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大・開港展-徳川将軍家と幕末明治の美術 (感想前編)【横浜美術館】

ちょっと前になりますが、今月半ばの連休に横浜美術館に行って「大・開港展-徳川将軍家と幕末明治の美術」を観てきました。かなりボリュームのある展覧でメモを取った点数も多かったので、前編・後編に分けてご紹介しようかと思います。なお、この展覧会は4回の展覧替えがあり、特に1~2期と3~4期で大きく変わるようですので、お目当ての作品がある場合は公式ページの作品リストで確認してからおでかけすることをお勧めします。

P1080073.jpg


【展覧名】
 大・開港展-徳川将軍家と幕末明治の美術

【公式サイト】
 http://www.yaf.or.jp/yma/jiu/2009/exhibition/daikaiko/

【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅
【会期】2009年9月19日(土)~11月23日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間40分程度

【混み具合・混雑状況(祝日13時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この展覧はその名の通り、横浜が開港して150年を記念した展覧で、さらに今年は横浜美術館が開館して20周年でもあるようです。開港から明治にかけて美術会にも激動があったようで、この展覧ではその時代の移り変わりと「横浜」というロケーションをフォーカスしていたように思います。
展覧は3章構成で、「1章 徳川の時代」「2章 開港の時代」「3章 明治時代」となっていました。今日は1~2章で気に入った作品をご紹介いたします。(作品Noと実際の展示順が違ったので、念のため作品Noも入れておきます。コーナーを間違ったらすみませんw)

<第1章 徳川時代>
[1.大御所家斉と幕末の徳川将軍]
このコーナーでは大御所とよばれた11代将軍 徳川家斉から最後の将軍(15代将軍)徳川慶喜に関連する作品が紹介されていました。

54 狩野晴川院養信 「四季花鳥図屏風」 ★こちらで観られます
やまと絵風の屏風です。右隻には金地に鮮やかな松や桜、サギやツバメ、孔雀などが描かれています。また、左隻には同じように秋草、もみじ、雪の積もった梅、鴨などが描かれています。つまりこれは右から左にかけて春夏秋冬の様子を描いた作品でした。ちょっと漫画っぽいデフォルメしてるような気がしましたが、豪華で優雅な雰囲気の作品で好みでした。

7 「銀細工 家斉所用 花車/生け花飾り/飾棚・提煙草盆/碁盤・将棋盤/飾物」
銀細工の身の回りの品のミニチュアです。作品名の通り、囲碁セットや茶道具、籠や盆栽など様々なミニチュアが可愛らしかったです。特に華道の花のような作品が見事でした。

8 「豆人形」
1cmくらいの本当に豆っこい人形です。半纏を着た猫の人形が特に可愛かった! 器用に作ってます。

15 伝狩野勝川院雅信 「徳川家定像」
面長で髭の剃り跡が目立つ精悍な顔をした侍の肖像です。これは「伺下絵」という本番の絵を描く前の習作みたいな絵らしいですが、かなり詳細に描かれていて完成品にしか見えませんでした。

23 「吹上矢来御門/御鳥籠/御花壇馬場及び御馬見所茶屋/
   瀧見御茶屋の前庭/鳩の御腰掛から見下ろす瀧見茶屋/
   地主山から見下ろす広芝」

風景画です。どこか西洋っぽい雰囲気を持った作品で、油彩で描かれています。浮世絵と同じ顔料を使っているようですが、そこに膠水を塗っているという説明がありました。秋田派に関係あるのかな?と思ったけど詳細はわかりませんでした。

28 騎兵用甲冑(胸甲、兜) 慶喜所用(ナポレオン3世の寄贈品)
ナポレオン3世から徳川慶喜に送られた西洋の鎧です。兜には葵の御紋が入っています。実はこの兜はもう1つあって、そちらは紋が上下逆さになっているそうです。友好目的だと思いますが、紋が逆さなんてもの送ってきたら喧嘩売ってるのか?って思わないのかなw いずれにせよ歴史的に貴重な品だと思います。

[2.大奥の美意識]
ここは女性らしい優美な作風の品々が展示されていました。皇女和宮や篤姫といった幕末の有名女性ゆかりの品も必見です。

57 狩野祐清邦信 「源氏物語 若菜図」
これも大和絵風の金屏風です。十二単を着た女性や中央に座る男性、屋敷と庭などが描かれていて、源氏物語を題材にした作品のようです。これまた大和絵らしい雅で優美な雰囲気漂う作品でした。

38 「小広蓋 黒塗牡丹唐草金銀蒔絵 篤姫(天璋院)所用」
唐草模様の金蒔絵です、蓋しか無いぞ?と思ったら、蓋だけ独立して作ったもののようです。篤姫所用の品らしく、手回り品や化粧品を入れて使っていたようです。隣には鹿児島の風景を描いた掛け軸(これも篤姫所用)もありました。篤姫の美意識を感じる品々でした。

34 「雛道具 薩摩切子 篤姫(天璋院)所用」
これは最近観た美術ファンも多いのでは? 今年の春にサントリー美術館で開催された、薩摩切子展にも出品されていたミニチュアのような雛道具です。 ★参考記事
薩摩藩の威信をかけた結婚だっただけにこうした嫁入り道具もかなり気合が入って作られていて、細かく精密です。 と、そんな背景を知らなくても可愛くて綺麗な素晴らしい品だと思います。

43 「黒塗牡丹尾長蒔絵文房具 和宮(静寛院宮)所用」
小さな筆入れと10本の細い筆です。牡丹と鳳凰が描かれていて繊細かつ優美です。女性らしい可愛さもありました。


<第2章 開港の時代>
1章はまだ江戸時代でしたが、この章は黒船が浦賀にやってきた頃から開港あたりの混乱の時代をテーマにしていました。欧化した様子なども窺い知れる一番面白味のある章でした。

63 高川文筌 「米利堅人等写真図」
ペリー、副使のアダムス、通訳のウリヤマス?の3人の肖像です。 ペリーは相変らずしかめっ面をしていますw アダムスはタバコをふかし、通訳は黒眼鏡をしていて怪しいw 3人揃ってそんな感じで不審人物図みたいになっていましたw

88 歌川(玉蘭斎橋本謙)貞秀 「御開港横浜之全図」 ★こちらで観られます
錦絵です。横浜港を斜め上から観たような構図で描かれています。湾内には日本、オランダ、アメリカ、イギリス、ロシア、フランスの軍艦がいます。また、細かく町並みが描かれ右上隅には富士山が描かれていました。ちょっとデフォルメしてありますが当時の様子を容易に知ることができる作品で面白かったです。

71 鋳鉄製焼印「日本政府之印」
「日本政府之印」と書かれた大きな印鑑で、外国への手紙に使われていたようです。「日本政府」って響きはこの頃からなのかな? かなり大きくて立派でした。

79 アントニオ・ベアト 「遣欧使節とスフィンクス」 ★こちらで観られます
これは昔、トリビアの泉という番組でも紹介されていたから知っている人も多いかも。エジプトのスフィンクスの前にいる20人くらいの侍を撮った白黒写真です。彼らは横浜鎖港談判使節団の団員で、鎖港を交渉しに行くついでに観光しているようです。侍とスフィンクスという異質な組み合わせが面白いですね。

84 フェリーチェ・ベアト 「横浜」
色を塗った写真です。西洋風の屋敷の前で米俵を運ぶ人々が写っています。西洋と日本がお互い原色のまま同居しているようで、融合している現在と違った面白さがあります。相当異文化だったんでしょうね。

85 フェリーチェ・ベアト 「東海道の風景、リチャードソン氏殺害の現場」
生麦事件の現場を撮った有名な写真で、これは教科書で観たぞ!と思い出しましたw 写真に彩色されたのどかな様子が写っていて、ここで歴史的大事件が起きたとは思えないほどのんびりしていました。こういう歴史の証人的な展示品が多いのもこのコーナーの醍醐味かも。

90 歌川(五雲亭)貞秀 「横浜商館真図」 ★こちらで観られます (第2部のところです)
これは福沢諭吉展にもあった作品かな? 着物を着た女性とドレスの女性が羽子板をしていたり、中国人?やターバンをした人たちが働いている様子が描かれています。翻訳を書いたものがあり「私」には「アイ、イキ」と書かれてありました、(英語と何語だろ?) 外国との交流が進んできた様子が興味深いです。

97 三代 歌川広重 「横浜海岸鉄道蒸気車図」 ★イメージ検索の結果
港を走る蒸気機関車の錦絵です。後ろには多くの外国船が居ます。日本の技法で描かれていますが風景は西洋みたいで、欧化した横浜の様子が伝わってきます。それにしても汽車がめっちゃ海っぺりを走ってるなあw

102 河鍋暁斎 「暁斎楽画第三号 化々学校」 ★イメージ検索の結果
妖怪の学校を書いた錦絵。閻魔っぽいのが鬼とか血の池が描かれたパネルを棒で指して説明しています。手前には河童が「SI RI CO TA MA」(尻子玉)と描かれたボードで河童達に教えています。ユーモアがあってキモ可愛い絵ですが、地獄まで欧化が進んでいるとはw 非常に面白いです。

ということで、美術展と博物展の中間的な感じですが、これは教科書で観たことあるぞ!というような品もあって、歴史の過渡期がよく分かるドラマチックな内容で面白いです。
そして、次回の後編は<第3章 明治時代>をご紹介します。現在開催中の「皇室の名宝展(前期)」同様に、帝室技芸員たちの魂がこもった作品を観ることができました。
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