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フランク・ロイド・ライト 「自由学園明日館」(2018年12月)

今日は写真多めです。先週の日曜日に池袋にあるフランク・ロイド・ライトが設計した「自由学園明日館」を見学してきました。この施設では撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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公式サイト:https://jiyu.jp/tour/


結構沢山の人がいましたが、建物マニアの人たちというよりは公民館的な感じで使われているので、そうしたイベントの人が多かったように思います。さらにここにはカフェと講堂もあって、この日は無料コンサートもあったのでそれで混んでいたのかも。講堂とカフェ(旧食堂)については別記事で書こうと思いますので、今日は本館のカフェ部分以外についてです。

この建物は近代建築の三大巨匠の1人であり日本とも少なからず関係のあるフランク・ロイド・ライトによる設計で、恐らくライトの設計で現役で使われているのは日本でここだけだと思います。明治村の旧帝国ホテルは玄関部分だけを切り取ったものだし、「FUKUHARA HOUSE(福原有信邸)」は関東大震災で倒壊したし、丸々生き残ってるのは奇跡のような建物です。しかも池袋駅から徒歩5分という場所にありながら一般にはあまり知られていないというのも穴場感があります。
元々ここは羽仁吉一・もと子 夫妻が1903年に『家庭之友』という雑誌の事務所と自宅を建てる為に、おさつと大根の畑だったこの地を借り受けたのですが、2人は女性教育のための学校設立を夢見て 実際に創立する際に、当時2人が通っていた教会の教会員でありフランク・ロイド・ライトの弟子である遠藤新に学校の設計を依頼しました。すると、遠藤新は自分よりもフランク・ロイド・ライトに頼んではどうかと勧められ、帝国ホテルの建設で忙しいライトに紹介され、2人の教育理念を話したところ ライトの深い共感を得ることができて、校舎の設計を快諾されたそうです。帝国ホテルの建設でめちゃくちゃ忙しくて遂には首になったライトがよく引き受けてくれたな…と驚くと共に、そんな中でも時間を作って数日でラフスケッチを作ったというのにも更に驚きです。成り立ちを知ると如何に貴重な建物かが分かります。と、感慨深いエピソードが色々あるのですがちょっと前置きが長くなってきたので、写真を使いながら合わせてご紹介していこうと思います。

 参考記事:
  【番外編】博物館明治村の写真 後編(2013年12月)
  アントニン・レーモンド 「旧イタリア大使館別荘」 【日光編】
  【大谷資料館】 坑道内の写真
  それを超えて美に参与する 福原信三の美学 Shinzo Fukuhara / ASSEMBLE, THE EUGENE Studio 【資生堂ギャラリー】

こちらは全体の外観。
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「簡素な外形のなかにすぐれた思いを充たしめたい」という羽仁夫妻の思いを基調としているようで、割とシンプルな見た目です。

こちらが本館部分の見取り図。(現在位置は無視してくださいw)
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タリアセンという部屋がありますが、タリアセンというのはフランク・ロイド・ライトが設計した建設のことを指したりする言葉です。豊島とかマニアーニャ(明日)とかモーゼスとか、この建物にゆかりのある名前が多いですね。

こちらが本館の入口部分。ここで入館料を払います。
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入館のみとカフェ込のチケットがあり、私たちはカフェ込のチケットにしました(日によってはカフェをやっていないようです)

入口の隣の隣の部屋では婦人之友社の書籍を紹介するコーナーがありました。
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婦人之友社のおかげでフランク・ロイド・ライトの建物が日本でも観られるんですね。本当にありがたいことです。

こちらは講堂側の入口部分。左右対称になっていてほとんど同じに見えます。
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こちらは生涯学習の事務所として使用しているようでした。

講堂側の側面部分の教室は結婚式の相談所?として使われています。
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この自由学園明日館を土日に見学しようとすると月に1日しか見学出来る日が無いのですが、それ以外の土日は結婚式場として予約が埋まっているそうです。こんな名建築で結婚式が出来るのは幸せなことでしょうね。 一方、私のように単にこの建物を休日に見学したい場合は、公式ページのカレンダーをよくチェックしておくことをお勧めします。

こちらは本館のドア。幾何学的な模様が美しい!
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この写真にも写っていますが、あちこちに大谷石が使われています。フランク・ロイド・ライトの熱い大谷石へのこだわりが感じられますねw

ドアの内側から観るとこんな感じ。
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シンプルながらも むちゃくちゃ絵になる幾何学模様で、テンションあがりっぱなしでしたw (同じ構図の写真を10枚は撮ってきたw)

続いて、この建物で一番の特徴とも言えるホール。右は吹き抜けの二階から見下ろす構図で撮っています
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この窓は限られた工費で抑えつつ、空間を充実させる為の工夫が見どころです。高価なステンドグラスではなく幾何学模様となっていて、独特の美しさです。保存修理をする前は中敷居を入れて風が強い日も安心なよう小さな窓に改変していた時期もあったようですが、今は文化財修理の原則に基づいてオリジナルに戻されているそうです。

ホールを振り返るとこんな感じです。吹き抜けの2階はフランク・ロイド・ライトミュージアムということでミニ展示室となっています。
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ここで注目したいのが、ここに並ぶ椅子です。六角形の背もたれを持つ椅子は、真ん中にスリットがあってフランク・ロイド・ライトのテイストがよく現れています。(ライトもしくは遠藤新の作品と考えられているようですが、他の椅子と比較しても遠藤新っぽい気もします。) 六角形にしたのはこの部屋が六角形を基調とした窓があるためのようで、非常に調和した雰囲気となっていました。

こちらもホール。窓に向かって右手奥にある壁画です。
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1997年からの修理工事で発見された壁画だそうで、壁の下から現れたようです。創立10周年の頃に美術講師でもあった美術家・石井鶴三の指導の下で生徒たちによって作られたそうで、出エジプト記を題材にしているようです。

こちらは先程写っていたホールの暖炉。
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ライトは「火のあるところには人は集まり、団欒の場を共有するのだ」と考えていたそうで、この明日館には5箇所の暖炉があります。冬の夜間見学の日など年に何回か焚いているそうで、煤がついていました(夜間見学もスケジュール表に載っています。基本的に毎月第3金曜日のようです)

こちらは廊下。
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廊下の窓にも装飾があって優美な雰囲気です。

こちらは先程とは別のドア。天井部分がガラスになっている所がありました。
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間接照明みたいな感じかな? デザインが非常に美しい。

前述の通り色々とイベントをやってたりするので、たまに入れない部屋がありますがいくつか教室にも入れて貰えました。
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物置に学校らしさを感じるけど、こんな洒落た木組みは観たことありませんねw

窓だって様になっています。
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ちなみに、この建物は設計を依頼してわずか3ヶ月で建てられたそうで、塗装も終わっていないような段階で入学式を迎えたのだとか。その後も授業と並行して建設工事が続けられ、約1年後に中央棟全体が完成したそうです。

こちらは黒板。
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周りの木枠があるだけで洒落た感じが出る不思議w

一番奥の部屋は自由学園のPR室になっていました。
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流石にここでは手狭になって、今の自由学園は東久留米市にあるそうです。ここで初の入学式を行ったそうで、1921年に完成した部屋という意味でRm.1921と名づけられたそうです。もう少しで100周年です。

中の造りは他の教室と似た感じ。
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お食事会、会議、ミーティング等でも使えるということで、この部屋の隣を公民館のように使っているグループもありました。

ここにも先程のと同じ形の椅子がありました。
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レトロだけど先進性があって、欲しくなりますw

この後、カフェのある食堂に行ったのですが、それについては次回ご紹介の予定です。とりあえず、食堂をさらに階段を登って先程のホールの吹き抜けにあるフランク・ロイド・ライトミュージアムをご紹介。

こちらは明日館の模型。
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こうして綺麗に残っていますが、空襲の危機(付近は全部焼けたけど免れた)や老朽化で取り壊す危機なんかもあったそうです。1997年に国の重要文化財に指定され、1999年から修理康史を開始して2001年に中央棟、東西教室棟の3棟が復元されました。

こちらは模型を横から見たところ。
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この建物は使い続けることが保存につながるという「動態保存」を旨として使われています。日本の宝みたいな建物なので、末永く残ってほしいものです。

この部屋にはこの建物の成り立ちや、自由学園の創立当時のエピソードなんかもありました。見学する上で非常に参考になります。

ミュージアム内の調度品もフランク・ロイド・ライトのタリアセンを使っていました。
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この照明、市販で7~8万円しますw 流石にこの建物にピッタリ合いますね。

最後におまけでミュージアムショップ。ここには色々と魅惑の商品があって、遠藤新の食堂の椅子のミニチュアとかにも心を惹かれたのですが、Tシャツを買いました。
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このTシャツのデザインは食堂にあるライトがデザインした照明です。まあ、これを観て分かる人はあまりいないと思いますがカッコいいので衝動買いですw


ということで、それほど大きくない建物ですが見どころが多すぎて2時間以上はぐるぐる周って写真を撮ってきました。特に建築好きの方は一度は訪れておきたい建物だと思います。
次回は引き続き、明日館のカフェをご紹介しようと思います。

 参考記事
  自由学園明日館のカフェ 【自由学園明日館 館内のお店】
  遠藤新 「自由学園明日館 講堂」(2018年12月)

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