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琉球 美の宝庫 (感想後編)【サントリー美術館】

前回に引き続きサントリー美術館の「琉球 美の宝庫」についてです。前編は上階についてでしたが、今日は下階の展示についてです。まずは概要のおさらいです。

 前編はこちら

DSC01383.jpg

【展覧名】
 琉球 美の宝庫 

【公式サイト】
 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2018_3/index.html

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅

【会期】2018年7月18日(水)~9月2日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編に引き続き、私が観たのは2018/7/29時点の内容でした。会期が細かく分かれているので、お目当ての品がある方は作品リストを予め見て確認することをオススメします。
 参考リンク:作品リスト


<第3章 琉球国王尚家の美>
3章は特に見所となる国宝だらけの章です。琉球は15世紀後半に初代 尚円が国王に即位してから尚家によって治められてきました。当初は中国と冊封関係を結んでいましたが、17世紀初めに薩摩藩の侵攻を受けて日本の幕藩体制に組み込まれていきます。しかし中国との進貢貿易は続いて琉球王国も維持していき、首里はアジアの美が結びついた独特の文化に彩られ、各地の宝物で満ちていたようです。明治政府が成立すると、いわゆる「琉球処分」によって19代尚泰の王位が廃されて沖縄県が設置され、王国の文物の一部も東京に移されました。その後、沖縄は戦争で大きな被害を受けたわけですが、今でも琉球時代の品は残っていて、ここには特に貴重な珠玉のコレクションが並んでいました。

110 「黒漆雲龍螺鈿東道盆」 第二尚氏時代 19世紀
こちらは黒漆に螺鈿で細工された大型の箱です。螺鈿によって5本の爪を持つ龍が表されていて、夜光貝を材料にしているので虹色に光って見えます。解説によるとこの品は中国への進貢品らしく、クオリティが高いのも納得です。沢山の龍たちが流れるように舞っている姿が非常に見事な作品でした。ちなみに5本の爪を持つ龍は皇帝への品にしか許されないモチーフですので、格式が高い証と言えそうです。

この近くには「朱漆巴紋牡丹沈金馬上盃」や「黒漆葡萄螺鈿箱」といった国宝も並んでいました。

「玉冠(付簪)復元」 2014年
こちらは今回のポスターにもなっている第二尚氏時代(18~19世紀)に清に贈られた玉冠の復元です。簪が刺さっていて、表面には金の帯と金・銀・水晶など7種類の突起が規則正しく並んでいます。派手な中国っぽいセンスで見るからに豪華な作りとなっていました。私が観た時は復元した品でしたが、展覧会終盤の2018/8/22~9/2には本物の国宝も展示されるようです。本物も観てみたかった…。

この近くには尚家に伝わった品が並んでいました。着物や調度品などがあります。

119 「尚育王御後絵(彩色模写復元)」 2014年
こちらは先程の玉冠を被った琉球王 尚育を描いた肖像の復元です。御後絵は王が亡くなった時に描かれるもので、王の周りにも人の姿が描かれていますが、それに比べて王は何倍も大きく描かれています。これは王の権威を示しているようで、王への追悼の意が込められているように思えました。解説によると、この絵のオリジナルは第二次大戦末期の沖縄戦で焼失したようですが、戦前のモノクロ写真を解析して色鮮やかに復元したようです。かなり派手な色彩で往時の様子が伺えました。

この近くには復元の解説ボードなどもありました。東京藝術大学大学院保存修復日本画研究室によって再現されたようです。写真については後のコーナーにも出てきます。


<第4章 琉球漆芸の煌き>
続いては琉球の漆芸についてのコーナーです。琉球の漆器は中国をはじめとする周辺諸国との交流を通じて発展したそうで、始まりはハッキリしないようですが前編冒頭でご紹介した「黒塗菊花鳥虫沈金丸外櫃及び緑塗鳳凰雲沈金丸内櫃」が最も古い作例として考えられるようです。漆器は琉球の重要な輸出品であり、貝摺奉行所で制作を管理され、中国皇帝や日本の将軍・大名たちへと贈られたようです。それらは中国的なモチーフを螺鈿・沈金・密陀絵(油彩技法)などを駆使して表現していたようで、ここにはそうした作品が並んでいました。

129 「黒漆雲龍螺鈿大盆」 第二尚氏時代 18~19世紀
こちらは直径1mくらいある大きな黒漆の盆で、螺鈿を使い火焔宝珠を中心に2匹の5本爪の龍が向かい合っている様子が表されています。こちらは中国皇帝への贈り物で、龍は鱗までしっかりと表現されるなど大型でも緻密な仕上がりとなっていました。見栄えのする見事な作品です。

125 「黒漆葡萄栗鼠螺鈿箔絵箱」 第二尚氏時代 16~17世紀
こちらは蓋付きの方型の箱で、全面に葡萄の葉っぱや 葡萄の実、リスの姿が表されています。これらのモチーフは繁殖力を示す縁起の良いモチーフで、小さい作品ながらも細密な表現となっていました。可愛いらしさと技術の高さを感じる作品です。

131 「朱漆竹虎連珠沈金螺鈿座屏」 第二尚氏時代 17~18世紀
こちらは小さな鉛ガラスを編み込んで竹林の虎を表した屏です。屏の台座の部分が漆塗りとなっていて、沈金を用いて細かい文様も表されています。解説によると、虎の裏面には同じくガラス玉を使って漢詩が書かれているそうで、様々な技術が使われた面白い品となっていました。

この少し先には印籠などもありました。日本への輸出品として作っていたようです。

134 「黒漆葵紋螺鈿箱」 第二尚氏時代 17~18世紀
こちらは三葉葵の御紋が入った四角い箱です。徳川の御紋なので恐らく献上品と考えられるようで、かなり細かく草花が並ぶ文様となっていて可憐な印象を受けます。ちょっと今回の展示では観られませんでしたが、琴棋書画の画題を表した部分もあるそうで、小さいながらも非常に高度な技術が使われているように思えました。

148 「朱黒漆山水楼閣人物松竹堆錦螺鈿風炉先屏風」 第二尚氏時代 18~19世紀
こちらは黒漆を背景に螺鈿で絵を描いた屏風です。2曲で右に竹、左に松が描かれていて堂々たる雰囲気があります。左右には漢詩もあり叙情的な作品となっていました。こちらも技術とセンスが見事な作品です。


<エピローグ 琉球王国の記憶>
最後にエピローグとして、戦前に琉球王国時代の遺物を写真に収めていた鎌倉芳太郎を紹介していました。鎌倉芳太郎は戦前の沖縄研究の第一人者で、当時伝わっていた美術工芸を白黒写真で残しています。ここにはそうした写真が並んでいるのですが、首里城や守礼門といった建物は今と違って結構ボロボロに見えるかな。先述の玉冠や神事の様子の写真なども残されていて、鎌倉芳太郎によって 戦争で失われた品も現代に伝わっているようでした。


ということで、琉球の様々な美術品を観ることができました。特に3章は豪華な品が並んでいるので見所と言えそうです。(サントリー美術館は毎回のように会期が細かすぎるのが難点で、もっと一斉に実物を観たかったのが本音かな。) 残りの会期は少ないですが、これから出品される目玉作品もあるので、気になる方は出品リストをチェックしてお出かけになってみてはと思います。琉球の歴史も垣間見られる見ごたえのある展示でした。

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