関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

フィリップス・コレクション (感想前編)【三菱一号館美術館】

10日ほど前の日曜日に、丸の内の三菱一号館美術館で「フィリップス・コレクション」を観てきました。非常に見どころの多い展示でしたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

20181028 150430

【展覧名】
 フィリップス・コレクション

【公式サイト】
 https://mimt.jp/pc/

【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅など

【会期】2018年10月17日(水)~2019年2月11日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
会場がそれほど広くないこともあって、たまに混雑している感じもありましたが概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示はアメリカのダンカン・フィリップスが集め、現在はフィリップス・メモリアル・アート・ギャラリーが所蔵するフィリップス・コレクションの中から75点を紹介するもので、「全員巨匠!」のタイトル通り、有名画家の優品が勢揃いする充実した内容となっています。今年(2018年)に創立100周年を迎えるそうで、展覧会は蒐集した順という変わった順序で並んでいました。各章にはコレクションの意図などが紹介されていましたが、あまりそこには興味がないので、各章の趣旨はさらっと流して気に入った作品を挙げていこうと思います。(逆に今回は各画家の説明が少ないので、気になる画家は参考記事を参照して頂ければと思います。)


<1章 1910年代後半から 1920年代>
まずは初期のコレクションのコーナーです。初めて絵を購入したのが1912年で、父と兄の死をきっかけに母と共に収集品を公開するギャラリーを創設したようです。会館前後で特に重要視したのがクールベとドーミエだったそうで、ここにはそうした時代に集めた品が並んでいました。

16 クロード・モネ 「ヴェトゥイユへの道」 ★こちらで観られます
こちらはモネが貧しかった時期に住んでいた街の周辺を題材としたもので、郊外から街へと続く道を描いています。色を置くような筆致となっているのが印象派独特の技法で、近くで観ると斑点のようですが離れて観ると情感溢れる光景で明るく爽やかな雰囲気となっています。モネらしさを感じる画風の1枚でした。
 参考記事:
  モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新 感想前編(国立西洋美術館)
  モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新 感想後編(国立西洋美術館)
  【番外編 フランス旅行】 ジヴェルニー モネの家

12 オノレ・ドーミエ 「三人の法律家」 ★こちらで観られます
こちらはドーミエが裁判所の職員として働いていた時期に観察した役人たちの姿を描いた作品です。3人の黒衣の男性が談笑していて、そこに光が当たっています。背景には庶民らしき人が影の中にいて、対比的な感じです。解説によると、ドーミエは彼ら法律家の連帯意識と 貧しい人を気にもとめない尊大さを表そうとしているとのことで、確かにそんな感じもするかな。特に右端の法律家の得意げな顔に皮肉めいたものを感じました。

この近くにはクールベの海の景色(★こちらで観られます)やシスレーの雪景色(★こちらで観られます)の作品などもありました。いずれも典型的な作風と言えそうです。

1 ジャン・シメオン・シャルダン 「プラムを盛った鉢と桃、水差し」 ★こちらで観られます
こちらは鉢に入ったプラムの山、白い水差し、手前の桃を描いた静物画です。暗闇の中で水差しと桃に光が当たり、奥行きや質感を感じさせます。写実的でありながら静かで やや瞑想的な雰囲気があり、シャルダンの静物画の面白さがよく表れているように思えました。
 参考記事:シャルダン展-静寂の巨匠 (三菱一号館美術館)

11 オノレ・ドーミエ 「蜂起」 ★こちらで観られます
こちらは右手を挙げて抗議する人を中心に群衆が街を行進する様子を描いた作品です。これは1848年の二月革命に着想を得て描いているようで、一般市民の貧しさを感じる一方で英雄的な雰囲気もあるように思います。人々はやや太めの輪郭線が使われているのも力強く感じる要因なのかも。社会的な題材も流石と言った感じでした。

36 ピエール・ボナール 「犬を抱く女」 ★こちらで観られます
こちらは休憩室にあった撮影可能な複製を撮った写真です。
20181028 161203
女性がテーブルに向かいながら茶色い犬を抱いて、犬を観るように視線を落としている様子が描かれています。このモデルは奥さんのマルトで、テーブルで動物と並ぶ題材は つい先日観てきたボナール展にも似たような題材の作品がいくつかあったと記憶しています。(犬ではなく猫が多いですがw) 奥さんはやや派手な色の服を着ていますが、全体的には落ち着いた雰囲気で、親密な空間となっていました。なお、この絵をきっかけにフィリップスはボナールの支援者となってアメリカで最も大きなボナールコレクションを築いたそうです。この展示でも他にも良いボナール作品がいくつかあったし、今年はボナールが大当たりの年です。
 参考記事:
  ピエール・ボナール展 感想前編(国立新美術館)
  ピエール・ボナール展 感想後編(国立新美術館)


<2章 1928年の蒐集>
続いての2章は1928年に集めたコレクションのコーナーです。フィリップスは最初はキュビスム以降の作品を批判していたようですが、後に嗜好が変わって蒐集していったようです(その気持ち、よく分かりますw)

23 ポール・セザンヌ 「自画像」 ★こちらで観られます
こちらは4分の3面観の姿勢でこちらに視線を向けるセザンヌの自画像です。口のあたりは髭と粗いタッチで判然としない感じで、頭は禿げているので結構年老いた頃の姿ではないかと思われます。この粗く未完成のような画風が気難しい性格もしっかり表していると言うか…w セザンヌは自画像をよく描いた画家ですが、こちらも面白い自画像でした。
なお、フィリップスは最初はセザンヌを批判していたようですが、評価を改めたようです。セザンヌは割とすぐに好きになれる画家だと思うんですけどね。
 参考記事:
  セザンヌ―パリとプロヴァンス 感想前編(国立新美術館)
  セザンヌ―パリとプロヴァンス 感想後編(国立新美術館)
  セザンヌゆかりの地めぐり 【南仏編 エクス】
  映画「セザンヌと過ごした時間」 (軽いネタバレあり)
  
近くにはヴュイヤールなどもありました。

6 エドゥアール・マネ 「スペイン舞踊」 ★こちらで観られます
広い部屋の中で手を挙げて踊るスペイン風の服装の女性と、その背後で似たポーズをしている男性、周りで楽器を奏でる人などが描かれた作品です。解説によるとこの人たちはマドリード王立劇場の主要ダンサーだそうで、練習しているところかな? 明暗が強く素早い筆致となっていて、特に黒が効果的に使われている点にマネらしさを感じます。非常に見事で、今回の展覧会でもマイベスト3に入る作品でした。
 参考記事:マネとモダン・パリ (三菱一号館美術館)


<3章 1930年代>
続いての3章は大部屋です。フィリップスは1927年に初めてジョルジュ・ブラックを購入し、ドーミエ、ボナールに続いてユニットを開設するほどになったそうです。この頃から蒐集の際には交換を余儀なくされることもあったそうで、現在のコレクションは精鋭と言えるのかも。

2 フランシスコ・デ・ゴヤ 「聖ペテロの悔恨」 ★こちらで観られます
両手を重ね、上を仰ぐ12使徒の1人聖ペテロを描いた作品です。聖ペテロはキリストが捕まった時にキリストなんて知らないと3回言った(キリストの予言通りだった)という逸話が有名ですが、これはその言動を悔やんでいる様子のようです。背景が真っ暗で、ややざらついた筆致は近代絵画を思わせる雰囲気すらあります。赦しを乞うような目が印象的で、苦悩が伝わってくるようでした。
 参考記事:
  プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想前編(国立西洋美術館)
  プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想後編(国立西洋美術館)

この近くにはピカソのキュビスム作品や彫刻もありました。時代も画風もバラバラですが、しっかり良いもの揃えていますw

59 パウル・クレー 「養樹園」 ★こちらで観られます
こちらは緑、青、赤、オレンジの横縞の上に象形文字のような記号が浮かぶ抽象絵画です。記号は木や人のような形をしているので、「養樹園」と言われれば何となくそう見えてくるかなw 解説によるとこれは「スクリプト絵画」シリーズとして数学や音楽、象形文字から着想を得ているようで、20点以上こうした作品が存在するようです。色彩も軽やかで、リズミカルな雰囲気が面白い作品でした。
 参考記事:パウル・クレー おわらないアトリエ (東京国立近代美術館)

この近くにはボナールの大型作品や、アンリ・ルソーなどもありました。本当に巨匠の良いところばかりです。

18 フィンセント・ファン・ゴッホ 「アルルの公園の入り口」 ★こちらで観られます
こちらはアルルでゴーギャンの到着を待っていた頃の作品で、木々が立ち並ぶ公園(ゴッホが借りた家の向かいの公園)の道を描いています。道は黄色が鮮やかで、両脇には休んでいる人の姿もあってのんびりした雰囲気が漂います。中央左辺りに立っている帽子の人が一際目を引くのですが、これは恐らくゴッホ本人じゃないかな。厚塗りで細長い筆致を重ねていて、対比的な色使いが明るく力強い効果を出していました。ゴッホの魅力がよく出ていると思います。
 参考記事:
  ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想前編(国立新美術館)
  ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想後編(国立新美術館)
  ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 (東京都美術館)
  映画「ゴッホ~最期の手紙~」(ややネタバレあり)
  ゴッホゆかりの地めぐり (南仏編 サン・レミ/アルル)
  
44 ジョルジュ・ブラック 「レモンとナプキン」
こちらは横長の画面にナプキンの上に置かれた水差しやレモンなどが描かれた作品です。単純化されて幾何学的なリズムが心地よく感じられます。色彩も落ち着いていて、調和を感じさせました。ブラックも結構画風が変わりますが、この画風の頃が一番好きかな。
ブラックは他にも大型の「円いテーブル」や、よりキュビスム的な「ブドウとクラリネットのある静物」などもあり、素晴らしいコレクションです。


<4章 1940年前後の蒐集>
続いては第二次世界大戦の頃に蒐集した作品が並ぶコーナーです。

25 ポール・セザンヌ 「ザクロと洋梨のあるショウガ壺」 ★こちらで観られます
こちらは机の上に乗った洋梨や壺、ナプキンなどを描いた作品です。恐らくセザンヌのアトリエで描いたもので、背景は青い壁で色が響き合っているように感じるかな。丸っこい洋梨が並ぶ配置が流れるようで、形態の面白さと画面構成の妙が楽しめます。解説によると、これはセザンヌ本人がモネに贈ったものらしく、傑作と言える静物でした。

この隣にあった「ベルヴュの野」もセザンヌらしい作品でした。

41 アンリ・マティス 「サン=ミシェル河岸のアトリエ」 ★こちらで観られます
こちらは大型の縦長の作品で、パリのアトリエのソファの上で頭の後ろに手を組む裸婦が描かれています。室内画ですが、外には川の流れと街の光景が描かれていて開放感もあるかな。力強い色彩と単純化がマティスの魅力そのものと言った感じで、特に装飾的なソファの赤が目を引きました。解説によると、これは第一次世界大戦の戦中に描いたので抑え気味の色調のとのことですが、マティスとしては抑え気味という感じですねw 十分に色は強く思えます。直線と直角を多用している構図も面白い作品でした。
 参考記事:マティス美術館 【南仏編 ニース】

51 オスカー・ココシュカ 「ロッテ・フランツォスの肖像」
こちらは大型の肖像で、法律家の妻を描いています。ややかすれたような色彩で、人物の周りにオーラのように浮かぶ輪郭が力強い色に思えます。ココシュカはこの女性に愛情を感じていたらしいので、光に包まれるように描いたのかも。本人はろうそくの炎のように描いたとのことなので納得w  ちょっと不自然な身振りも意味深な作品でした。
 参考記事:ウィーン・ミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 (日本橋タカシマヤ)

この近くには同じくココシュカの風景画やドガの「稽古する踊り子」(★こちらで観られます)もありました。

40 ラウル・デュフィ 「画家のアトリエ」 ★こちらで観られます
こちらはデュフィのアトリエの中を描いた作品で、水彩のような透明感のある水色とピンクの上に輪郭線で区切って描いているような感じです。正面の窓からは外も見えていて、その部分は黄色くなっていて色が引き立て合っているように見えます。窓やドア、画中画など直線・直角が多くリズミカルで、非常に軽やかな雰囲気となっていました。私はデュフィが大好きですが、これほど見事な作品は中々無いと思います。この展示で最も気に入った作品となりました。
 参考記事:
  ラウル・デュフィ展 ~くり返す日々の悦び~ (三鷹市美術ギャラリー)
  アングラドン美術館 【南仏編 アヴィニョン】


ということで、今日はこの辺にしておこうと思います。前半から巨匠の典型的な作風の作品ばかりで、よくこれだけの品を集めたな…と感嘆するような内容でした。DDな私が言うのもなんですが、好みが読めないくらい画家・画風の方向性はバラバラなのにどれも良い作品という…w 特にデュフィやマネの作品は手元に置いておきたくなったので図録も購入しました。後半も驚くような内容となっていましたので次回は残りの5~7章をご紹介していこうと思います。

  → 後編はこちら

関連記事


記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。

 

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter



コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

21世紀のxxx者

Author:21世紀のxxx者
 
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。

画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。

↓ブログランキングです。ぽちっと押して頂けると嬉しいです。





【トラックバック・リンク】
基本的にどちらも大歓迎です。アダルトサイト・商材紹介のみのサイトの方はご遠慮ください。
※TB・コメントは公序良俗を判断した上で断り無く削除することがあります。
※相互リンクに関しては一定以上のお付き合いの上で判断させて頂いております。

【記事・画像について】
当ブログコンテンツからの転載は一切お断り致します。(RSSは問題ありません)

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter

展覧スケジュール
現時点で分かる限り、大きな展示のスケジュールを一覧にしました。

展展会年間スケジュール (1都3県)
検索フォーム
ブログ内検索です。
【○○美術館】 というように館名には【】をつけて検索するとみつかりやすいです。
全記事リスト

全記事の一覧リンク

カテゴリ
リンク
このブログをリンクに追加する

日ごろ参考にしているブログです。こちらにも訪れてみてください。

<美術系サイト>
弐代目・青い日記帳
いづつやの文化記号
あるYoginiの日常
影とシルエットのアート
建築学科生のブログ
彫刻パラダイス
ギャラリークニャ
「 10秒美術館 」 ~元画商がほんのり捧げる3行コメント~ 
だまけん文化センター
横浜を好きになる100の方法
美術品オークション

<読者サイト>
アスカリーナのいちご日記
Gogorit Mogorit Diary
青い海(沖縄ブログ)
なつの天然生活
月の囁き
桜から四季の花まで、江戸東京散歩日記
うさみさんのお出かけメモ (u_u)
森の家ーイラストのある生活
Croquis
ラクダにひかれてダマスカス

<友人のサイト>
男性に着て欲しいメンズファッション集
Androidタブレット比較
キャンペーン情報をまとめるブログ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
メディア掲載
■2012/1/27
NHK BSプレミアム 熱中スタジアム「博物館ナイト」の収録に参加してきました
  → 詳細

■2011/11/21
海の見える杜美術館の公式紹介サイトに掲載されました
  → 詳細

■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
  → 詳細

■2009/10/28
Yahoo!カテゴリーに登録されました
  → 絵画
  → 関東 > 絵画

記事の共有
この記事をツイートする
広告
美術鑑賞のお供
細かい美術品を見るのに非常に重宝しています。
愛機紹介
このブログの写真を撮ってます。上は気合入れてる時のカメラ、下は普段使いのカメラです。
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
27位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
デザイン・アート
3位
アクセスランキングを見る>>
twitter
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

※できるだけコメント欄にお願い致します。(管理人だけに表示機能を活用ください) メールは法人の方で、会社・部署・ドメインなどを確認できる場合のみ返信致します。