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【東京国立近代美術館】の案内 (2019年03月)

今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観た際、東京国立近代美術館本館の常設展も観てきました。こちらは撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
 所蔵作品展 MOMAT コレクション

【公式サイト】
 http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20190129/

【会場】
  東京国立近代美術館 本館所蔵品ギャラリー

【最寄】
  東京メトロ東西線 竹橋駅

【会期】2019年1月29日(火)~ 5月26日(日)
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【感想】
この日は空いていて快適に鑑賞することができました。今回も気に入った作品の中から今までご紹介していないものを写真で並べていこうと思います。
 ※ここの常設はルールさえ守れば写真が撮れますが、撮影禁止の作品もあります。
 ※当サイトからの転載は画像・文章ともに一切禁止させていただいております。

菱田春草 「梅に雀」
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掛け軸としては菱田春草の最後の作品。もう絵筆もとれなかったくらい状態だったらしく やや動きの少ない感じにも見えるけど、それでも春を感じさせる優しい雰囲気に見えました。この後、36歳の若さで亡くなってしまったのだとか。

野田九浦 「辻説法」
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この辻説法しているのは日蓮だそうです。聞き入っている人々の視線が集まる日蓮が一際目を引きました。何かに立ち向かうような凛々しさです。

有馬さとえ(三斗枝) 「赤い扇」
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赤い扇を持った女性像。やや微笑んでいて魅力的な雰囲気です。首が長いせいか頭が小さく見えました。

河野通勢 「好子像」
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河野通勢は岸田劉生の草土社に参加していただけあって、作風にも共通点があるように思えます。この絵はデューラーっぽい感じもするし、遠くから見たら岸田劉生かと思いました。

石垣栄太郎 「腕」
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この画家は社会主義運動に参加していたらしく、労働をモチーフにしている点にそれを感じるかな。大胆なトリミングで力強い表現です。ディエゴ・リベラと交流があったらしく、その影響も受けているのだとか。
 参考記事:ディエゴ・リベラの時代 メキシコの夢とともに (埼玉県立近代美術館)

織田一磨 「東京風景より 日本ばし」
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こちらは1916年頃の東京を描いた作品。町並みはすっかり西洋化しているけど、舟は日本っぽさがあるのが面白い。叙情的な雰囲気も好みでした。

この辺は織田一磨の版画がいくつも並んでいました。

織田一磨 「画集銀座 第一輯より 屋台店」
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こちらは昭和初期の銀座の風景。光の効果が郷愁を誘ってどこか懐かしい。漏れてる影を観ると支那そば屋さんは満席っぽいですねw

寺田政明 「魔術の創造」
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何だかわからないものが無数に並ぶ不可思議な光景。シュルレアリスム的でちょっと不気味な所もあるけど、はっきりした色彩や配置が心地よく感じられました。

北脇昇 「空港」
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楓の種子を飛行機に見立てたシュルレアリスム的な作品。こちらはどんよりしていることもあって言いしれぬ不安感があるかな。寂しげな光景に思えました。

香月泰男 「水鏡」
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水面をじっと観る子は水鏡に何を観ているのでしょうか。背後にある枯れ草のようなものや、右下の決壊したような表現から不吉な感じも受けます。解説によると、生命の象徴である少年が鑑賞者に背を向けていることに戦争の影響を指摘する人もいるのだとか。

山口蓬春 「香港島最後の総攻撃図」
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こちらは1941年の日本軍による香港島への攻撃を描いた作品。戦火さえ無ければ青が綺麗なんでしょうけどね…。山口蓬春も戦争美化は避けては通れなかったようです。

吉原治良 「火山」
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まるで記号のように単純化されていてジョアン・ミロを想起しました。タイトルを観ると火山と黒雲であることがわかりますねw

岡田謙三 「元禄」
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どうしてこれが元禄なんだろ?としばらく考えてみましたw 幾何学的な構成で色合いは日本的な色に見えるかな。漆喰の壁とか、朱塗りのような色彩に思えました。

岡本太郎 「燃える人」
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こちらは1954年の第五福竜丸の被爆事件に着想を得た作品。左下辺りに船があって、顔が付いているような船もあります。激しい色のぶつかり合いで叫ぶような雰囲気がありました。
 参考記事:生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)

田中敦子 「作品 66 - SA」
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こちらは吉原治良をリーダーに結成された具体美術協会のメンバーの1人の作品。絵の具が滴るような描写で一見すると抽象のようですが、元は色電球とコードでできた「電気服」をドローイングしたもので、それを発展してこうした絵になったようです。これも色が強烈な作品でした。
 参考記事:カンティーニ美術館 (南仏編 マルセイユ)

奈良原一高 「消滅した時間より ハイウエー・テレフォン、ニューメキシコ」
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何の変哲も無い道端の公衆電話ですが、遠くの稲光と暗雲のせいか非常に寂しげに見えます。これから嵐が来るんでしょうかね。

川西英 「小品より 水仙」
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こちらは木版の版画で、非常に明快でシンプルな色彩となっています。背景が黒となっていることもあって光を強く感じました。

前田青邨 「郷里の先覚」
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この2人は前田青邨と同じ中津川出身の幕末の人物(右:市岡しげ政、左:間秀のり)だそうです。すっきりとして太さに変化がなくどこまでも続くような線で輪郭線が描かれていて、こうした線を小林古径、安田靫彦、前田青邨の3人は理想としたのだとか。

水越松南 「虎穴図」
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南画風だけどちょっとコミカルな雰囲気もある作品。虎の顔がなんとも可愛いw 墨の滲みの表現が自在に感じられました。

有元利夫 「室内楽」
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やけに胴体が大きい体つきの人も木になりますが、中世の壁画を思わせるような風化したような色彩が特に面白い。シュールさもあって非常に好みの画家です。
 参考記事:有元利夫展 天空の音楽 (東京都庭園美術館)

黒田アキ 「裏返しに」
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ギリシャ建築の女人柱(カリアティード)のような4本の柱が描かれているとのことですが、実際には何だか分かりません。青々とした画面やリズム感が好みで、裏返しになっている組み合わせなんかも面白く感じました。

辰野登恵子 「Work 86-P-1」
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これも何を描いているか全く分かりませんが、色合い・マチエール・形などが目を引きました。

山口啓介 「花の心臓/くるみ循環系」
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こちらは心臓がくるみや花に似ていることに着想を得た索引だそうです。アクリルっぽく見えますが、顔料と樹脂を描いているそうで、非常に鮮やかな色合いとなっていました。滲みも面白い効果を生んでますね。


ということで、今回も見どころの多い展示となっていました。この美術館も訪れる度に発見があるので毎回楽しみにしています。今回の常設展も会期が長めですので、特別展などを観に行く際には十分に時間を取って常設も観ることをオススメします。


参考記事:
 東京国立近代美術館の案内 (2018年11月)
 東京国立近代美術館の案内 (2018年06月)
 東京国立近代美術館の案内 (2018年05月)
 東京国立近代美術館の案内 (2017年12月前編)
 東京国立近代美術館の案内 (2017年12月後編)
 東京国立近代美術館の案内 (2017年09月)
 東京国立近代美術館の案内 (2014年01月)
 東京国立近代美術館の案内 (2013年09月)
 東京国立近代美術館の案内 (2013年03月)
 東京国立近代美術館の案内 (2012年02月)
 東京国立近代美術館の案内 (2011年12月)
 東京国立近代美術館の案内 (2011年06月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年12月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年09月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年05月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年04月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年02月)
 東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)
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