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岡本神草の時代展 (感想前編)【千葉市美術館】

この間の日曜日に千葉市美術館で「岡本神草の時代展」という展示を観てきました。点数が多くて見どころも多かったので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 岡本神草の時代展 

【公式サイト】
 http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2018/0530/0530.html

【会場】千葉市美術館
【最寄】千葉駅(JR・京成)京成千葉中央駅(京成) 葭川公園駅(千葉都市モノレール)など

【会期】2018年5月30日(水)~7月8日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
意外と空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は大正から昭和初期の頃に活躍した妖艶な女性像が個性的な日本画家 岡本神草の全容を紹介する初の大規模な回顧展です。岡本神草は若くして亡くなってしまい寡作だった為に完成作も少ないのですが、今回は初期から晩年までの作品があります。どちらかというと下図や習作などが多かった気がしますが、後半では先生や同門の画家の作品も展示されるなど、岡本神草のみならず周辺まで紹介する内容となっていました。今日はそのうちの半分の上階(岡本神草のコーナー)について気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第一会場>
まず第一会場は岡本神草の作品が並んでいました。岡本神草は1894年に神戸に生まれ、1915年に京都市立美術工芸学校絵画科を卒業、その後に京都市立絵画専門学校に進学しました。最初は当時流行していた新南画風の作品を描いていたようですが、1916年(大正5年)頃から生涯のモチーフとなる舞妓を竹久夢二風に描くようになり、徐々に浮世絵の影響を受けた官能的な画風に変わっていきました。新興の美人画作家として注目され、1920年(大正9年)の第3回国展で「拳を打てる三人の舞妓の習作」を出品すると神秘的な存在感を追求し、将来を期待されたようです。その後、菊池契月に師事し、昭和に入ってからは官能性を前面に出すのではなく そこはかとなく漂わす画風になっていったようですが、十分な成果を見せることなく38歳の若さで亡くなりました。ここには代表作やそれに関する素描や下図、資料なども展示されていました。

67 岡本神草 「口紅」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品で冒頭に展示されていました。蝋燭の下で口紅を塗る芸姑を描いたもので、目が狐のように細く真っ赤な唇が妖しい雰囲気を出しています。これは絵画専門学校の卒業制作で描いたもので、当時は顔と着物の細かい所は未完だったようですが、第一回国展の時に完成させて見事に入選したそうです。この画家の個性を強力に印象づける作品でした。

この辺は初期の作品が並んでいます。「菖蒲」や「鎌と鋏」といった無地を背景に対象を写実的に描いた作品や、スケッチ的な作品がありました。「蜜柑と柿」などは質感豊かに描かれていて、しっかりした教育を受けていた様子が伺えます。

123 岡本神草 「スケッチブック9」
こちらはスケッチブックで、芸姑の振り返る顔や傘を持った様子が描かれています。親しげな表情に見えて割と健康的な可愛さを感じるかなw 確かに竹久夢二のような可憐な雰囲気もあるように思いました。先程の「口紅」と同じ時期の頃に描かれたとは思えないスケッチです。

この辺にはスケッチブックが並んでいます。先述のスケッチブックより3年くらい前(1914年)に描かれた「スケッチブック3」はかなり夢二っぽいので、徐々に個性を出していったのかもしれません。

16 岡本神草 「お貞子ちゃん写生3」
こちらは八割れ尾白の犬(チン?)を描いたスケッチのうちの1枚です。ソファに座ったり、抱っこされたり、カーペットで伏せていたりと 現代のワンちゃんたちと同じように可愛がられている様子が伺えます。かなりラフに描いていますが、よく特徴が伝わってくるので こちらも岡本神草の腕前の高さが分かる作品だと思います。

29 岡本神草 「芸妓なか子」
こちらは芸姑の横顔を描いたスケッチで、簡単に色が塗られています。特に目鼻はしっかり描かれていて、口紅の紅さが目を引きます。ちょっと頼りない感じの若い女性で、方向性が竹久夢二を思い起こす儚い雰囲気となっていました。

この辺には芸姑や猫のスケッチ、夢二の模写なんかも何点かありました。

35 岡本神草 「アダムとイヴ」習作(ポール・ゴーガン《蛇の誘い》)
こちらはゴーギャンの模写で、鉛筆で 木の下でうずくまっているイヴを描いています。その隣には目をつぶったイヴ(アダム?)の顔も描かれていて、描きかけみたいな感じもします。やや妖しい気配がある表情で、岡本神草の着想源の1つとなっている様子が伺えました。

21 岡本神草 「藤に鴨」
こちらは掛け軸で、藤が密集している様子が画面の大半を占めていて、下の方に3羽の鴨がゆったり泳ぐ様子が描かれています。藤は淡く消え入りそうな繊細さで描かれているのが幻想的な一方、鴨は写実的に描かれていました。芸姑だけでなく花鳥も面白い作風であるのが分かる作品です。

この隣の「梨花」も淡くぼんやりした花の絵となっていました。割と花鳥は神秘的な作風です。他にも幅広い題材の写生や掛け軸の草稿などもありました。

28 146 岡本神草 「海十題」 玉村方久斗 「山十題」
こちらは同じ学校で1年先輩の玉村方久斗と共にそれぞれ「海十題」「山十題」として描いた横長の作品で、5点ずつ展示されていました。玉村方久斗は一目で南画っぽい画風で、今村紫紅の新南画に影響を受けているようです。一方、海の岡本神草はちょっと驚くような画風で、「太平洋の海」という作品では黄色い海を背景に白い服の男性がうたた寝している様子が描かれています。油彩のような鮮やかさと点描のような表現はここまで観た作風とは違う雰囲気となっているように思いました。海の影が鳥の形のようになって画面外の存在も感じさせるような面白さもありました。

この先にも草稿や未完の作品が続きました。「花見小路の春宵」という作品ではそれぞれの舞妓の詳細な下絵もあるのですが、顔を描かない素描段階で終わっているのがちょっと残念。

65 岡本神草 「春雨のつまびき」草稿3
こちらは大型の草稿で、三味線を持ち 豪華な簪を付けた花魁が描かれています。目が細く少し口を開けている様子が妖艶で、三味線を引く細い指もしなやかで色っぽい雰囲気です。また、着物が流れるような姿勢となっているのもこの作品の魅力で、下絵でも十分に傑作と思わせる作品です。これが完成しているのなら是非観たいと思わせる草稿でした。

この辺には「口紅」の草稿もありました。完成作と構図は同じですが、色が無いと受ける印象も違いました。

79 岡本神草 「仮面を持てる女」
こちらは般若の面を持ってこちらに視線を投げる女性を描いた作品です。ちょっと年増っぽく見えるかな。ジト目でじっと見られてる感じがしますw かなりリアルな細密描写で、女性の周りが赤黒いオーラのようになっているのが怖い…。何で般若の面なの?という疑問と共にインパクトのある作品でした。

この辺には「舞妓図」という妖怪のような女性像もありました。かなり細密で顔が写真のような作品が並んでいます。

76 77 岡本神草 「拳を打てる三人の舞妓(未成)」「拳を打てる三人の舞妓の習作」 ★こちらで観られます
こちらは今回の出品作の中でも特に大きな作品で、草稿・未完作・習作が並んでいました。お銚子とお猪口が乗ったお盆の周りに3人の女性が座り、手でポーズ(じゃんけんの一種?)を取っている様子が描かれ、中央の女性は両手を顔の前で広げる仕草となっています。習作の方は絵の中に長方形の白い枠があるのですが、これは展覧会に間に合わせる為にこの部分を切り取って出品した為のようで、今回はそのトリミング部分を修復して展示しています。着物や髪飾りなどまだ塗られていない部分もあるので、切り取った所で完成はしていませんが…。楽しげにも観えますが目が細く妖しい雰囲気もありました。

86 岡本神草 「五女遊戯」
こちらは5人の女性が机の周りで遊ぶ様子が描かれています。鉢に差した線香花火を観ている3人と、その傍らでポッピンみたいなのを咥えた女性がいるのは自然なのですが、何故か左端の女性は全く感心を示さず左を向いていて、傍らには赤い風船が浮かんでいました。ちょっとこの左の子のお陰でシュールな印象を受けるかな。妖艶さはないけど不思議な光景です。
この隣には五女遊戯 (未完)があり、構図は同じとなっていました。やや平面的な感じに見えます。

この近くにあった「骨牌を持てる半裸女」や「仮面」もちょっと変わった主題です


ということで、下絵や草稿が多くて もうちょっと完成作があれば良かったとも思いますが、妖しい女性像だけでなく様々な作品が見られました。中々個性的な画家なので記憶に残りそうです。後半の下階でも数点の岡本神草の作品と、関連画家の個性豊かな作品が並んでいましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。

 → 後編はこちら

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