関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド (感想前編)【東京都美術館】

この間の日曜日に上野の東京都美術館で「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」を観てきました。非常に見どころが多くメモを多めにとってきましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。この展示は会期中に入れ替えがあり、私が観たのは2019/02/09の内容となります。

DSC01888.jpg DSC01879.jpg

【展覧名】
 奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド

【公式サイト】
 https://kisou2019.jp/
 https://www.tobikan.jp/exhibition/2018_kisounokeifu.html

【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅

【会期】2019年2月9日(土)~4月7日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
混んでいて、チケット購入で5分待ち程度で中に入っても列が途切れることがないほどでした。特に岩佐又兵衛の巻物の辺りが混んでいたかな。並ぶのに時間がかかったので、これから観に行かれる方は十分に時間を取ってスケジュールすることをおすすめします。

さて、この展示は1970年に刊行された美術史家・辻惟雄 氏による『奇想の系譜』で紹介された岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の6人と、白隠慧鶴、鈴木其一の2人を加えた8人の江戸時代の個性派を取り上げた内容となっています。構成は画家ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとにご紹介していこうと思います。


<幻想の博物誌 伊藤若冲(1716-1800)>
まずは今となっては不動の人気の伊藤若冲です。2016年の展示では物凄い盛り上がりだったように、展覧会を重ねるごとに人気が高まっているように思いますが、これだけ人気なのは割と最近のことで 少し前までは個展でも結構空いていた記憶があります。2000年の京都の展示から火が付いたと思われるので、それより30年も前にそれに気づいていた辻惟雄 氏の慧眼は素晴らしいものがあると言えそうです。
そんな伊藤若冲ですが、青物問屋に生まれて40歳までは家業の務めを果たし、弟に家督を譲ってから画業に専念するようになりました。長崎にも来たことのある中国の沈南蘋の当時最新の写生画法を学び、「動植綵絵」を始めとした禽獣虫魚の画題を得意として水墨・彩色ともに多くの作品を残しています。その根底には生きとし生けるものが全て仏になるという「草木国土悉皆」の仏教の教えにあるようで、この章にはそうした若冲の作品が並んでいました。
 参考記事:
  伊藤若冲 アナザーワールド (千葉市美術館)
  伊藤若冲 アナザーワールド 2回目(千葉市美術館)
  皇室の名宝―日本美の華 <1期> 感想前編 (東京国立博物館 平成館)
   ※2016年の若冲展の際はブログ休止中でした

16 伊藤若冲 「象と鯨図屏風」 ★こちらで観られます
こちらは六曲一双の水墨の屏風で、右隻に伏せた白い象が鼻を掲げ、左隻では黒々したクジラが潮を吹き上げています。お互いが向かい合うようになっていて、白と黒、丘と海といった対比となっているようです。いずれも大きく見えるような構図となっていて、滲みを使ったクジラの体の表面や、デフォルメされた波などの表現も面白く、意匠・表現ともにウィットに富んだ作品です。

17 伊藤若冲 「鶏図押絵貼屏風」 ★こちらで観られます
こちらは1曲ごとに異なる鶏が描かれている屏風で、押絵貼りしたもののようです。恐らく筋目描きと呼ばれる墨と墨の境界線を活かす技法を使って羽根を描いているのだと思いますが、鶏というお得意のモチーフということもあって描き慣れている感じのある練達ぶりを感じます。それぞれの鶏のポーズもダイナミックで動きがあり、特に黒々とした尾が躍動感を強めているように思いました。 たまにいるヒヨコはゆるキャラみたいで可愛いし、若冲の闊達な雰囲気がよく出ていました。

1 伊藤若冲 「旭日鳳凰図」 ★こちらで観られます
こちらは代表作の「動植綵絵」の2年前に描いた作品で、一回り大きいサイズとなっています。羽を広げた鳳凰と 岩にとまった鳳凰(鳳と凰?)が極彩色で精密に描かれ、その右上に赤々とした旭日が昇る様子となっています。特に鳳凰の羽根や足はミリ単位の細かさとなっていて、細部まで緊張感がありました。動植綵絵に似た表現も観られる作品なので、先駆けた品だったのかも?

この近くには白黒が反転した「乗興舟」なんかもありました。
 参考記事:
  煌めきの近代~美術から見たその時代 (大倉集古館)
  日本美術にみる「橋」ものがたり -天橋立から日本橋まで- (三井記念美術館)

3 伊藤若冲 「海棠目白図」
こちらは白い花を咲かす海棠の枝に、緑色の体に白い腹のメジロがとまっている様子が描かれた作品です。枝には7~8匹くらいが一列に並んでいる箇所もあって可愛らしいw みんな丸々としていてちょっと楽しげな雰囲気すらあります。また、白い花は輪郭を白で塗っていて、半透明に見えるような表現が可憐です。木の表現なんかは沈南蘋に通じるものがあるようにも思えました。

8 伊藤若冲 「梔子雄鶏図」 ★こちらで観られます
こちらは今回の展示で新たに再発見された新出作品です。地面をじっと観る鶏とその背後にクチナシが描かれていて、写実的で題材的にも若冲らしさがあるものの、まだ躊躇いが観られる画風で淡白な色彩となっているようです。落款から30代の作と考えられ、珍しい初期の作品なのだとか。白い羽の部分は地が透けて見えていて、鶏の体躯もやや細めに見えるかな。クチナシの色も地味めだったし、若冲の進化過程と言えそうな作品でした

9 伊藤若冲 「虎図」
こちらは手を舐めている虎を描いた作品です。手が大きく、目も大きめに感じるかな。下半身はやや肉付きがほっそりしているし、顔も仕草も猫っぽいような…w しかしよく観ると毛並みが繊細に表現されていて、かなり細かくスコープで観ないと分からないくらいでした。デフォルメと細密描写が共存しているような面白さがある作品です。


<醒めたグロテスク 曾我蕭白(1730-1781)>
続いては曾我蕭白のコーナーです。蕭白は京都に生まれ、伊勢や播州で精力的に活動した後 40歳を過ぎた頃に生まれ故郷の京に戻って定住し活動しました。室町時代の有力な漢画の一派である曾我氏の直系にあたると名乗り、中国の仙人や聖人などが出てくる伝統的な故事を描いたのですが、サイケデリックな作風で強烈な個性を持っています。ここには妖気すら感じる蕭白の作品が並んでいました。
 参考記事:
  蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち 感想前編(千葉市美術館)
  蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち 感想後編(千葉市美術館)
  蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち 2回目感想前編(千葉市美術館)
  蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち 2回目感想後編(千葉市美術館)
  ボストン美術館 日本美術の至宝 感想後編(東京国立博物館 平成館)

20 曾我蕭白 「雪山童子図」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品で、釈迦の前世である若いバラモン僧の雪山童子と、青い悪鬼に姿を変えた帝釈天(雪山童子の修行の熱意を試している)が描かれています。木の上から手を広げて見下ろす童子は白い肌とやけに赤い口が目立ち、つり目でちょっと妖怪のようにも見えるかなw 一方の鬼は、草の上に座って見上げていて虎のパンツを履いて金の腕輪や足輪が輝いて見えます。いずれも艶めかしい色彩で、蕭白ならではの個性が感じられました。

28 曾我蕭白 「富士・三保松原図屏風」 ★こちらで観られます
こちらは六曲一双の屏風です。右隻には三保の松原と、湾をまたぐような虹が描かれていて、淡い色彩で軽やかな雰囲気となっています。一方の左隻には富士山らしき山があるのですが、遠近感がやけに手前に感じられたり、山頂が4つに分かれていてまるで富士山がダブっているような感じに描かれているのが奇妙です。背景には謎の丸っこい岩山か雲か判別のつかないものがあったりして、実景のようで奇想の風景となっていました。何でこんな絵になったのか不思議ですw

21 曾我蕭白 「唐獅子図」
こちらは2幅対の掛け軸で、それぞれ縦横2mを超える大型の水墨画となっています。左幅に振り返るようなポーズで口を開ける阿行の唐獅子、右幅に口を結んだ吽行の唐獅子が 素早く大胆な筆致で描かれていて即興的な雰囲気です。線は太いし勢いがあって荒々しく見える一方、右隻の唐獅子はちょっと怯えたような顔をしているのが可愛いw 解説によると、落款もふざけて書いているような感じとのことで、型破りな作品でした。(伊勢を放浪した頃の作品だそうです)

地下1階はこの辺までで、続いて1階です。


<京のエンターテイナー 長沢芦雪(1754-1799)>
続いては長沢芦雪のコーナーです。芦雪は丹波の国の下級武士の生まれで、京都に出て円山応挙に師事しました。師匠譲りな所もありつつ、大胆な構図と奔放な筆致で独自の画業を切り開いた画家で、ここにはその両面が感じられる作品が並んでいました。

33 長沢芦雪 「白象黒牛図屏風」 ★こちらで観られます
こちらは通称「黒白図」と呼ばれる六曲一双の屏風です。右隻に白い象と背中に乗る黒いカラス、左隻には黒い牛と そのお腹の辺りでスコ座りみたいなポーズをしている白い犬が描かれています。この牛と象、犬とカラスがそれぞれ白黒の対比となっていて、片隻の中でも白黒になっている面白さがあります。牛と象は画面からはみ出さんほどのボリューム感があって、構図にもユーモアを感じるかな。それにしても犬のとぼけた顔と姿勢が可愛らしい作品です。ちなみに先日これとそっくりの作品を観たばかりで、同様の3点のうちの1点なのかも。
 参考記事:国宝 雪松図と動物アート (三井記念美術館)

36 長沢芦雪 「猛虎図」
こちらは岩山に手を乗せてじっと上を観ている虎を描いた作品です。やけに頭が小さくて、筋肉質に見えるかな。鋭い目や毛が真っ直ぐに伸びる様子などから緊張感が溢れていました。特に目が印象的な作品です。

45 長沢芦雪 「方寸五百羅漢図」
こちらは3cm四方くらいの絵の中に ぎっしりと羅漢が描かれている作品です。木々などは観て分かるのですが、羅漢は小さすぎて円の粒粒にしか見えないような…w かなり細かくて観ている方も眼精疲労でも起こしそうなくらいです。ミクロへの挑戦でもしたのかな? ちょっと変わっていて楽しい作品でした。

37 長沢芦雪 「猿猴弄柿図」 ★こちらで観られます
こちらは今回の展示の調査で見つかった新出の掛け軸です。岩の上でたくさんの柿を抱えている猿と、その下で木をよじ登っている子猿が描かれていて、柿の猿はトボけた酔っぱらいみたいな顔をしています。しかしその毛並みは1本1描いていて繊細です。滑稽さと写実性があって、どちらも芦雪の魅力と言えそうな作品でした。

40 長沢芦雪 「なめくじ図」
こちらは1匹のナメクジと、そのナメクジがのたくった跡を一筆書きのように描いた作品です。さらさらっと描いた線は自由奔放で、ナメクジがいなかったら抽象画にしか見えなそうw こんな即興的で洒落っ気のある作品も描けるとは驚きでした。

この近くには芦雪の技術的な力量も感じさせる作品もありました。

32 長沢芦雪 「群猿図襖」 ★こちらで観られます
こちらは海辺の岩場に集まる猿の群れを描いた作品です。猿の生態をつぶさに写生的に描きつつ、人間の風刺のように描いています。お互いに話し合っているような猿や、笑っているような猿など生き生きした雰囲気があります。また、強い輪郭で顔を描いたと思えば淡い墨で体をふんわり描いているのも見事でした。解説によると、毛の描き方には師匠の円山応挙譲りの技法のようですが、豊かな表情は芦雪ならではとのことです。

31 長沢芦雪 「龍図襖」 ★こちらで観られます
こちらは4面×2の襖絵で、芦雪の壮年期の作品です。墨でうねる龍を描いていて、大胆なタッチとなっています。左はユーモラスな表情にも見えますが、右の龍は雲間から覗き込んで睨むような眼光の鋭さがありました。大画面で見栄えのする作品です。


ということで、長くなってきましたので今日はここまでにしようと思います。各画家の代表作や個性が表れた作品が並んでいて、欲張りセット的な豪華な内容となっています。初っ端から若冲と蕭白が来るので美術に詳しくない方でも、江戸絵画の独創性に驚かれるのではないかと思います。後半にも素晴らしい作品が目白押しでしたので、次回は残りの章をご紹介の予定です。

  → 後編はこちら

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