関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

琉球 美の宝庫 (感想前編)【サントリー美術館】

20日ほど前の日曜日に六本木のサントリー美術館で「琉球 美の宝庫」を観てきました。見所が多い展示でしたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。 なお、この展示は細かく会期が分かれていて、私が観たのは2018/7/29時点の内容でした。

DSC01387.jpg

【展覧名】
 琉球 美の宝庫 

【公式サイト】
 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2018_3/index.html

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅

【会期】2018年7月18日(水)~9月2日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構多くのお客さんで賑わっていて、たまに混んでいる感じでしたが概ね自分のペースで観ることができました。

さて、今回の展示は「琉球」をテーマに幅広い美術品を通して琉球独特の文化や当時の日本・中国の関わりなども知ることができる内容となっています。サントリー美術館はちょくちょく琉球関連の展示を行っていますが、今回は主に第二尚氏時代の頃の染織・絵画・漆芸などが並んでいました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<冒頭>
まず最初に、1章の前にハイライト的に4章の漆芸の作品が並んでいました。

120 「黒塗菊花鳥虫沈金丸外櫃及び緑塗鳳凰雲沈金丸内櫃」 第二尚氏時代 15世紀
こちらは2重になった漆塗りの円筒形の箱で、蓋に花や蝶、蜻蛉などが表されています。内箱には日輪を中心に鳳凰や卍型の雲などが描かれ、中には勾玉などが収められていたようです。解説によると、この品は琉球王が久米島の神女(ノロ)と呼ばれる女性の祭司に送ったもので、王権を象徴する文様となっているようです。ノロは高い権力を持っていたそうで、沈金を用いた格式の高そうな技法となっていました。なお、この作品は琉球の漆芸品の中では最も古い名品中の名品なのだとか。


<第1章 琉球の染織>
1章は染織についてのコーナーです。ここには琉球の伝統的な紅型などが並び、鳳凰・龍・牡丹など大陸由来のモチーフや、松・桜・梅といった日本的な意匠、他にも中国や東南アジアから伝わってきた幾何学的な文様など、様々な文化との交流を感じさせる模様となっています。王族や高貴な人の衣装は首里王府の貝摺奉行所という機関の絵師が下絵を描いていたらしく、完成度の高い品々が並んでいます。

まずは紅型の裂地が4枚ほど並んでいました。特に「黄色地牡丹蝶鳥に桐桜模様裂地」という品は黄色地に花鳥が描かれていて、これぞ紅型といった趣となっています。他にも型紙があり、紅型は型に防染糊を塗って、それ以外の部分を染めるという技法で作られているという紹介もありました。
 参考記事:紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち- (サントリー美術館)

4 「白地流水蛇籠に桜葵菖蒲小鳥模様衣裳」 第二尚氏時代 19世紀
これは以前の紅型の展示で観た覚えがありました。白地に菖蒲、流水、蛇籠、桜、小鳥などを表している「長袖」と呼ばれた振袖衣裳で、モチーフは日本っぽく思えるかな。一方で色彩は赤・黄・藍を使って非常に鮮やかで、琉球っぽい色彩感覚に思えます。模様がパターン化して同じ場面が連なっているのも特徴と言えそうです。解説によると、琉球ではこうした衣裳を成人前の子供が着ていたそうで、こちらは江戸に赴く時に楽童子という人たちが着ていた可能性があるのではないかとのことでした。日本との関係性を感じさせる逸品です。

この章には他にも様々な衣裳が並んでいます。水色地や黄色地といった色鮮やかな衣裳もあれば 幾何学模様や縞模様など落ち着いた雰囲気の品もありました。琉球の多彩で高度な技術を感じさせます。


<第2章 琉球絵画の世界>
続いては琉球の絵画についてです。琉球絵画は第二次大戦で大きな被害を受けて全容は謎となってしまいましたが、戦前の写真資料などで高い技術を持っていたことが伝わっているようです。当時は日本や中国の優れたコレクションを持ち、薩摩や中国の福州へと学びに行った絵師もいたそうで、絵師の多くは貝摺奉行所に所属し室内装飾やデザインに携わっていたようです。一方、奉行所に属さず宮廷画家として活躍した絵師もいたそうで、そうした絵師も含めて近世琉球(1609~1879年)の頃の作品が並んでいました。

33 山口(神谷)宗季(呉師虔) 「花鳥図」 第二尚氏時代 1705(康煕44年)
こちらは掛け軸で、太湖石から蘭・カイドウ・牡丹などの花が咲き、小鳥がとまっている様子が描かれています。解説によると作者は30代の頃に中国の福州に留学していたそうで、この作品はその留学中に描いた品のようです。当時の福州画壇をよく学んでいたようで、かなり中国風の画風のように思えました。琉球と中国の繋がりを感じさせる品です。

36 山口(神谷)宗季(呉師虔) 「神猫図」 第二尚氏時代 1725(雍正3年) 
こちらは尻尾だけ黒い白猫が佇む様子を描いた作品で、ちょっと狐のようにも見えるかな。陰影を付けて立体的に描いていて、フワッとした感じもよく表れていました。これも中国風がよく出ている作品と言えそうです。

この辺には中国に学んだ絵画作品が並んでいました。題材も三国志など中国的なものがあります。

52 泉川寛道(慎克煕) 「うやんまあの図」 第二尚氏時代 19世紀
こちらは男女が1つの傘に一緒に入って歩く様子が描かれた作品です。解説によるとこの男性は八重山に赴任した役人のようで、女性は現地妻として世話をする「うやんまあ」という世話役の人だそうです。着物のような服を着ていて、男性は流水模様が涼しげです。一方の女性は亀甲文様のような柄で華やかな印象を受けました。なお、琉球の絵画に出てくる人物は簪を観ると身分などが分かるようで、この女性は身分はそれほど高くないとのことです。相合い傘で仲よさげなので、単なる役職ってだけの関係では無さそうに見えました。

54 佐渡山安健(毛長禧) 「仲田青毛之図」 第二尚氏時代 19世紀
こちらは写実的に描かれた横向きの馬の像です。西洋の陰影表現を使っていて、琉球における洋画表現の受容の様子を考える上でも貴重な品と言えるようです。肋が浮いている様子や筋肉の付き具合などもしっかりと描写されていて、しなやかな馬体表現となっていました。

74 「琉球貿易図屏風」 第二尚氏時代 19世紀
こちらは六曲一隻の屏風で、右の2曲に首里、左の4曲には船が集まる那覇の港が描かれています。船も様々で、中国から帰って来た船や 薩摩の船、地元のボートのような船などが描かれています。交易が活発だったのがつぶさに分かる光景じゃないかな。琉球がどのように栄えて隣国とどう付き合っていたかがこの作品に詰まっているように思えました。

66 絵画:作者不詳 書:鄭嘉訓「琉球美人」 第二尚氏時代 19世紀
こちらは六曲一双の屏風で、美人画と書が交互に並んでいます。(元々は別だったらしいので屏風に仕立てただけかな) この作品でも着物や簪、指輪などで身分の違いが分かるらしく、王女クラスから下級氏族まで様々な身分の女性が並んでいます。いずれの女性もスラっとした立ち姿で微笑むような表情をしていて、ほっそりとした手なども相まって可憐な印象を受けました。ちなみに右端の女性が王女クラスらしく、これは一発で分かるくらい豪華な出で立ちです。私としては偉くない子のほうが好みだったりしましたがw

80 「中山花木図」 江戸時代 19世紀
こちらは20種類の鳥と50種類の草花が描かれた作品です。色とりどりで鮮やかに見えますが、絹の裏から描く「裏彩色」を使って柔らかく繊細な色彩表現となっています。全体的に文人画のような趣きで、源流の中国絵画の影響を感じるかな。一方で博物学的な要素もあって面白い作品でした。

近くには琉球使節を描いた作品などもありました。

94 葛飾北斎 「琉球八景」 江戸時代 19世紀
こちらは葛飾北斎による琉球の風景画です。と言っても北斎は実際には琉球に訪れていないので、想像や清国の使いが記した『琉球国志略』という本の挿絵を参考に描いたものです。その為、画中には雪や富士山など琉球ではありえない光景も広がっていて、タイトルから察するに、瀟湘八景を念頭にしているんじゃないかな。水辺の橋や道などを描いているのが特にそう感じさせました。北斎の「琉球」という異国への憧れも感じさせる作品です。
 参考記事:ホノルル美術館所蔵「北斎展」 (三井記念美術館)


ということで、この辺までが上階の内容となっていましたので今日はここまでにしておこうと思います。琉球は日本・中国と接しながら東南アジアの文化も取り入れて発展していったので、独特の感性があるように思えます。下階はその粋とも言える国宝がずらりと並ぶ部屋もありましたので、次回はそちらについてご紹介しようと思います。

 → 後編はこちら



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