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イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ ─ 【東京オペラシティアートギャラリー】

前回ご紹介したICCの展示を観る前に、同じ初台のオペラシティの中にある東京オペラシティアートギャラリーで「イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ ─」を観てきました。

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【展覧名】
 イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ ─
 Isamu Noguchi: from sculpture to body and garden 

【公式サイト】
 https://www.operacity.jp/ag/exh211/

【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅

【会期】2018年7月14日(土)~ 9月24日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんはいましたが、概ね自分のペースで観ることができました。

さて、今回の展示は家具や彫刻、陶芸、ランドスケープデザインといった様々な分野で活躍したイサム・ノグチについて紹介するものとなっています。イサム・ノグチは詩人・野口米次郎とアメリカ人の母親の元に生まれ、日本でも生活していた為 日本と関わりの深い芸術家で、日本人芸術家たちとの交流も多かったようです。今日の日本でも有名で、照明器具の「あかり」シリーズやモエレ沼公園なんかが特に知られているんじゃないかな。 今回はそうした多様な作品も含めて題材ごとに4つの章に分かれていましたので、詳しくは各章ごとに振り返ってみようと思います。なお、今回の展示は作品リストを貰えなかったので、作品ごとのご紹介は少なめです。


<第1章 身体との対話>
まずは身体をテーマにした作品のコーナーです。イサム・ノグチは晩年の彫刻作品に至るまで多岐に渡る仕事に身体の気配が見え隠れしているそうで、ここには比較的初期からの作品が並びます。 1930年頃はニューヨークで肖像彫刻の制作で生計を立てていましたが、自らの芸術のさらなる展開を求め、モスクワを経由しアジアに向かい、北京で画家・書家・篆刻家(てんこくか 印章を作る人)である斉白石から墨絵を学んでいます。そして北京で目にした人々を描いた北京ドローイングという作品を残しました。また、北京で7ヶ月滞在した後、幼少期を過ごした日本へと向かい 京都の陶芸家 宇野仁松の元で焼き物も手がけています。(中国で観た唐三彩に心惹かれて焼き物を始めたようです) 日本では埴輪の造形に関心を寄せていたようで、ふくよかで素朴な身体像を残したようです。さらに身体のテーマは1930年台から手がけた舞台装置の制作で一層顕著に現れたそうで、舞台装置としての彫刻は演者の身体と融合し、1つの空間を作りあげたようです。

展覧会の最初は北京ドローイングが並んでいました。裸婦や男性像などをスラっと描いた輪郭や 太めの墨で描いた部分などを使い分けていて、太い墨は人の形の大まかな流れを描いたような闊達な印象を受けました。半ば抽象画のような作品なんかもあって、流麗さと力強さを感じます(★こちらで観られます) 

その後は中国人女性の像や、玉錦(戦前の横綱)が立合いするところを素朴な感じで表した作品、金太郎をモチーフに埴輪のような感じで作った作品など、確かに日本に来てからは埴輪にインスピレーションを得たような作品もありました。イサム・ノグチは抽象彫刻で有名なコンスタンティン・ブランクーシにも学んでいたようで、シンプルなデフォルメというのに関心があったのかも。

最初の部屋には「ラジオ・ナース」という人の頭のような形のスピーカーもありました。これは初めて手がけた大量生産の工業デザインだったようですが、見た目は剣道の面のようなデフォルメとなっていました。未来的なようなレトロなような…w

その後は舞台装置のコーナーです。マーサ・グラハムの「フロンティア」で初めて舞台装置を手がけたそうで、ここでは同じマーサ・グラハムの「ヘロディアド」の映像と共にその時の舞台装置が展示されています。演者が飛び跳ねている様子と有機的なフォルムの舞台装置が確かによく調和している様子が伺えます。(★こちらで観られます)  先述の舞台装置もイヴ・タンギーの絵の中に出てきそうな謎の彫刻ですが、これらは世界各国の神話を源泉にしているようで、ヒンドゥー教のビシュヌ神の具現化を示す「化身(アヴァダーラ)」という作品なんかもありました。いずれも人体のようなニュアンスがあって優美な印象を受けます。

他にもコスチュームデザインや舞台装置の習作スケッチ、舞踏家としてヨーロッパで活躍した伊藤道郎が劇で使う仮面などもありました。伊藤道郎の仮面はちょっと能面みたいな感じもしますが起伏はちゃんとある独特の造形です。


<第2章 日本との再会>
続いては日本との関係についてのコーナーです。イサム・ノグチは1950年(45歳)に19年ぶりに来日を果たし、世界的に活躍し初めていたこともあって厚い歓待を受けたようで、丹下健三、谷口吉郎、剣持勇、猪熊弦一郎、長谷川三郎、岡本太郎など各界の著名な芸術家と親交を深めました。そして広島の橋や原爆慰霊碑、慶應義塾大学の新萬來舎のデザインなど様々なプロジェクトに参画し、1951年12月には映画スターの山口淑子と結婚しました。結婚してからは北大路魯山人が提供する北鎌倉の農家で新婚生活を送っていたそうで、魯山人の窯や、瀬戸や備前などでテラコッタに熱中して様々な作品を作っていたそうです。また、岐阜県を訪れた際には伝統的な燈篭に触発されて照明器具「あかり」をデザインし、和紙を素材とする岐阜提灯をモダンに蘇らせています。 この章ではそうした戦後の日本で取り組んだ仕事に焦点を当てて、生活や環境と結びつく彫刻として機能する作品を生み出していこうとするノグチ芸術の拡大をテーマにしていました。

この章にはまず陶器で作った作品が多く並んでいます。バラバラな人のパーツが串に刺さったような「暑い日」や、細長い埴輪が2体で抱き合うような「恋人」など人体のような作品が目を引きました。また、円筒埴輪のような柱壺(唐三彩のような釉薬が掛かっている)や、有機的な謎の形態を混ぜたような感じの作品、勾玉や縄文のアクセサリーのようなもの等、日本の古代文明への関心を伺わせる品などもあります。

その先には広島の原爆慰霊碑の習作がありました。実際には使われなかった設計ですが、半円状でドーナツの上半分みたいな形かな。側面には亀の甲のような線が入っていて、シンプルなデザインです。このデザインは先程挙げた建築家達との共通点も感じられました。近くには広島の鐘の塔という鎮魂の為に自らの遺志で作った塔のデザインもありましたが、こちらも実現はしませんでした。どうやらイサム・ノグチがアメリカ人ということが採用されなかった理由ではないかとの説もあるようです。この辺は受け手の感情もあるので仕方ないのかも…。

その奥の部屋には慶應義塾大学の新萬來舎に関する展示となっていて、テーブルと椅子が置かれていました。テーブルは台形で足の付き方が独特なので角度によっては浮かんで見えるのが面白いです。椅子も3脚という珍しい形で、これは中国の酒器「爵」から着想を得ているとのことでした。色々と自分のルーツを生かしているのも流石です。
また、建物の設計図や当時の写真、模型などもあって、古代の神殿のような雰囲気とモダニズム建築の雰囲気が合わさったような感じとなっていました。(★こちらで観られます) 谷口吉郎との共作で素材も日本のものを使っていたのだとか。
 参考リンク:慶應義塾大学アートセンター

その先は照明器具「あかり」のコーナーで、竹ひごと和紙で作られた照明がずらりと並びます。捻れた柱状の作品や、鏡餅みたいな形の作品、出っ張りのある有機的な形の作品など、形状は様々です。柔らかい印象で、見た目も光も温かみが感じられます。(★こちらで観られます

ここは1点だけ撮影可能で、2mもある巨大な「あかり」が展示されていました。
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素朴さとモダンさが融合した傑作です。洒落た家具のお店に行くと大体置いてあると思います。


<第3章 空間の彫刻 ─ 庭へ>
続いてはランドスケープを彫刻するという大規模な作品のコーナーです。イサム・ノグチは幼い頃に来日して鎌倉周辺の禅寺を散策していたようで、この庭との出会いが創造性に満ちたイサム・ノグチの感性を育んだようです。また、1931年には京都の寺を訪問し、日本庭園を通して生い立ちに彫刻家としての原点を見出したようです。さらに建築家バックミンスター・フラーから「庭は空間彫刻」との教えを受けてプレイグラウンドは人と彫刻を繋ぐ環境芸術として認識するようになったようです。

ここにはまずプレイ・マウンテンというニューヨークの一角を造成して遊び場にするような作品の模型がありました。山状のところにスライダーのようなものがある設計で、冬にはソリ遊びも出来るようです。また、セントラルパークの為に考案された作品もあり、本当に大地に彫刻するような起伏のある計画となっていました。ここでちょっと変わってて面白かったのが、ピラミッドのようなものと小さな山で顔の形を作った「火星から見るための彫刻」という作品で、火星の人面岩(と呼ばれる地区)を地球で作るような発想がオカルト好きの私には刺さりましたw 他にも国連のためのプレイグラウンドの模型や、「チェイス・マンハッタン銀行プラザのための沈床園」の模型があります。沈床園は映像もあって、噴水の中に石を配置している点や渦巻くタイル等から日本の枯山水の庭を彷彿とさせました。(★こちらで観られます
公園のデザインだけでなく、遊具のデザインも手がけていて、穴の空いた赤い「オクテトラ」の模型なども展示されていました。割とこれは見かけることが多いかな。(★こちらで観られます) 余談ですが、今回の展示では触れていませんでしたが、札幌のモエレ沼公園なんかもイサム・ノグチのデザインを実現化させた所(途中で亡くなりましたが)なので、この展示を観ていたらオクテトラなども含めて直にその場に行って体験したくなりました。


<第4章 自然との交感 ─ 石の彫刻>
最後は石の彫刻作品のコーナーです。イサム・ノグチは様々な素材を使った芸術家ですが、石との取り組みは別格の重要性があったようです。23歳の頃にコンスタンティン・ブランクーシの助手となった際に、道具の使い方や石の切り方の手ほどきを受けて、生涯の活動の基本となる原理を習得したそうで、石との取り組みは1960年代のころに庭を作る活動を本格化させる中で拡大していったようです。1960年代から大理石よりも硬い玄武岩・花崗岩に挑むようになり、高硬度の石を世界の創造に関わる宇宙の根本物質とみなし、石の声を聞くことで人間が存在する以前からの大地の歴史の「時間の凝結」を感じようとしたそうです。

最後の大部屋には石を使ったモニュメントなどが並び、クメール文化などから着想を得た作品や、ブランクーシへのオマージュなどもありました。

この部屋はこの「アーケイック」だけ撮影可能です。
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見るからに硬そうで、何処かの遺跡から出たと言われたら信じそうなくらい古代彫刻のような雰囲気もあるように思いました。


最後の通路では高松空港の為の石積み彫刻の模型も展示されていました。「タイムアンドスペース」という名前でピラミッドと円墳がくっついたような形をしています。最晩年にデザインしたものらしく没後に完成したそうで、イサム・ノグチが夢見た空から見る彫刻が実現した作品と言えそうです。見た目は遺跡そのものといった感じでした。


ということで、中々盛りだくさんの内容となっていました。多岐に渡って活躍した芸術家ですが、根本には日系アメリカ人として日本を再解釈した所が共通しているのではないかと思いました。割と身近に見る作品もあって現在も人気の芸術家なので、気になる方は是非どうぞ。デザイン好きの方にもお勧めの展示です。


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