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新・北斎展 HOKUSAI UPDATED (感想前編)【森アーツセンターギャラリー】

10日ほど前の日曜日に六本木の森アーツセンターギャラリーで「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」を観てきました。非常に点数が多く見どころもたっぷりでしたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

DSC03535.jpg

【展覧名】
 新・北斎展 HOKUSAI UPDATED

【公式サイト】
 https://hokusai2019.jp/
 https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/hokusai/index.html

【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅

【会期】2019年1月17日(木)~ 3月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
非常に混んでいて下のエレベーター待ちで30分、会場の前で10分ほど並びました。また、中に入ってもどこも行列しているので観るのに3時間以上かかりました。これから見る予定の方は一層に混んでいると思われますので十分に時間を取ってスケジュールすることをオススメします。

さて、この展示は日本で最も有名な絵師である葛飾北斎を時系列的に6期に分けて全480点(入れ替えあり)の大ボリュームで紹介する内容となっています。葛飾北斎というのは46~50歳頃の画号にすぎず 画風も画号もコロコロ変えた(50くらいある)のですが、今回はその変遷の様子などもよく分かるようになっています。また、版画の浮世絵だけでなく直筆の肉筆画も多いのが特徴で、これだけ揃いの良い展示は久々の機会だと思います。詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章:春朗期─デビュー期の多彩な作品>
まずはデビュー期のコーナーです。後に葛飾北斎となる幼名:時太郎は1760年に江戸に生まれ、6歳の頃から絵を描き始め12歳のときには貸本屋で働くようになり、14歳で版木彫りの仕事をするようになりました。そして19歳の頃に勝川春章に入門し、勝川春朗の号を授けられてデビューしました。その後15年ほど様々な題材を描いていましたが、1792年に師が没すると叢春朗(くさむらしゅんろう)を用いて画風も変化していきます。この章ではそうした初期の作品が並んでいました。
 参考記事:すみだ北斎美術館の案内 (常設 2017年12月)

5 葛飾北斎 「五代目市川団十郎 あげまきのすけ六」
こちらは役者絵で、傘を持った五代目市川団十郎を描いた作品です。色は淡く輪郭がよく分かるのですが、筆致は細かいものの まだぎこちなさもあって、発展途上の頃と言った感じでしょうか。師匠の勝川春章の作風にも似ていて影響の強さが見て取れます。「春朗画」の印もあって初期作品の画風がよく分かる作品でした。

この辺は同様の色が薄めの版画作品が並んでいました。題材は様々で、美人画や風俗画なんかもあります。

16 葛飾北斎 「花くらべ弥生の雛形」
こちらは3人の遊女を描いた作品で、1人はまだ幼くデビュー前の少女です。2人は等身がスラリとして艶やかな雰囲気があり、輪郭もだいぶ軽やかになっていて流麗な印象を受けます。解説によると、これは鳥居清長の作風から影響を受けているようです。確かに似ていて他の流派からも積極的に学んでいた様子が伺えました。(それが原因で破門になったりしたわけですが…w) ちなみに勝川派の中堅になっても生活は苦しかったようで、唐辛子や暦を売る副業で生活していたなんてエピソードも紹介されていました。

55 葛飾北斎 「鎌倉勝景図巻」
こちらは初公開の巻物の作品で、現在の横浜の磯子あたりから江ノ島にかけての風景を地名と俳句を添えて9mに渡って描いています。緻密で落ち着いた画風となっていて、大仏や建長寺といった現代でも人気の名所も見受けられるのが面白いかな。この作品では叢春朗となっていて、勝川派と袂別した後の作品のようでした。なお、勝川派にいた頃、兄弟子に絵の拙さについて からかわれて絵を破り捨てられたことがあったそうで、それに奮起したことで絵が上達したと後に語っていたようです。兄弟子との不仲も勝川派を離脱した一因のようです…。

この近くのケースには黄表紙がいくつか並んでいました。


<第2章:宗理期─宗理様式の展開>
続いては主に「宗理」を名乗っていた時期のコーナーです。1794年に勝川派から離脱した後、琳派の宗理の名を受け継いで画風が一気に変わったようです。この時期は浮世絵制作は減り、摺物へと軸足を移していて肉筆も多く手がけて様々な描法を用いているようです。特に瓜実顔の女性は「宗理風」と呼ばれるスタイルとしてこの時期を代表する画風となっています。そして1798年には宗理の画号を門人の宗二に譲り「北斎辰正」へと改号、さらに「画狂人北斎」へと次々に号を変えています。宗理様式の作画は1805年ころまで続いたそうで、この時期には西洋風の画風も取り込んだりしたようです。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。

79 葛飾北斎 「ぎやうとくしほはまよりのぼとのひかたをのぞむ」
こちらは海岸を描いた作品で、岩や家が描かれています。遠近感があり陰影がつけられているなど、西洋の技法を取り入れた風景画に見えるかな。水平線が低めで広々とした雰囲気が感じられ、これまでの作品とはだいぶ異なる画風となっているのがよく分かりました。
他にも同様に西洋技法の遠近法が使われた作品がいくつかあり、緻密で写実的なものもあります。

この辺は読本(よみほん)が並んでいました。曲亭馬琴(北斎と袂別後に南総里見八犬伝を書いた滝沢馬琴)とのコンビで人気を博していたのですが、曲亭馬琴の指示に従わない挿絵を描くことがしばしばあったようで、ある時 草履を咥えた人物を描くようにとの指示を鼻で笑って取り合わず、それが原因で絶交になったというエピソードがあります。タイプの違う天才同士ではこうなるのも致し方無いのかもw 北斎は破天荒エピソードだらけですw

117 葛飾北斎 「玉巵弾琴図」
こちらは2幅対の肉筆掛け軸で、右幅には玉巵という西王母(不老長寿の仙女)の娘が描かれ、左幅には玉巵の愛用の琴を持った雲龍が描かれています。この玉巵は瓜実顔をしていて、典型的な宗理様式となっているようです。一方の龍は琴を抱きかかえるようにしながら厳しい表情をしていて、周りに飛び散った墨と共に迫力が感じられました。中々見事な肉筆です。

この辺は肉筆掛け軸がずらりと並んでいました。これだけ集めるとは北斎展の決定版みたいな感じ。

118 葛飾北斎 「美人愛猫図」
こちらも肉筆の掛け軸で、猫を抱えた着物の女性が描かれています。真っ白な肌をしていて色っぽく、8等身くらいあるすらっとしたプロポーションも優美です。この女性も瓜実顔の富士額で、ちょっと俯いているのも宗理様式の典型のようです。首の辺りには中の赤い衣が出ていて、白い肌と共に艶やかなアクセントとなっていました。

その後は注文に応じて作られる摺物のコーナーとなっていました。津和野藩伝来の摺物が全点公開されるのは今回が初の機会だそうです。ポストカードくらいからノートサイズまで大きさも様々で、絵暦なんかが多いかな。小松引きなど季節を感じさせる主題などを描いていました。

その先の休憩スペースでは今回の展示の核となっている永田コレクションの永田生慈 氏に関する映像が流れていました。北斎研究の第一人者で、太田記念美術館の副館長などもされていた方です。晩年に島根県立美術館に多くのコレクションを寄贈し、惜しくも去年(2018年)に亡くなってしまいました。これだけ北斎について詳しく知ることができるのは永田氏のおかげですね。

葛飾北斎 「しん板くミあけとうろふやしんミセのづ」
20190310 173756
こちらは休憩スペースにあった撮影可能な複製品。組上絵というパーツを組み立てて作る作品です。かなり出来が良いのは計算しつくされている為かな。北斎はこうした組上絵も10種類ほど手がけていたようです。


ということで、長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。非常に混んでいて観るのが大変でしたが、永田コレクションを中心とした貴重な作品の数々を観ることができました。時系列になっているのも理解しやすいし、北斎を詳しく知る良い機会だと思います。後編は特に有名な浮世絵や貴重な肉筆画などもありましたので次回は残りの章をご紹介の予定です。

 → 後編はこちら
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