビーのようで、放射状に金の葉っぱも伸びています。蝶はざらついた質感かな。こちらは先程ご紹介したデザイン画がそのまま立体化された感じで、再現性が高いのも見事でした。

近くにはネックレスや指輪などもありました。


<第4章:メタモルフォーシス 彫刻>
続いてこちらは彫刻作品のコーナーです。金属、鉱石、ガラスなどを使い、今まで観てきたのと同様のモチーフを彫刻にした作品が並んでいました。

78 ジョルジュ・ブラック 「メディアの馬車」
こちらは魔女メディアの戦車で、黒い馬と金色の馬車がブロンズで作られています。馬の下半身は戦車と一体化しているような感じで、戦車もちょっと不可思議な形をしています。作品自体が結構大きいので重厚感がある一方、疾走しているような躍動感もあって非常にカッコいい作品でした。

86 ジョルジュ・ブラック 「グラウコス」 ★公式サイトで観られます
こちらはアメジストの胴体と金色のブロンズの尻尾を持つ魚の像です。アメジストの部分はトゲトゲした原石みたいな感じで、独特の質感があるかな。モチーフに合わせて鉱物と金属の素材を活かした感じで面白かったです。

87~90 ジョルジュ・ブラック 「ペルセポネ」「セファレ」「キルケ」
これらはブラックが依頼したものの、生前は叶うことなく亡くなってしまった作品です。没後44年となる2007年にその遺志を汲んでドーム工房ガラス製作所で作られたそうで、緑・黄色・オレンジが混ざり合うようなガラスでざらついた仕上げとなっています。モチーフはここまで観てきたものですが、素材と色彩の違いでまた違った雰囲気となっているのが面白かったです。


<第5章:メタモルフォーシス 室内>
最後は装飾パネルやモザイク、タピスリーなどが並ぶコーナーです。先述の通りブラックは家業を継ぐために装飾美術の修行を積んでいたこともあって、ここではその経験が生かされた作品が並んでいました。

92 ジョルジュ・ブラック 「ペリアスとネレウス」
こちらは青や水色を背景に2羽の黒い鳥が表されたタイル画のような作品です。割とボコボコしたタイルの素材感が古代の壁画みたいに見えるのが面白いかな。色彩の爽やかさはこのタイトルの作品に共通しているかも。

90 ジョルジュ・ブラック 「半月鎌のある静物」
こちらは「ジェマイユ」と呼ばれるステンドグラスのような作品で、ジャン・コクトーが宝石(ジェム)とエマイユ(七宝)を合わせて作った造語となります。鎌と壺の置かれたテーブルが表されていて、キュビスムのブラックの絵画をそのままステンドグラスにしたように思えます。細かいガラス片を厚く重ねて溶着したような重厚な作りとなっていて、色も鮮やかです。後ろから光を当てて展示しているので、ステンドグラスっぽさを楽しむことができました。

この隣にあった「小さなビリヤード台」というジェマイユも良かったです。 ★公式サイトで観られます

101 ジョルジュ・ブラック 「ペリアスとネレウス」
こちらは青と水色を背景にした2羽の黒い鳥を表したタピスリーです。ここまで何度も観てきたモチーフですが、最後に大型のタピスリーがあるのは中々驚きでした。本当に多彩な表現をしているのを堪能することができました。


ということで、こんな作品があったのかという驚きの多い内容となっていました。同じモチーフを表現方法を変えているのも面白かったし、素材の活かし方も想像以上でした。ブラックの絵画を目当てに行くと肩透かしになるかもしれませんが、知られざるブラックの魅力を知る機会と言えそうです。私は満足したので図録も購入しました。

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