関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア (感想前編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】

この前の土曜日に渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで「国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア」を観てきました。見どころの多い展示でメモを多めに取ってきたので前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

DSC09095.jpg

【展覧名】
 国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア

【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_russia/

【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅

【会期】2018年11月23日(金)~2019年01月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構多くのお客さんで賑わっていて、場所によっては人だかりが出来るくらいでした。

さて、この展示はロシアの国立トレチャコフ美術館が所蔵するコレクションの中から19世紀後半から20世紀初頭の作品を72点紹介する内容となっています。時期的にはロシア帝国の崩壊が迫りつつある頃で、美術の世界では印象派を始めとした近代絵画が花咲く頃に当たります。ちなみに今回のポスターに「また お会いできますね」とあるのは約10年ほど前にもイワン・クラムスコイの「忘れえぬ女」をはじめとしたトレチャコフ美術館の所蔵展が行われた為で、bunkamuraはちょくちょくロシア関係の美術を紹介しているように思います。(事前に10年前の図録を観てから行ったのですが、いくつか同じのが来ているものの大半は違う作品でした) 展覧会は4章構成で題材ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア 2回目 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  

<第1章 ロマンティックな風景>
まずは風景画のコーナーです。ここにはロシアらしい風景を描いた作品が季節ごとに並んでいました。

[春]
ロシアでは春は再生の時と考えられているようです。ここには春の光景を題材にした作品がありました。

5 イサーク・レヴィタン 「春、大水」
こちらは雪解けで川が氾濫している様子を描いた作品です。白樺の木々が水に浸かっていて結構な洪水ですが、荒れ狂った感じはなく静かな印象を受けます。日差しが当たって白樺の幹が明るく見え、それがリズミカルな配置に思えました。河岸のカーブなども心地良いし、氾濫してても春の訪れを喜んでいるような絵に思えました。結構緻密で澄んだ色彩も好みでした。

4 アブラム・アルヒーポフ 「帰り道」
こちらは10年前にも来ていた作品だと思います。馬車とそれを追う御者の後ろ姿が描かれ、背景には木の無い広大な平野が広がり地平線まで見えています。馬の蹄で土埃が舞い上がる様子など、緻密な描写で臨場感があって足音まで聞こえそうな感じです。物悲しいような郷愁を誘う光景が叙情的でした。

[夏]
続いては夏です。ロシアの夏は短いのですが、ここには他の季節よりも沢山の作品が並んでいました。

22 ミハイル・ヤーコヴレフ 「花のある静物」
こちらは白いテーブルの上に置かれた 赤や黄色の花々が入った花瓶?を描いた静物です。厚塗りで筆跡が残る大胆な筆致となっていて、この展覧会の中ではモダンな印象を受けます。色合いも強烈で印象派というよりはフォービスム的な雰囲気でした。

18 イワン・シーシキン 「正午、モスクワ郊外」 ★こちらで観られます
こちらは金色のライ麦畑の間に農具を持って歩く農民たちを描いた作品です。遠くに塔のような建物がありますが、いかにも農村と言った感じかな。縦長の画面に水平線を低めに取っているのが広々とした印象で、光溢れる明暗も爽やかで穏やかです。解説によると、これはロシアの自然のイメージそのものなのだとか。

この隣にあったイワン・シーシキンの「森の散歩」は見覚えありました。イワン・シーシキンはドイツとスイスで修行した画家で、移動展覧会協会に所属し、ロシアの風景を描き続けました。この移動展覧会協会はトレチャコフが好んでコレクションした一派のようで、今回の展覧会ではそれに関連した画家が多く紹介されています。名前の通り、各地の都市で移動しながら展覧会を開催していた一派です。

13 アルカージー・ルイローフ 「静かな湖」
こちらは森の木々の隙間から小さな湖を覗いたような構図の作品です。そこには小舟に乗った人が手元を見ていて、どうやら釣りの用意をしているようです。割とぺったりした色彩で装飾的な要素もあるように見えるかな。静かで明るい日差しを感じました。解説によると、これは作者自身の体験を描いているようです。

12 コンスタンチン・クルイジツキー 「月明かりの僧房」
こちらは月光に照らされた三角屋根に十字マークの僧房を描いた作品で、周りは巨大な木々に囲まれています。僧房の前には杖を持つ白い衣と帽子の人物と、その傍らで座っている黒衣の人物が何か話し合っているように見えます。全体的に青白く、月光が微妙な明暗を作っていて神秘的な雰囲気となっていました。

15 イワン・シーシキン 「雨の樫林」 ★こちらで観られます
こちらは樫の林の間のぬかるんだ道を歩く3人の人物の後ろ姿を描いた作品です。その内の2人の男女は1本の傘で身を寄せ合っているので恋人同士かな? 奥の方は霧で霞んでいて烟るような感じです。樫の林の湿度まで感じられ、ロマンティックな詩情溢れる作品でした。

9 イワン・アイヴァゾフスキー 「海岸、別れ」
こちらは夕暮れの穏やかな砂浜の海岸にボートが1艘留まっている風景画で、手前には家族が別れを惜しんでいる様子が描かれています。夫妻が抱き合い、子供が見守っていて、これは漁師が海に出る前の別れのシーンのようです。沖合には大きな船があり今まさに出航と言ったところでしょうか。滑らかな色彩で、全体的にオレンジが輝いているように見えます。美しい風景と共に しんみりとした心の機微も描かれている作品でした。

[秋]
続いては秋のコーナーです。ここはやや少なめだったかな。

27 イワン・ゴリュシュキン=ソロコプドフ 「落ち葉」
こちらも移動展覧会のメンバーで、見覚えある作品かも。紅葉に染まる森の中を描いていて、葉っぱに光が当たっていて一層美しい光景です。緻密で写実的な作風で 悲哀を込めて描いているとのことですが、ちょっとセンチメンタルな気持ちになる光景な一方で、明暗が劇的な効果を生んでいるように思いました。

26 コンスタンチン・ユオン 「粉引き場、10月」
こちらは粉挽き小屋の当たりで人々やロバたちが働いている様子を描いた作品です。大きな袋を担いだり運んだり、傍らにはミルストーンらしきものが転がっていたりします。画面の左半分は川に橋がかかっていて、青が鮮やかに見えたのですが、これは光の表現を誇張しているようです。あまり細部は細かくないですが、生き生きとした情景の作品となっていました。

[冬]
冬はロシアで最も長く過酷な季節です。しかし雪や氷が美しい風景を生む季節でもあり、ここにはそうした作品も並んでいます。

29 ミハエル・ゲルマーシェフ 「雪が降った」
こちらは雪の積もった平原と 手前に立つ木の壁と門が描かれた作品で、門の間を列を組んで歩いているアヒルの姿も描かれています。7羽ほど並んでいてよちよち歩きで可愛らしいw 空も真っ白で積み藁にも雪が積もるなど寒々しい光景ですが、アヒルの存在でほっこりとした雰囲気となっていました。

31 ワシーリー・バクシェーエフ 「樹氷」 ★こちらで観られます
↓これはショーウィンドウにあった複製を撮った写真です。
DSC09083.jpg
こちらは木々に囲まれた雪道を描いた作品です。青と白で明暗を付け、輝くような樹氷の様子を描いています。寒さの厳しいロシアならではの光景で、過酷ながらも爽やかな雰囲気となっていました。

32 ニコライ・サモーキシュ 「トロイカ」
こちらは3頭立てのソリである「トロイカ」を正面から描いた作品で、3匹とも足を浮かせて疾走している様子となっています。こちら側に飛び出してきそうなダイナミックな構図となっていて、目をひんむいて鼻息は白くなっているなど 冬でも逞しく走る馬の力強さが感じられました。解説によると、この作品では写真で馬の走る筋肉を撮って活用したとのことで、写実的で真に迫るものがありました。


<第2章 ロシアの人々>
続いては人物像のコーナーです。肖像画は19世紀後半から20世紀初頭に最も豊かな展開を見せたそうで、この時期はロシア文学が発展した時期と重なるようです。ロシア文学の心理分析などを学んで絵画の心理描写に活かしたとのことで、ここには内面がよく現れた作品が並んでいました。

[ロシアの魂]
こちらは画家同士で描いた肖像画などが並んでいました。

34 イリヤ・レーピン 「画家イワン・クラムスコイの肖像」
こちらはこの後に出てくる「忘れえぬ女」を描いたイワン・クラムスコイを描いた肖像です。イワン・クラムスコイはレーピンの最初の師匠らしく、ここでは足を組んで座りこちらをじっと観る威厳ある姿となっています。レーピンがイワン・クラムスコイの特徴を語った通り、くぼんだ眼窩の深みにあるのにハッキリした目となっていて、灰色の強い瞳が印象的でした。背景が灰色なのも相まって 落ち着いて知的な感じに見えました。

この隣にもレーピンの肖像がありました。有名な音楽家を描いた作品などがあります。

[女性たち]
こちらは女性を描いたコーナー。なんと言ってもイワン・クラムスコイによる2つの作品が白眉です。

40 イワン・クラムスコイ 「忘れえぬ女」 ★こちらで観られます
↓これはショーウィンドウにあった複製を撮った写真です。
DSC09090.jpg
こちらは今回のポスターになっている作品で、背景はサンクトペテルブルクの町並みのようです。当時からこのモデルは誰か?が論争になったようで、トルストイの『アンナ・カレーニナ』やドストエフスキーの作品に出てくる自立した女性と言う説もあったようです。というのも、幌を上げて馬車に乗るというのは当時は珍しかったそうで、堅苦しい社会への挑戦とも受け止められていたようです。その睥睨するような眼差しが何とも印象的で、気品ある顔立ちと共に「忘れ得ぬ女」という邦題がぴったりな気がします。丹念な描写で描かれた小物の質感や、浮かび上がる色彩なども女性の存在感を強めていました。

39 イワン・クラムスコイ 「月明かりの夜」 ★こちらで観られます
こちらも今回の見どころの1つで、木々に囲まれた水辺のベンチに腰掛けている白い衣の女性が描かれています。周りは暗いのですが女性にだけ月光があたっていて神秘的な光景です。それでも月光は柔らかく感じられるかな。やや微笑んでいるような表情も魅力的で、遠くを伺うような眼差しが物想いに耽っているように見えました。詩的で物語のワンシーンのような作品です。


ということで、展覧会の中盤あたりに今回の見どころがありますが、それ以外もハイレベルで見ごたえがあります。表現自体はそれほど新しさを感じないのですが、まさにロマンティックな作品ばかりです。後半も魅力的な作品ばかりでしたので、次回は残りの展示について書こうと思います。

  → 後編はこちら


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