終わりのむこうへ : 廃墟の美術史 【松濤美術館】
先週の日曜日に渋谷の松濤美術館で「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」を観てきました。

【展覧名】
終わりのむこうへ : 廃墟の美術史
【公式サイト】
http://www.shoto-museum.jp/exhibitions/181haikyo/
【会場】松濤美術館
【最寄】渋谷駅・神泉駅
【会期】2018年12月8日(土)~2019年1月31日(木)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんは多かったですが、概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は「廃墟」をテーマにした絵画展で、古今東西の画家の作品が並ぶ内容となっています。廃墟の絵画は西洋美術の中で繰り返し描かれていたのですが、18世紀から19世紀にかけて廃墟趣味が流行し、廃墟が主役の地位となっていったようです。この廃墟を描く美学は近代の日本にも伝わり、現代まで息づく流れとなっています。展示は大きく2階と地下に分かれていて、時代を追っていく感じになっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<I章 絵になる廃墟:西洋美術における古典的な廃墟モティーフ>
まずは2階の展示で、ここは17~18世紀の廃墟を主題にした作品から始まります。18~20世紀にも廃墟のテーマは引き継がれていったようで、ざっくりとその伝統を観ることができました。
2 ユベール・ロベール 「ローマのパンテオンのある建築的奇想画」
これはポスターを撮ったものです。

こちらは今回のポスターの1つとなっている作品で、コリント式の柱や回廊のある神殿の廃墟の中の人々を描いています。人のおかげで廃墟の大きさがわかるのですが、かなりの広さです。遠近感が強いのも一層そう感じさせるかな。人々の服装も古代風で、神話のような理想的な美しさがありました。ユベール・ロベールといえば廃墟なので、このチョイスは王道ですね。
参考記事:
ユベール・ロベール-時間の庭 感想前編(国立西洋美術館)
ユベール・ロベール-時間の庭 感想後編(国立西洋美術館)
5 アンリ・ルソー 「廃墟のある風景」
こちらは打って変わって近代絵画のルソー。崩れかかった壁のある廃墟と、教会の屋根が見えていて手前には籠を持った女性が歩いている姿もあります。解説によると、ルソーの中で他に類のない主題なので、版画作品などをもとに描いていると考えられるそうです。全体的に滑らかな筆致で、現実を描いているのにややシュールな雰囲気もありました。これは以前観た時の記憶が蘇りました。
参考記事:レオナール・フジタ ― ポーラ美術館コレクションを中心に 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
<II章 奇想の遺跡、廃墟>
続いては18~19世紀頃のコーナー。この頃あえて廃墟や遺跡を好んで描く廃墟趣味が隆盛したそうで、その背景には18世紀にポンペイ遺跡などが相次いで見つかって世間の関心を得たのと、上流階級が「グランド・ツアー」というイタリアへの留学で歴史遺跡を訪ねるのが流行したことがあるようです。ここには地誌的・歴史的な正確さに基づいて描かれた作品が並んでいました。
6-11 ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ 「『ローマの景観』より」
これはポスターを撮ったものです。

こちらはローマ遺跡を描いたエッチングの版画集で、かなり精密で濃淡を活かして質感や遠近感を出しています。所々に人を配して廃墟の大きさや偉大さを示しつつ、時間の経過も感じさせます。 流石に人が小さすぎるのでは?と思うような絵もありましたが、丹念な描写に圧倒されました。
参考記事:ピラネージ『牢獄』展 (国立西洋美術館)
この辺は確かにかなり緻密で写実的な版画が並んでいました
<III章 廃墟に出会った日本の画家たち: 近世と近代の日本の美術と廃墟主題>
続いては日本人による廃墟の絵画です。近代までは日本に廃墟を描いた作品はなかったようですが、廃墟趣味の輸入版画を元に浮世絵にした作品なんかも存在するようです。明治以降は洋画教育の中で伝播していったようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
28 亜欧堂田善 「独逸国廓門図」
こちらは江戸時代にドイツを描いたもので、オベリスクやドーム状の宮殿が立ち並ぶ光景となっていて、観た感じは西洋画そのものです。廃墟ではないな…w 解説によると、ドイツではなく実際には古代ローマの繁栄の図などを元に描いているそうで、先程のピラネージの版画の中にも似た作品があるようです。亜欧堂田善は日本の西洋画の先駆け的な存在ですが、この作品は特に西洋から学んでいる様子がよく分かりました。
この近くには浮世絵になった奇妙な西洋風景などもありました。また、日本の近代絵画に大きな影響を与えたフォンタネージによる廃墟のデッサンなどもあります。
34 不染鉄 「廃船」
こちらは昨年話題になった不染鉄による作品で、巨大な貨物船らしき廃船が壁のように大きく描かれています。手前には家々が立ち並んでいるのですが、その大きさの違いで圧倒的な迫力を感じます。重く暗い色合いで水が滝のように落ちている様子など、船というよりは遺跡と言った感じに見えました。重厚感・威圧感がある一方、戦時中に帰ってこなかった船を想う気持ちもあるようでした。
45 岡鹿之助 「廃墟」
こちらは積み重なるような廃墟の建物を描いた作品で、フランスのロワール地方に現存する中世の廃墟だそうです。まるでテトリスのように積み上がっていて、細かい引っかき傷のようなマチエールが風化した質感を出していました。素朴で静かで超現実的な雰囲気のある作品です。
2階はこんな感じで、続いて地下の展示です。
<IV章 シュルレアリスムのなかの廃墟>
地下の最初はシュルレアリスムのコーナーです。ここは姫路のデルヴォーが多めで、マグリットやデ・キリコなど横浜美術館の所蔵品なども並んでいました。
47 ポール・デルヴォー 「水のニンフ(セイレン)」
こちらは海で水浴びしている裸婦(ニンフまたはセイレーン)を描いたもので、背景には古代神殿のようなものが立ち並び、浜辺で1人のステッキを持った紳士がニンフ達を眺めています。ニンフたちは目が死んでいて怖いのですが、神殿との取り合わせも奇妙で 夢の中の世界のような不思議さがありました。
この隣には名作の「海は近い」(★こちらで観られます)もありました。デルヴォーはリトグラフも含めて6点もあって、これだけでもデルヴォー好きとしては嬉しい驚きです。
参考記事:
ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅 (府中市美術館)
ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅 (埼玉県立近代美術館)
53 ジョルジオ・デ・キリコ(工房) 「吟遊詩人」
こちらは普段は横浜美術館の常設にある作品で、単純化された建物の間に立つマネキンが描かれています。左端には人の影が伸びていて、ちょっと不穏な雰囲気があるかな。ぺったりとした画風で、寂しさと共に言い知れぬ魅力も感じる作品です。これぞデ・キリコといったモチーフと画風となっています。
この近くには同じく横浜美術館のマグリットの作品もありました。
<V章 幻想のなかの廃墟:昭和期の日本における廃墟的世界>
続いては昭和期の日本のシュルレアリスムに描かれた廃墟のコーナーです。
56 北脇昇 「章表」
こちらは丘の上の城塞の壁のようなものが並ぶ光景で、かなり単純化されていて不思議な親しみを感じます。解説によると、北脇は1930年台に中国に旅行したことがあるそうで、その時見た風景なのかもしれないとのことです。実在すると言っても絵は心象風景のような雰囲気で、どこか柔らかいような感じを受けました。
57 浜田浜雄 「ユパス」
こちらは女性の横顔のような岩や、人体を思わせる岩などが並ぶ水辺と、そこを歩く4人の少女が描かれた作品です。滑らかな色合いで、抽象化している部分もあって廃墟という感じはそれほどしないかな。ダリに強い影響を受けているのが見て取れて、夢の中を描いているような感じでした。
<VI章 遠い未来を夢見て: いつかの日を描き出す現代画家たち>
最後は現代日本のアーティストたちによる廃墟のコーナーです。ここは今回の見どころの1つだと思います。
65 大岩オスカール 「動物園」 ★こちらで観られます
こちらはかなり大型の作品で、北千住の廃墟が描かれています。柱が立ち並ぶ工場のような堅牢な建物の内部で、瓦礫が転がり何かの機材も見えています。一方、柱の外には町並みが描かれ、遠くにはビルが並んでいるなど明るい雰囲気です。明暗が強く、光の当たる柱を境に違う世界が同居しているようにも見えるかな。柱は神殿のような荘厳な雰囲気も出していました。
68 元田久治 「Indication : Diet Building, Tokyo 3」
こちらは廃墟になった国会議事堂を描いた作品で、木々が生い茂って一体化しつつあり、国会議事堂がラピュタになったみたいな感じですw 俯瞰する構図でくすんだ色合いとなっているのも面白く、失われた文明を目の当たりにしているようなSF感がありました。
参考記事:現代の写実―映像を超えて (東京都美術館)
67 元田久治 「Foresight: Shibuya Center Town」 ★こちらで観られます
こちらはポスターを撮ったものです。

こちらは渋谷の駅あたりが廃墟になった様子。リアルさがあって、滅んだら本当にこういう風になりそうな…。元田氏の作品は身近な場所ほど面白く感じられます。
他にも渋谷駅の銀座線の線路辺りを俯瞰する構図の作品などもありました。
71 野又穫 「交差点で待つ間に」 ★こちらで観られます
こちらはポスターを撮ったものです。

一見すると大都会の交差点を描いたように見えて、左下の犬の像なんかは渋谷っぽく思えます。しかしよく観ると建物は古代風なパーツがあったりして、独特の建築様式となっていて異世界感があります。解説によると、これはピラネージのオマージュから渋谷の交差点と古代ローマを混ぜた感じになっているそうで、白っぽく淡い色調も白化した世界のような静かな雰囲気となっていました。
参考記事:幻想の回廊 (東京オペラシティアートギャラリー)
と言うことで、廃墟と言っても遺跡から架空の廃墟まで様々な作品がありました。遺跡や廃墟はそれ自体も心惹かれる存在ですが、特に地下の展示は想像力豊かで面白い内容だったと思います。廃墟の絵画の歴史も分かるし、廃墟好き必見の展示です。

【展覧名】
終わりのむこうへ : 廃墟の美術史
【公式サイト】
http://www.shoto-museum.jp/exhibitions/181haikyo/
【会場】松濤美術館
【最寄】渋谷駅・神泉駅
【会期】2018年12月8日(土)~2019年1月31日(木)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんは多かったですが、概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は「廃墟」をテーマにした絵画展で、古今東西の画家の作品が並ぶ内容となっています。廃墟の絵画は西洋美術の中で繰り返し描かれていたのですが、18世紀から19世紀にかけて廃墟趣味が流行し、廃墟が主役の地位となっていったようです。この廃墟を描く美学は近代の日本にも伝わり、現代まで息づく流れとなっています。展示は大きく2階と地下に分かれていて、時代を追っていく感じになっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<I章 絵になる廃墟:西洋美術における古典的な廃墟モティーフ>
まずは2階の展示で、ここは17~18世紀の廃墟を主題にした作品から始まります。18~20世紀にも廃墟のテーマは引き継がれていったようで、ざっくりとその伝統を観ることができました。
2 ユベール・ロベール 「ローマのパンテオンのある建築的奇想画」
これはポスターを撮ったものです。

こちらは今回のポスターの1つとなっている作品で、コリント式の柱や回廊のある神殿の廃墟の中の人々を描いています。人のおかげで廃墟の大きさがわかるのですが、かなりの広さです。遠近感が強いのも一層そう感じさせるかな。人々の服装も古代風で、神話のような理想的な美しさがありました。ユベール・ロベールといえば廃墟なので、このチョイスは王道ですね。
参考記事:
ユベール・ロベール-時間の庭 感想前編(国立西洋美術館)
ユベール・ロベール-時間の庭 感想後編(国立西洋美術館)
5 アンリ・ルソー 「廃墟のある風景」
こちらは打って変わって近代絵画のルソー。崩れかかった壁のある廃墟と、教会の屋根が見えていて手前には籠を持った女性が歩いている姿もあります。解説によると、ルソーの中で他に類のない主題なので、版画作品などをもとに描いていると考えられるそうです。全体的に滑らかな筆致で、現実を描いているのにややシュールな雰囲気もありました。これは以前観た時の記憶が蘇りました。
参考記事:レオナール・フジタ ― ポーラ美術館コレクションを中心に 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
<II章 奇想の遺跡、廃墟>
続いては18~19世紀頃のコーナー。この頃あえて廃墟や遺跡を好んで描く廃墟趣味が隆盛したそうで、その背景には18世紀にポンペイ遺跡などが相次いで見つかって世間の関心を得たのと、上流階級が「グランド・ツアー」というイタリアへの留学で歴史遺跡を訪ねるのが流行したことがあるようです。ここには地誌的・歴史的な正確さに基づいて描かれた作品が並んでいました。
6-11 ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ 「『ローマの景観』より」
これはポスターを撮ったものです。

こちらはローマ遺跡を描いたエッチングの版画集で、かなり精密で濃淡を活かして質感や遠近感を出しています。所々に人を配して廃墟の大きさや偉大さを示しつつ、時間の経過も感じさせます。 流石に人が小さすぎるのでは?と思うような絵もありましたが、丹念な描写に圧倒されました。
参考記事:ピラネージ『牢獄』展 (国立西洋美術館)
この辺は確かにかなり緻密で写実的な版画が並んでいました
<III章 廃墟に出会った日本の画家たち: 近世と近代の日本の美術と廃墟主題>
続いては日本人による廃墟の絵画です。近代までは日本に廃墟を描いた作品はなかったようですが、廃墟趣味の輸入版画を元に浮世絵にした作品なんかも存在するようです。明治以降は洋画教育の中で伝播していったようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
28 亜欧堂田善 「独逸国廓門図」
こちらは江戸時代にドイツを描いたもので、オベリスクやドーム状の宮殿が立ち並ぶ光景となっていて、観た感じは西洋画そのものです。廃墟ではないな…w 解説によると、ドイツではなく実際には古代ローマの繁栄の図などを元に描いているそうで、先程のピラネージの版画の中にも似た作品があるようです。亜欧堂田善は日本の西洋画の先駆け的な存在ですが、この作品は特に西洋から学んでいる様子がよく分かりました。
この近くには浮世絵になった奇妙な西洋風景などもありました。また、日本の近代絵画に大きな影響を与えたフォンタネージによる廃墟のデッサンなどもあります。
34 不染鉄 「廃船」
こちらは昨年話題になった不染鉄による作品で、巨大な貨物船らしき廃船が壁のように大きく描かれています。手前には家々が立ち並んでいるのですが、その大きさの違いで圧倒的な迫力を感じます。重く暗い色合いで水が滝のように落ちている様子など、船というよりは遺跡と言った感じに見えました。重厚感・威圧感がある一方、戦時中に帰ってこなかった船を想う気持ちもあるようでした。
45 岡鹿之助 「廃墟」
こちらは積み重なるような廃墟の建物を描いた作品で、フランスのロワール地方に現存する中世の廃墟だそうです。まるでテトリスのように積み上がっていて、細かい引っかき傷のようなマチエールが風化した質感を出していました。素朴で静かで超現実的な雰囲気のある作品です。
2階はこんな感じで、続いて地下の展示です。
<IV章 シュルレアリスムのなかの廃墟>
地下の最初はシュルレアリスムのコーナーです。ここは姫路のデルヴォーが多めで、マグリットやデ・キリコなど横浜美術館の所蔵品なども並んでいました。
47 ポール・デルヴォー 「水のニンフ(セイレン)」
こちらは海で水浴びしている裸婦(ニンフまたはセイレーン)を描いたもので、背景には古代神殿のようなものが立ち並び、浜辺で1人のステッキを持った紳士がニンフ達を眺めています。ニンフたちは目が死んでいて怖いのですが、神殿との取り合わせも奇妙で 夢の中の世界のような不思議さがありました。
この隣には名作の「海は近い」(★こちらで観られます)もありました。デルヴォーはリトグラフも含めて6点もあって、これだけでもデルヴォー好きとしては嬉しい驚きです。
参考記事:
ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅 (府中市美術館)
ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅 (埼玉県立近代美術館)
53 ジョルジオ・デ・キリコ(工房) 「吟遊詩人」
こちらは普段は横浜美術館の常設にある作品で、単純化された建物の間に立つマネキンが描かれています。左端には人の影が伸びていて、ちょっと不穏な雰囲気があるかな。ぺったりとした画風で、寂しさと共に言い知れぬ魅力も感じる作品です。これぞデ・キリコといったモチーフと画風となっています。
この近くには同じく横浜美術館のマグリットの作品もありました。
<V章 幻想のなかの廃墟:昭和期の日本における廃墟的世界>
続いては昭和期の日本のシュルレアリスムに描かれた廃墟のコーナーです。
56 北脇昇 「章表」
こちらは丘の上の城塞の壁のようなものが並ぶ光景で、かなり単純化されていて不思議な親しみを感じます。解説によると、北脇は1930年台に中国に旅行したことがあるそうで、その時見た風景なのかもしれないとのことです。実在すると言っても絵は心象風景のような雰囲気で、どこか柔らかいような感じを受けました。
57 浜田浜雄 「ユパス」
こちらは女性の横顔のような岩や、人体を思わせる岩などが並ぶ水辺と、そこを歩く4人の少女が描かれた作品です。滑らかな色合いで、抽象化している部分もあって廃墟という感じはそれほどしないかな。ダリに強い影響を受けているのが見て取れて、夢の中を描いているような感じでした。
<VI章 遠い未来を夢見て: いつかの日を描き出す現代画家たち>
最後は現代日本のアーティストたちによる廃墟のコーナーです。ここは今回の見どころの1つだと思います。
65 大岩オスカール 「動物園」 ★こちらで観られます
こちらはかなり大型の作品で、北千住の廃墟が描かれています。柱が立ち並ぶ工場のような堅牢な建物の内部で、瓦礫が転がり何かの機材も見えています。一方、柱の外には町並みが描かれ、遠くにはビルが並んでいるなど明るい雰囲気です。明暗が強く、光の当たる柱を境に違う世界が同居しているようにも見えるかな。柱は神殿のような荘厳な雰囲気も出していました。
68 元田久治 「Indication : Diet Building, Tokyo 3」
こちらは廃墟になった国会議事堂を描いた作品で、木々が生い茂って一体化しつつあり、国会議事堂がラピュタになったみたいな感じですw 俯瞰する構図でくすんだ色合いとなっているのも面白く、失われた文明を目の当たりにしているようなSF感がありました。
参考記事:現代の写実―映像を超えて (東京都美術館)
67 元田久治 「Foresight: Shibuya Center Town」 ★こちらで観られます
こちらはポスターを撮ったものです。

こちらは渋谷の駅あたりが廃墟になった様子。リアルさがあって、滅んだら本当にこういう風になりそうな…。元田氏の作品は身近な場所ほど面白く感じられます。
他にも渋谷駅の銀座線の線路辺りを俯瞰する構図の作品などもありました。
71 野又穫 「交差点で待つ間に」 ★こちらで観られます
こちらはポスターを撮ったものです。

一見すると大都会の交差点を描いたように見えて、左下の犬の像なんかは渋谷っぽく思えます。しかしよく観ると建物は古代風なパーツがあったりして、独特の建築様式となっていて異世界感があります。解説によると、これはピラネージのオマージュから渋谷の交差点と古代ローマを混ぜた感じになっているそうで、白っぽく淡い色調も白化した世界のような静かな雰囲気となっていました。
参考記事:幻想の回廊 (東京オペラシティアートギャラリー)
と言うことで、廃墟と言っても遺跡から架空の廃墟まで様々な作品がありました。遺跡や廃墟はそれ自体も心惹かれる存在ですが、特に地下の展示は想像力豊かで面白い内容だったと思います。廃墟の絵画の歴史も分かるし、廃墟好き必見の展示です。
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