関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

博物館に初もうで イノシシ 勢いのある年に 【東京国立博物館 本館】

今日も写真多めです。前回ご紹介した「博物館に初もうで」を観た際に、特別1室・特別2室で開催されている特集「イノシシ 勢いのある年に」も観てきました。こちらも撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

DSC09540.jpg

【展覧名】
 特集 博物館に初もうで イノシシ 勢いのある年に

【公式サイト】
 https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1941

【会場】東京国立博物館 本館 特別1室・特別2室
【最寄】上野駅

【会期】2019年1月2日(水)~1月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
こちらも結構混雑していて、場所によっては人だかりができるような感じでした。

さて、この展示は今年の干支であるイノシシをテーマにしたもので、日本の長い歴史の中でイノシシをモチーフにした様々な品が並んでいました。と言ってもイノシシは十二支の中でもモチーフになる機会が非常に少ないので、辰や虎のように枚挙にいとまがない干支とは違い、それは苦しいだろ…という品もあったような…w それほど広くない会場ですが6つの章に分かれていましたので、各章ごとに気に入った作品の写真を使ってご紹介していこうと思います。


<1 イノシシと干支>
まずはイノシシそのものをテーマにした章です。イノシシは日本列島が大陸と繋がってきた頃に渡来してきたそうで、本州・九州にいるニホンイノシシと南西諸島にいるリュウキュウイノシシが在来のイノシシのようです。干支のイノシシは実際には家畜としてのイノシシ=豚を指すそうで、日本以外のアジア諸国では亥年は豚が当てられているのだとか。(中国ではイノシシは野猪と書くそうです) ここには中国から伝わった品などが並んでいました。

「玉豚」
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こちらは前漢~後漢頃の品で中国人が大好きな玉で出来た豚。豚は多産や財などの象徴らしく、死後の安寧を託して作られたようです。伏せてるようなポーズが可愛らしいw それほど細かく彫っていないのに豚と分かるのは鼻が上手く表現できているからかも。

「灰陶豚」
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こちらも前漢の頃の陶器像。その頃には既に家畜として豚を飼っていたそうで、こちらも猪ではなく豚そのものといった感じの造形。結構写実的で尻尾がクルッとしているのが豚っぽいw


<2 イノシシと人との関わり-縄文時代から古墳時代にかけて->
続いては日本のイノシシと人との関わりに関するコーナー。日本でも縄文時代にはイノシシの骨を利用した骨角器が出土するなど古くから関わりがあったようで、単に食料としての存在だけではなく、狩りの無事・豊猟・子孫繁栄などを祈った土製品なども作られたようです。その後も古墳時代にはイノシシ型の埴輪なども作られていたそうで、ここにはそうした作品が並んでいました。

「袈裟襷文銅鐸」
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こちらは国宝の銅鐸。側面に6つの場面の絵が刻まれているのが分かりますでしょうか。この中にイノシシの姿もあります。

こちらは銅鐸のアップ。
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弓を構えた人と角を生やしたイノシシが確かに描かれています。他に農耕の様子などもあって、弥生時代の生活の様子が伺えるようでした。

「埴輪 猪」
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こちらはイノシシの埴輪。ちょっと胴が短い気がしますが、何となくイノシシと分かるかなw 解説によるとこの埴輪の蹄は馬のような奇蹄類のような脚となっているようで、偶蹄類のイノシシとは異なるようです。そのため、本物を観ないで作ったのではないかと考えられるのだとか。

この近くには矢負いの猪という埴輪もあって面白い造形でした。

石川光明 「野猪」
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これは何故か明治の彫刻で、今回のポスターにもなっている作品。こちらはちゃんと偶蹄類の蹄になっていてリアルさが段違いですねw 毛並みや表情まで精緻で生き生きとした造形となっていました。


<3 仏教のなかのイノシシ1>
続いては仏教の中に出てくるイノシシ。干支の話と十二神将の他にイノシシなんていたっけ?と思ったら、金剛界曼荼羅の中に金剛面天というイノシシの顔を持つ天がいるようです。ここには金剛面天を描いた作品が並んでいました。

「金剛界曼荼羅旧図様」
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左が金剛面天。インドのヒンドゥー教のヴィシュヌ神の変化身の第三の化身だそうで、確かに豚ではなく牙の生えたイノシシの姿です。これはよく見つけて来たなとちょっと感心。10ある化身のうちの3番目って、結構見つけるの大変だと思うんですよねw


<4 仏教のなかのイノシシ2>
続いても仏教の中のイノシシで、今度は摩利支天のコーナーです。摩利支天はイノシシに乗った姿で表されるので、脇役的な感じで展示されていました。

「仏画図集」
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摩利支天がまるでサーファーのようにイノシシに乗ってます! 跨るんとちゃうんかい!w 摩利支天も古代インド由来で、戦国武将の守護神としてあつく信仰されたそうです。勇ましくて強そうに表されていますね。

この隣には同様にイノシシに乗った摩利支天を描いた北斎漫画もありました。

「仏涅槃図」
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なるほど、涅槃図にイノシシも入っているのかと思いましたが、イノシシどこ??w この写真だと分かりづらいですが、下の方に白い象がいて、その真下辺りにいます。…これは苦しいw 

狩野養長 模 「十二類合戦絵巻(模本) 下巻」
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こちらは歌会で十二支に恥をかかされた狸が狼やトビなどと共に十二支に合戦を挑む話の巻物。イノシシは先陣を務める大役となっていました。ついにイノシシが輝く時が来た!w

後藤 「三疋猪図小柄」
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こちらはこの章じゃないかもしれませんが、小刀を収める柄の装飾。3匹のイノシシがしっかりと表されています。目と牙が光って可愛らしい雰囲気です。


<5 富士の巻狩と『曾我物語』>
続いては隣の会場に移動して、巻狩と曾我物語の中に出てくるイノシシのコーナーです。曾我物語と言えば仇討ちの話ですが、この仇討ちを行ったのが源頼朝の巻狩の最中だったそうで、この巻狩の際に富士の守り神である巨大なイノシシを頼朝の重臣の新田四郎が殺めた話も有名なんだとか。完全に脇役(むしろカメオ出演くらい)ですが、ここにもイノシシの姿が描かれた作品が並んでいました。

筆者不詳 「曽我仇討図屏風(右隻)」
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恐らく岩佐又兵衛に関係する絵師によるものと思われる屏風。この群像の中に3~4匹のイノシシの姿があります。

イノシシのアップ。
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馬からイノシシに乗り換えて尻尾を抑えて切ろうとしているのが新田四郎。馬と大差ないくらい巨大なイノシシで、牙も立派です。まるで乙事主みたいなイノシシだけに、これを殺めたらまずかったのかも。

結城正明 「富士の巻狩」
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こちらは明治時代の結城正明による富士の巻狩を題材にした作品。今度は馬より大きなイノシシに乗った新田四郎の姿があります。一番大きいので小さくても見つかるかな? 


<6 博物図譜から近代へ>
最後は江戸時代の博物学の隆盛によって作られた図譜や近代絵画に描かれたイノシシのコーナーです。

「諸獣図」
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こちらは江戸時代の かなり写実的に描かれたイノシシ。この隣にはメスのイノシシも描かれています。毛並みまでしっかりしていて、正確に伝えようとする博物学的な意図がよく分かります。

博物局編 「猪 (博物館獣譜 第2帖より)」
DSC09645_201901062239320ca.jpg
こちらは明治時代に大名の図譜を模写したもの。疾走するようなポーズで後ろ足に力を感じます。これは絵としても中々面白い作品でした。

岸連山 「猪図」
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こちらもダッシュで走るイノシシ。濃淡で粗い毛並みや筋肉質な体つきを表現しているのが見事。猪突猛進を体現したような作品でした。

望月玉泉 「萩野猪図屏風」
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こちらはグッスリ寝ているイノシシを描いたもの。江戸時代後期には「臥猪(ふすい)」を「富寿亥(ふすい)」と表記し、さらに「撫綏(ふすい。沈めて安泰にするという意味)」に語呂合わせしたそうです。全体的に雅で、お目出度い画題となっているようでした。

葛飾北斎 「見立富士の巻狩」
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こちらは先程の源頼朝の巻狩を七福神が行っているように見立てた作品。大黒天が新田四郎の役になってイノシシに乗っています。のどかで楽しげな雰囲気となっていて、こちらも縁起の良い作品となっていました。


ということで、やはり猪が主役というのはあまり無いんだなと思うと共に、キュレーターの方の見識の深さに驚く内容でしたw マイナーなモチーフがこれだけ集まるのは12年先まで観られないんじゃないかな。今年の干支について詳しく知ることが出来て、予想以上に楽しめました。

 参考記事:
   東京国立博物館の案内 【建物編】
   東京国立博物館の案内 【常設・仏教編】
   東京国立博物館の案内 【常設・美術編】
   東京国立博物館の案内 【2009年08月】
   東京国立博物館の案内 【2009年10月】
   東京国立博物館の案内 【2009年11月】
   東京国立博物館の案内 【秋の庭園解放】
   東京国立博物館の案内 【2009年12月】
   東京国立博物館の案内 【2009年12月】 その2
   東京国立博物館の案内 【2010年02月】
   東京国立博物館の案内 【2010年06月】
   東京国立博物館の案内 【2010年11月】
   博物館に初もうで (東京国立博物館 本館)
   本館リニューアル記念 特別公開 (東京国立博物館 本館)
   東京国立博物館の案内 【2011年02月】
   東京国立博物館の案内 【2011年07月】
   東京国立博物館の案内 【2011年11月】
   博物館に初もうで 2012年 (東京国立博物館 本館)
   東京国立博物館140周年 新年特別公開 (東京国立博物館 本館)
   東京国立博物館の案内 【2012年03月】
   東京国立博物館の案内 【秋の庭園解放 2012】
   東京国立博物館の案内 【2012年11月】
   博物館に初もうで 2013年 (東京国立博物館 本館)
   東洋館リニューアルオープン (東京国立博物館 東洋館)
   東京国立博物館の案内 【2013年04月】
   東京国立博物館 平成25年度 秋の特別公開 (東京国立博物館)
   東京国立博物館の案内 【2013年12月】
   博物館に初もうで 2014年 (東京国立博物館 本館)
   東京国立博物館の案内 【2017年08月】
   東京国立博物館の案内 【2017年09月】
   マジカル・アジア(前編)【東京国立博物館 東洋館】
   マジカル・アジア(後編)【東京国立博物館 東洋館】
   博物館に初もうで 2018年 犬と迎える新年 (東京国立博物館 本館)
   東京国立博物館の案内 【法隆寺宝物館 2018年01月】
   東京国立博物館の案内 【2018年02月】
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   東京国立博物館の案内 【2018年10月】
   博物館に初もうで 2019年 (東京国立博物館 本館)
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