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2019 MOMASコレクション 第4期 【埼玉近代美術館】

先週の日曜日に北浦和の埼玉近代美術館で特別展を観てきました。その際に常設も観てきましたので、先にそちらをご紹介しようと思います。今回は「2019 MOMASコレクション 第4期」というタイトルとなっていました。

DSC03510.jpg

【展覧名】
 2019 MOMASコレクション 第4期

【公式サイト】
 http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=378

【会場】埼玉近代美術館
【最寄】北浦和駅

【会期】2019年1月12日(土)~4月14日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は常設展で、埼玉県立近代美術館では年4回テーマを決めて入れ替えていて、今回は2018年度最後の4期となってきました。大きく分けて3つの章から構成されていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<瑛九と光春―イメージの版/層>
まずはこの埼玉県立近代美術館がある浦和に馴染み深い瑛九と、瑛九を研究した山田光春に関するコーナーです。瑛九は油彩、フォト・デッサン、コラージュなど、山田光春はガラス絵、素描などが並んでいました。
 参考リンク:
  生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)
  生誕100年記念 瑛九展 (埼玉県立近代美術館)

瑛九 「女性像」
こちらは椅子に肘をかけて座る女性を描いた作品で、少々不機嫌そうに見える表情をしているかな。やや単純化しているものの写実的に描かれていて、落ち着いた色彩となっています。まだ具象の時代のものかな? これを観ても瑛九だとは分からないほど堅実な感じの作風でした。

この辺には瑛九の写真作品がいくつかありました。瑛九にはマン・レイのレイヨグラフのような写真とは思えないような作品もあります。

瑛九 「作品(69)」
こちらはレースのようなものをフォトデッサンして印画紙に彩色した作品です。不思議な色合いとなっていて、滲みを活かして抽象画そのものと言った感じに見えます。具象と抽象の狭間のような自由さが面白い作品でした。

この辺には山田光春の作品もいくつかありました。

瑛九 「ともだち」
こちらは「印象派からやり直す」と宣言していた頃の作品です。屋内のテーブルで向き合っている2人の男性が描かれ、背景には女性らしき姿もあります。かなり粗目のタッチで描いていてちょっと落書きチックな描写に見えるかな。油彩だけど下書き線らしきものも残っていて、水彩のような色合いとなっていました。またちょっと具象に戻ったような感じ。

瑛九 「青の中の黄色い丸」
薄い青の背景に無数の円や楕円が重なり合うように描かれている抽象画で、瑛九と言えば真っ先に思い浮かぶ作風はこれじゃないかな。オレンジ、黄色、青、緑など色とりどりで、泡や星なんかを彷彿とさせます。抽象画だけど有機的な印象を受け、色の取り合わせやリズムを直感的に楽しく感じる作品です。

瑛九 「手」
こちらは型紙を用いて吹付け等の技法で制作した作品で、手の形が大きく描かれ その中に女性の人影が見えています。青い色が無数に重なりあって温かみを感じるかな。近くには制作に使われた型紙も展示されていて、制作工程を創造しながら観ると一層面白く感じられました。


<特別展示:瑛九の部屋>
こちらは瑛九の「田園」のみを暗室で展示するという一風変わった趣向となっています。暗室には照明のつまみがあって、それを回すと明るさが変わって絵の印象も変わって見えるという仕掛けになっています。

瑛九 「田園」 ★こちらで観られます
DSC03514.jpg
写真はポスターの一部を拡大したものです。無数の点描で描かれた大型の作品で、黄色や赤が多くて太陽や青空の下の田園風景と言われたらそう見えるかな。先述の通り明るさの調整をしながら観ると、まるで昼間から夕暮れに変わっていくような視覚体験もできました。明らかに印象が変わるし、これは企画が光る展示方法かも。


<セレクション:ユトリロとかパスキンとか>
続いては埼玉県立近代美術館が誇る西洋画・日本人洋画家によるコーナーです。今回はシニャックの新収蔵品が特に目を引きました。

ポール・シニャック 「アニエールの河岸」 ★こちらで観られます
DSC03516_20190317022820c9a.jpg
写真はポスターの一部を拡大したものです。川岸から川を望む光景を描いた作品で、川を眺める人の姿などもあります。朝の光景らしくまだモヤが立ち込めるような柔らかめの色調となっているように感じます。しかしこの絵ではシニャックの割にあまり点描っぽさが出ていないように思えました。(水面あたりはちょっと点々としている) 解説によると、こちらの作品は最後の印象派展である第8回印象派展に出品された品のようです。そう考えると印象派展の終焉に関わった歴史的な作品と言えそうです。

斎藤豊作 「フランス風景II」
こちらはフランスの田舎を描いた作品で、バラ色に染まる道や植物に覆われた壁、その向こうの黄色い壁の家などが描かれています。かなり強めの色彩で、ピンクや緑の対比を使っていたりして鮮やかです。大きな筆跡を残して点描のように描いているのも特徴で、大胆かつ可憐な印象を受けました。

斎藤与里 「暁の金剛山」
こちらは蓮の葉や蓮華の咲く池が描かれ、その奥に雄大な金剛山が描かれています。単純化されて輪郭を素早く描いたように見えるかな。荒々しいけど素朴で郷愁を誘いました。


ということで、常設でも半分は瑛九についてのミニ企画展の様相となっていて満足できました。この美術館は常設に驚くような品もあるので、特別展に行かれる際には常設も観ることをオススメします。(と言いつつ ぐるっとパスだと特別展は提示で観られるけど常設は別料金で見逃しがち気味です…w)

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