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皇室の名宝―日本美の華 <1期> (感想前編) 【東京国立博物館 平成館】

この秋、絶対見逃せない展覧会があります。それは「皇室の名宝展」で、かなり前から楽しみにしていました。早速行ってきたので感想を書こうと思うのですが、充実ぶりが半端じゃなく全部感動するぐらいの勢いでしたので、前編後編に分けてご紹介します。
なお、この展覧会は何よりも気をつけなければいけないのが会期です。1期と2期では全く内容が違うので、できれば両方行っておきたいところです。

DSC_6112.jpg DSC_6111.jpg


【展覧名】
 御即位20年記念 特別展「皇室の名宝―日本美の華」
 1期 永徳、若冲から大観、松園まで 

【公式サイト】
 http://www.bihana.jp/
 http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=6890
 http://www.kunaicho.go.jp/20years/touhaku/touhaku.html

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【会期】
  1期:2009年10月6日(火)~11月3日(火・祝)
  2期:2009年11月12日(木)~11月29日(日)

 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適 ※入場規制はありませんでした

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
この展覧は今の天皇陛下が即位して20年/ご成婚50年を記念したもので、一言で言えば物凄い内容です。圧倒されっぱなしで感動の嵐でした。途中からメモを取るのをやめて図録を買うことにして、作品をじっくり楽しんできました。
今日は、1章の中で特に気に入った作品をご紹介します。1章はほぼ全部気に入りましたが、流石に全部は書けませんw

<1期 1章 近世絵画の名品>
海北友松 「浜松図屏風」
金の砂浜と銀(茶色っぽいけど)の曲がりくねった川が描かれた屏風です。高い視点から観た感じで、緑の松や鳥が舞っている様子も描かれています。屏風らしい雄大さを感じると共に、静かな雰囲気を称えていました。ちょっと離れて全体を観るとより見事です。

伝狩野永徳 「四季草花図屏風」
狩野永徳の晩年に作られた一門の作品ではないかというもの。豪放な永徳の作品とはちょっと雰囲気が違う気がしますが、優美な四季の草花が咲いています。金地で非常に絢爛な雰囲気でした。

伝狩野永徳 「源氏物語図屏風」
右隻左側は「蜻蛉」、右隻中央は「少女(おとめ)」、右隻右側は「常夏(とこなつ)」というように源氏物語の各場面が描かれています。宮中を描いた作品によくあるように、頭上から天井がない建物を見るような構図で、部屋の中には雲が立ち込めています。そこに数多くの貴族達がいて、その細部まで細かく描かれていました。十二単などは特に上品で華麗でした。また、左隻は「若紫」の場面で、庭に桜が咲いているのを女性達が鑑賞している様子が描かれていました。よく観ると桜の部分がちょっと盛り上がっていました。繊細かつ豪奢で、皇室に相応しい品格の作品でした。

狩野永徳 「唐獅子図屏風」 ★こちらで観られます
これを観るためにこの展示にきました! 教科書などで誰もが知っている作品じゃないかと思います。結構な大きさで、屏風と言うよりは壁画だったのでは?という説もあるようです。(秀吉が毛利との和睦の際に送ったとされているようですが、秀吉が城の壁画として作ったというほうがしっくりする説のようです。)絵の左側の木の枝が不自然に切れていて、その先にも続きがあったのでは?と想像できます。
さて、絵そのものについてですが、非常に力強い唐獅子が2頭、平行して歩いています。何か2頭で会話しているような感じもしますが気のせいでしょうかw たてがみや尻尾に多くの渦が描かれていて、それがパワーを感じる源なのかも?と思いました。背景の岩場も含めて戦国武将の豪放さが出ているようでした。必見です!

狩野常信 「唐獅子図屏風」
狩野常信は狩野永徳のひ孫で、右隻の狩野永徳「唐獅子図屏風」の対と成る左隻を補完しています。永徳に比べるとゆるやかで優美な印象を受ける唐獅子が1頭、口をあけて左から駆け寄ってくるようです。…ていうか、餌くれー!って時の犬みたいw 流石に右隻ほどのインパクトは無いですが、素晴らしい作品でした。

作者不詳 「萬国絵図屏風」
明治天皇が傍に置いていた作品。右隻には、上部に馬に乗って向き合う騎士が2人×4組描かれ、その下にはロンドン、パリ、ローマといったヨーロッパの28都市の景観図が描かれています。
左隻には、真ん中に大きな世界地図が描かれていて、左右の端には各国の男女が3列×7段・3列×7段で合計42人描かれています。世界地図は結構精巧でオーストラリアや南北アメリカ、南極っぽいものまで描かれていて驚くのですが、何故か日本に北海道がなかったですw 何しろ江戸時代以前に描かれた屏風とは思えないほど世界各国に通じていて本当に驚きますが、実はこれは宣教師達が教会を飾るために日本人に教えて描かせた初期洋風画らしいです。修復の際に、この絵の下からローマ皇帝像の下絵が出てきたのだとか。色々ミステリーを感じる一枚でした。

伊藤若冲 「旭日鳳凰図」
2番目の部屋に入ると、ずらーっと若冲の作品があって、これだけでも凄い内容になっています。まずはこの鳳凰図。羽の毛1本1本まで緻密に描かれた鳳凰が色鮮やかに描かれています。右上には旭日が描かれていて目出度い雰囲気です。鳳凰はなんとも艶やかで、目に知性があって人のような眼差しでした。


さて、ここで「動植綵絵」シリーズの登場です。この動植綵絵は全部で30枚あって(全て同じサイズ)、京都の相国寺に釈迦三尊像と共に寄進された作品です。今回の展示では30枚全てを一気に観ることが出来ます。この動植綵絵はほぼ全ての作品で「裏彩色」の技法が用いられていて、奥深い色彩表現となっています。また、動物の目には漆が使われているそうです。
(「裏彩色」についてはこのブログでも取り上げたので、こちらをご参照ください。)
30枚全てが素晴らしかったのですが、特に気に入ったものをご紹介します。

伊藤若冲 「動植綵絵 雪中鴛鴦図」
雪の積もった木の枝に留まる鳥と、川に潜っているのおしどりと川べりにいるおしどりの姿が描かれています。雪の表現手法が見事で、本当に粉雪が降っているような感じです。雪の静寂の中に、おしどりが潜る水音が聞こえてきそうな雰囲気でした。

伊藤若冲 「動植綵絵 向日葵雄鶏図」 ★こちらで観られます
若冲といえば何と言っても鶏です! 若冲が描いた鶏は鳳凰のような風格と生命感があります。この絵では白と黒の混じった尾っぽや振り返る仕草に華麗さがありました。そして、その頭上にあるヒマワリと朝顔も細かく描かれ、葉っぱが虫食いされていている様子など、写実的で夏の生命溢れる感じを味わえる一枚でした。

伊藤若冲 「動植綵絵 紫陽花双鶏図」
身をかがめる鶏と、見事な尾を持った鶏(こっちも少し前かがみ)が描かれ、右から上部にかけて白と濃い青のアジサイが描かれています。他にもピンク色の花もあって華やかな雰囲気でした。鶏のとさかの赤と尾っぽの黒も印象的です。

伊藤若冲 「動植綵絵 梅花群鶴図」
満開の梅の下、3羽の鶴が休んでいるように見えます。(よく見ると左後ろにもう1羽、背中を向けているので計4羽) 鶴の純白のような羽にも細かい模様が描き込まれ、羽の質感がよくでていました。左にいる首を上げた鶴はすらっとした感じで美しかったです。梅との取り合わせが見事です。

伊藤若冲 「動植綵絵 群鶏図」 ★こちらで観られます
数えてみたら全部で12羽の鶏が所狭しと描かれています。それぞれ違う毛色をしていて、細かく掻き分けられています。右を向くもの、左を向くもの、正面を向くもの など様々に群れている鶏は、若冲の鶏画の集大成のようにも思えました。

伊藤若冲 「動植綵絵 芦雁図」
空から舞い降りた雁の姿が描かれています。頭を下に向け翼を広げる姿は堂々として滑らかな軌道を感じます。右には雪の積もった木が描かれている以外はまっさらな背景で、画面の中に広々とした空があるように思えました。

伊藤若冲 「動植綵絵 諸魚図」「動植綵絵 郡魚図」
若冲が描いているのは鳥ばかりじゃありませんw これは海の魚を描いています。みんな左下を向いていて、ちょっと図鑑みたいですw 特に目を引いたのは諸魚図の蛸で、左に長く伸びた足には小さい子蛸が巻きついていたのが可愛かったです。


若冲の部屋の後も江戸時代のビッグネームが揃い踏みで素晴らしい内容です。ただし、狭いのが難点でした…。


円山応挙 「源氏四季図屏風」
これまた「少女(おとめ)」を題材にした作品です。金雲の海の中にある島のように、屋敷や野山が描かれていて、やまと絵のような優美でしなやかな雰囲気が漂っていました。応挙にしては珍しい画風になっているのだとか。

円山応挙 「旭日猛虎図」
墨の濃淡で大きな虎が描かれています。崖っぷちで空の太陽を仰ぎ見る様子で、全体からは迫力が伝わります。 しかし、その顔は可愛いw 猫みたいな顔をしていて、特に眼が猫目で可愛かったです。

岩佐又兵衛 「小栗判官絵巻 巻第1・11・13」 ★こちらの「作品紹介」で観られます
どこか妖しい雰囲気の絵巻物です。この物語は主人公の小栗が死んだ後、恋人の助けによって餓鬼の姿で戻り、神として祀られるまでの物語のようです。緻密で鮮やかな色彩で描かれているのですが、閻魔大王や餓鬼の姿は妖しいオーラがありました。車に乗っけられて運ばれる餓鬼の姿はキモ可愛かったかなw

山口素絢 「朝顔狗子図」
3匹の犬の絵で、後ろに朝顔が描かれています。左の犬が後ろ足で耳をかいてて可愛いらしいです。3匹ともまるっこくてまだ子犬なのかな? ほのぼのした雰囲気でした。

長澤蘆雪 「唐子睡眠図」
赤い前掛けをした子供が布団をかけられて眠っています。唐子というのは中国の子供のことらしいですが、ちょっとアホ面の普通の子供かもw とても安らかな表情をしています。 体は簡略化された感じですが赤ん坊のぷにっとした感じが出ていました。

酒井抱一 「花鳥十二ヶ月図」 ★こちらの「作品紹介」で観られます
一月から十二月までの12枚の掛け軸です。特に気に入ったのは「五月 燕子花に鷭図」「八月 秋草に螽斯図」「十一月 芦に白鷺図」でした。 12枚のどれもが花鳥の美しさや生命感が出ていて、対角線上に描かれているという特徴がありました。抱一の作品はいつも優雅です。

葛飾北斎 「西瓜図」 ★こちらの「作品紹介」で観られます
北斎80歳頃の掛け軸。浮世絵以外にも色々描いていた北斎ですが、この絵は静物画の趣きがある作品で、水平に真っ二つに切られたスイカの上に薄布がしかれ、その上に包丁が置かれています。さらに上部から薄くリンゴ剥きしたスイカの皮が紐につるされていて、白っぽい皮と赤みがかった皮で紅白になっていました。七夕の儀式を模しているみたいな説明もあって、意味深な感じでした。

ということで、この時点で大満足なのですが、これで半分です。本当に恐るべし充実具合です。次回は後編で2章についてご紹介します。帝室技芸員たちの超絶作品がめじろおしですw

おまけ;この日は天気が良くて、噴水では虹が出ていました。
DSC_6105.jpg DSC_6107.jpg



 → 後編の記事を書きました。こちらです。引き続きよろしくお願いします。


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Comment
No title
かなり豪華ですねv-353
まさに名宝・・・!

私も絶対行きます!
はじめまして
はじめてコメントさせて頂きます。
住まいが上野に近い場所なので東京国立博物館はよく行く場所で、僕もこの「皇室の名宝展」は是非行きたいと思っています。
この記事を拝見して、なおさら行くのが楽しみになりました。
素敵な記事をありがとうございます。
No title
> ユーリ さん
この展示はまさに日本の至宝と言える内容ですので是非お出かけください。2期も楽しみです。

>masaki yamauchi さん
はじめまして。上野が近いってうらやましいですね! 上野は極上の展覧が多くて楽しいですよね。この展覧も最高級ですが、期間が短いのでそれだけは気をつけたほうが良さそうです。
今、感想の後編も書いておりますのでまたいらしてください^^
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