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荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋 (ジョジョ展 感想後編)【国立新美術館】

前回に引き続き国立新美術館の「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」についてです。前編は1~3章についてでしたが、今日は4~7章の展示についてです。まずは概要のおさらいです。

 前編はこちら

DSC03688.jpg

【展覧名】
 荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋

【公式サイト】
 http://jojoex-2018.com/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2018/jojoex-2018/
 Twitter:https://twitter.com/JOJOex_2018

【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅・六本木駅

【会期】2018年8月24日(金)~10月1日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
 参考記事:
  ジョジョの奇妙な冒険25周年記念「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展」 (森アーツセンターギャラリー)
  【番外編】荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 in S市杜王町 (せんだいメディアテーク) ※2012年版
  岸辺露伴 新宿へ行く 展 (グッチ新宿)
  Japan Original Beauty 『ジョジョの奇妙な冒険』とのコラボレーション (資生堂銀座ビル 花椿ホール)
  映画「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」(ネタバレあり)


前半に比べると後半はだいぶ人が分散していた感じがします。人によって鑑賞時間が違うので、たいていの展覧会は後半は空いてくる傾向にあります。今回の展示は5章以降は逆流できなくなりますが、1~4章は行き来できるし観る順序が変わっても特に問題ないので、1章が混んでいる時は先に4章辺りから観ていくのも良いのではないかと思います。


<4 ハイ・ヴォルテージ>
4章は1~7部までのバトルシーンの原画が並ぶコーナーとなっていました。まずはカラーの表紙や扉絵が並び、今回の展覧会の為の描き下ろしも並んでいました。

こちらがそのうちの1つ。承太郎が富士山を背景にしている今回の展覧会のポスターにもなっている作品(写真はフォトスポットで撮ったものです)
DSC03680.jpg
承太郎もスタープラチナも連載時とだいぶすっきりして雰囲気変わっているようにも思えますが、ポーズなんかはジョジョらしさを感じます。

この隣にはディオが大きな月を背景に、膝に乗せた石仮面に頬杖ついて物思いに耽る作品も並んでいます。月のクレーターがザ・ワールドになっているのが面白いかな。荒木先生によると、これはメディチ家の礼拝堂の彫刻を参考にしているそうです。伝統的なメランコリックのポーズですね。

その先に各部の戦闘シーンの原画が並んでいます。各部12ページ分の戦いが並び、疾走感やパワー溢れる様子となっています。康一君のセリフじゃないですが、生原稿の迫力はまた違いますw 単純にやや大きめというだけでも一層臨場感を感じることができました。各部の展示ページは以下の通り。
 1部:ジョナサン絶命までの12P分
 2部:これから死ぬんだな の辺りから火山で死んだと伝えた辺りまで
 3部:ディオの時止めからロードローラーを抜け出す辺りまで
 4部:最後に仗助が射程距離内に入った辺りから猫草が防御する直前辺りまで
 5部:レクイエムで時間が逆光してたどり着かない辺り
 6部:イルカに乗って移動する辺り。エンポリオを逃がすまで
 7部:大統領に爪弾を撃ち込む辺り

ここでも解説機で面白いエピソードを聞くことができました。荒木先生はオラオラ無駄無駄のラッシュのシーンについて描くのが大変ではないかとよく聞かれるそうですが、そこを描く時は自分自身も盛り上がってくるようで、そういう音楽を聞いてカタルシスを感じながら一気に描いているので苦では無いようです。しかもアシスタントにはトーン貼りと集中線を描かせる程度で、他は荒木先生自らが描いているそうで、1人弾き語りみたいだと語っていました。凄すぎてリアルに岸辺露伴みたいな人だと思われてしまうのはそういうとこなのかも…w

4章にもフォトスポットがあり、先程の承太郎と共に岸辺露伴の大型パネルもありました。
DSC03677.jpg
これは『岸辺露伴ルーヴルに行く』の時の絵ですね。背景にルーヴル見えてるしw


<5 AURA>
続いての5章は「WOW 映像展示作品 AURA」という映像のコーナーです。ここは正直 目的がよく分からないコーナーでしたが、スタンドはどうやって生まれてきたか?をテーマにした映像のようでした。と言ってもメイキングとかの話ではなく、ミミズのようなものが魚群のようにうねる場面や、てんとう虫が密集している様子や花の螺旋、糸が集まっている(ストーンフリーみたいになる)感じかな。最後に主人公たちのスタンドが出てくるので、何となく分かるような分からないようなw ちなみにこの部屋に入ると1~4章に戻れなくなるので要注意です


<6 裏切り者は常にいる>
続いては今回の展示の為に作られた完全新作の大型壁画のような原画のコーナーです。各部のキャラクターが概ね1枚に1~2人くらい描かれたものが12枚並び、両脇の1枚は側面に展示されているのでコの字のようになっています。荒木先生自身の解説によると、これは最後の晩餐を着想源にしているようで、キャラクターはシルエットのバランスによって選んで配置しているようです。等身大なので徐倫とか描いていると撫でているような感覚になったり、広瀬康穂を描いていたら広瀬康穂が可愛く思えてきたと語っていました(後でメイキング映像もあります) 絵は真ん中あたりに黄色い富士山のような山があり、その周りは荒野となっている風景で、富士山の前には承太郎の後ろ姿があります。キャラクターは左から順に、徐倫、広瀬康穂、ブチャラティ、ジャイロ、ディオとザ・ワールド、承太郎、イギー、キラークイーン、ザ・フールとハイエロファントグリーンが一体化したようなスタンド、ハーヴェスト、4部の吉良吉影、ウェザー・リポート、D4C、スティッキー・フィンガーズ、定助とソフト&ウェット、由花子、カーズ となっていました(抜けがあるかも)

確かにこれだけ等身大のパネルが並ぶとそこに存在するような感じがして圧巻でした。色も鮮やかで、見事な仕上がりです。荒木作品の新境地とも言えるメモリアルな作品です。


<7 ジョジョリロン>
こちらには先ほどの大型原画のメイキング映像と、荒木先生と西洋美術との関係性や漫画術、影響を受けた映画などをパネルで紹介していました。
まず、メイキングを観ると最初に構図を決める為に小下絵のラフを描いていて、キャラのバランスを考えて位置を変えるなど試行錯誤していました。これはこのコーナーの部屋の中央あたりに展示されているので実物を観ることができます(そのケースにはこの絵を描く時に使った絵筆なども展示されています) また、大型の画面に描くのは初めてだったようで悪戦苦闘する様子も映されていました。立てかけて描いているので絵の具が垂れたり、ペン入れの角度がいつもの原稿とは違ったりしたようです。それでもしっかりと仕上げてくるのは流石ですね。

その後はジョジョとアートということで、ジョジョと西洋美術を比較する解説ボードがありました。初期からミケランジェロやフラ・アンジェリコが使った「カンジャンテ(玉虫色)」と呼ばれる影を暗くせずに立体感を出す手法に通じる配色をしていたようで、この配色がジョジョらしさを感じる1つだと思います。この技法は近代ではゴッホやドニなんかも使っているので、ポスト印象派(特にナビ派)に通じるものを感じるのも気の所為では無さそうです。
構図もエゴン・シーレの自画像に似せてシーザーを描いたり(マンマ・ミーアと言ってるシーン)、システィーナ礼拝堂の「リビアの巫女」を左右反転させたのがサンタナの復活のシーンだったりしますw 他にもクリムトやイグナティウス・デ・ロヨラの昇天の図、ロダンなどからの引用もあるようです。ホルマジオが輪切りにされるシーンなんかはダミアン・ハーストそのものだし、ルネサンス、近代、現代と幅広い知見が活かされているようでした。

続いてはジョジョのストーリーに関する考察のコーナーです。荒木先生はキャラクターを非常に重視していて、登場するキャラクターはみんな60項目近くある「身上調査書」で肉付けされているようです。これは以前に映像を観たことがあるのですが、このキャラクターの過去はこうで、癖はこうで、好みはこうなので、こう考える といった感じで構築しているので、自然とキャラクター達が動き出して魅力的かつ度肝を抜くようなストーリーになるようです。また、少年誌ではありがちな「強さのインフレ」問題についてですが、ジョジョは強さのトーナメント形式ではなく 道中もの とすることで解決しているとのことです。作中にあるように相性とか応用の仕方で強弱が結構変動するのも話が読めなくて面白い点だと思います。(ドラゴンボールみたいな強さのトーナメント制になると、ヤムチャがフリーザ様に勝つ展開とかありえないですからねw)

その後は映画とジョジョの関係のコーナーです。荒木先生は映画の面白さをノートに克明に分析する習慣を40年以上続けているそうです。特にサスペンス映画の演出やストーリーなどは参考になるそうで、たまにそれっぽいシーンとかありますねw ちなみにキャラクターにも影響しているようで、前編でもご紹介したクリント・イーストウッドと承太郎の他に、ブレードランナーのロイ・バッティ(レプリカント達のリーダー)とディオ、ナインスゲートのディーン・コルソ(ジョニー・デップ)と岸辺露伴なんかも挙げられていました。ブレードランナーは何度も観てますが、ディオの元ネタにもなっていたとは意外でしたw

最後に、荒木飛呂彦 氏の年表と、ジョジョ以外のバオー来訪者やゴージャス☆アイリンなどの単行本も展示されていました。


<ショップ>
今回はショップも充実しています。シートを貰って記入し、それを渡す形式なのですが、当然ここもめちゃくちゃ混雑していましたw 今回は私はここでの購入は諦めました…。


<グッズ付先行予約券の特典グッズ>
一方、私は今回 グッズ付先行予約券で入ったので、入口で特典グッズの引き換えをしてきました。グッズ付先行予約券は6500円なので、差分は5000円くらいありますw

こちらが特典グッズの入れ物。
DSC03735.jpg
結構しっかりした入れ物で、折り畳めるようになっています。

中身は1~8部のシールのシートが2枚ずつ入っていました。中々アーティスティックな品なので、これは嬉しい。

1~2部。
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カーズが特に良いw

3~4部
DSC03741_20180903234201535.jpg
吉良吉影はもうちょっと大きめにしてほしかったw

5~6部
DSC03744.jpg
これ、貼るのが勿体なくて使えそうにないのですが、嫁が速攻でジョルノを剥がして使おうとしてきて悶着になりましたw

7~8部
DSC03746.jpg
ジョニーの顔w ジャイロも同じ大きさにしてほしかったw


ということで、ジョジョ好きには非常に楽しめる内容となっていました。後半の大型原画は今回の展示でも特に見所と言えそうです。たった1ヶ月くらいしか期間が無いのが残念ですが、ジョジョ好きの方は是非足を運んでみてください(基本的には予約制です) この秋から始める第五部のアニメも待ち遠しいです。

この後、近くのメルセデス・ベンツのショールームにあるカフェに行きました。そこでもジョジョとのコラボを行っていましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。
 参考記事:DOWN STAIRS COFFEE(ダウンステアーズコーヒー) 2018年09月ジョジョ展コラボ【六本木界隈のお店】

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