関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

迷宮への招待 エッシャー展 【そごう美術館】

横浜の記事が続いているので、もう1つ横浜の面白い展覧会をご紹介。(横浜美術館に行った日とは違う日に行きました)
横浜のそごう美術館で、騙し絵的なトリックで人気のあるエッシャーの展示を観てきました。以前あったエッシャー展を見逃したのでこれは見逃してはいけないと焦って行って来ましたw 全国を巡回している展覧のようです。

P1090024.jpg


【展覧名】
 迷宮への招待 エッシャー展

【公式サイト】
 http://www2.sogo-gogo.com/common/museum/archives/09/1010_escher/index.html

【会場】そごう美術館
【最寄】横浜駅
【会期】2009年10月10日~11月15日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この展覧はハウステンボス美術館のコレクションが中心で、エッシャーの生涯と作品の変遷を知ることができる内容でした。結構観たことがある作品が多かったですが、騙し絵的なものだけでなくそこにたどり着くまでの作品も興味深かったです。
いつものように章ごとにご紹介しようと思うのですが、作品リストが貰えなかったので、会場で取ったメモだけが頼りです。作品名とか間違っていたらすみませんw 

M.C.エッシャー 「自画像」 ★こちらで観られます
円形の額のような中に描かれたまるで写真のような写実性のある自画像です。ちょっとギョロ目で口髭をたくわえた鼻の高い男性で、窓から覗き込んでる人と目が合ったような感覚がしましたw 本当にリアルで細密です。

ここら辺にM.C.エッシャー(Maurits Cornelis Escher マウリッツ・コルネリス・エッシャー )の生い立ちについて説明がありました。M.C.エッシャーの父であるG.A.エッシャー(ジョージ・アーノルド・エッシャー)は水力工学を学び、明治時代にお雇い外国人として来日した経歴があるそうです。志願して日本に来たらしく、淀川の改修や福井の龍翔小学校の建設などに携わったそうです。龍翔小学校の写真と、M.C.エッシャーの「四面体の小惑星」を並べて共通する感性があると説明されていました。
その父の影響だと思いますが、エッシャーは少年時代に建設や装飾美術について学んでいたようです。

M.C.エッシャー 「スコラ哲学者の恐怖の冒険 5ページ」
これは魔女のおとぎ話の挿絵を描いたものです。白黒の木版で、暖炉の前の魔女が描かれています。暖炉からは放射線が広がっていて、テーブルと箒がおかれ天井には謎のにやけた顔が幽霊のように浮かんでいました。不気味で怖いです(><)

M.C.エッシャー 「スコラ哲学者の恐怖の冒険 21ページ」
妖怪のような悪魔の集団でしょうか。杖や農具、スプーンなどに跨った無数の動物や魔女が大群で右に向かって飛んでいます。下の地上は儀式か宴会をしているような悪魔達がいます。飛んでいる姿にスピード感があります。ちょっとコミカルだけど、これも不気味な感じでした。

<エッシャーと小動物>
エッシャーは少年時代から小動物のスケッチをよく描いていたようで、ここでも何点か観ることができます。

M.C.エッシャー 「バッタ」
超精密で大きめのバッタのスケッチです。細かすぎてバッタのグロテスクさを感じたかな。結構きもかったw 描くのも凄いですが観察眼も人並み外れて鋭かったんじゃないかと想像できます。

M.C.エッシャー 「アカデミーの修了書」
フクロウが描かれていて、背景に川と火事?の建物が描かれています。 これが何故アカデミーの修了書なのか全くわかりませんw あんまり解説が無いのが残念。

<24の寓話>
このコーナーには様々な道具や機械の絵が展覧されているのですが、それぞれに絵の主題のつぶやきのようなメッセージが添えられていました。詩かな? 意味深なものや可笑しくて笑えるのもありました。

M.C.エッシャー 「花瓶」
花瓶の絵で、恐らくガーベラと思われる花が生けられています。花弁まで細密に描かれていて驚くのですが、さらに驚くのがその隣に展示されている版木です。細かい線を出すためにはこんなに繊細な彫りをするというのが観られました。たまに版木も展示されているのがこの展覧の面白いところです。

M.C.エッシャー 「火打ち石」
手と火打ち石だけが大きく描かれ、火打ち石を打っている瞬間を描いています。手の軌跡を描いた残像が残り、火打石からは太い放射線が出ています。火を打つ動作が力強く表現されていました。

M.C.エッシャー 「蝋燭の火」
暗闇で燃える短い蝋燭が描かれています。静けさと神秘性を感じる明暗が良かったです。

<イタリア時代>
エッシャーはイタリア旅行を機にイタリアに魅了され、ちょくちょくイタリア旅行をするようになり、旅行先で知り合った女性と結婚してからはローマに住んでいたようです。 このコーナーではイタリアに関する作品が並んでいました。

M.C.エッシャー 「サン・ピエトロ寺院の内部(ローマ)」 ★こちらで観られます
有名なサン・ピエトロ大聖堂を描いた木版画です。天井付近から下を見下ろすような構図で、ミリ以下の表現で床のモザイクまでも描いていました。よく見る後年の作品の雰囲気も感じられたように思います。

M.C.エッシャー 「モラノ(カラブリア)」
三角形の山にびっしりと家が建っている様子を描いています。角度が違いますが実際の写真もあったので比べて観ると、似ているもののエッシャーらしい雰囲気を感じました。

M.C.エッシャー 「水たまり」
ちょっと水色が付いた木版です。水たまりに車のタイヤの跡(わだち)があって、ぬかるんでいるのがわかります。また、水たまりには木や月が反射して映っていました。気のせいかその木などが和風な雰囲気のように思えました(←解説が無いので感じたままに言ってるだけですw)

<周辺作家たち>
エッシャーの周辺には同じような立場の版画家などがいたようで、このコーナーでは交友関係のあった作家の作品を紹介していました。

サミュエル・イエッスルン・ド・メスキータ 「老人」
この人はエッシャーの先生です。エッシャーの才能を見出し版画の基本を教えました。その後エッシャーとは生涯を通じた付き合いをしていましたが、その後台頭したナチスのユダヤ人政策により、強制収容所で家族と共に亡くなったそうです。
この版画は下を向いた老人が描かれています。細かい線で表情が繊細に描かれていて、エッシャーの作風はこの人に由来しているというのが直感的にわかりました。良い先生が基本をしっかり教えてくれたんですね。

ジュゼッペ・ハース・トリベリオ 「コルス(コルシカ)」
イタリア時代に住んでいたモンテ・ベルデの住人と解説されていました。エッシャーとは2人展を一緒に開いた仲らしいです。この版画は街の風景を描いていて、黒い部分が多いけれども生き生きとした雰囲気の作品でした。

イエッタ・エッシャー・ウミカー (すみません作品名忘れました)
この人はエッシャーの奥さんです。民宿でエッシャーと出会ったそうです。この絵は海の見える丘の木に寄りかかって上を見上げる冠を被った男性と、その上の木に止まっている中国風の女性の顔を持つカラフルな鳥(極楽鳥みたいな)を描いています。下の男性がエッシャーみたいな顔をしてたと思います。

この他の周辺作家の作品もありましたが、省略します。

<トリック>
さて、やはりエッシャーといえば幾何学的なトリックや数学的・視覚的なトリックが組み込まれた作品が有名だと思います。 ここからはそうした作品が紹介されていました。今年の夏にbunkamuraの「奇想の王国 だまし絵展」で観た作品も結構ありました。

M.C.エッシャー 「対照(秩序と混沌)」
十二面体を丸い泡で覆って一体になっているものが中央に置かれ、その周りには缶詰の空き缶とか卵の殻とか瓶の破片などのゴミが描かれていました。十二面体は秩序のシンボルらしく、周りのゴミ(混沌)との対比となっているようでした。近くに対照Ⅱもありました。

M.C.エッシャー 「星」
三角が組み合わさった星型の格子が描かれ、その中にはカメレオンが入っていて舌を伸ばしています。この星型は秩序を示し、カメレオンは無秩序を表現しているとのことです。先ほどの十二面体の作品もそうですが、こうした幾何学模様は異母兄弟であるG.B.エッシャーの『一般鉱物学と結晶学』という本から多面体への興味が沸いた結果として生み出されたようです。


ここら辺でエッシャーの作風について説明がありました。エッシャーはスペインに旅行したときに、その後の作品に大きな影響を与える重大な体験をします。それはアルハンブラ宮殿に行った時のことですが、彼はその建築ではなくモザイク模様のアラベスクに非常に興味を持ちました。そしてそれを3日間模写し持ち帰ったようで、そこから着想を得て白と黒が補完しあうような作品を生み出していきました。


M.C.エッシャー 「出会い」 ★こちらで観られます
白の楽観者と黒の悲観者がお互い組み合わさって隙間なく何組か並んでいます。手前では円形に両グループが左右に分かれて並んでいて、最手前でお互いが握手をしています。 この奇妙な補完関係がモザイクから着想を得たというのが面白いです。エッシャーは建築関連の勉強もしていたから組み合わせるということに発想が結びついたのかな?と思いながら観ていました。

M.C.エッシャー 「昼と夜」 ★こちらで観られます
これはbunkamuraの騙し絵展で観た方も多いのでは? これもモザイク模様からの発想ですね。何度観ても面白いです。

M.C.エッシャー 「騎手」
メビウスの輪(∞の字を書いた形で、いつの間にか表が裏に裏が表になる輪です)に描かれた騎手と馬が並んでいます。これも馬と騎手がお互いの形を白黒で補完しあっていました。騎手のポーズと馬の前足の組合い方が特に面白かったです。隣には版木がありました。

M.C.エッシャー 「空と水Ⅰ」 ★こちらで観られます
これも白い魚と黒い鳥がお互いを補完する作品です。上部は緻密な鳥が描かれ、中央に近づくにつれ徐々に単純化していき、中央より下になると魚が具象化して下部では魚の姿が緻密に描かれていきます。こうした徐々に変化する作品も生き物が産まれてくるようで面白いです。

M.C.エッシャー 「太陽と月」
これも白い鳥と赤い鳥が組み合って隙間無く14羽ずつ描かれています。(鳥は全部違う形です!)白い鳥に注目すると中央に闇夜の月が見え、赤い鳥に注目するとさんさんと輝く太陽が目立つという仕掛けもあり、人間の視覚にも問いかけるような作品で、非常に驚きがありました。

M.C.エッシャー 「変容(メタモルフォーゼ)Ⅱ-Ⅴ」
左側には城塞都市のような街が描かれ、そこから伸びた塔がチェスのルークとなり、右側はチェス板が描かれています。この作品の隣に映像コーナーがあるのですが、それを観るとこれは絵巻物のように長い作品の一部だと分かります。この城も□■□■の連続が変化して城のようになったもので、ちょっとずつ変化させてまるで違うものにしてしまうアイディアが面白かったです。

M.C.エッシャー 「平面正則分割」
チェック模様が鳥になり、黒い鳥の白い影がトビウオになっていくようすが描かれていました。手法が確立されたとはいえ、これだけ色々なパターンが作れるのは驚異的な発想力だと思います。この絵の近くにエッシャーの生涯を説明する13分くらいのVTRがあって、そこでエッシャー自身が言っていたように常に驚きを追い求めている姿勢を感じました。

M.C.エッシャー 「魚模様の球」
これはつげの木でできた球体の彫刻作品。組み合わさった黒い魚が隙間無く彫られていました。版画の作品はよく観られますが、こういう1点ものは貴重なのでは??

週間少年マガジンとエッシャー
突然、漫画の本があったのですが、これは昔の週間少年マガジンで、「巨人の星」とか「あしたのジョー」が連載されていた1970年2月8日号からの3号です。この表紙がエッシャーの「ベルベデーレ(物見の塔)」「婚姻の絆」「メビウスの輪」となっていました。人気作品が最終回だったのも手伝いいつも以上に売れたそうです。 こういうコラボは現代の方がもっとやってくれてもいいのになあ。

<エッシャーの迷宮>
最後はエッシャーの代表的な作品がいくつもありました。エッシャーは美術会からは理解されず無視されていたようで、評価しはじめたのは科学者・数学者や若者だったそうです。やがて「タイム」などの雑誌で好意的に紹介されて人気が高まっていきました。

M.C.エッシャー 「爬虫類」 ★こちらで観られます
地面に描いた平面の絵から抜け出して逆時計回りに歩くワニが描かれていて、本を登り、正十二面体の置物の上で休み、カップを越えて、最後に絵に戻っていく様子が描かれています。どちらも絵には変わりませんが、絵から抜けだしたように見えるのが面白かったです。描写の違いのせいかな。

M.C.エッシャー 「三つの世界」
池を描いた作品です。3つに世界とは、手前にいる水中の魚(水中)、水面に映る木々(地上)、水に浮かぶ落ち葉(水面)を同時に表現していました。一見普通の風景に思えますが、そこに3つの世界を見出せるエッシャーの感性が流石だと思いました。

M.C.エッシャー 「『蛇』の習作」
これは生涯最後の作品です。蛇のようなものが描かれていますが書き途中でした。エッシャーは最後は高齢芸術家のための施設で73歳で亡くなったそうです。最後まで現役で描き続けたんですね。この展覧で改めていろんな意味で偉大な画家だと思いました。

この他にもここには「四面体の小惑星」「二重の惑星」「上昇と下降」「凹凸」「滝」「深み」「上と下」「写像球体を持つ手」「もう一つの世界」「ベルベデーレ(物見の塔)」などもありました。そのうちいくつかは騙し絵展の時に感想を書いておりますので、そちらを読んでいただければと思います。
 奇想の王国 だまし絵展 (感想後編)
 奇想の王国 だまし絵展 (2回目 感想後編)
 参考リンク:http://www.hokkaido-np.co.jp/cont/escher/22713.html
       http://www.hokkaido-np.co.jp/cont/escher/ ←ここにリンクされているPDFで何点か観られます。横浜でも全部出品していました。

この展示とは直接関係無いですが、ポスター販売のページで今回の展示作品もだいぶ載ってました。安いしほしいかもw

ということで、じっくりとエッシャーについて知ることができる展覧でした。美術にあまり興味が無い人でも楽しめる作品が多いかと思いますので、家族やカップルで行っても楽しめそうです。
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