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フェルメール展 (感想前編)【上野の森美術館】

先日の金曜日の会社帰りに上野の森美術館で「フェルメール展」を観てきました。非常に見応えがある展示でしたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。なお、この展示には会期によってフェルメール作品1点の入れ替えがありますが、私が観たのは10月上旬の頃の内容でした。

DSC04720.jpg

【展覧名】
 フェルメール展

【公式サイト】
 https://www.vermeer.jp/

【会場】上野の森美術館
【最寄】上野駅

【会期】2018年10月5日(金)~2019年2月3日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
時間帯によっては非常に混んでいて、入場30分待ちくらいの行列が出来るようでした。しかし、並べば入れる訳ではなく、この展示の当日券は時間帯ごとに入場の制限があるので注意です。この時間割が今後も同じかは定かではないですが、この日はこんな感じで分かれていました。
DSC04730.jpg
前の回と観終わった後の次の回を観察して分かったのですが、例えば15時~16時半の回は15時丁度くらいが無茶苦茶混みます。しかし16時くらい(入場開始から1時間後)は並ばず入れるくらいのようでしたので、私は17時からのチケットだけ先に買っておいて、東博とカフェで時間を潰してから18時くらいに入場したら 並ばずに中も比較的落ち着いて鑑賞できました。まあ皆がそれに気づいたら使えなくなる技かもしれませんが、入場開始直後よりはマシだと思います。公式ツイッターでは混雑状況やチケットの状況などをつぶやいているようですので、お出かけされる際にはチェックすることをおすすめします。
 公式ツイッター:https://twitter.com/VermeerTen


さて、この展示は今やかなり有名な画家の1人となった17世紀オランダの画家ヨハネス・フェルメールと、同時代の画家たちの作品が並ぶ内容となっています。フェルメールが人気になったのはここ20年ほどくらいですが、今やこれだけの活況となる知名度となったのは 作品自体の魅力に加えて「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」の数奇な運命や現存作品が35点しか無いなど、様々なドラマが盛り立てているように思えます。しかも今回の展示では35点中9点(会期中入れ替え1点あり)も観られるので、これだけで一気に1/4も観られる計算となるので盛り上がるのも当然と言えそうです。フェルメールについては過去の記事でも何度も書いたので、詳しくは参考記事を読んで頂ければと思いますが、今回の展示では2階の周辺画家の作品を観てから1階のフェルメールルームで一気に8点のフェルメールを観ていくという流れになっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品を通してご紹介していこうと思います。なお、この展示はチケット代は一般が2700円と相場に比べて1000円近く高いですが、その代わりに全員に音声ガイドが付いてきます。また、作品リストも結構立派で全作品に簡単な解説が載っていました。これで美術初心者でも分かりやすく解説してくれるので、幅広い層が楽しめるのではないかと思います。
 フェルメールの参考記事:
  マウリッツハイス美術館展 (東京都美術館)
  マウリッツハイス美術館展 2回目(東京都美術館)
  ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年 (国立西洋美術館)
  フェルメールからのラブレター (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメールからのラブレター 2回目(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 2回目(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画
  ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画 2回目 (国立西洋美術館)
  フェルメール光の王国展 (フェルメール・センター銀座)



<第1章 オランダ人との出会い:肖像画>
前置きが長くなりました。フェルメールは最後の章だけで、まずは同時代の画家たちによる肖像のコーナーです。17世紀オランダでは裕福な市民が肖像を所有するのが慣習化していたようです。

1.2 フランス・ハルス 「ルカス・デ・クレルク(1593年頃~1652年)の肖像」 「フェインチェ・ファン・ステーンキステ(1603/04年~1640年)の肖像」
2枚セットの夫婦肖像画で、左に腰に手を当てこちらを見て微笑む黒い服の男性、右にこちらを見ながらやや怪訝な表情の黒い服に襞襟の付いた女性が描かれています。いずれも等身大で描かれ、写実的ながらも生き生きとした印象を受けます。2人とも敬虔なプロテスタントのようでこの服装は厳格な規定に従っているとのことでした。

7 ヤン・デ・ブライ 「ハールレム聖ルカ組合の理事たち」
こちらは7人の黒衣の男性が集まっている肖像で、そのうちの1人の男が持っている円盤には聖ルカが描かれています。この聖ルカは医者と画家の守護聖人で、この会合は芸術家の職業組合であることを示しています。こちらを振り返っている人が5人くらいいて、鑑賞者自身が来訪したようなリアクションに思えるかな。陰影が強く、ドラマチックで写実的な画風となっていました。


<第2章 遠い昔の物語:神話画と宗教画>
続いては神話と宗教を主題にした作品のコーナーです。特に聖書を題材にした作品が並んでいました。

8 ヘンドリック・テル・ブリュッヘン 「東方三博士(マギ)の礼拝」
こちらは大型の作品で、幼子イエスの誕生を祝いに来た東方三博士と多くの人達が描かれています。特に目を引くのは博士の持っている金属の杯で、光沢があり立体感もあって非常にリアルな質感です。よく観ると割と荒目のタッチとなっているのに浮き出すように見えるのに驚きです。それ以外の部分はくすんだ落ち着いた雰囲気に見えるかな。肝心の幼子イエスはあまり可愛くなく、普通の赤ちゃんに観えましたw 

この辺にはカラヴァッジョに影響を受けた陰影が劇的な作品もあって、画風も様々な画家たちの作品が並んでいます。

12 レンブラント周辺の画家 「洗礼者ヨハネの斬首」
羽飾りを付けたサロメと、洗礼者ヨハネの首を盆に乗せて刀を携える処刑人を描いた作品です。サロメは舞の褒美に王に洗礼者ヨハネの首を所望したという話に基づいていて、ここでは既に洗礼者ヨハネは目を閉じた生首で生気がありません。サロメは派手な格好ですが、怪訝そうな顔が悪女っぽい雰囲気w 一方の処刑人は原始人みたいな荒々しさを感じさせます。2人は強い光が当たるドラマチックな演出となっていて、この辺にレンブラントからの影響を感じさせました


<第3章 戸外の画家たち:風景画>
続いては風景画のコーナーです。今では風景画はよく観るジャンルですが、昔は風景画は地位の低いテーマで、17世紀頃から徐々に浸透していきました

18 コルネリウス・ファン・ウィーリンヘン 「港町近くの武装商船と船舶」
こちらは武装した貿易船と、周りにも沢山の船が描かれた作品です。さらに手前には小舟と漁師たちの姿もあり、港の活況を伝えています。かなり精緻で写実的に描かれているので実景のように思ってしまいますが、実はこれは描きとめたスケッチを合わせて想像で描いているのだとか。作者の想像力に驚く作品でした。

この隣には当時人気だった捕鯨を描いた作品もありました。

19 シモン・デ・フリーヘル 「海上のニシン船」
こちらは海の上の小さな漁船を描いた作品で、全体的に黄土色がかった色彩となっています。水平線が低いこともあって広々とした雰囲気で、モヤがかかったような柔らかい表現となっています。波の色の違いなども幻想的で、何処と無くターナーを思い起こすようす光景となっていました。

23 エマニュエル・デ・ウィッテ 「ゴシック様式のプロテスタントの教会」
こちらは非常に大きな教会の内部を描いた作品で、下の方にはタイルを剥がして墓穴を掘ったシャベルを持つ男と、マントの男が何か話しています。その脇には2頭の犬の姿もあり、教会の中とは思えないくらい自由な感じw 天井が高くゴシックのコウモリ天井となっていて光が差し込む様子が美しく、柔らかくも明暗が強く感じられると共に、安らぐような神聖さも表れています。特に柱に光が降り注いで白く反射しているのが目を引きました。これも実景のようなリアルさがあるのですが、いくつかの教会の細部を組み合わせているとのことでした。

この他にも教会内部を描いた作品がいくつかありました。


<第4章 命なきものの美:静物画>
ここはあまり点数がありませんでした。静物を描いた作品のコーナーです。

26 ヤン・ウェーニクス 「野ウサギと狩りの獲物」
こちらは木に足を吊るされた野うさぎと 何種類かの鳥が倒れている様子が描かれた作品です。背景には大きな花瓶や遺跡のようなものもあって、ちょっと神話的な雰囲気おあります。うさぎには強い光が当たり、ふわふわした毛並みの見事さがよく伝わってきます。かなりリアルで暗い部屋で見たら壁からうさぎが吊るされているように見えるかも? 現代人からすると残酷な主題に思えますが、こうした画題は狩猟をする裕福な貴族の象徴としてよく描かれたモチーフです。この作者の力量は相当で、見栄えのする作品でした。


<第5章 日々の生活:風俗画>
続いては人々の生活を描いた風俗画のコーナーです。風刺や教訓の込められた作品が並んでいました。

36 ヤン・ステーン 「家族の情景」 ★こちらで観られます
オランダの風俗画と言えばこのヤン・ステーンです。この作品ではテーブルを囲んで楽しんでいる家族を描いていて、中央には抱きかかえられる赤ちゃんの姿があります。しかし周りは酷い有様で、仰け反って行儀悪い女性や 足を投げ出してパイプを吸う男性などろくでもない親共です。解説によると、これは「老いが歌えば若きは笛吹く」(この親にしてこの子あり)という諺が込められているようでした。この子もこうなってしまうんでしょうね…。いつの世も大人は子供が真似しないよう行儀の悪さには気をつけないといけませんw

33 ハブリエル・メツー 「手紙を書く男」「手紙を読む女」 ★こちらで観られます
こちらは今回のフェルメール以外の画家で最も目を引きました。ここでは2枚の作品が対になっていて、テーブルに向かって手紙を書く男性を描いたものと、縫い物をしている女性(女中?)と手紙を持ちつつカーテンを開けて嵐の中の船を描いた画中画を観ている作品となっています。一見するとフェルメールの絵にも出てきそうな題材でフェルメールから影響を受けているらしいですが、この絵にも教訓が込められていて、男については背景にある画中画に描かれた山羊と額縁に表された鳩が欲望を象徴することから、移り気を示しているようです。一方の女性も嵐の絵から「愛は荒れる海のよう」という比喩を表しているとのことでした。恋文のやり取りをしてラブラブなのか?と思ったら… 嵐が来そうですねw モチーフの意味が分かるとお互いの様子や教訓まで知ることが出来るのが面白い作品です。

35 ピーテル・デ・ホーホ 「人の居る裏庭」 ★こちらで観られます
こちらは赤い屋根のある小さな家の裏庭を描いた作品で、手前にはテーブルを囲って向かい合う男女の姿があります。その後ろには立って2人の間に立つ女性や、何か作業している女性の姿もあります。2人の男女は酒を飲みながら談笑していて、陽気な印象を受けるかな。また、白い光が当たる柱を始め、窓や塀、柵といった水平・垂直の線が多い構図が面白く、幾何学的ですっきりした構成に思えました。


ということで、ここまでが2階の内容です。前半は全くフェルメールの作品はありませんが、同時代の画家も面白い作品が並んでいるので、それも見逃せないところではないかと思います。次回はいよいよフェルメールのコーナーとなりますので、じっくりご紹介していこうと思います。


 → 後編はこちら


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