関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

フェルメール展 (感想後編)【上野の森美術館】

前回に引き続き上野の森美術館の「フェルメール展」についてです。前編は2階の1~5章についてでしたが、今日は1階のフェルメールルームについてです。まずは概要のおさらいです。

 前編はこちら

DSC04722_201810070123230a5.jpg

【展覧名】
 フェルメール展

【公式サイト】
 https://www.vermeer.jp/

【会場】上野の森美術館
【最寄】上野駅

【会期】2018年10月5日(金)~2019年2月3日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
1階はフェルメールだけのコーナーとなっていますが、8点だけで部屋が広めとなっているので2階に比べると混雑感はそれほどでも無かったかな。入場時間制の合間を狙って行ったので、各作品を間近でじっくり観ることができました。

さて、今回の展示では解説機とハンドブックが付いてきますが、フェルメール自身についての説明はあまりされていません。フェルメールについては以前の記事で紹介したのですが、折角の機会なので、そこからいくつかエピソードをおさらいしていこうと思います。
まず、フェルメールは宿屋の息子として生まれ、17世紀オランダのデルフトで活動した画家です。ほとんどデルフトから出ることなく一生過ごしたという話もあるくらいで、「デルフトの眺望」という風景画の傑作も残しています。 フェルメールは最初は歴史画(物語画)を描いていましたが すぐに風俗画に転向したそうで、ピーテル・デ・ホーホの強い影響を受け、正確な遠近法で捉えた市民の日常などを描きました。また、初期作品にはレンブラントの暖色、1650年台以降は明るさや光の効果にカレル・ファブリティウス(レンブラントの弟子でデルフトで起きた弾薬庫爆発に遭い32歳で夭折した人物)からの影響も観られるそうです。フェルメールが寡作なのは裕福な妻と結婚し美術商をしていたので、制作に追われなかったことに加え、若くして死んだためと考えられています。生前は聖ルカ組合の理事になるなど当時から高い評価だったようですが、作品数の少なさが災いして死後しばらくすると忘れられた存在となり、再び脚光を浴びるのは19世紀に入ってからです。最も有名な「真珠の耳飾りの少女」は1881年に競売にかけられ、現在の価値で1万円くらいで買われた程なので、相当に忘れられていたのではないかと思います。(作品もボロボロになってるような時代があったようです) その後もナチスの時代にはメーヘレンという贋作者が真似して描いたりちょいちょいと歴史の中にもフェルメールの名前が出てきますが、本格的に注目を浴びるようになったのは1995~96年に行われた「フェルメール展」がきっかけです。この展示では20点ほどの作品が並んだというので驚きですが、その熱は日本にも伝わって人気に火が付き、2000年の大阪での展示を皮切りに、2008年の「フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち」(まだブログでなくmixiで書いてましたw)や2012年の「マウリッツハイス美術館展」などでは多くのファンを魅了しました。(今回は2008年の展示に出ていた作品が結構来ています)
その魅力は ラピスラズリの青を使ったり写真を使って描いていたという技術的な点もさることながら、人々の生活の中からドラマと叙情性を感じる点ではないかと思います。特に室内の絵では静寂の中で一点に集中するような構図が多く、今回の展示でもそれが強く感じられる作品があると思います。詳しくは各作品と共に振り返ってみようと思います。

 フェルメールの参考記事:
  マウリッツハイス美術館展 (東京都美術館)
  マウリッツハイス美術館展 2回目(東京都美術館)
  ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年 (国立西洋美術館)
  フェルメールからのラブレター (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメールからのラブレター 2回目(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 2回目(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画
  ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画 2回目 (国立西洋美術館)
  フェルメール光の王国展 (フェルメール・センター銀座)


<第6章 光と影:フェルメール>
今回の展示では会期によって入れ替えがあり、「赤い帽子の娘」2018年10月5日(金)~12月20日(木)、「取り持ち女」2019年1月9日(水)~2月3日(日)となります。ここは会場の外にあった看板をアップした写真を使ってご紹介いこうと思います。(勿論、館内は撮影禁止です)

40 ヨハネス・フェルメール 「マルタとマリアの家のキリスト」 ★こちらで観られます
DSC04712.jpg
こちらは宗教画を描いていた初期の作品で、2008年以来の来日じゃないかな。マルタとマリアという姉妹の家にキリストが招かれた際の話(ルカによる福音書10章)を題材にしていて、マリアがキリストの傍らでじっと話を聞いている所にマルタがやってきて、ちっとも手伝わない!と注意しています。しかしキリストは「マリアは良い方を選んだ」と言い、つまりキリストの話を聞くことが何よりも重要だという話です。割と他の作品に比べると粗ら目のタッチでややぼんやりして観えますが、明暗が強めでカラヴァッジョの流派からの影響も感じられるかな。キリストの頭の周りには輝きがあるなど、宗教画としての雰囲気があります。今回の展示では風俗画多いので、ちょっとこれだけ異色に見えるかもしれません。

43 ヨハネス・フェルメール 「ワイングラス」 ★こちらで観られます
DSC04703.jpg
こちらは初来日の作品。女性がワインを飲み終わりそうな所に、継ぎ足そうを構えている男…。飲み会でどんどん女性に飲ませる輩みたいなもんでしょうかw この絵には2人の関係性を思わせるモチーフが散りばめてあり、椅子の上のリュートは愛を暗示し、ステンドグラスの中に描かれた馬具を持つ女性は節制を表すそうです。つまり色恋沙汰を戒めるという意味らしいので、やっぱりそうかと言った感じですw この部屋は「二人の紳士と婦人(ワイングラスを持つ娘)」でも描かれていて、題材もよく似ているように思います。外から差し込む光の柔らかさや、2人に光が当たって反射する様子など非常に見事な表現となっていました。

46 ヨハネス・フェルメール 「手紙を書く女」 ★こちらで観られます
DSC04709.jpg
こちらを観て微笑む様子が可愛らしい女性。ふと目があった時のときめくような気持ちが込められているように思えます。以前観た時の解説を振り返ると、背景の画中画は愛の調和を示す楽器を描いているということなので恋人に宛てた手紙でしょうね。ちなみにフェルメールは手紙を描いている人を6点ほど描いているお気に入りの題材で、この女性の黄色いサテンのコートもよく出てきます。
 参考記事:フェルメールからのラブレター (Bunkamuraザ・ミュージアム)

47 ヨハネス・フェルメール 「赤い帽子の娘」 ★こちらで観られます
DSC04710_20181007012442feb.jpg
こちらは日本初公開の作品で、12月20日(木)までの展示です。顔の下辺りに非常に強い光が当たっていて、白を大胆なタッチで使っています。それが離れてみると反射光に見えるのだから面白いです。驚いたような表情も新鮮で、いきなり写真を撮られたような顔に観えますw 近代絵画を先取りしたような主題と表現となっていました。

42 ヨハネス・フェルメール 「牛乳を注ぐ女」 ★こちらで観られます
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フェルメール作品の中でも特に評価の高い作品で、2007年に国立新美術館で観た以来かな。黄色と青の取り合わせが非常に明るく感じられ、その視線の先に自然と目が行きます。そして画面全体の時間が止まっている中で白い牛乳だけが静かに流れている… そんな構図がフェルメールっぽさの1つじゃないかと思います。パンなどには点綴法と呼ばれる光の粒が使われているなど光の表現も流石で、柔らかくも強い光です。 それにしても毎度観るたびにテーブルの形がちょっと変わっているのが気になりますw (これを立体にしたのを以前の展示で観たような記憶が…)

ヨハネス・フェルメール 「手紙を書く婦人と召使い」 ★こちらで観られます
DSC04716.jpg
こちらも手紙を書く女性を描いた作品。こちらも静けさの中にペンだけが動いているという感じで穏やかな光景に見えますが、手前には書き損じの手紙が転がっています。 以前観た際の解説を振り返ると、テーブルクロスの色に表されるように最初は激情に駆られて手紙を書いていたのではないかとのことですが、背景には赤子のモーセが敵であるファラオの娘に拾われるという「モーセの発見」の絵が飾ってあり、これは敵にも慈悲を持つ主題であることから、人の心を落ち着かせる物語であり、女主人は平静を取り戻しているのを示していると考えられるようです。一方で召使いは早くしてくれという感じがヒシヒシと伝わって来るように思えますが…w こちらも明暗が強めに感じられました。

46 ヨハネス・フェルメール 「真珠の首飾りの少女」 ★こちらで観られます
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こちらも黄色い服の女性で「手紙を書く女」と同じ服であるのが分かると思いますが、フェルメールの財産目録にも載っているらしいのでお気に入りのモチーフだったんじゃないかな。壁に掛かった鏡に首飾りを見せて何だか嬉しそうな顔をしています。以前観た際の解説では椅子の上には元々リュートがあったとのことなので、やはり恋のテーマではないかと思います。他の作品と比べると光が柔らかく感じられて、優しい雰囲気に思えました。こういう心の機微を上手く全体で表現しているのがフェルメールの魅力の1つかな。それにしてもいつの世も女性の身支度は絵になりますね。
 参考記事:ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年 (国立西洋美術館)

ヨハネス・フェルメール 「リュートを調弦する女」 ★こちらで観られます
DSC04707.jpg
こちらも2008年の展示で見覚えがありました。そろそろ見慣れた黄色い服を着て、何故か外を観ながら調律しています。解説によると手前に引かれた椅子や床に置かれたヴィオラ・ダ・ガンバと楽譜がもう1人の奏者の存在を暗示しているということで、もしかしたら恋人でしょうか? 例によってリュートを持ってるしw 背景の地図は愛する人が遠くにいるのを示唆しているのでは?とのことでした。題材も謎めいていますが明暗もミステリアスな雰囲気で、ややぼやっとした光の表現が他とやや違って観えました。ちなみにこちらは発見当時ボロボロで真作じゃないと思われていた時期もあるようですが、その後の科学調査で真作と認定されています。

41 ヨハネス・フェルメール 「取り持ち女」 ★こちらで観られます
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ついでにまだ公開していないこちらは2019年1月9日(水)~2月3日(日)という短い期間しか展示されない品。歴史画から風俗画に転向するころの作品だそうで、比較的初期の作品です。胸に手を回されながら金を受け取ろうとする取り持ち女の胆力が凄いw それぞれの表情やキラリと光るコインに自然と注目してしまいます。この時代の風俗画のように何か教訓めいた意味もありそうな気がしますが、どうでしょうか。まだ実物を観たことが無いので、年明けに再度行こうか検討中です…。


勿論、今回は様々なグッズも売っていたのですが、結構狭いので混雑時は大変なことになるかも…w 私はフェルメールの画集は既に持っているので、初来日の「ワイングラス」の絵葉書を買いました。

と、非常に満足できる内容となっていました。これだけ一気にフェルメールの作品を観られるのは滅多にないので、美術ファンだけでなく多くの人に良い機会なのではないかと思います。会期末には一層の混雑が予想されますので気になる方はお早めにどうぞ。伝説になりそうな展示です。

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