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アルフォンス・ミュシャ展 (感想後編)【小田急新宿店】

今日も写真多めです。前回に引き続き小田急新宿店の「アルフォンス・ミュシャ展」についてです。前編は1~3章についてでしたが、今日は残りの4~7章についてです。この展示は撮影可能となっていましたので、後編も写真を使ってご紹介していこうと思います。

 前編はこちら


【展覧名】
 アルフォンス・ミュシャ展

【公式サイト】
 http://www.odakyu-dept.co.jp/shinjuku/special/mucha/index.html

【会場】小田急新宿店
【最寄】新宿駅

【会期】2018年12月26日(水)~2019年1月7日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前半はミュシャの代表的なポスターや資料が並んでいましたが、後半は挿絵や装飾美術、祖国での仕事などの内容となっていました。


<第4章 挿絵の魅力>
1章でも書きましたがミュシャの画業は挿絵から始まりました。歴史小説から子供向けまで幅広く手がけ、ポスター画家として大成功してからも多くの挿絵を発表していったようです。また、当時流行した雑誌の表紙も多く手がけ、ミュシャブームを起こしたそうです。ここにはそうした本にまつわる作品が並んでいました。

アルフォンス・ミュシャ 「ボスニア・ヘルツェゴヴィナ館」
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こちらは1900年のパリ万国博覧会でミュシャが内装を担当したボスニア・ヘルツェゴヴィナ館の外観図で、雑誌『フィガロ・イリュストレ』に掲載されたもの。様々な服装をしている人々が優美な雰囲気。それにしても室内装飾まで手がけるとは万能ですね。

アルフォンス・ミュシャ 「ル・ゴロワ」
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こちらは雑誌の表紙。何かの物語だと思いますが、沢山の人が倒れてちょっと不穏な雰囲気。詳細が知りたかった。。。

アルフォンス・ミュシャ 「オ・カルティエ・ラタン」
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有名なソルボンヌ文教地区の名前に由来する季刊誌の表紙。頭に建物と茨が乗ったような帽子を被って睥睨するような表情が面白い。2人の人物が小さめに描いてあるし、カルチェ・ラタンの擬人化でしょうか。

アルフォンス・ミュシャ 「ル・モンド・イリュストレ」
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こちらはサイズが大きい月刊誌で、ミュシャスタイルの女性が多層な色合いの中で変化している珍しい作風なのだとか。特に華麗な印象を受ける表紙でした。

アルフォンス・ミュシャ 「ラ プリュム」
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こちらも季刊誌の表紙。同じ絵柄ですが色が変わると印象が変わって見えますね。

アルフォンス・ミュシャ 左「ビュール・マッキントッシュ」 右「ル・モンド・モデルヌ」
DSC09994.jpg
左は1907年、右は1897年の作品。10年でちょっと画風が変わっているように見えます。左は段々と晩年の作風に近づいているように思いました。

アルフォンス・ミュシャ 「白い象の伝説」
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こちらは一見ミュシャとはわからなそうな画風の表紙。今回の展示は幅広く多くの作品が出品されているので、こういう作品もあるのかと驚きが多かったです。

アルフォンス・ミュシャ 「舞台衣装」
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こちらは舞台の衣装を描いた挿絵。古代風で緻密な衣装となっています。これも詳細は分からず残念。

アルフォンス・ミュシャ 「チェコ周遊旅行」
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こちらは書籍の表紙。タイトルから察するに背景はチェコの風景でしょうか。チェコはミュシャの祖国なので、チェコ関連の作品がこの後多く出てきます。


<第5章>
ちょっと5章のキャプションを撮り忘れたのですが、確かここは装飾美術に関するコーナーだったと思います。商業ポスターも多く手がけていただけに、パッケージやノベルティなどにも携わっていたようで、ここには様々な品が並んでいました。

アルフォンス・ミュシャ 「パリスの審判」
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こちらは有名なギリシャ神話のパリスの審判をモチーフにしたヴェイユマール印刷所の万年カレンダー。黄金の林檎を持っているのがパリス、その背後はヘルメス、林檎を貰ってるのがアフロディーテ(ヴィーナス)、武具を持ってるのがアテナ、孔雀を連れてるのがヘラです。持ち物なども伝統的に描かれているので分かりやすい。

このカレンダーは下についている仮面の口を引っ張ると日付を変更できるようです。
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左が曜日、真ん中が日付、右が月のようです。フランス語ですね。

アルフォンス・ミュシャ 「ショコラ マッソン」
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こちらもカレンダー。1897年を三ヶ月ごとに区切って各季節に応じた女性像となっています。日付だけ今年にしてリメイクして欲しいw

アルフォンス・ミュシャ 「パリのシンボル」
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こちらは飾り皿。多分、絵付けなどは他の職人だと思いますが皿にも使われていたんですね。

アルフォンス・ミュシャ 「ホイットマン社のチョコレート缶容器」
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こちらはチョコの缶の装飾。タイル状の装飾と女性が何とも可憐。ミュシャはチョコレートに関する装飾を結構手がけているように思います。

アルフォンス・ミュシャ 「ビザンチン風の頭部 ブロンド、ブルネット」
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こちらは前編でも出てきた作品をブロンズにしたもの。これだけ観ると古代の遺跡からの出土品みたいな風格ですw

アルフォンス・ミュシャ 「ウビガン社の[クールドジャネット]香水瓶」
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こちらは香水瓶とラベルの装飾。絵と瓶の形が一体化していて美しいデザインです。ミュシャの作風は高貴な印象だけに合ってますね。

アルフォンス・ミュシャ 「ビスケット缶容器のラベル・シャンパン」
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こちらはビスケットの容器。よくこんなものまで綺麗に保存しておいたものだと変な所に感心しましたが、確かにとっておきたくなりますね。ビスケットシャンパンって書いてあるのはシャンパン味なんでしょうか?? 単純に絵柄のことなのかな??

アルフォンス・ミュシャ 「ビスケット缶容器のラベル・イタリア」
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こちらも缶容器のデザイン。ヴェネツィアのゴンドラに乗る姿が何とも優美。パッケージ買いしたくなりますね。

アルフォンス・ミュシャ 「郵便切手」
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これは7章の内容とも被ってると思いますが、故郷のチェコでデザインした切手。色違いで同じ絵柄となっていました。1918年の作品で、チェコが独立して間もない時に自国最初のデザインを無償で引き受けたのだとか。

アルフォンス・ミュシャ 「コルナ紙幣」
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こちらも独立直後にデザインしたチェコの紙幣。100コルナ紙幣の女神はパトロンの娘がモデルなのだとか。何とも優美なお札です。


<第6章 ミュシャとアメリカ>
続いてはアメリカとの関係のコーナーです。ミュシャの心は常に祖国チェコとスラヴ民族にあったようですが、当時 富の象徴であったアメリカで多くの肖像や個展、ポスター、挿絵の制作を手がけて後の大作「スラヴ叙事詩」のための資金を集めていたようです。スラヴ叙事詩は昨年にいくつか国立新美術館のミュシャ展に来ていましたが、大きいものでは6m×8mという圧倒的なスケールなので(しかも20枚もある) それを制作する為には結構なお金がかかったのだと思われます。そしてミュシャにはスポンサーもついて見事に目的は達成され、やがて祖国での「スラヴ叙事詩」へと繋がっていきます。

アルフォンス・ミュシャ 「レスター・カーター」
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こちらはアメリカの女優を描いた作品。顔だけやたらリアル!w それ以外の様式はミュシャらしい感じで、やはりアメリカでもこのスタイルが受けたのでしょうね。

アルフォンス・ミュシャ 「ハースト・インターナショナル2月」「ハースト・インターナショナル4月」
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アメリカでも雑誌の表紙を手がけていたようです。こちらはパリ時代のアール・ヌーヴォー的な画風よりもスラブ叙事詩の時代の作風に近づいてきている感じがしました。

この章は点数少なめでした。


<第7章 わが祖国チェコ>
最後はミュシャが愛して止まない祖国チェコでの活動のコーナーです。1910年に祖国に戻りプラハに近い城にアトリエを構えてそこで18年間過ごしたそうです。そこで20点の「スラブ叙事詩」を描き、ミュシャの生涯をかけた大作となっています。その傍らで1918年に独立したチェコスロヴァキア共和国の新政府に協力し、切手・紙幣・国章・警官の制服までも無償でデザインを引き受けたそうです。そんな愛国者だったミュシャですが、祖国がナチス・ドイツに侵攻を受けるとゲシュタポに拘束されて尋問を受けたそうで、それが健康に響いて1939年に亡くなってしまいました。ここにはそうした晩年の作品が並んでいました。

アルフォンス・ミュシャ 「国の目覚め」
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これは独立した年に作られた鉛筆によるポスター(のリトグラフ) 子供が手を挙げて国の始まりを祝福しているような作品となっています。

アルフォンス・ミュシャ 「スラブ叙事詩展のカタログ ブルックリン」
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こちらはスラブ叙事詩展のカタログ。一般にミュシャというとアール・ヌーヴォーのポスターを想起すると思いますが、ミュシャ自身にとってはこのスラブ叙事詩こそがやりたかったことなんだろうと思います。去年の国立新美術館の展示で日本でもこの時代の作品が認知されるようになったんじゃないかな。

アルフォンス・ミュシャ 「原故郷のスラブ民族」
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最後に、スラブ叙事詩の各作品をパネルで紹介していました。これは昨年に国立新美術館にも来ていた作品なのでよく覚えていました。スラブ叙事詩を観ているとチェコとスラヴの苦難の歴史が伺えます。


と言うことで、後半も盛りだくさんの内容となっていました。商業デザインも含めてこれだけ多くの作品を観られるとは予想以上だったので満足できました。ちょっと保存状態が気になるものもありますが、ミュシャが好きな方には嬉しい内容だと思います。この記事を書いている時点で会期末となっているので、気になる方はすぐにでもどうぞ。




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