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横山操展 ~アトリエより~ 【三鷹市美術ギャラリー】

10日ほど前の日曜日に三鷹市美術ギャラリーで「横山操展 ~アトリエより~」を観てきました。この展示は既に終了していますが、今後の参考になると思いますので記事にしておこうと思います。

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【展覧名】
 横山操展 ~アトリエより~

【公式サイト】
 http://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/event/20180804/

【会場】三鷹市美術ギャラリー
【最寄】三鷹駅

【会期】2018年8月4日(土) ~ 10月14日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は現代の日本画家 横山操の個展となっていました。横山操は盟友の加山又造にも影響を与えた個性的かつ現代的な作風で、加山又造が特に好きな私としては是非観ておきたい展示でした。しかし完成作はそれほどなく、素描やスケッチ、製作中の作品などが多めで「~アトリエより~」というサブタイトルはそれを表していたのかも…。
まず簡単に横山操についてですが、1920年に新潟県西蒲原郡吉田町(現・燕市)に生まれ、14歳で上京し文京区の図案社などで働きながら画家を目指しはじめました。その後20歳で召集され、中国各地を転戦した後にシベリアで抑留されて復員したのは1950年の戦後だったようです。戦後は川端龍子の青龍社を中心に大画面の日本画を描くと共に、故郷の山並みや夕景を叙情的に表現したそうです。復員の翌年に結婚して1952年には娘を授かり、都内を移り住んでいたようで、1959年には三鷹に自宅・アトリエを建てました。何故かその際に過去の作品の大半を焼却してしまったようです…。何かの覚悟かもしれませんが、その後はますます活躍したそうで、1966年には多摩美術大学日本画科教授に就任し 後進の育成にも力を注ぎます。(今回の展示でも多摩美術大学の出品が結構あったのはその所縁だと思われます) しかし教授就任の5年後の1971年に脳卒中で倒れ、半身不随で利き腕の右手が使えなくなってしまいます。それでもリハビリをして左手で描くなど再び歩み始めましたが、1973年に再び脳卒中に倒れ、亡くなったそうです。
と、そんな波乱に満ちた人生を送られて画風も結構変わっていたりしますが 展覧会は特に章分けされる訳ではなく、概ね時代順となっているようでした(制作年不明も多数あります) 簡単に会場の様子と気に入った作品をご紹介していこうと思います。

1 横山操 「梅に鶯」 ★こちらで観られます
こちらは復員の翌年に描かれたもので、花咲く梅にとまる鶯が描かれています。鶯は写実的ですが、梅の枝はデフォルメされていて琳派風に思えます。所々に滲みを活かしたたらし込みのような技法も見受けられるかな。小品ながら春の温かみや期待を感じさせるような作品でした。

3 横山操 「舞妓」
こちらは金と銀の扇の間に白い顔の舞妓の顔が描かれた作品です。美人ですが強い目をしていて緊張感のある面持ちに思えるかな。金や銀の部分は盛り上がって ざらついた質感となっていて、舞妓も太めの輪郭を使って描かれるなど全体的に力強い表現となっていました。

この辺は舞妓をモチーフにした作品が並び、スケッチなどもありました。その少し先には「操と基子夫人による手作りの年譜」というスクラップブックのようなものがあり、横山操自身と奥さんがまとめた受賞や批評の新聞記事をまとめたような内容となっていました。

70 横山操 「未完 3」
こちらは富士山の山頂付近を描いた作品で、かなり太い黒で山の稜線を型どっています。細かい粒のようなものが見えるほどマチエールがざらついていて、かなりの重厚感があって もはや油彩にしか思えません。未完とのことですが、堂々たる風格を漂わせる作品でした。
同様の「未完 4」も赤い富士を描いていて見事でした。未完の富士は4点くらいあったかな。

この辺にはイーゼル、定規、パレットナイフ、筆、箔、硯、受賞メダルなど制作や受賞に関する品なども並んでいました。

21 横山操 「春夏秋冬屏風」
こちらは六曲一隻の屏風で、20cmくらいの太さの筆跡で「春夏秋冬」と左上から右下にかけて下がっていくように書かれています。かすれたり滲んだり飛び散ったり と かなり豪快な印象です。非常に勢いを感じさせる筆跡でした。

72 横山操 「小説「石版東京図絵(作:永井龍男)」挿絵原画」
こちらは1967年に毎日新聞で連載された小説の挿絵で、明治~大正の東京の街の暮らしや 大震災、戦後に街が変わっていく様子など主人公の関由太郎の成長と共に描くストーリーのようです。非常にシンプルなモノクロの挿絵ですが、当時の情感が漂い どこか郷愁を誘います。また、絵の端々には指示書きのようなものがあって、「中心より左の位置にする」といったことやサイズ等が書かれていました。 物語の最初の辺りは明治42年の国技館や落成当時の帝劇などの瀟洒な建物の絵があって、今とは違った豪華さがあります。一方で当時の子供たちの素朴な可愛さが伝わる絵もあったりします。また、大震災の火事や人々が逃げ惑う様子、焼け野原となったシーンなどは恐ろしさやその後の寂しさを見事に表現していました。その後はしばらく長閑な雰囲気が漂っていて、途中から女性キャラも加わって人間模様を感じさせるような挿絵となっていました。話を知らずに絵だけ観てると中身が気になってきますw

この近くには当時の小説の本や新聞なんかもありました。その後は外国の風景のスケッチのコーナーです。中国・イタリア・フランスなどの絵が並んでいました。

41 横山操 「北京天安門」
こちらは北京の天安門を描いたスケッチです。フリーハンドで描いていてやや右下下がりになっているように思えますが威圧的な構えの雰囲気がよく伝わってきます。画面には1人も人がいない静けさが漂っているのもそれを感じさせる要因かもしれません。

その先には日本の風景のスケッチもいくつかありました。

33,34 横山操 「紅梅図屏風」「白梅図屏風」 ★こちらで観られます
今回の展示の一番の見どころはこれかな。六曲一双の屏風で、左隻は銀地に白い花を咲かせる白梅図、右隻は金地に赤い花を咲かせる紅梅図となっています。何故か紅梅図の左から三番目の曲は欠けているのが残念。題材や滲みを使っている点などは琳派風ですが、紅梅図は色が強く花がかなり大きく感じられ、赤い花の中には無数の黄色い雄蕊が描かれているのが絢爛さを感じさせます。一方の白梅は黒々とした木と白い花が静けさを漂わせ、さらにその上からモヤのように白を塗り重ねていて、霞むような幻想性がありました。対比的で非常に面白い作品で見応えがありました。

その後は再びスケッチ作品が並んでいました。農家や町並み、木々などを描いていて輪郭の強さが目を引きました。

82 横山操 「夜の教会」
これもコンテによるスケッチで、縦の画面の下の方に明かりが灯る三角屋根の家のシルエットがあり、屋根に十字架が載っています。背景の空が大きく取られ、黒のグラデーションで夕暮れを表していて、シンプルだけど非常にしんみりとした雰囲気があり好みでした。力強い作品があったと思えばこういう繊細さもあるのが面白いです。

この近くにあった「月明河岸」も叙情的だったし、繊細な表現の作風もかなり良いです。
その先には顔料や朱肉、奥さんの墨跡や娘さんの水彩画なんかもありました。娘さんの絵も琳派的な雰囲気の題材で、趣味の範囲とは思えない出来でした。

92 横山操 「茜」
こちらは中央に川が流れる野原を描いたもので、枯れ木が立ち並び背景には夕暮れの山も描かれています。稜線と木以外はあまり輪郭が使われていない柔らかめの表現となっていて、これまでの作品とはちょっと趣が違うようにも感じたかな。特に夕日の色合いが寂しさと神々しさを感じさせて、また違った魅力となっていました。
この近くの「むさし乃」(★こちらで観られます)も赤い滲みを使っていて、幻想的な雰囲気でした。最晩年で画風が変わったのかも。


ということで、もうちょっと完成した作品を観てみたかったというのが正直なところですが、それでも風情ある絵が多かったのが良かったです。既に終わってしまいましたが記憶に留めておきたい画家です。
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