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ガラス工芸の魅力 【千葉県立美術館】

前回ご紹介した千葉県立美術館の展示を観た後、セットとなっている「ガラス工芸の魅力」という展示も観てきました。

DSC09817.jpg

【展覧名】
 ガラス工芸の魅力

【公式サイト】
 http://www2.chiba-muse.or.jp/www/ART/contents/1523866842940/index.html

【会場】千葉県立美術館 第8展示室
【最寄】千葉みなと駅

【会期】2018年4月21日(土)~7月8日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はガラス工芸の発展に貢献した作家と、千葉県ゆかりの工芸家によるガラス作品が20点程度並ぶ内容となっています。作家も4人だけなのであっさり観られるのですが、高い技術と美意識が込められた作品ばかりで素人目にも驚きがありました。この記事を書いている時点でちょうど展示が終わってしまいましたが、今後の参考になるかもしれないので記事にしておこうと思います。それぞれ気に入った作品と共にご紹介して参ります。


[岩田藤七]
まずは昭和に活躍した岩田藤七の作品がありました。岩田藤七は帝展や日展で活躍し、パリ万国工芸展において銀賞も受賞していたそうで、「岩田硝子製作所」を設けています(後にこの会社に藤田喬平も入社しています。) 戦後はヴェネツィアガラスを学び、ギリシャ・ローマの彫刻や縄文・弥生の土器などにインスピレーションを得た作品も制作したようです。ここには岩田藤七の作品が6点並んでいました。

2 岩田藤七 「水指」
こちらは底がやや膨らんだ白い水指です。側面には白や黒のざらついた斑紋のようなものがあり、模様かと思いました。ガラスなのに質感が面白くちょっと力強さも感じられる作品です。

5 岩田藤七 「瓶」
こちらは貝殻のような形のガラス器で、ひだに沿って線が入っていて全体的にやや青みがかっています。形が優美な一方でこちらも斑紋のような細かいムラがあって、それが模様のようでした。遊び心を感じる作品です。


[各務鑛三]
続いては岩田藤七と共に「工芸作家協会硝子部東京会」を設立した各務鑛三(かがみこうぞう)のコーナーです。日本で初めてクリスタルガラスを本格生産した「各務クリスタル工芸硝子製作所」も設立したそうで、一貫してクリスタルガラスの美しさを追求し、日展や帝展でも活躍したようです。
ここには2点のみ展示されていました。円筒形の水指は蓋が付いていて側面には内側に凹んだ金属製の細い柱のようなものが並び、規則正しく整然とした印象を受けます。鈍い光も美しい作品でした。


[藤田喬平]
続いては藤田喬平のコーナーで、9点ほど並んでいました。藤田喬平はガラスが冷えて固まる瞬間を留めた流動シリーズや、琳派に触発された飾筥シリーズなどで知られ、1977年からはヴェネツィアのムラーノ島の工房で制作するようになり、現地の伝統技法を取り入れた作品なども作っていたようです。今回の展示の作家の中では最も頻繁に観る作家だと思いますが、流石と思える品々が並んでいました。

9 藤田喬平 「流動三彩」
こちらはドロドロに溶けたような感じの造形の作品で、赤・緑・青などがマーブル模様のように混じり合っています。溶岩のような印象を受けて、まさに流動的な三彩となっていました。用途はわかりませんが面白い作品です。

14 藤田喬平 「ヴェニス花鉢」
こちらは今回のポスターの作品で、角?のような形の台の上に、逆三角形の器が付いたガラスの鉢です。
DSC09829_201807081937176bc.jpg
器の側面には青・ピンク・緑の縦帯が規則正しく並び、レース紋様が細かく施されています。恐らくこの技法がヴェネツィアのレースグラスを模しているのだと思いますが、恐ろしく細かくて驚かされました。台座もくるっと丸まって植物的な感じにも観えました。
 参考記事:あこがれのヴェネチアン・グラス ― 時を超え、海を越えて (サントリー美術館)

16 藤田喬平 「飾筥・紅白梅」
これは東近美工芸館の作品とそっくりに見えるけど同じものかは分からず…。八角形の箱型の容器で、側面には金地に赤・黒・白・銀などを使って紅白梅を表しています。ヒビ割れのような細かい黒が木の枝のように見えるのが面白いかな。色彩感覚は琳派的で、ガラスと言わなければ蒔絵だと思ってしまいそうです。実に豪華かつモダンな雰囲気の作品でした。
 参考記事:日本の工芸ー自然を愛でるー (東京国立近代美術館 工芸館)


[石井康治]
最後は千葉県出身の石井康治のコーナーです。石井康治は「いいちこ」やAGFの「炭焼珈琲」のボトルデザインでデザインコンペの受賞をするなどの実績があり、1989年にスタジオを設立し千葉と青森にガラス工房を構えたそうです。東北の木立や花、渓流、湖などを題材に鮮やかな色彩と金銀を使ったきらびやかな作品が特徴のようで、ここにもそうした作品が並んでいました。

18 石井康治 「環象文器」
こちらはほぼ球体の器で、上に口がついています。青紫がかった感じの紋様が側面に組み合わさっていて、葉っぱのような、若しくは流水のような不思議な紋様となっています。緑やピンクなど淡い色彩と模様が美しく、これが東北のイメージなのかな? 可憐な雰囲気の作品でした。

19 石井康治 「彩花文器」
こちらは赤く平べったい形(スコップの先みたいな形)の縦長の容器です。フチは赤く全体的に赤~ピンクがかっています。側面には花の模様があり、流水に浮かんで流れていくような印象を受けました。軽やかで華やいだ雰囲気の作品でした。


ということで点数は少ないものの、4人とも異なる個性を発揮している作品が並んでいました。もう終わってしまいましたが、今後も観ることがある作家だと思うので記憶に留めておきたい内容でした。

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