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世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」登録記念 キリシタンの遺品 【東京国立博物館 本館】

今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観た後、東京国立博物館本館で常設を観てきたのですが、特別2室で世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」登録記念 キリシタンの遺品 という展示をやっていました。こちらは撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」登録記念
 キリシタンの遺品

【公式サイト】
 https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1935

【会場】東京国立博物館 本館 特別2室
【最寄】上野駅

【会期】 2018年10月10日(水) ~ 2018年12月2日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
閉館時間も近かったこともあって、独占状態で快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は今年(2018年7月)に世界文化遺産に登録られた「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を記念したもので、隠れキリシタンの残した品々を通じて、その苦難の歴史を紹介する内容となっています。キリスト教は1549年にザビエルが来日して長崎を中心に広がりましたが、1614年に江戸幕府が禁教令を出してから1873年(明治6年)まで禁制とされ、その期間に隠れて信じていたキリスト教徒を潜伏キリシタンと呼びます。昔は「隠れキリシタン」と呼んでいましたが、禁制が解けてからカトリックに合流したキリシタンを「潜伏キリシタン」、合流せずに従来の信仰を守った信者を「隠れキリシタン」と区別して呼ぶようになったようです。今回の展示ではそうしたキリシタンたちの使った品などが並んでいましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。
 参考記事:聖母像の「到来」 (東京国立博物館)


<第1章 キリスト教受容の時代(1549~1613)>
まずはキリスト教がまだ禁教になる前の時代のコーナーです。イエズス会のザビエルが日本で布教活動をしたのは有名な話ですが、信者の中には大名もいて、大村純忠、高山右近、明智光秀の娘の細川ガラシャなどが有名なキリシタン大名です。(棄教した小西行長や黒田官兵衛とかも有名かな。本心で棄教したかは分かりませんが) 1582年には大村純忠の領地ではキリシタンが6万人を越え、全国でも15万人もいたようで、大友宗麟・大村純忠・有馬晴信の名代として天正遣欧少年使節団がローマに派遣されるなど、この頃が恐らくピークです。しかし豊臣秀吉によるバテレン追放令(1587年)や日本二十六聖人の殉教(1597年)など徳川幕府以前からかなり警戒されていたので、1613年まで安泰という訳ではないと思います。この章にはそうした時代背景の品が並んでいました。
 参考記事:
  南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎 (サントリー美術館) 
  番外編 岩手県立美術館の案内 (2017年6月)

「聖母子像」 ヨーロッパ16~17世紀
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こちらは聖母子ですが、割と人間っぽい姿で描かれています。柔らかい表情で慈愛を感じます。しかしよく残ってたものです。

「聖アントニウス像」 16~17世紀
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聖アントニウス像が幼子イエスを抱いた姿のポルトガルの聖人。象牙でかなり細かい作りで、よく観るとユリの花を持ってたりします。中々見事な逸品。

「聖人像」 16~17世紀
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こちらも象牙製で恐らく幼い頃のキリストの像らしく、球みたいなのは十字架が欠けた地球儀と思われるようです。幼くても祝福のポーズをしていて、気品ある顔をしています。

「キリスト像」 16~17世紀
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かなり精巧に作られた象牙製のキリスト像。恐らくインドのゴアあたりで作られたと考えられるようです。骨の浮き上がる様子や、やや膝を曲げる姿勢が見事。

「キリスト像」 16~17世紀
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こちらも象牙製ですが、血が滴る様子が着色されています。手は取れちゃったのかな。写実的でイメージ通りのキリストですね。

「銅牌(エッケ・ホモ)」 ヨーロッパ16~17世紀
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茨の冠をかぶったキリストにローマ総督ピラトが「エッケ・ホモ(見よ、この人なり)」と言ったシーンを表したもの。手は縛られているのかかな。両方同じ型のように見えるけど微妙に違っているようで、右に比べると左は不鮮明だったりします。右がヨーロッパ製で左が鋳造に失敗した日本製で、失敗しても大切にしていたのだとか。

「三聖人像(模写)」
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こちらは見覚えありました。見た目は完全に西洋の品なので持ち込まれたものじゃないかな? どの聖人か分かりませんが、棕櫚の葉を持っているのは殉教した聖人の証です。


<第2章 禁制の時代(1614~1873)>
続いては禁教後のコーナー。1614年の禁教以降、宣教師は処刑、信者は海外追放、教会や神学校は破壊され、ヨーロッパでは日本のキリスト教信者は途絶えたと考えられたようです。しかし、明治になって1864年に長崎に大浦天主堂が建つと、浦上村の潜伏キリシタンが訪れてきて、250年に渡って信仰を守っていた信徒がいたということが「発見」されました。この信徒発見はヨーロッパでも報じられたそうですが、まだこの時も禁制が解かれた訳でなく、政府に弾圧される立場でした。明治元年(1868年)には3000人を越す信者を流刑になったそうで、明治になってもしばらく弾圧があったようです。ここには禁制時代の品が並んでいました。
 参考記事:鉄川与助の教会建築 -五島列島を訪ねて- 展 (LIXILギャラリー 旧INAXギャラリー)

「板踏絵 箱(ピエタ)」 1853年
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踏み絵の箱! 隠れキリシタンを探す有名な手段ですね。最初は効果があったようですが、心は裏切ってないからセーフという考えになっていって、そのうち形骸化していったと言われています。

E・ケンベル 「日本誌」
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1690年から3年間、オランダ商館付きの医師として滞日した人物が書いた日本の様子で、各国語に翻訳され西洋における日本研究の基礎資料となっていたそうです。地図だったり通貨だったり結構多岐に渡ってそうな感じでした。

「制札」 1711年
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こちらは隠れキリシタンを密告したら報奨金が出るよという札。まるで賞金首ですが、神父は銀500枚らしいので結構な金額だったのでは?

「マリア観音像」 明~清時代17世紀
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中国製のマリア観音像。観音像にカムフラージュした聖母子像ですが、普通の観音は子供抱えていないのですぐ分かるようにも思えます。

「マリア観音像」 明~清時代17世紀
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こちらもマリア観音像。禁教を逃れるためにこうした像が作られたのですが、教えそのものも長い間に少なからず変質していったと聞いたことがあります。それがカトリックに戻らず隠れキリシタンとなっていった理由なのかも。

他にもロザリオなどもありました。最後は踏み絵のコーナーです。

「板踏絵 キリスト像(ピエタ)」 17世紀
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細部はよく分からないこといなっていますが、ピエタと分かる構図。踏んで摩耗したのかな??

萩原祐佐 「真鍮踏絵 キリスト像(ピエタ)」 1669年
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こちらは割としっかりと分かる出来栄え。後ろに街があるのも分かります。先程のとよく似てるので、参考にしたものが同じなのかな?

「板踏絵 無原罪の聖母」 17世紀
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こちらも顔は無いけど、こういうポーズしている聖母像を観たことがあります。これは信者としては踏みづらいでしょうね…

萩原祐佐 「真鍮踏絵 聖母子像(ロザリオの聖母)」 1669年
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この萩原祐佐という人物はかなり腕が良いみたいで、何かを参考にして作ったんだろうけどこのクオリティなので、よほどキリスト教に詳しいのでは?と思ってしまいます。そのせいか、隠れ信者と疑われて処刑されたという説(史実かどうか怪しいですが)まである人物のようです。

萩原祐佐 「真鍮踏絵 キリスト像(十字架上のキリスト)」 1669年
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つるつるになってるので、これも使い込んだんでしょうか。キリストが浮かび上がるような見事な出来栄えです。それにしても踏み絵って発想は日本的な気がします。


ということで、日本におけるキリスト教の弾圧の歴史を観ることが出来ました。世界遺産に登録された機会にその歴史を学ぶ良い機会じゃないかな。東博の展示に行く機会があったら、是非こちらも観ることをおすすめします。


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