関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

生誕130年記念 奥村土牛 【山種美術館】

日付が変わって昨日となりましたが、恵比寿の山種美術館で「山種美術館 広尾開館10周年記念特別展 生誕130年記念 奥村土牛」を観てきました。

DSC03533.jpg

【展覧名】
 山種美術館 広尾開館10周年記念特別展 生誕130年記念 奥村土牛

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.jp/exh/2019/togyu.html

【会場】山種美術館
【最寄】恵比寿駅

【会期】2019年2月2日(土)~3月31日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんが多くて場所によっては人だかりができていましたが、概ね自分のペースで鑑賞することができました。

さて、今回の展示は穏やかな画風で人気がある奥村土牛の個展となっています。奥村土牛は山種美術館の創立者・山﨑種二と関わりが深く、無名だった時期から半世紀に渡って交流していたそうで、山種美術館には135点もの土牛の作品がコレクションされているようです。この展示ではその中から約60点ほどが時期別に3章に渡って並んでいました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
 参考記事:生誕120年 奥村土牛 (山種美術館)


<冒頭>
最初に、奥村土牛で特に有名な「醍醐」が展示されていました。

44 奥村土牛 「醍醐」 ★こちらで観られます
こちらは白い塀を背景にピンク色の枝垂れ桜が満開となっている様子が描かれた作品です。木の幹が画面の中央に来る大胆な構図で、滲みを活かした幹の表現も風格を感じさせます。淡い色彩で柔らかく温かみのある雰囲気となっていました。春爛漫といった明るい作品です。


<第1章 土牛芸術の礎>
1章は大正期から昭和20年代にかけてのコーナーです。奥村土牛は1889年に東京の京橋で生まれ、画家を志していた父のもとで絵画に親しみ16歳で梶田半古に入門し、そこで生涯の師と仰ぐ兄弟子の小林古径に出会いました。1920年から2年ほど小林古径の画室に住み込んで影響を受けたそうで、小林古径の指導により日本・中国の古画や西洋画(特にセザンヌ)などに学びました。1926年からは速水御舟の研究会に参加し、38歳で再興院展で初入賞しています。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。

2 奥村土牛 「雨趣」
こちらは高めの視点から見下ろすように 屋根が連なる赤坂の街に雨が降る様子を描いた作品です。縦に無数の線があり、雨が強く降りしきる様子が遠目でもわかります。屋根の幾何学的なリズムはセザンヌからの影響を思わせるかな。静かで叙情的な作品です。

近くには兎や鹿を描いた作品もありました。ふわふわしたアンゴラウサギを描いた作品なんかも可愛くて好みです。

17 奥村土牛 「軍鶏」
こちらは二曲一隻の屏風で、2羽の軍鶏が描かれていて、1羽は立ち上がり、もう1羽は俯いて地面をついばむような姿勢をしています。いずれも鋭い目をしていて緊張感があるかな。体つきはちょっと誇張しているように思えますが、すらっとした筋肉質で力強い印象を受けました。


<第2章 土牛のまなざし>
続いては60代から70代頃までのコーナーです。奥村土牛は写生を好んでいたそうで、形を表面的に写すのではなく物質感 つまり気持ちを捉えるのが大切と考えていたようです。そのため描く対象の本質や生命感を表現するのを重視したらしく、色彩についても精神を意味したものでなければならないと考えていました。また、60代から70代の頃は何か開放された気持ちになって自由に伸び伸びと制作できるようになったと感じていたようで、ここにはそうした時期の作品が並んでいました。

25 奥村土牛 「踊り子」
こちらは金地を背景に「白鳥の湖」の衣装を着たバレリーナが描かれています。手を腰に当てて背筋を伸ばす様子に気品があり、均整の取れた体つきとなっています。土牛はこのバレリーナの人柄に惚れ込んでいたそうで、人となりも表現されているように思えました。

29 奥村土牛 「那智」
こちらは那智の滝を描いた作品で、滝を中央真正面に捉えて真っ直ぐ下に落ちていく流れを描いています。高さ3mくらいある大型の画面なので、目の前に滝があるかのような臨場感もあって見応えがあります。岩のゴツゴツした感じや透明感のある水の表現など質感も豊かで、岩肌はセザンヌからの影響が観られるようです。奥村土牛はこの滝に崇高なものを感じたらしく、それを上手く表現していました。

この近くには「鳴門」や姫路城を描いた「城」などの代表作があり、写生も合わせて展示されていました。

33 奥村土牛 「茶室」
こちらは茶室の中を描いた作品です。障子や柱、壁などの質感を描き分けつつ、水平・垂直・直角の多い構図が半ば抽象画のようでもあって非常に面白く感じます。影で奥行きを作ったりするなど、微妙な色彩による表現も見事でした。

37 奥村土牛 「稽古」
こちらは相撲の栃錦を中心に左右に若い力士を従えた3人の像です。脇の2人はややすっきりした体格なのに比べて栃錦はがっしりして貫禄のある姿に見えます。簡潔で明確な輪郭線で描かれているのも特徴で、単純化されつつも凛々しい雰囲気がよく出ていました。


<第3章 百寿を超えて>
最後は80歳から晩年のコーナーです。奥村土牛は101歳まで生きて100歳を越えても制作を続けていたようです。ここには最後まで衰えを知らぬ晩年の作品が並んでいました。

41 奥村土牛 「朝市の女」
こちらは能登で見かけたという若い朝市の売り子の女性を描いた作品です。白い半袖のブラウスに青いモンペのようなものを履き、頭には笠を被った姿となっていて、日焼けした褐色の肌と共に逞しい印象を受けます。手前には無数の魚が置かれているのですが、ちょっと台からはみ出していて平面的な描写となっていました。

この辺には花を描いた作品などが並んでいました。

57 奥村土牛 「海」
こちらは千葉の鴨川の海を描いた作品です。手前の岩に波が押し寄せている様子で、海面は青に緑が混じって滲みがいい味を出しています。広々とした海は雄大な光景となっていました。単純な構図だけど美しい作品です。

52 奥村土牛 「吉野」
今回の展示はこの作品のみ撮影可能でした。
DSC03532.jpg
穏やかな色彩で春の暖かさまで感じられるような光景です。

続いて第二会場です。

62 奥村土牛 「山なみ」
こちらは99歳の白寿を記念して開催された展覧会に出す為に描かれた作品で、雪が積もって真っ白に染まった富士山を描いています。手前には黒っぽい山?が滲みを使って描かれていて独特の風合いとなっています。富士山は稜線辺りが金色となっていて光輝くような神々しさを湛えていました。

この部屋には他にも富士山の山頂付近を描いた作品が2点ありました。また、この絵の隣には自筆で「白寿記念」と書いた墨跡もありました。長生きで素晴らしいですねw

60 奥村土牛 「犢」
こちらは95歳の頃の作品で、黒い牛と そのお腹の辺りに隠れている黒い子牛が描かれています。親牛は滲みを使って力強く表されている一方、子牛は色合いが薄めでちょっと気弱そうに見えました。牛の内面まで伝わるような描写と観察眼は晩年まで健在だったことを伺わせる作品です。


ということで、ちょくちょく見かける作品が多かったですが、久々に奥村土牛の作品をまとめて観ることができました。代表作が目白押しで奥村土牛の画風の特徴などもよく分かる内容だと思います。近代の日本画が好きな方にオススメの展示です。

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