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TOPコレクション たのしむ、まなぶ イントゥ・ザ・ピクチャーズ 【東京都写真美術館】

前回ご紹介した東京都写真美術館の展示を観た後、3階に移動して「TOPコレクション たのしむ、まなぶ イントゥ・ザ・ピクチャーズ」も観てきました。

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【展覧名】
 TOPコレクション たのしむ、まなぶ
 イントゥ・ザ・ピクチャーズ 

【公式サイト】
 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3050.html

【会場】東京都写真美術館
【最寄】恵比寿駅

【会期】2018年5月12日(土)~8月5日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
こちらもお客さんは結構いましたが快適に鑑賞することができました。

さて、こちらの展示は東京都写真美術館が誇る34,000点以上の写真コレクションの中から「たのしむ、まなぶ」をテーマに古今東西の名品が並ぶ内容となっています。キャプションがほとんどなくて作品の隣には番号しかないようになっていたのですが、これは写真を観て自分がどう感じるか、何が見えてくるかを重視する趣向のようです。構成は題材ごとに7つの章に分かれていましたので、各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<1.まなざし>
まずは被写体となった人の視線が気になる作品のコーナーです。

1 ロベール・ドアノー 「ピカソのパン」 ★こちらで観られます
こちらはピカソを撮った有名な作品で、ピカソはテーブルに向かっていて、そこにはパンが置かれています。このパンが大きな指のように見えるのが面白い趣向です。ピカソは何故か右の方に視線を向けていて、何かを見つめているのかな? この写真は小学生の時に初めて観て、パンがでっかい手のように見えるのがちょっと不気味に思えたのですが、大人になって観るとピカソの作風(特に新古典主義の時代)の特徴も上手く取り込んでいるように思えました。

6 荒木経惟 「センチメンタルな旅より」
こちらはアラーキーの新婚旅行の時の写真で、新幹線の中で水玉の服の女性(奥さん)がじっと何かを見つめている様子が撮られています。視線の先が非常に気になる…w 何気ない日常を覗き込んだ感じもしますが、その鋭い眼光のせいか奥さんは芯の強そうな印象を受けました。
 参考記事:
  荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017- (東京都写真美術館)
  荒木経惟 写狂老人A (東京オペラシティアートギャラリー)

この近くには藤田嗣治を撮った写真もありました。

5 ウィリアム・クライン 「クリスマスの買い物、メイシーズ付近、ニューヨーク、1954年」
こちらニューヨークの人々が行き交う様子が撮られた作品で、3~4人のサングラスの婆さんたちがこちらをじっと伺うように観ています。目はサングラスで見えないけど、いぶかしげに観ているような…w それも3~4人もいると中々の圧を感じて面白かったです。
 参考記事:写真都市展 -ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち- (21_21 DESIGN SIGHT)

この近くにあった森山大道「新宿#4.5118」という作品は狭い壁の間で3匹の猫が一斉に振り返った様子が可愛かったです。


<2.よりそい>
続いては主にポートレートのコーナーです。

25 植田正治 「<童歴>より」
こちらは子猫を猫つかみしている少年を撮った作品です。少年は笑顔で立っていて、子猫もキョトンとした顔をしているのが非常に可愛らしいです。いずれも無垢な雰囲気で、素朴な幸せが感じられる作品でした。童歴の作品を観るのも久々だったので嬉しい限り。
 参考記事:
  植田正治写真展 写真とボク (埼玉県立近代美術館)
  生誕100年!植田正治のつくりかた 感想前編(東京ステーションギャラリー)
  植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ -写真であそぶ- (東京都写真美術館)
  
31 ダイアン・アーバス 「一卵性双生児、ローゼル、ニュージャージー州、1966」
こちらは白いヘアバンドに黒い服を着た双子の女の子を撮った写真です。一卵性双生児なのでよく似ていますが、よく観ると右の子はハツラツとした表情の一方で左の子はやや怪訝そうに見えるかな。眉と髪型のちょっとした違いでそう感じられるのが面白かったです。それにしても双子の女の子の写真を観るとシャイニングの双子を思い出してしまいます…w(完全にトラウマです)


<3.ある場面>
続いてはちょっと変わった光景などを撮った写真が並ぶコーナーです。

61 W.ユージン・スミス 「楽園への歩み <ファミリー・アンド・フレンド>より」 ★こちらで観られます
こちらは葉っぱでトンネルみたいになった所から出ていく幼い兄妹の後ろ姿を撮った写真です。お兄ちゃんの手に捕まって慎重に進んでいるように見えるかな。ちょっと異世界から抜け出すような光景に見えて、小さいけど勇気を持って踏み出すような印象を受けました。

38 奈良原一高 「トイレット <消滅した時間>より」
こちらは岩だらけの砂漠の真ん中に立つ縦長の個室トイレを撮った写真です。MENと書かれていて1人の男性がそこに近寄っていく様子となっています。こんな砂漠に何故トイレ?というシュールさが面白く、背景とミスマッチした感じが印象に残りました。

40 エリオット・アーウィット 「ヴェルサイユ、フランス」
こちらは多くの絵画が並ぶ部屋の中を撮った作品で、何故か絵のない額縁の前に3人の人物が並んでじっとそれを観ています。額縁の中には張り紙のようなものがあるので、それを観ているのかな? 周りにはちゃんとした絵もあるのに絵のない所にお客さんが集まっているのが不思議で気になりました。 こういて野次馬は集まっていくのだろうか…w たまに貸出中の作品とかこんな感じにしてある美術館もあるので、それを想像させました。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 ヴェルサイユ宮殿


<4.会話が聞こえる、音が聞こえる>
続いては写真の中から会話や音が聞こえそうな作品のコーナーです。

73 ダイアン・アーバス 「ユダヤ人の巨人とその両親」
こちらは背を屈めていないと天井に頭が付きそうな若者と、その両親らしき夫妻が向き合って何かを話している様子を撮った作品です。若者は杖で体を支えているので、巨人症みたいな体質の問題で大きいのかもしれません。それを見上げる夫人はちょっと驚いたような顔をしていて、感嘆が聞こえてきそうな感じでした。

62 田沼武能 「浅草寺 賽銭箱をのぞく子供<東京 下町Part1 No.5>より」
こちらは恐らく浅草寺に初詣に来た様子を撮ったものだと思います。浅草寺の賽銭を投げ入れる所(賽銭箱ではなく賽銭エリアになっている)を柵の上から沢山の子供がじっと見ている様子が撮られていて、目線の先の沢山のお札のお賽銭を数えているのかも…。 その気持は痛いほど分かるw 大人でも気になるくらいのお札の集まり具合で、凄い!という子どもたちの心の声が聞こえてきそうでした。


<5.けはい>
続いては人は写っていないけれども人の存在を感じさせる作品のコーナーです。

90 北井一夫 「フナバシストーリーより」
こちらは団地のキッチンらしき所を撮った作品で、昭和っぽい雰囲気が漂います。所狭しと食器や台所用品が並んでいるのですが、雑多で片付いていないので生活感溢れています。住人はいないのですが、このキッチンを観るだけで住人の気質まで伝わってくるような写真となっていました。

この近くには植田正治の「小さな工場」もありました。UFOみたいな形の工場の写真です。

98 小畑雄嗣 「池田 <二月>より」
こちらは大きな観覧車を背景に、雪が壁のようになっている道を撮ったカラーの作品です。人っ子一人いない寂しい雰囲気と観覧車のミスマッチが面白くてシュールさと共に、逆に春になれば人が来るのではないかという気配を感じさせました。

87 アンドレ・ケルテス 「パリの椅子、1927年、パリ」
こちらは細い金属製の椅子が広場に無数に置かれた様子を撮った作品です。奥に1人だけ足早に歩いている様子が写っていますが、椅子に座っている人の姿は無くガランとしています。しかし微妙に向き合うようになっていたりして、普段はここで沢山の人が会話を楽しんでいる名残があるように思えました。寂しいようで想像力を掻き立てる作品です。
アンドレ・ケルテスは古本屋めぐりをして写真集を買い集めているくらい大好きな写真家ですので、是非とも個展を開催して欲しい…


<6.むこうとこちら>
こちらは撮るものと撮られるものの関係性などをテーマにした作品のコーナーです。

104 NASA 「ミッション:アポロ(サターン)14号」
こちらは月面にアメリカの国旗を突き立てて記念撮影している宇宙飛行士が写った写真です。手前には影があって、撮影者の存在を感じるかな。強い明暗からは地球とは異なる月面の環境の様子も伝わってくるようでした。

108 アンリ・カルティエ=ブレッソン 「ニューヨーク、アメリカ」 ★こちらで観られます
こちらはガラスの向こうで笑っている帽子にメガネの紳士と、ガラスの反射でニューヨークの町並みが写っている様子が撮られています。手前には2人の男女も反射に写っていて、どうやら船からニューヨークを望む場面のようです。反射を使って夢をもたせるようなニューヨークの建物の大きさや、それを観る各人の心境などを1枚で表現しているのが凄い視点でした。
 参考記事:マグナムを創った写真家たち~キャパ、カルティエ=ブレッソン、ロジャー、シーモア~ (FUJIFILM SQUARE フジフイルム スクエア)

この辺は影や反射で撮影者の存在を感じる作品がいくつかありました。


<7.うかびあがるもの>
最後は写っていない何かが浮かび上がってくるような写真のコーナーです。

128-141 中平卓馬 「<日常>より」
こちらは2枚ずつ一見するとお互い無関係の写真がセットになって展示されている作品です。庭木 と シマウマ、象 と ベンチで寝る人、ライオン と ベンチで寝る人 など、それぞれ対になっているのは何かの隠喩なのか?と考えてしまいます。一方で、雨の道を走る自転車 と 洋食屋のショーウィンドウ の組み合わせは、雨が降って急いで洋食屋に向かっているのかも?というストーリーを想像させました。色々考えさせてくれる面白い趣向の作品です。

118-127 ルイジ・ギッリ 「モランディのアトリエ」
こちらは観た瞬間にモランディのアトリエだと分かるくらいモランディの絵そのものといった感じの写真です。モランディの静物に使われたモチーフなどは思った以上に忠実なようです。また、背景を くすんだ茶色にするために紙を貼っていた様子など、制作過程も伺えたのも良かったです。


ということで、豪華な面々の代表的な作品が並ぶ贅沢な内容となっていました。鑑賞者同士で話すのも推奨されていたので、それぞれの写真を観てどう思うか意見交換するのも楽しいかもしれません。まさに写真を楽しむと共に学べる内容なので、写真好きのみならず幅広い方にお勧めできる内容でした。

ちなみに写美の1階にあるカフェ メゾン・イチで2018年8月5日(日)まで「ピカソのパン」を販売しているようです。この日は普通にパイとケーキを食べましたが、メゾン・イチは何でも美味しいので写美に行ったら毎回寄りたいお店です。
 参考記事:メゾン・イチ 東京都写真美術館内のお店(恵比寿界隈のお店)

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