ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代 (感想前編)【国立西洋美術館】
10日ほど前の土曜日に上野の国立西洋美術館で「国立西洋美術館開館60周年記念 ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」を観てきました。非常に見どころの多い展示でしたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

【展覧名】
国立西洋美術館開館60周年記念
ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代
【公式サイト】
https://lecorbusier2019.jp/
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019lecorbusier.html
【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅
【会期】2019年2月19日(火)~5月19日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
結構混んでいて、場所によっては列を組んで観るような混雑ぶりでした
さて、この展示は近代建築の三大巨匠の1人であり 国立西洋美術館を設計したル・コルビュジエことシャルル=エドゥアール・ジャンヌレに関する展示です。特にジャンヌレ時代からの「ピュリスム」の絵画に焦点を当て それが建築設計に与えた影響を考察するという内容となっていて、自身の設計した美術館(しかも1階と2階)で開催されるという何とも贅沢で粋な展覧会となっています。 詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想前編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想後編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと国立西洋美術館 (国立西洋美術館)
ル・コルビュジエ 「ラ・シテ・ラディユーズ(ユニテ・ダビタシオン)」 【南仏編 マルセイユ】
映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」(ネタバレあり)
<1階>
まず1階にはル・コルビュジエとして設計した建物の模型が並んでいました。内容的には絵画作品(特にエスプリ・ヌーヴォーの時代が終わった辺り)を観てからのほうが分かりやすいのですが、最初に展示されています。1階だけは撮影可能となっていましたので、こちらは写真を使ってご紹介
77 横浜国立大学工学部建築学科 山田研究室(当時) 「画家オザンファンのアトリエ・住宅」1/30模型

こちらはジャンヌレに絵を教え 共にピュリスムを宣言したオザンファンのアトリエの模型で、実物は1920年代はじめ頃にパリで初めて実現した建物です。芸術にも普遍的な規則が必要と考え、幾何学的な美しさを追求し装飾性のないデザインとなりました。既にこの時点でル・コルビュジエの建築の方向性が強く感じられると思います。
86 東京理科大学アルカディア自由ゼミナール(当時) 「イムーブル=ヴィラ」1/100模型

こちらは1925年の「ヴォワザン計画」という自動車社会に対応した都市計画の中の1つで、大型の集合住宅となっています。特徴としては空中庭園と呼ばれる各部屋のテラス、中央に公園やテニスコートがあるといった点で、住宅やオフィスを高層化することで都市の中に緑地や公園をもっと増やせると考えていたようです。これも幾何学的でユニテ等を思い出すデザインかな。近くにはヴォワザン計画の都市模型もあり、大規模な構想だったことが伺えました。
103 芝浦工業大学工学部建築工学科 三宅研究室(当時) 「スタイン=ド・モンヅィ邸」1/30模型

こちらも後で出てくる近代建築の五原則を思わせる設計となっています。先に2階の展示を観てから戻ってきた方が理解しやすいと思います。
この他に、ピュリスムについての説明映像などもありました。
<1.ピュリスムの誕生>
2階からが本編で、1章はピュリスムの誕生期についてです。1917年の春に、当時29歳の建築家シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエの本名)は生国のスイスからパリへと移り、1歳年上の画家アメデ・オザンファンと出会いました。2人は意気投合し、オザンファンに教えを受けて油彩画を学びました。そして第一次世界大戦が終わった1918年にオザンファンとジャンヌレの2人でパリで小さな絵画展を開き「キュビスム以後」という著作を出版し、芸術の刷新を訴えました。その内容は、今日の芸術は近代化に対応していないとして、特に最先端だったキュビスムを主観的で無秩序な芸術と批判したようです。そして科学的精神によって普遍的な物の表現を目指す新しい芸術の名称として「ピュリスム」を掲げ、活動していきます。1920年には方法と様式を確立し、秋には雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』を創刊し、この中でル・コルビュジエのペンネームを使い建築論を発表していくことになります。ここにはそうした初期の時代の作品が並んでいました。
22 アメデ・オザンファン、シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)(編) 雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』1-28号
こちらが雑誌『エスプリヌーヴォー』で、1号~28号まで全て揃って並んでいました。表紙の真ん中に号数の数字があり、デザインはほぼ全巻同じで幾何学的なシンプルさがあります。この『エスプリヌーヴォー』は日本語訳すると「新精神」で、1920年10月から1925年まで発行されピュリスムの理念を広めた総合的な芸術雑誌となります。当初はオザンファン、ジャンヌレ、ポール・デルメの3人で創刊したもののデルメは間もなく手を引いて、4号からは2人体制となりジャンヌレは財務、オザンファンは実務を担当していたようです。「構築と総合」の精神を雑誌のモットーに掲げ、工業化社会の発展に対応する新たな時代の芸術の創造を訴えて、機械を近代の象徴とし科学技術の進歩を肯定的に捉え 芸術も同じ所から生まれなくてはならないと主張しました。一方で過去の芸術を否定するのではなく、共通する普遍的な規則があると考えていたようで、それは幾何学的な秩序であるとし、ピュリスムもその考えに沿ったものとなっています。
28 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「赤いヴァイオリンのある静物」
こちらはバイオリン、皿、瓶などが並ぶ油彩の静物画です。赤・黒・灰色といった色の面を使って表現していて、単純化された形態となっているのが画風の最大の特徴と言えます。また、上から見下ろした視点と横からの視点が1つのモチーフで共存しているのはキュビスムとよく似ているかな。立体的でリズムも感じられる作品でした。
この辺はジャンヌレとオザンファンの静物画が並びます。いずれもグラスやギターをモチーフにして構成の妙が面白い作品なのですが、2人の画風はそっくりです。キュビスムと違って形をあまり崩さないので元の形も分かりやすいかな。この後、2人の画風に違いが出てくるのですが、ピュリスム初期の特徴としては前述の作品のように上からと側面からの2つの視点で立体的に表現する点と、モチーフの配置を黄金比にしている点などが挙げられるようです。リズムが心地よいのはこの黄金比によるものかもしれませんね。
70 アメデ・オザンファン 「瓶のある静物」
こちらは窓辺らしき所に並ぶ瓶やグラスなどを描いた静物です。やはり色面を使って表現していて、輪郭も単純化されています。色はコントラストのような組み合わせが使われ、物の重なりを色の違いで表現していました。
解説によると、これは2人がとても仲が良かった最後の頃の作品だそうで、ジャンヌレが建築家ル・コルビュジエとしての名が高まると関係が変化していきました。(その辺は次回の記事で…)
4 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「カップ、本、パイプ」
こちらはスケッチです。油彩作品と違ってかなり写実的に描かれていて、観たまま描いていると言った感じです。コップとパイプなどはピュリスムでお馴染みのモチーフですが、ここでは陰影がつけられていて割と普通の表現かなw
この辺には同様のスケッチが並び、風景画などもありました。ピュリスムに目が慣れてからだと逆に新鮮に思えましたw
10 アメデ・オザンファン 「自画像」
こちらはオザンファンの自画像で、本を持ってこちらをチラっと見る姿で描かれています。背景に机らしきものや本、机などもあるので書斎かな? こちらもやや単純化されていますが、結構写実的でキュビスムみたいな多角的な感じではありませんでした。
この辺でピュリスムの技法についての解説がありました。2人は「規整線」(トラセ・レギュラトゥール)という手法を用いていて、これはジャンヌレが建築の研究書から学んだ方法の応用のようです。(1920年代のル・コルビュジエとしての建築にも応用されています) 画面の底辺から中心軸に向かう2つの直角2等辺三角形の頂点の位置が見る者の目を引きつける戦略的な中心線として重視されているとのことで、何のこっちゃ?と思ったら分かりやすい図解もありました。先述の黄金比もそうですが、構図において科学的に配置しているのが伺えるエピソードです。
13 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「暖炉」
こちらはジャンヌレが初めて描いた油彩作品です。タイトルの通り暖炉を描いているようですが、暖炉の上に白い立方体らしきものが乗っている謎の絵です。最初に描いた作品とは思えないくらいの完成度ですが、それ以上に最初でこんなに謎の絵を描くの?って驚きがありますw 背景も平坦な色面となっているなど既にジャンヌレが目指した芸術の萌芽が観られるような…。解説によるとこの白い立方体はアクロポリスの丘の古代建築になぞらえたものとのことで、一層に常人離れした作品に思えました。
この近くの小部屋には2人の支援者だったラ・ロシュの邸宅の模型(「ラ・ロシュ=ジャンヌレ邸」1/30模型)などが並んでいました。ル・コルビュジエ初期のピュリスム建築の傑作と言える建物です。
ということで長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。5年くらい前に同様の展示を観た気がしますが、その後に世界遺産に決まったということで注目度も一気に高まっているようです。ル・コルビュジエは絵画も非常に面白く、彼の建築を理解するのに欠かせない要素でもあるのでこの機に知っておくと建物を見る目も変わると思います。後半ではさらに建築との関わりが密接になっていきますので、次回は残りの章についてご紹介予定です。
→ 後編はこちら

【展覧名】
国立西洋美術館開館60周年記念
ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代
【公式サイト】
https://lecorbusier2019.jp/
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019lecorbusier.html
【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅
【会期】2019年2月19日(火)~5月19日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
結構混んでいて、場所によっては列を組んで観るような混雑ぶりでした
さて、この展示は近代建築の三大巨匠の1人であり 国立西洋美術館を設計したル・コルビュジエことシャルル=エドゥアール・ジャンヌレに関する展示です。特にジャンヌレ時代からの「ピュリスム」の絵画に焦点を当て それが建築設計に与えた影響を考察するという内容となっていて、自身の設計した美術館(しかも1階と2階)で開催されるという何とも贅沢で粋な展覧会となっています。 詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想前編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想後編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと国立西洋美術館 (国立西洋美術館)
ル・コルビュジエ 「ラ・シテ・ラディユーズ(ユニテ・ダビタシオン)」 【南仏編 マルセイユ】
映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」(ネタバレあり)
<1階>
まず1階にはル・コルビュジエとして設計した建物の模型が並んでいました。内容的には絵画作品(特にエスプリ・ヌーヴォーの時代が終わった辺り)を観てからのほうが分かりやすいのですが、最初に展示されています。1階だけは撮影可能となっていましたので、こちらは写真を使ってご紹介
77 横浜国立大学工学部建築学科 山田研究室(当時) 「画家オザンファンのアトリエ・住宅」1/30模型

こちらはジャンヌレに絵を教え 共にピュリスムを宣言したオザンファンのアトリエの模型で、実物は1920年代はじめ頃にパリで初めて実現した建物です。芸術にも普遍的な規則が必要と考え、幾何学的な美しさを追求し装飾性のないデザインとなりました。既にこの時点でル・コルビュジエの建築の方向性が強く感じられると思います。
86 東京理科大学アルカディア自由ゼミナール(当時) 「イムーブル=ヴィラ」1/100模型


こちらは1925年の「ヴォワザン計画」という自動車社会に対応した都市計画の中の1つで、大型の集合住宅となっています。特徴としては空中庭園と呼ばれる各部屋のテラス、中央に公園やテニスコートがあるといった点で、住宅やオフィスを高層化することで都市の中に緑地や公園をもっと増やせると考えていたようです。これも幾何学的でユニテ等を思い出すデザインかな。近くにはヴォワザン計画の都市模型もあり、大規模な構想だったことが伺えました。
103 芝浦工業大学工学部建築工学科 三宅研究室(当時) 「スタイン=ド・モンヅィ邸」1/30模型

こちらも後で出てくる近代建築の五原則を思わせる設計となっています。先に2階の展示を観てから戻ってきた方が理解しやすいと思います。
この他に、ピュリスムについての説明映像などもありました。
<1.ピュリスムの誕生>
2階からが本編で、1章はピュリスムの誕生期についてです。1917年の春に、当時29歳の建築家シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエの本名)は生国のスイスからパリへと移り、1歳年上の画家アメデ・オザンファンと出会いました。2人は意気投合し、オザンファンに教えを受けて油彩画を学びました。そして第一次世界大戦が終わった1918年にオザンファンとジャンヌレの2人でパリで小さな絵画展を開き「キュビスム以後」という著作を出版し、芸術の刷新を訴えました。その内容は、今日の芸術は近代化に対応していないとして、特に最先端だったキュビスムを主観的で無秩序な芸術と批判したようです。そして科学的精神によって普遍的な物の表現を目指す新しい芸術の名称として「ピュリスム」を掲げ、活動していきます。1920年には方法と様式を確立し、秋には雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』を創刊し、この中でル・コルビュジエのペンネームを使い建築論を発表していくことになります。ここにはそうした初期の時代の作品が並んでいました。
22 アメデ・オザンファン、シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)(編) 雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』1-28号
こちらが雑誌『エスプリヌーヴォー』で、1号~28号まで全て揃って並んでいました。表紙の真ん中に号数の数字があり、デザインはほぼ全巻同じで幾何学的なシンプルさがあります。この『エスプリヌーヴォー』は日本語訳すると「新精神」で、1920年10月から1925年まで発行されピュリスムの理念を広めた総合的な芸術雑誌となります。当初はオザンファン、ジャンヌレ、ポール・デルメの3人で創刊したもののデルメは間もなく手を引いて、4号からは2人体制となりジャンヌレは財務、オザンファンは実務を担当していたようです。「構築と総合」の精神を雑誌のモットーに掲げ、工業化社会の発展に対応する新たな時代の芸術の創造を訴えて、機械を近代の象徴とし科学技術の進歩を肯定的に捉え 芸術も同じ所から生まれなくてはならないと主張しました。一方で過去の芸術を否定するのではなく、共通する普遍的な規則があると考えていたようで、それは幾何学的な秩序であるとし、ピュリスムもその考えに沿ったものとなっています。
28 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「赤いヴァイオリンのある静物」
こちらはバイオリン、皿、瓶などが並ぶ油彩の静物画です。赤・黒・灰色といった色の面を使って表現していて、単純化された形態となっているのが画風の最大の特徴と言えます。また、上から見下ろした視点と横からの視点が1つのモチーフで共存しているのはキュビスムとよく似ているかな。立体的でリズムも感じられる作品でした。
この辺はジャンヌレとオザンファンの静物画が並びます。いずれもグラスやギターをモチーフにして構成の妙が面白い作品なのですが、2人の画風はそっくりです。キュビスムと違って形をあまり崩さないので元の形も分かりやすいかな。この後、2人の画風に違いが出てくるのですが、ピュリスム初期の特徴としては前述の作品のように上からと側面からの2つの視点で立体的に表現する点と、モチーフの配置を黄金比にしている点などが挙げられるようです。リズムが心地よいのはこの黄金比によるものかもしれませんね。
70 アメデ・オザンファン 「瓶のある静物」
こちらは窓辺らしき所に並ぶ瓶やグラスなどを描いた静物です。やはり色面を使って表現していて、輪郭も単純化されています。色はコントラストのような組み合わせが使われ、物の重なりを色の違いで表現していました。
解説によると、これは2人がとても仲が良かった最後の頃の作品だそうで、ジャンヌレが建築家ル・コルビュジエとしての名が高まると関係が変化していきました。(その辺は次回の記事で…)
4 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「カップ、本、パイプ」
こちらはスケッチです。油彩作品と違ってかなり写実的に描かれていて、観たまま描いていると言った感じです。コップとパイプなどはピュリスムでお馴染みのモチーフですが、ここでは陰影がつけられていて割と普通の表現かなw
この辺には同様のスケッチが並び、風景画などもありました。ピュリスムに目が慣れてからだと逆に新鮮に思えましたw
10 アメデ・オザンファン 「自画像」
こちらはオザンファンの自画像で、本を持ってこちらをチラっと見る姿で描かれています。背景に机らしきものや本、机などもあるので書斎かな? こちらもやや単純化されていますが、結構写実的でキュビスムみたいな多角的な感じではありませんでした。
この辺でピュリスムの技法についての解説がありました。2人は「規整線」(トラセ・レギュラトゥール)という手法を用いていて、これはジャンヌレが建築の研究書から学んだ方法の応用のようです。(1920年代のル・コルビュジエとしての建築にも応用されています) 画面の底辺から中心軸に向かう2つの直角2等辺三角形の頂点の位置が見る者の目を引きつける戦略的な中心線として重視されているとのことで、何のこっちゃ?と思ったら分かりやすい図解もありました。先述の黄金比もそうですが、構図において科学的に配置しているのが伺えるエピソードです。
13 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「暖炉」
こちらはジャンヌレが初めて描いた油彩作品です。タイトルの通り暖炉を描いているようですが、暖炉の上に白い立方体らしきものが乗っている謎の絵です。最初に描いた作品とは思えないくらいの完成度ですが、それ以上に最初でこんなに謎の絵を描くの?って驚きがありますw 背景も平坦な色面となっているなど既にジャンヌレが目指した芸術の萌芽が観られるような…。解説によるとこの白い立方体はアクロポリスの丘の古代建築になぞらえたものとのことで、一層に常人離れした作品に思えました。
この近くの小部屋には2人の支援者だったラ・ロシュの邸宅の模型(「ラ・ロシュ=ジャンヌレ邸」1/30模型)などが並んでいました。ル・コルビュジエ初期のピュリスム建築の傑作と言える建物です。
ということで長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。5年くらい前に同様の展示を観た気がしますが、その後に世界遺産に決まったということで注目度も一気に高まっているようです。ル・コルビュジエは絵画も非常に面白く、彼の建築を理解するのに欠かせない要素でもあるのでこの機に知っておくと建物を見る目も変わると思います。後半ではさらに建築との関わりが密接になっていきますので、次回は残りの章についてご紹介予定です。
→ 後編はこちら
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